第23回国土審議会 議事要旨

第23回国土審議会 議事要旨

1.日時
令和3年7月2日(金)15:02~16:57
 
2.場所
中央合同庁舎3号館11階特別会議室(同会議室を拠点としたオンライン会議)
 
3.出席委員
永野会長、増田会長代理、石原委員、落合委員、小宮山委員、塩谷委員、福井委員、
末松委員、谷合委員、難波委員、二之湯委員、青木委員、石田委員、伊東委員、大竹委員、
小田切委員、垣内委員、木場委員、河野委員、髙村委員、田澤委員、田村委員、柘植委員、
津谷委員、中村委員、村尾委員、山野目委員、渡邉委員
 
4.議事
計画推進部会及び各専門委員会の審議状況、所有者不明土地等問題への最近の対応等について事務局から報告。その後、意見交換及び質疑の後、計画部会の設置等が承認された。委員から出た主な意見は以下の通り。
 
(計画推進部会等の審議状況について)
・コロナウイルス感染拡大によって、一極集中にブレーキがかかっているこの流れを進めるためには、在宅勤務の促進が必要。在宅勤務の進展によって、会社の近くに住むよりも、より広い家に住みたいというニーズが出てきた。地方でも仕事ができる環境を創出することは、地価が安い地方にとって人を呼び込むチャンスとなる。
・ワーケーションを促進することは、インバウンド需要の見通しが不明瞭な中で、地方経済にとって重要なものと位置づけることができる。
・サプライチェーンの国内回帰が進んでおり、グローバル化の負の部分の見直しが進むとともに、国内に需要をもたらし、地方創生の好循環となり得る。
・国交省としてコンパクトシティを進めてきたが、特に老朽化対策や空き家対策と絡めて、所有権とコンパクトシティ化の問題をどう解決していくか。何らかの方法を考えなければならない。
・次期国土形成計画では、農業自給率を向上させるなど農業の位置づけが重要。農水省と総務省の調査をもとに比べると、農業収入は2009年は卸・小売と同程度であったが、2018年は公務に次いで2番目になるなど、農業の重要性が高まっており、位置づけを考える必要がある。
・国土強靱化計画にもあるが、インフラ老朽化問題は今後5~10年で急速に進む問題であり、まさに、次期国土形成計画においても検討する必要がある。
・離島振興は、歴史的・文化的なものを承継していくという点で重要であり、今後も議論をお願いしたい。
・次の3つの投資がアフターコロナ、ウィズコロナ時代のインフラであると考えている。1つ目は、カーボンニュートラル。水素ステーション、EVステーション、海底の直流のケーブル、石炭石油から水素へ変えるための設備投資について、10年で20兆から30兆の投資が必要だと考えている。2つ目は、公共投資。国土強靱化で昨年、5か年加速化対策で15兆円の事業費がついたが、重要な柱として公衆衛生、公衆免疫、公衆医療のレジリエンスを高めようとしている。3つ目は、人材や人生への投資であり、これを世界で初めて開始しようとしている。
・絶対的空間的時間に基づいて俯瞰している誰かがいるという前提での計画論はそろそろ終わりにして、量子力学的な世界観に基づいた計画論で、都市計画や国土計画を策定していくことが必要。
・地域生活圏や都市のあり方については地方の実態を踏まえたリアリティが必要。人口減少下において、新たな計画策定の必要性には同意する。交通ネットワーク等にデジタルを活用し限界集落等でも暮らせるといった、地方にも夢のある計画にしてほしい。
・グローバルの観点からは、中国・東南アジアとの関わり方が重要。FDI(対外直接投資)の促進を推進する上で、外国人人材の活用は重要であり、そのためには学校・言葉・文化等の問題がある。これらについての整備は、地方の方がよりポテンシャルがあると思っている。
・国土計画の重要性は高まっているが、国民への認知度は高くない。時代の変化を好機と捉え政府一体となった実行性ある計画となるよう検討してほしい。
・国土の長期展望専門委員会の最終とりまとめにおいて、国土づくりの視点に「ローカル」「グローバル」「ネットワーク」とあるが、4つ目に「セーフティ」という言葉で明確にうたったほうがいい。あらゆる自治体は、災害に強いまちというものをテーマに掲げており、したがって「セーフティ」を前提として置くべき。
・テレワークなどの新たな生活様式も踏まえ、豊かさの見直しを考えていくべき。
・空き家などを活用しながら高齢者を孤独にさせない、みんなが集える、互助的な組織を作っていく取組を行うことも重要。
・SDGsは全ての国内施策の羅針盤であると認識しているが、日本は特にジェンダーの目標が遅れている。ダイバーシティはイノベーション創出にとって重要である。今回のとりまとめにはSDGsの観点が不足していると感じており、次期国土形成計画では、女性や若者の視点を織り込むことやSNSを活用した認知度の向上が必要である。
・カーボンニュートラルには地熱・風力などの再生エネルギーの活用が不可欠であり、この分野のポテンシャルは、都市部よりも地方の方が高い。一方で、景観・災害等の関係から、反対運動なども起きている。次期国土形成計画では、カーボンニュートラルとの整合性も検討する必要がある。
・国土の発展については、どの地域も置き去りにされない均衡ある国土の発展が必要だが、中山間地域で都市部と同じような行政サービスを求めているわけではない。各地域で生活を営む上での最低限の行政サービスは、国や地方自治体が保障することが重要。
・国土のあり様を審議するうえで、行政サービスの提供のあり方も密接不可分な問題と考えている。具体的には、平成の大合併の総括を行うべき。その合併によってどのような現象が地方で起きているのかを洗い出した上で、今後の国土のあり様を議論する必要がある。
・国際競争力維持のためには、各都市の魅力を活用することが必要。京都では景観・文化・観光が重要なリソースであるが、これは日本全体のリソースでもある。しかし、それらのリソースの保護や保全は地方公共団体の負担となっており、受益と負担のアンバランスが生じているため、国の財政支援が必要。
・デジタル技術の進展によって、二地域居住など地方を拠点とする新たな働き方・暮らし方が進展している。その中で、リアルでの関わり方が重要になってきている。交通ネットワークの整備を進める必要がある一方、地方の負担を考慮する必要がある。
・交通手段が限られ、路線の廃止が続くような高齢化地域にとっては、生活圏内の移動手段の確保は大変重要。デジタル技術の活用とともに、地域公共交通の維持や生活圏内の拠点を結ぶ交通ネットワークづくりに是非力を注いでほしい。
・自然災害から身を守るためにも、豊かな暮らしのためにも、レジリエントな国土の維持・管理・保全・展開が必要。地域が将来におけるレジリエンスの維持可能性を検討するに当たって、判断基準となる指標の構築が必要である。
・将来の大規模災害、津波からのよりよい復興を視野に入れた、事前復興計画という考え方を長期展望に入れるべきである。
・我々はコロナとサイバー攻撃に脆弱な状態であり、どう対処をしていくかが新しい国土計画にとって重要。ヨーロッパでは、徒歩15分圏内で最低限の用足しができるという観点から、「15分都市計画」、アメリカでは「アーバンビレッジ」といった言葉が脚光を浴びようとしており、個々の空間ユニットをどう作り込むかが重要となる。
・地域生活圏を技術の進歩によって、30万人から10万人単位としたが、さらにどう細かくしていくか。10万を有する自治体は10数%しかない。「連携」と言うことをキーワードに、DXにより地域生活圏の境界をどう越えていくかを考えることも重要。
・「デジタルを前提とした国土の再構築」という考え方には賛成であるが、それを十分に反映したとりまとめではないと認識。例えば、デジタル化の進展によって通勤・出張の機会は継続的に減少すると考えられ、これらを前提に交通ネットワークのあり方を検討する必要がある。
・国土強靱化のための首都機能バックアップについては、首都直下型地震などへの備えとして、早急に判断・解決すべき国家的課題であって、国土形成計画には地理的条件や都市の要件を踏まえて、地点や機能などの具体的な考え方が示されるべきだと考えている。例えば、人的・機能的に厚みのある東京以外の大都市圏に、副首都機能を設置したり、企業においては経営部門などの企業の司令塔的な部門を分散設置していくことを政府から推奨してほしい。
・関西には2府6県と政令指定都市が加盟している全国唯一の広域地方公共団体「関西広域連合」があり、首都機能バックアップとしては、広域で対応できる関西エリアがふさわしい。
・関西では都市OSの実装に向けて取組を進めているが、地域や分野、企業を超えたデータの流通連携には様々な課題がある。また今後、オンラインで様々なサービスが展開されるにあたり、サーバーインフラの肥大化に伴う電力消費量の増大、またそれに伴うCO2排出量増大が問題になる。カーボンニュートラル実現に向けた重要な課題である。こういったデータ連携プラットフォームや次世代インフラなど、環境整備が重要。
・次期国土形成計画策定に当たっては、長期展望委員会の「最終とりまとめ」ではなく、「中間とりまとめ」も参照することが必要。「中間とりまとめ」では、食料確保などのリスクや課題について強力に打ち出されており、「最終とりまとめ」と「中間とりまとめ」は大きく異なっていると認識。
・条件不利地域などの地方と都市部の格差に加え、過疎地域内での格差の問題も深刻となっており、要因や是正方策等について検討が必要。
・長期展望について、環境のつながりにも目を向けてほしい。生態系ネットワークは環境という観点でも、コロナ禍における移住を考えるうえでも重要で、また流域治水といった気候変動下における大雨に対する受け皿としても機能する。環境のつながりが防災や生活の質を上げるような形で検討していく国土政策にしてほしい。
・カーボンニュートラルの宣言以降、再生可能エネルギーを導入する動きは強くなっているが、それを自然環境豊かな場所に入れるという議論が増えてきた。緩和策を強めて再生可能エネルギーを導入することは重要だが、同時に適応策としてもマッチするような土地利用を考えていかなくてはならない。
・両専門委員会のとりまとめの内容は、計画策定の中で今後具体的な政策を検討・実施していくことになると思われるが、その際には、地域の多様な主体や関与、住民の参画・交流・判断等、住民参加のプロセスが必要。併せて、地域レベルの住民参加をコーディネートする専門のNGOの育成も含めて検討を進めていくことも必要。特に人口減少の地方部では意思決定メカニズムを機能させるのが困難となっていることもあり、丁寧な対応が必要。
・地域住民のITリテラシーの向上について。教育現場においては、IT教育をできるように教員養成をすることが喫緊の課題となっているが、民間企業の力を活用すべき。また、そういった民間企業と教育現場をマッチングする機関が決まっていないので、こういった機関を定めることが重要。
・自然災害の際に、情報をいかにして取ってくるかが重要。高齢者がスマホなどの機器を日頃から使えるように学ぶ場の提供が必要。その場合、会場は公民館で行われることが多いが、Wi-Fiの普及率が半分程度と聞いている。公民館は避難場所にも指定されているので、Wi-Fiの普及率を上げることも関係省庁と連携して取り組んでほしい。
・地域固有の歴史や文化、自然環境を活用することも重要だが、それらを所与のものとせず、文化をつくり、守り、継承していくといった、価値を維持するための投資が必要。また、文化についてはリアルの充実が重要であり、関心がある様々な人々が参画できる仕組みを考えてほしい。マンパワーを確保し、実行性のある計画にすることが重要。
・地方公共団体では、住民の生活を考え、日々災害に向けた準備をしている中で、5カ年の国土強靱化対策は重要なものである。例えば、倉敷市では、ソフトとハードが一体となり、ダムコントロール、農業用水やため池の活用等による流域治水への転換を行った。
・道路・橋・港湾等の老朽化したインフラの予防・保全・強化、区画整理・再開発・鉄道高架・市街地事業などを活用した災害に強いまちづくり、地方整備局の体制強化についても防災の観点から重点的な取組をお願いしたい。
・三大都市圏を中心とした稼ぐ力の強化、都市のリノベーション及び、東京一極集中の是正は、引き続き強調してほしい。
・地域生活圏におけるデジタルについては、具体的にどのようなことを行うのかを明らかにしないと絵に描いた餅となる可能性がある。自治体のあり方についても、もう少し広域な単位でものを考えてもよいのではないかという点も含め議論すべき。
・テレワークが進展しても、在宅と出勤が交互に行われるというハイブリッド型テレワークの場合、人の移動が都市部近郊に限られてしまい、全国津々浦々の議論とはならない。テレワークありきではなく、国土計画の下でテレワークがどうあるかを検討する必要がある。
・九州でも激甚災害が頻発していることを踏まえ、国土強靱化の5カ年計画も含め、安全安心の観点についての議論が重要。デジタル化の重要性は否定できないが、インフラ整備がまだまだであると認識しており、また、デジタル化が進展したから地方でも安心というわけではないという点は認識してほしい。
・コロナ禍で、心身の健康のためには自然公園等、身近な自然の重要性を認識した。併せて、高齢化が進展しても心身の健康を保つためには、社会の関わりを維持することが必要。そのためには歩行者等が安心して歩行できるような生活道路の構築等が必要。
・デジタルを前提とした国土の再構築については、ソフト・ハード面いずれでも課題が多いと認識。パソコンやインターネットへのアクセス含め、ハード面の整備は不十分であるし、ソフト面においても高齢化等によってITリテラシーの格差が生じている。これらの課題の検討に当たっては、データを用いて定量的に分析し、きめ細かい対応が必要。
・国土形成計画(全国計画)が国全体を規律する計画ということで細かな格差を見落とす可能性がある。細かな目配りと住民参加を促していくことが重要となる。
 
(所有者不明土地等問題について)
・所有者不明土地問題については、受取拒否等の問題もあり、今後一層、国や自治体の直接管理の土地も出てくる。所有権と土地管理を分けるような仕組みも必要だろう。
・所有者不明土地については、急傾斜地崩壊対策事業を実施するにおいても、妨げとなっている。登記義務化によって所有者不明の土地が増加することはなくなってきたが、地域福利増進事業における使用権の上限期間を10年から20年に増やすなど、見通しのある展開が必要。
・所有者不明土地の発生を防止する取組である地籍調査については、東日本大震災時に地籍調査の有無により、住宅再建やライフライン復旧に係る時間と費用に大きな差が生じたことが教訓になっている。今後、自然災害が想定される地域において、さらなる地籍調査の推進が必要であることから、地方自治体に対する支援をお願いしたい。
・今回法改正された土地基本法で、目標規定に「地域」という言葉が使われることになった。所有者不明土地特措法の見直しに向け、今後土地政策は地域主体となることを示す良いシグナルとなったのではないか。
・特措法における地域福利増進事業は、地域の再生・活性化を目的とするものであるが、事業の種類、対価の定め方など発想の転換に基づく見直しと、見直しを踏まえた運用も含め施策の展開がなされることを期待。当審議会の施策領域においても、参考になるものと思慮。
 
以上
 
※速報のため、事後修正の可能性があります。(文責 事務局)
 

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