第11回国土交通技術行政の基本政策懇談会 議事要旨

第11回国土交通技術行政の基本政策懇談会 議事要旨

1.日時
令和元年12月25日(水) 13:00~15:00
 
2.場所
九段第2合同庁舎8階地震予知連大会議室


3.出席者(五十音順、敬称略)
<委員>
石田東生、鵜澤潔、金山洋一、小池俊雄、高木健、羽藤英二、福和伸夫、藤野陽三、松尾亜紀子、山田正
<ゲストスピーカー>
岸井隆幸、廣井悠

4.議事
1.今回のテーマについての議論
<課題テーマ>
「地域・都市マネジメント戦略」
2.その他
今後のスケジュールについて
 
5.議事概要
<都市マネジメント戦略>
  • 1968年に現在の都市計画法が制定されたが、今日、都市計画の役割は大きく変化している。1968法は都市に湧き上がるエネルギーをいかにコントロールするかが大きな命題であり、土地利用規制を強化しながら必要な都市基盤計画を先行的につくり、区画整理で面的に整備すると言う枠組みであった。2002年の都市再生特別措置法は新しい都市計画の展開であり、今は立地適正化計画も都市再生の枠組みの中で整理されている。今後の都市計画は現行法に十分に書かれていない更新、再生、維持管理をしっかりと行っていくことへシフトしていく考えられる。
  • 「都市計画が防災に追いついていないのでニューディールが必要だ」という考えは参考になった。総合計画を作成すべきではないか。
  • モビリティー、防災、メンテナンス、都市・地域など全部がつながる「包摂的である」と言う考え方で社会資本整備を進めることが非常に重要となる。
  • 事業者間の連携は、事業者の考え方や個性の違いがありなかなか難しい。例えば、鉄道や地下通路のサイン1つを変えるものでも、費用負担の話で往々にしてもめてしまう。
  • 今後、都市マネジメントにおける事業者間の連携だが、協議会形式で時間を掛ければ上手くいくかもしれないが、大規模災害が近い時において早期、具体的に機能させるにはSociety5.0を使ってどう補完していくかを考えなくてはならない。
  • 10年ぐらい前に民鉄協でサインのガイドラインを作成したが、運用がバラバラなため使いにくかった。伝達ではなく、伝達されているかどうかの確認が大事となるが、新宿、渋谷、池袋では行っているのだろうか。
  • 新宿においてはターミナル協議会を作って全ての鉄道事業者や町のサインの検証を行い、非常に不都合が多いことが分かった。
  • 社会インフラに頼り過ぎている大都市で、何か1つのインフラが閉じただけで全部が破綻していくこともある。実際に、大都市で何か破綻した時のどうすればいいかのシナリオを本懇談会の場で描いていったらどうか。地方都市の官庁街周辺に対して大丸有と同じように、行政がリードしながら、圧倒的に新しいまちづくりをすることもあるのではないか。
  • スマートシティの取り組みの中で、大丸有では、リアルタイムに情報を取って、できるだけそれをリアルタイムに提供するようなシステムができないかという先駆的な取り組みが幾つか行われている。
  • 都市再生特別措置法には、都市再生安全確保計画という、災害が発生した場合の帰宅困難者を含めた方々へ、どういう場所を提供し、物資を提供するかと言うような計画づくりが徐々に進ん来ており、地下街を含めた協議会でも、強制力がないと言うネックはあるが、議論が徐々に進みつつある。
  • 河川の長期計画は、確率水文量から便益が出てどれだけコストが必要かということを確立した。最新の技術で勝ち取ったが、長期計画が平成14年にストップした。Society5.0、気候変動予測、気象予測が出来るようになってきているので、こういうものをバネにして新たな長期計画をもう一度トライするべきではないか。科学技術の進歩、Society5.0の中で、我々が次に何を描くかということをぜひ進めるべき時期にある。 
 
<地下空間>
  • 地下街においても接続するオフィスビル、店舗の管理者が時間帯によってはいなくなる。例えば、23時半以降にあると公衆はまだ沢山いるのに、委託の保安員等しかいない状況であり、発災した時に立ち行かなくなるのは容易に想像できる。東日本大震災で津波被害が大きかった仙台市街地、平日の中間時間帯(21:26)に発生した熊本地震での熊本市街地などの状況を分析して東京の大都市圏に変換することなどをやらなくてはならない。
  • 地下街管理者に対しては、BCPに関する法体系があまり厳しくなく、中央防災行政無線も、広報車による周知も届かない。発災による停電が起きた時、地下にいる人へ情報伝達が確実に行われることを意識しないといけないが、店舗管理者との連携だけでは限界がある。例えば、ICT、AIを用いて、国や自治体からの情報を直接地下空間エリアへ発信し、地下にいる人のスマートフォンが必要な情報を選択し避難先を示すこと等が災害の初期段階で出来れば、大分違ってくる。
  • 情報提供は、受け手に確実に伝達されているかが重要。また、情報の受け手には、情報が届かなくなったのか、事象がないから情報が来てないのかの区別は出来ないので、変化がなくても適時に情報を提供することも必要。特に、津波や洪水浸水想定区域と地下街は非常にラップしているので、二重、三重系の情報伝達、情報伝達の確実性に係る診断機能が必要となる。
  • 地下街は連結し過ぎており、災害等何かが起きれば全体がやられてしまう。この問題は直ぐに解決できないにしても議論しておかなくてはいけない。災害等で全部やられた際にどのようにするか等の事前復興計画について、抜本な議論を実施しないといけない。
  • スマートフォンは人を救うことができるツールになり得るので、非常時に充電できる設備の設置、また、地下街の発電機の地上の上階部への移動、地下空間内でも場所により状況が異なるため当該箇所に対するきめこまかい情報伝達手段の確保など、すぐできうることは実施してはどうか。
  • 地下街はGPSの電波が不安定であり、繋がりにくいが、2020年のオリンピック・パラリンピックを目指してビーコンを設置し外国人でもスムーズに地下街を歩けるような実験に取り組んでいる。
  • 地下空間の情報を集めるにあたり、実は計測が難しい。工事をやるたびに、例えばJR九州でのボーリング調査時における機械と列車の接触事故などがお起こっている。「我が国は計測の技術つくるべき」と提言に盛り込むべきである。首都高速のトンネル事故を見ても、地下空間の安全性は新しい技術でできることがたくさんあるはずなのに意外と進んでいない。地下街への新技術、リアルタイムの防災の導入が必要である。
 
 
<防災、地域マネジメント>
  • 大地震(M6以上)に対する都市再生安全確保計画は、総じて公衆が一番多い平日の日中をイメージして作られているが、自治体職員や管理者がいる時間帯でもある。それ以外の時間帯についての対応も検討しないといけない。
  • 東京圏では都心3区への通勤者の62%が片道60分以上かかっており、国や自治体職員の多くも離れた場所に住んでいると思われる。夜間での発災時に、職場から離れた場所にいる職員を最寄りの自治体に出勤させる自治体連携など、どのように対応するかを考えなくてはならない。
  • 防災において前回の懇談会で地元愛をもったリーダーが必要だという議論があったがそれに加えて、考える場所も作るらないといけない。
  • それぞれの地域の価値を皆で上げるため、エリアマネジメントと呼ばれているものが各地で作られている。都市再生といっても、従来のとおり、個別の鉄道事業者が自分の鉄道の持続性を保つために自分の土地の上にデパートを建て直すだけでは何の発展もない。価値を上げるには、本来どんな町を作るべきなのかと言うことに基づいて、場合によっては土地の交換分合や新しい経営母体を作るなど、多少の危機意識を持って、皆で自分の地域を他の地域に勝てるように変えていかなければならない。目標が共有化できれば自ずと、やるべきことは皆でやろうという風になってくる。その結果、それぞれの方の価値の増幅感につながっていく。
  • 地域の価値を上げるとそれが自分の実入りになると言うキャッシュフローは明らかであるが、自治体においてそれをサポートする感覚がないのが問題である。民間に任せれば出来るという楽観的なものではないので、公共政策のあり方やサポートのあり方に何があるか考えないと行けない。その解決の1つに「スマートシティ」が考えられる。
  • 西日本の大雨災害があった真備町では、よりレジリエントな施策を打ち出したが、誰も乗ってこなかった。今年の台風19号災害で吉田川の1カ所で決壊氾濫した大郷町でも、町長は町の移転を考えた再生計画を打ち出したが否決された。誰もが同じ場所に、同じようにに住みたいと考えていれば、都市計画、地域計画の誘導の仕方は難しい。
  • 河川のこれまでの防災は、マイナスをゼロするだけであってプラスまで考えてなく、地域が活性化するための方策が政策の中に描かれていなかった。税収の増減の観点から、公共を投資先として非常に有望なところにすると言う考えに立つと、総合的な政策は描けるのではないか。
  • 魅力的なアイデアを出しても、市町村等の役所においてアイデアが政策まで反映されないことがあり、意識レベルを高める必要がある。
  • 日本橋川をきれいにしようとしたが、東京は隅田川の東側は地域愛が強いが、都心は地元愛が薄く、以前は活動がうまくいかなかった。地元愛のある人が中央区の区長に当選した際、行政全体の方針が変わり良い方向に進んだ。
  • 渋谷川の開発において、渋谷川でゲリラ豪雨の予報システムを作成したおかげで東急建設が重機を早めに避難させることができたことから、これは使えると言うことで、東急が中心となり渋谷全体で予報システムを使えないかと議論をしている。
  • 渋谷で言う東急、日本橋で言うと三越や三井不動産が、地元で老舗の旦那方を入れて、上手にマネジメントを行っている。地域愛が薄い地域においては、ビジネスメリットで実施すべきだが、地方ではビジネスメリットを当てはめにくい。
  • 長期計画・国土計画はあるが、プロジェクト期日と金額を書かなくなったことで美辞麗句の計画で誰も読まなくなり意義が極めて少なくなった。欧米では全く逆で、道路分野においては5カ年計画の中にプロジェクトや金額が記載されている。
  • 税収が増やすための投資事業のインセンティブ市レベルに与えても、地元の人がどう反応するかは別問題である。総論は賛成・各論は反対のため難しい側面がある。
  • 中心市街地と郊外の役割分担、河川の上流と下流の扱い、首都と地方に対応、低地と台地、色々な対立軸の中でどのように妥協しながら動いていくのか。今は縦割りで細かいことしか出来ていない。大らかな視点で見るには国交省全局が整理した成果の公表を実施するべき。
  • 民間を巻き込むのが難しく、地域の大地主みたいな企業がいる場所は成り立つが、それ以外だと公共が場づくりや専門家を呼ぶなど何らかで関与していかないといけない。また、防災のように、総論は賛成すると言うキーワードを盛り込む形でエンカレッジしていかないと難しい。
  • アメリカのニューディール政策は日本では経済対策と思われているが、ストック効果を相当考えており、未だにTVA方策は存在している。
  • 水力発電機能だけみても関西電力を上回る。シーニックバイウェイは何も無いところに道路を建設したところ、年間2000万人以上訪れる観光地になった。ビルド・バック・ベターを意識し打ち出すべきである。
 
 
<その他>
  • 河川では、気候変動予測モデルで作り出す非常に多様な確率空間のデータを統合化して1.1倍という数値を作り、整備計画を1.15倍するという方針を決めた。昭和33年以来の河川計画の大変更であり、Society5.0そのものと言える。
  • ビルド・バック・ベターと言う考える場を、復旧・復興プロセスの中で行なうべき。
  • 新たな産業を国際展開する場合、国際規格にマッチしたものになっていなければならない。地下空間においては、まだ国内で規格などの調整をしている段階で国際展開からはるか遠くにあるが、国際的な動きがあればキャッチアップしておくべき。
  • 公共施設の3次元データの一括管理はシンガポールが進んでいる(バーチャルシンガポール)。日本においても、ガス、電気等の個別分野では進んでいるが、一元的に把握できるようなプラットフォームになっていないのが現状である。
  • 本来であれば全部が統合されたデータ・プラットフォームを作るべきだが、全部を綺麗に整えるまで待っていると現実にはぐちゃぐちゃになってしまい後々追いつかなくなるので、優先的にやるべきエリアのプラットフォームをしっかり作って共有することが順番として必要なではないか。
  • 日本のインフラデータ・プラットフォームは着々と整備されている。世界的に様々なデータ・プラットフォームが整備されているが、規格が決まっておらず国際的には競作状態である。
  • 地震時における大量の外国人や帰宅困難者をどう避難誘導するかはなかなかノウハウがない現状がある。このあたりについては、ICTが寄与するところはあると思うので、加速度的に対応していかなくてはならない。
  • 台風19号の際、江東区の人がどう動いたかNTTのデータを用いて分析を行った。本当に住民かどうかを確約するのは非常に難しいが、60万人の2万人が区外に移動したことが分かった。今後、そういう情報を民間ベースでやるのか、国レベルなのか、都レベルなのか、区レベルなのか、情報をどう生かし切るか、どうあれば一番有効に使えるかということを検討すべき。

以上

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