国土審議会

第2回長期展望委員会 議事要旨

<日時・場所>
 平成22年12月17日(金)10:00~
 中央合同庁舎第3号館10階国土交通省共用会議室
<議事>
・小泉政務官ご挨拶
・事務局から資料説明
・討議(以下概要)
○ 将来的には東海地震、東南海地震など巨大な地震災害が起きる可能性が高い。兵庫県南部地震、中越地震などの中規模災害も頻発する可能性があり、今後、災害発生
 のポテンシャルが上がると予想されている。これに対し、ソフト面や土地利用規制、文化・歴史など柔軟性をもって早い復興を目指す、「しなやかな対応」の議論がある。我が
 国の防災は国際的にも示していけるもの。
   地域防災力との観点で、生産年齢と高齢者を65歳以上を一括りに扱っているが、防災の面では高齢者であっても、少なくとも70歳代までの方は、知識・経験上期待できる。
○ 現在の建築基準では、兵庫県南部地震などの中規模災害であっても、関東地方で起きると被害額が大きい。今の建築基準は戦後の発想で、命が助かれば良いというもの。
 十分とは言い難い。命が助かるだけではなく、経済が沈まないようにするということも必要。個々の住宅の耐震性能を上げたり、街ごと耐震性能を上げたりすることによって、
 どのくらい被害額、経済被害が下がるのかの差を見せるといい。
○ もっと楽観的に見れないか。
   また、女性、高齢者が働き方を変えるとの話があるが、このことが持続可能なのか否か検討が要る。女性の働く時間が増えると育児・介護に支障。少子化も進む。その対策
 としては、現在、テレワークが活用されている。男性が育児等を代替することも不可能ではない。こうした点を書いていくべきでは。
○ 参考資料で示されているが、広域ブロック別の1人当たりGDPに激しい差。例えば中部圏はこんなに伸びるのか。
   産業構造の観点では、高齢者が増え、福祉に労働力をとられる中で、競争力のある産業に人がさけなくなるおそれ。建設労働者や農業者の減り方はどうなるのかなど、ミクロ
 で見た場合との整合性も考慮する必要。
   人口が減るのにCO2が減らないことが疑問。原油でいえば、50年前と比べてバレル10数倍の価格。原油のピークは既に来ている。50年後は全く違う社会になっているので
 はないか。原油価格はモデルにどう反映されているのか。
   不動産として持っている国富がどうなるか。地価の将来推計はできないか。
○ 全体の成長率は0.8%程度となっている。人口が減るため、1人当たりGDPは当然それよりも伸びることになる。地域を合計した将来GDPはその範囲に収まっている。原油
 価格の動向は推計に反映していない。
○ 無居住化の分析には驚きがある。ただ、実際には、各地域においては無居住化せず、「まだら化」との様相になるのではないか。また、農村地域、地方都市、大都市で影響が
 違う。面的に見ていくべき。
   高齢単独世帯が全世帯の2割を占める点も驚き。他方、農村部は早くからそうした状況ではあるが、現場とは違う状況。農業センサスでは、後継ぎが4割いるとのデータがある。
 ウィークエンドファーマーとして子供が手伝っており、高齢者は1人で住んでいない。子供との連携で住んでいる。このような、分離した家族との連携を何らかの形で織り込めないか。
   一極集中の要因分析はできないか。東京の人口増の寄与は、流入人口なのか、滞留人口なのか。
   また、集中が進むと、行政コストにメリットが生じ、政策も一極集中となりがち。分散によるメリットもみえるよう、ストーリー性についても留意して欲しい。
○ 国民に見て頂くとの観点では、「こうなります」と言っているが、「こうしよう」というべきではないか。
   国際的な視点が弱い。国土形成計画ではシームレスアジアが示された。外との関係性を述べることは圧倒的に重要。今回の資料では、周辺の国がどうなるか、海外からの
 投資はどうなるか、産業立地はどうなるか、など大きな部品が抜けている。
   人口しか見ていない。「内なる国際化」、活力のある国民か、との点が重要。日本からの留学生が少ない、若者の海外旅行率が低い、など活力の落ち込みの心配がないか。
 「人数が減る」だけではなく、そのクオリティーを見て欲しい。
   人口減少・高齢化、地球環境の変化、国際競争の高まりに対して、プロアクティブに対応する必要。例えば、大阪が沈んでいくと示すことがおかしい。「手を打つ」との点を意識
 した解釈を付け加えていくべき。このままでは国民はミスリードしてしまう。
○ 国土情報については、ハードと連携をとったソフトインフラの充実が重要。さらに、情報の蓄積だけではなく、分析に組織的な政策検討を加えてはどうか。
   また、情報通信については、どういったIC機器開発、技術開発が欲しいといった、環境整備を求めていくとの視点も必要。
○ これらの推計を「前提」として考えるのか、「警告」なのか、「願望」なのかを仕分けして考える必要。
   あまりにもここ50年のトレンドが続くと見ているが、むしろこの50年は異常であったと見るべきではないか。CO2についても、「増える」というシナリオがありうるのか。将来、
 石油・自動車がどうなっているのか。違ったシナリオがありうべき。欧州の先進国では田園回帰が起きている。サービス産業の立地と人口規模の関係については、これまでは
 規模の経済が発想の中心だったが、今後は範囲の観点でも考慮する必要。新しい概念、違う50年になるとの観点を出すべき。
○ 長期展望できると思っていることが楽観的。今後、ドラスティックな変化が起きる。インドネシアに対して、「50年後を・・」と投げかけたところ、海面上昇で国土が沈むため予測
 できないと言われた。また、メキシコシティでも、水資源でもたなくなる。臨界点が何かをみないと意味がない。
   日本の豊かさは、「ふるさと」があったこと。東京圏以外に地方圏も持っていたこと。将来、高齢者の過半が東京に住まうことになるが、大都市圏に住み続けることは豊かなこと
 なのか。別の観点では、例えば、家庭での料理時間が長いと幸福度が高いとは言えないか。女性の総労働時間を示すなら、男性が料理する時間を増やすと・・など、国民の変化
 を促すような示し方をすることが国の役割ではないか。
○ 文化活動は高齢人口に支えられており、文化にとっては高齢化はネガティブではない。ただ、80歳を超えると参加率が落ちる。それまでの方々は比較的アクティブであり、例え
 ば防災の点でも支援者側にもなれる。
   供給サイドの生産年齢人口の話はあるが、需要サイドの雇用はどうなるのか。雇用はその時々の生産年齢人口を満たすだけの状態にあるのか。例えば、グローバルに展開・
 雇用していく産業と地域の中に残っていく産業とを区別する等、ミクロの産業構造を分析することも必要。また、よく話題に上るクリエイティブ産業は、現状では不安定な就業状態
 であることも留意すべき。
   知識・付加価値が付いている人材、質的に高い人材を作っていくとの視点が必要。
○ 世界との視点が薄い。物流、人流の動向がないと長期展望ができない。人口が減少し、無居住地域がこれだけ出てきたときに、人の移動はどうなるか。空港・港湾はどうなるか
 の分析が必要。
   サービス業が伸びると都市が伸びる。では製造業はどうか、というとそうではない。例えばスイスでは、観光、精密機械の輸出、国際機関の誘致などで、山間部という不利な国土
 条件のハンデを克服してきた。どういう方向で国土をマネジメントするのかということ。
○ 全体として無理矢理予測している気がする。果たしてそうなるのか疑問。ダメになっていくとの国民意識がある中、どうしてもこうなるといった、確度が高いものを確定しつつ、明る
 い展望を出してはどうか。
○ 人口減少は確実な事象だが、それ以上に細かく、地域別に予測すること等は難しく、少なくとも、ここまで細かく出したものは無かった。高齢者の半分は東京、大都市圏に集まる
 状況は、アンビバレントさも産む。高齢者を活用した成長も可能だが、気の毒な高齢者をどうするかなど、対応不能の問題も確実におきる。福祉の形が問題になる。
   また、実際の無居住がどこで起きるかは分からないが、かなりの場所がそうなることは確実。まだら状という表現が適切。トレンドを追うとペシミスティックになるのは当然だが、そ
 うした時、国土の形、都市の形をどうするのか。ある種の考え方を示していくことが必要では。例えば、資料で示されているサービス産業の立地と人口規模の相関は、“現状”でしか
 ない。
○ 人口減少・縮小自体は不幸ではない。欧州の大国は5~8千万。オランダ、北欧はもっと小さい。人口規模と幸福は一致していない。ただし、変化の速度は問題。こうした中で、何
 とかなるもの、準備して手当てが必要なものを整理し、特定していく必要。例えば、出生率の問題もその一つ。そうした課題を整理した上で、それを乗り越える方向づけをして欲しい。
 その際、国際的な連携、アジアの中での位置を提示していく必要。
○ 今回の作業は、現状からのトレンドを淡々と推計したものであり、このまま推移するとすればこうなるというもの。そこから、「こうなってはいけない」と感じるものを課題として抽出し
 ていくのが今回の使命。大阪の話があったが、北海道はもっと激しく人口が減ること等課題として映るものを見つける作業。東京圏の高齢者の数もこのように改めて見せることに意
 味があるのではないか。
○ ここでの社会増減に関しては“トレンド”でしかない。「推計」や「予測」といった表現に注意して欲しい。国民に将来が予測できるという幻想を与えてしまう。
○ 次回は2月21日18時から。

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