国土審議会

第22回国土審議会・議事要旨

1.日時
令和元年6月7日(金) 15:00~17:00

2.場所
三田共用会議所 講堂

3.出席委員
奥野会長、古賀会長代理、石原委員、落合委員、小宮山委員、細田委員、小川委員、青木委員、伊東委員、大竹委員、沖委員、小田切委員、木場委員、木村委員、河野委員、高村委員、田村委員、柘植委員、津谷委員、中村委員、増田委員、八木委員、山野目委員

4.議事

 事務局から「企画・モニタリング専門委員会」、「稼げる国土専門委員会」、「住み続けられる国土専門委員会」、「国土管理専門委員会」、「スーパー・メガリージョン構想検討会」について審議状況の報告を行い、「国土の長期展望」及び「所有者不明土地問題に関する対応」について説明した後、意見交換を行った。主な意見は以下の通り。

(分科会、専門委員会等について)
・「稼げる国土専門委員会」、「住み続けられる国土専門委員会」では、コミュニティの重要性の議論がされた。地方に住むのは、所得以外の幸福感に影響するものである。人の幸福感につながる、健康等、最終的なアウトカムにつながるような議論をすることが重要。
・「稼げる国土専門委員会」で提示された「知的対流拠点」は重要で、ある程度の人材の集積が無い限り機能しない。地方の大学の存在は重要だと思う。
・スーパー・メガリージョンの形成は、地域独占になりやすい第3次産業の生産性の向上に寄与するだろう。
・「住み続けられる国土専門委員会」では、「活動人口」の重要性に着目し、「人口」というよりは「人材」という観点で議論してきた。今後は、「人材」に注目した国土づくりが重要であると考えている。
・ 女性の東京圏流入が過大に評価されていないか。東京圏の女性の地元志向が強いのではないか。地方大学の強化等の政策面でのカバーや、地方に女性が住みやすい要素があるのか等を分析すると良い。
・人材という点では、日本人は協調性があるというが一人一人の創造性を高めるべき。その意味で「ローカル版知的対流拠点づくりマニュアル」の活用状況に関心がある。
・国際化と人口減少を背景に、外国人による国土の所有のあり方についても検討して欲しい。・地方は出生率が高くても人材が都市圏へ吸い上げられている。国全体として、リニア等によるスーパー・メガリージョンの形成という大きな軸を作っていく一方で、人口の偏在を是正していく、国としての大きなビジョンの議論が重要。
・「コンパクト&ネットワーク」を議論する場合、「都会と地方」、「ミクロとマクロ」という対立軸で語られるのが課題だと思う。これを避けるには、「コンパクト&ネットワーク」を明確なイメージで語れるように海外の状況も踏まえ評価指標を策定すると良い。・SDGsの17の目標を経済、環境、社会の分野に大別し、それらが具体的にどう良くなったのか、という議論をする必要がある。その中で、外国人労働者が都会に集中することにはメリット、デメリットがあるが、それらの効果を指標でみれると良い。
・リニア中央新幹線の開通は、東京一極集中の緩和、地方再生の切り札であると思うが、スーパー・メガリージョン構想には地方再生の観点が弱い感じがする。本社機能の移転など引き続き議論して欲しい。

(国土の長期展望について)
・夢を描くのではなく、人口増加が見込めない中、教育、産業、社会保障等の各分野の観点もくみ上げ、幅広く議論する必要がある。
・テレワークやリニアによる通勤、空き屋の活用等を通じて、これまでの固定観念にとらわれない働き方、住み方ができるということが伝わるようにしてほしい。
・国土の議論では「総論賛成、各論反対」となる。
・「東京=人口増=勝ち、それ以外=人口減=負け」、これは単純な見方。人口増減だけでみるのではなく、関係人口等、新しい関係についても注視すべき。
・全国均質を目指すのではなく、地方ごとの特徴をとらえるべき。
・国家の百年の計を考える上で出生率は重要なファクターである。対流の促進がそれにどういう効果を与えるかについては非常に難しい問題であるが、これからも関心を持ち続けていきたい。
・対流が出生率に与える影響については期待するが、時すでに遅いという感じがある。相当なスピードで人口減少、高齢化は進むので、それを前提とする覚悟を決める必要がある。そのためには1人あたりの生産性向上、生活の質の確保に切り替える必要があると思う。
・「人口減少と国土の保全」に向けた日本の対応ぶりは、急激な高齢化が進む中国、韓国をはじめアジアの中ではこれまでに経験がないだけに、非常に注目を浴びている。
・2050年の課題解決に向けて、「新しい技術」の実装には過度な期待をすべきではない。また、若者を中心に人々の意識が大きく変化し土地と人間の居住が切り離された社会が想定されることに着目している。
・関西圏の首都中枢のバックアップ機能とスーパー・メガリージョンの効果を関西以西にどのように波及させるかが重要であり、そのためのインフラ整備や広域連携の促進が重要。
・スーパーシティやスマートシティなど未来の都市づくりを国土計画にどう反映するか、2025年の大阪万博会場は実証フィールドとしての活用を考えて欲しい。
・近年の気象災害の影響は大きく、震災のみならず渇水を含めた風水害等様々な災害リスクを想定し、長期展望を行うべきである。
・「22 世紀の国づくり」の提言を土木学会で公表している。これは本日の議論に沿った内容になっており、我々人生の目指す幸福とは何かを検討している。国家100年の計は「人材」育成、であるのに対し、1000年単位では「文化」の伝承と考えている。

(その他国土政策全般について)
・都市での生活には問題も多く、地方への憧れをもつ人は確実に増加している。地方移住の際に壁となるのが賃金や福祉であるので、政府がしっかりと支援をすることが必要。
・地域の消滅は仕方が無いと切り捨てると、移転経費等でかえってコストがかかる。国土政策として地域を守る方向を出すべき。地域の担い手となる若い人に来てもらっていろいろな仕事をしてもらう。このために、事業協同組合的なものを作って、そこの正社員になってもらい、賃金、年金も受け取れる仕組みを考えている。
・都市部でも空き家が増えている地域がある。一方で、都会の家は狭く少子化の原因の1つにもなっている。少子化を防ぐためにも、都会の空き家問題への対策は重要だと思う。
・通信環境をはじめ、フリーランスで働ける環境が整っていて、都会に住み地方で働くニーズも高まっている。地価も地方では低いため、そこに魅力を感じる都市の人も多い。セカンドハウスやセカンドオフィス等、多様な選択肢を整備することが重要。
・リニアのようなスピード感だけではなく、地域のローカル線など時間をかけてゆっくりやることにも価値観を認めてよい。国土の均衡ある発展には、こうした点もふまえ検討をしてほしい。
・所有者不明土地の課題は多いが、土地所有者の確定は日に日に難しくなる。所有者を速やかに確定するための制度や人材を整えることが必要。
・北海道全体が人口減少の中、札幌が道内の人口を集めている現状では、道内の各地域の厳しさは推して知るべし、である。スピード感を持って物事が進んでいくように取り組むべき。
・近年は相続等で山に関心のない森林所有者も多くなっており、ようやく最近、森林組合等に管理を委託できる制度が作られた。空き家等も同じような措置が必要ではないか。
・東京一極集中の問題は以前から指摘されており、国会移転についても議論がなされてきた。今、議論がないのであれば、他の方法で地方を潤すことを考えないといけない。
・住みやすいまちづくりと防災、減災の観点から地籍調査を進める自治体への支援を行うべきである。土地に関するトラブルの解決方策についても議論を深めて頂きたい。
・災害対策により、人が自然から切り離されるという問題があり、すなわち自然の脅威がより近くなる恐れがある。人々が自然に関わり、人が地方にきて居住するということが、安全・安心につながると思う。
・「まち・ひと・しごと」の総合戦略では、地元高校の活性化に着目している。関連して、地理総合の科目が高校で必修化される。これは、地域に関する学習であり、今後の国土形成、人材育成の一つのポイントがあると考えている。
・「国土」という言葉は、国民にとって分かりにくいものであり、議論の内容については、人々の日常生活にどう影響が出るのか、ライフスタイルの変化が分かるように分かりやすい工夫をすべき。特に、人口減少は他人事ではないことを理解してもらえるようにしてほしい。新技術の活用等についても同様。
・近年は甚大な災害が多数発生しており、南海トラフのリスクもある。今後はさらに国土の防災・強靱化を進めていく必要がある。
・現在は持続的でない自然環境の中にある。土地が自然回復した時にどのような生態系になるのか、というのは一連の実験によると、水田であると森林に戻りやすいが、畑地だと荒れ地になるということがある。
・エコツーリズム等、自然資源を観光資源に活かしていく必要がある。そのためにも、適度な人の関わりは重要で、人が自然に関わることへの支援も必要。
・想定以上の災害が起きることを考えると、それを新たなインフラで対応するのはコスト的に難しい。むしろ、既存の生態系を活かして「グリーンインフラ」を従来のインフラの外側に作ることで対応していくことも大事ではないか。
・所有者不明土地問題については、日本の国土の全ての所有者を把握することは不可能だと思うが、その前提の下で所有者の責務をどのようにするのかを考えていきたい。抜本的な改正を望む。
・管理が困難な土地について、地域の個別事情に即応するため、また、地域の土地利用構想に適合するようにするためには、地域の単位で国や地方公共団体が連携することが要請されるのではないか。

以上

※速報のため、事後修正の可能性があります(文責 事務局)

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