国土審議会第1回推進部会 議事要旨

国土審議会第1回推進部会 議事要旨

国土審議会第1回推進部会 議事要旨
 
1 日時
 令和5年10月6日(金)10:00~11:30
 
2 場所
 中央合同庁舎2号館12階国際会議室(オンライン併用)
 
3 出席委員
 増田部会長、木場委員、越委員、図司委員、地下委員、高村委員、田澤委員、冨山委員、中出委員
 
4 議事
 (1)推進部会の進め方及び専門委員会の設置について
 (2)広域地方計画について
 (3)その他


主な発言内容(委員発言順)
(1)部会長互選結果の報告
 増田委員が部会長に選出された結果を報告。
(2)部会長代理の指名
 石田委員が部会長代理に指名された。
(3)議事
 議事について事務局より説明を行い、各委員から意見などの発言や事務局から回答を行った。各委員からの発言や事務局からの回答は以下のとおり。
 

(1)推進部会の進め方及び専門委員会の設置について
○日本全体として人口減少が一番大きな課題。中核市等だとまだまだ地域の中でできることはあると思うが、人口が少ない市がますます人口が減っていって、数万人単位になるとできることが少なくなってくる。
〇今回、地域生活圏としてより広域的に様々な行政ができるということは良い。その推進主体は行政だけでなく民間も含めたパートナーシップを作るというのは新しく、それぞれの地域でよい事例を作って、全国に広まれば良い。
〇国土形成計画の4つの重要な柱の中心に「地域生活圏の形成」があるが、東京・大阪間のリニアや国土利用・管理についても、今後の推進部会で具体的な施策を議論していくべき。
〇東北圏では、広域地方計画の策定後に大震災があり、計画を作り直した過去がある。南海トラフ地震は、今後30年以内に70%の確率で発生すると予測されている。何か起きたときにすぐに対応できるよう、計画に機動性を持たせることを念頭におくべき。
○農山村・中山間地では、ポストコロナの状況の中で、中止していた集落行事を区長や自治会長がどのタイミングで戻そうか非常に悩んでいると多く聞いた。2・3年やらなくなって歳を重ねられているので、戻そうかと言うと、もうやらなくてもいいのではないかと逆効果、むしろ衰退を促進するような話になりかねないと悩んでいる。相談相手、支え手となる地方自治体を強化していくのがいいのではないか。
○地方自治体は、新たな国土形成計画の推進体制の中で非常に要になる主体だと思う。移住・定住の話も含めて、現場を見つめながら、施策を取り込んで地域を開き、機動力を上げている自治体がある一方で、手詰まり感や諦めた様子で現場を見つめる目が弱く支え手としてパワーが落ちているような自治体も出てきている。
○移住・定住を担っていく外からの人たちの話も確かに大事だが、受け皿となる集落や自治体のマネジメントや官民連携の視点を組み入れてもらいたい。
○せっかく作った計画をどのように推進していくか。先日、経済同友会で黒田局長から全国計画について説明あったが、経済界からはここまでよく整理したという反応と、初めて知ったとの反応があった。広域地方計画の策定について、地域の経済界にもキーコンセプトを確認していくことや、自治体といってもレイヤーごとに考えなければならない点、地域生活圏の場合は官民パートナーシップという非常に重要だが難しい課題について、どのように丁寧にやっていくか共有しながら広域地方計画の策定を進めていくことが大切。推進部会においてもその視点を持って議論していきたい。
○9月8日の若者とのシンポジウムでは、参加いただいた若者は、固定観念が無いみずみずしい発言で、率直に自分たちが考えている未来に対する不安を隠さず発言いただいた。未来を担う子どもたち、若者たちのための未来の計画であるから、こういったシンポジウムは非常に有意義だった。
○広域地方計画はそれぞれの地域に応じた課題が抽出されていて、今後はその共通項以外の個別のところに対してどう広報をかけていくかということが実感を持って動機づけになって、さあ、ここを変えていこう、この地域を盛り立てていこう、となっていく。
〇今後の広報は、ターゲットを絞って、そこに向けてどうアプローチするかになってくる。
○国土形成計画ができて、これだけ早く広報に関して動き出している。また、これから10月、11月も様々なことを計画している。これは例を見ないほど省庁としてかなり積極的な広報の姿勢だと感心している。よりそれを濃密なものにしていくように皆さんと力を合わせて、広報に関わっていきたい。
○移住のハードルは高く、テレワークで仕事に対するハードルは下がっているものの、まだ難しい部分が多い。そのため、移住の手前の二拠点居住は重要である。
〇しかし、二拠点居住も家の購入費などのコスト面でまだハードルが高い。経済的に余裕のあるリタイアした人しか来られない状況。空き家をシェアできるスキームや、働く人に向けたコワーキングスペースの設置も必要。雇用されていて小さなこどものいる若い家族をターゲットにするなど、具体的なターゲットを設定して議論していただきたい。
○長期的人口動態については、生産労働人口の減少は衝撃的で、今後30年で見ると、現在既に労働の需給ギャップはマイナスの状態だが、さらに3割ギャップが出るという。
〇労働需給ギャップの拡大は、特に地方が打撃を受ける。東京と地方のギャップを埋めることも大事だが、埋められたとしても絶対的・全体的に不足している。地域のインフラや社会生活を維持するためには、地域住民が相当活躍しないといけない。地域の社会インフラの担い手の問題は、国土の維持と同様に相当深刻。
〇居住の二拠点化と地域のインフラの担い手の話は実は連動する問題で、二拠点居住する人が地域の活動に加わらないと、地域の社会、インフラが維持できない。そうしたことも考えなければ地域のサステイナビリティが土台で崩れてしまう。推進する過程では、それに対する方策も考えていく。その中で生々しい課題が出てくるが、こうした課題を踏まえて解決策を議論することが大切。
○国土形成計画のプロモーションについて、9月8日に大学(院)生との意見交換に参加したが、非常に新鮮だった。国土形成計画がこれから具体的に実現する時に1番関係する層だと思うが、広域地方計画に地域性を追求していかなければいけないときに、実現したときに社会の主役になっているだろう人たちの意見は、彼らの行動にどれだけ働きかけることができるのかが大切。
○今の生産年齢人口は1970年と同じ数だがGDPはその時から2.5倍にも上がっている。生産性の向上と全体的なボリュームが異なり、あらゆるところで人手不足が深刻化してくる中で、貴重なその世代がどうこれから活躍できるかと充分考えながら、やっていくことが必要。
○移住や二地域居住の話はこれからまた専門委員会で具体的に掘り下げていく。それと空き家の話があったが、現在850万戸ある空き家がこの先1,000万戸に近づこうとしている。しかし、実際には地方に移住した時に住む住まいとして提供できるものは非常にギャップがあり、かなりの地域で低廉な住まいが無い、足りないと話を聞く。空き家の多くの持ち主は、例えば仏壇等があり、他人に家を貸すことに踏み切れないということもある。
○家が必要な人たちと空き家をマッチングさせていくことも凄く大事な視点になるし、二地域居住の促進は観念的には非常にいい話。テレワーク拠点やサテライトオフィスを1,000自治体を超えるところが、政府の支援を受けて作っており、かなり利用されている。そういったところから移住につなげたいが大きなギャップがあるので、さらに具体的に突っ込んで利用者、移住者の立場に立っての議論などしていただきたい。
○広域地方計画について、北海道と沖縄の計画は根拠法等も異なるが、それらも含めて広域地方計画づくりの節目節目で、それぞれのブロックの広域地方計画がどういう形になっているか、どんなことが議論されているかなどの状況について、各委員にどのような方法でも構わないが共有していただけると、いろいろとフォローしやすい。

【事務局からの回答】
○幅広い角度からのご意見感謝。貴重なご意見としてしっかりと踏まえて取組んでいきたい。国土形成計画のプロモーションの話については、広域地方計画の策定プロセスの機会の活用も図りながら、国土形成計画でうたったコンセプトについて各地域における解像度を上げていきたい。また、計画の実装にあたっては、できる限り現場の実例を基本として採り上げながら、政策の企画立案に努めていきたい。

(2)広域地方計画について
○留意点として、シームレスな拠点連結型国土や地域生活圏といったコンセプトは共有されている一方で、一番難しいのは移住・二地域居住におけるコミュニティと地域生活圏がどのように整合していくか。伝統的なコミュニティが人口減少で成り立たなくなった場合にどういう再構築があるのか、広域で考えるにしても共通の課題。国交省としても横串で情報共有できる仕組みを作っていただきたい。
〇広域地方計画については、分かりやすく伝えていくための「広域連携プロジェクト」が重要となる。一方で、これを施策群としてブレイクダウンしていく際に、縦割りにならないよう、省庁横断的な形にすることを強調していく必要がある。
〇各地方ブロックで地域生活圏をの具体化を考える際に、何をもって「デジタルとリアルの融合」とするか、検討が難しい。地域生活圏が本当に成立するために、どのような「デジタルとリアルの融合」が必要なのか。ある程度、国が示さないと地方は大変かもしれない。
○広域連携の議論を生活の連携からビジネスに置き換えると、産業的広域連携の側面がある。特にこの話がフィットするのは地域密着型の産業である観光。日本の観光は広域連携がされていない。祭りや地域活動の維持の問題も、ある程度近場で連携して観光資源にすることで維持できる可能性がある。
〇ヨーロッパでは農業はある意味観光に吸収された産業になっている。その脈絡で、生活圏的な連携にビジネス的な連携が加わると、より実効性が出てくる。
○広域地方計画の策定に向けては、産業間連携の話が要になる。農業分野も物流の関係で絡んできて、観光分野もツーリズムで、そこを繋いでいくなど、地域資源を生かしていくときに産業との連携をうまく図っていかないといけない。農業サイドがその辺りがまだまだ弱いところがある中で、牽引役として、こうした計画で下地を作っていくことが大事だ。
○移住・定住のプロモーションが自治体ベースになっているが、いきなり移住者がこの自治体に移住したいとはならない。エリアとして、まずこの方向に移住したいなどで自治体を選んでいくブレイクダウンの発想になる。しかし、そこにうまくできていない自治体が見受けられている。発想が整ってきているところは、圏域や圏域の中でもブロックでそれぞれの地域性を出しながら自治体間連携をとりながら広く受け止めて、現場につないでいく発想がある。そのような発想を広域地方計画の中にうまく表現していくことが大事。
〇国土形成計画を実行性あるものにするために、広域地方計画はとても重要である。人口減少や巨大災害リスク、カーボンニュートラルなど、大きく状況が変化するなか、これまでの延長線で計画をつくってもダメだということを認識すべき。地域の多様性、独自性を活かしつつも、先を見据えて課題を設定し、方向性を示すべきである。
〇広域地方計画の検討においては「連携」が重要となる。各ブロックで、共通して直面している課題があるはずなので、うまく学び合い、情報交換・経験の共有がなされるよう事務局は配慮してほしい。
〇国土形成計画の検討の際にも各府省庁間の連携を重視したように、連携して相乗効果を上げてこそ、計画が現実的なものになる。各地方においてもそれが可能になるように配慮してほしい。
○デジタルとアナログの融合という施策の具体化が重要。地域にそのまま投げるのではなく、具体的なモデルや施策を各地域の特色を踏まえながら固めていただきたい。
〇若い方、女性、現場の方など様々な人の話を聞くことが重要。
○自治体の立場では、議会に諮る総合計画、都市計画マスタープラン等が大事に思われており、他の自治体との広域地方計画との連携の議論はこれまであまりなされてなかった。今回の広域地方計画の際には、自治体の政策と何等かつながりができる、議論の場になると良い。
○広域地方計画はそれぞれの地域の課題を抽出して、目標など様々なことを整理して行くものだが、意識として今ここで大きく転換、あるいは変えていかないと、10年後、20年後が変わっていかない。つまり、目先のことで少し今までのものをいじったような形でやってはいけないという局面である。危機感、切迫感をきちんと整理して、それをそれぞれの地域にあてはめて、後ろに回すのではなくここで変えようという意識をしっかりと持っていただきたい。
○連携や繋がりについて、圏域は必ず隣の圏域とどこも繋がっている。自分の圏域とプラスアルファで、お隣とともに何を一緒にやっていきたいのかを、それを積極的に明記していただき、認識を共有化してできると良い。
○ブロックと言いつつ日本全部繋がっているので、個別化と共有化との住み分けで、うまいコミュニケーションがとれるとより今回の国土形成計画が、地域においていい繋がりを持って進められると感じた。

【事務局からの回答】
○貴重なご意見感謝。9月の国土形成計画のシンポジウムでは学生に参画いただき、おかげさまで非常に好評だった。広域地方計画の策定に向かってこれから議論していくが、各地域における計画策定でもそういうプロセスを踏まえたい。自治体、有識者の議論に加えて、オープンな形で経済界、若い方々とも議論を交えて、未来を見据えた形で成果として取りまとめていきたいと思っている。

(以上)
※速報のため、事後修正の可能性があります。(文責 事務局)

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