1 日時
令和3年9月28日(火)15:00~16:58
2 場所
合同庁舎2号館国際会議室
3 出席委員
増田部会長、小田切委員、加藤委員、木場委員、桑原委員、坂田委員、地下委員、首藤委員、
末松委員、瀬田委員、高村委員、田澤委員、冨山委員、中出委員、中村委員、西山委員、
広井委員、福和委員、村上委員、諸富委員
4 議事
(1)国土形成計画及び国土利用計画の議論の進め方について
(2)その他
主な発言内容(委員発言順)
(1)部会長互選結果の報告
増田委員が部会長に選出された結果を報告。
(2)部会長代理の指名
家田委員が部会長代理に指名された。
(3)議事
事務局より議事について説明を行ったのち、各委員から意見などの発言があった。各委員から出た意見は以下のとおり。
○次世代通信技術や低軌道衛星などのプラットフォームを組み合わせることが日本列島のスマートアイランド化につながる。これにより、リアルとデジタルが融合した地域生活圏の形成、地域からの価値発信の拡大、個別最適化されたインクルーシブなサービスの提供、持続可能な国土管理等の実現が視野に入ると思う。
○国土計画の議論を超えるかもしれないが、グリーン・ファイナンスやトランジション・ファイナンスの拡大を利用して、地域において普遍的価値を体現する事業・サービスに対して資金を呼び込むという考え方もある。EUタクソノミーのような手法が日本でも導入されることになれば、産業立地や文化・自然資源の保護など国土計画上の価値実現の力になると思われる。
○国土計画は長期的なものであるため、現在の価値評価に合わせるのではなく、未来の価値評価を見越して考える必要がある。価値の中身の変化により、都市に対して地方が社会的価値を輸出超過する未来構造が考えられ、こうした国土の実現には、知的対流から知識結合へと進めることや地域にある多様性の価値化が鍵である。
○計画の実現には多くの人の共感を得ることが重要で、そのためには計画の中身だけでなく伝え方についても議論していきたい。取りまとめの文章を出して終わりだと勿体ない。厚労省、文科省、総務省、デジタル庁など、関係各省庁と協調することも重要。計画の中身が確定した後に、伝え方について、例えば若者向けにはNewsPicksのようなコンテンツのインフォグラフィック化が必要である、ということなどについても議論したい。
○10万人の都市を中核にしてネットワークでという話は、会津地方のスマートシティ化が該当すると思う。地域の継続のため、市民が自分の意思で自分のデータを提供し地域が活用する「オプトイン社会」を10年間推進している。
○観光の観点や防災の観点で見ても、行政区ではなく生活圏で物事を考えた方が正しいということがデータから導き出されたところ。購買・行動履歴データや人流データ、産業集積度、地方大学の立地等の係数をかけてみたところ全国で275のデジタル生活圏に分けられた。「人と国土」の9月号にも論説があるので参照してほしい。長期的に見ると、行政区ではなくこのような生活圏に基づく国土形成に向かっていくと思う。
○データに基づけば、人の行動範囲が明確に分かった上でコロナ禍等の有事の際の対策も立てられるので、データ駆動型社会のような考え方を国土形成計画に盛り込んでいただくことで、市民の活動と実態に合った計画になると思う。
○日本の所得低下の問題と国土のあり方には連関があると思う。日本の所得の低さは、観光業等のローカル型の産業群の所得の低さによるものが大きく、その要因は労働生産性の低さにある。労働生産性の向上には集住が不可欠で、今回の議論にあるような10万人程度の都市集約ネットワークを進めることで、そこに住んでいる方々の所得水準がどこまで上昇するのかをゴールとして設定すべき。集住拠点を物流、人流、データ流通でつなぐことで東京と変わらない集積効果が出ると思う。通勤は平均3時間の時間を消費するが、その間は生産性が上がらない。その点では、ローカルな地域密着の産業群にこそ労働生産性を上げる余地があると思う。所得、経済効果とひもづけた議論をしてほしい。
○南海トラフや首都直下地震が発生する可能性がある時代局面において、それらを乗り越えるためには、地域間やライフライン等の相互依存度が高くなってしまっている問題をどのように解消するかが重要。コンパクト+ネットワークでこの問題の解決をしようとしていたが、地震の問題を主として考えてはどうか。
○地震災害は減っておらず、民間が自発的に動くようにすることや被害の連鎖が起きぬよう自立分散型の国土構造にしていくことが必要。
○地震災害を乗り越えられるために、立地適正化と耐震化により地震被害を減らす、震災後の関連死をゼロにする、可及的速やかに復旧・復興することが重要。国土形成計画に一番関わりが深いことは早期の復旧・復興の部分。そのためには事前に対口支援をする自治体を決めておくことや災害時は被災地以外の建設工事を全て止めるくらいの覚悟が必要である。事前に南海トラフ地震での被害が予想される西日本の復興計画を作っておくことも必要だと思う。
○今後、発生すると予想される関東地震に備えて、その際に首都が被災しないようにいったん西に持ってきておいて、地震後にもう一度首都を戻すというような大胆なビジョンも国土計画を語るときだからこそ少し入れていただいても良いと思っている。
○テレワークは単なる働き方の一つでは無く、新たなライフスタイルの一つである。都市で働く人間がテレワークによって地方へ拡散すれば人口格差が縮小する。加えて、新たな物流や交通網が生まれ、医療や教育体制も変化していく。そういった変化・メリットを産むためにはどのような政策が必要なのかを考えていきたい。
○現行計画の「対流促進型国土形成」の考え方は今後も重要だが、地域間の対流を勢いづけるには、各地域に個性を持たせなくてはならない。
○今の国土形成の原動力として、ライフスタイルの変化が考えられる。未来の国土形成に向けても、ライフスタイル研究を進めていきたい。
○資料6の「国土形成の普遍的な価値目標」の考え方は素晴らしいと思う。しかし、リストアップするだけでなく、項目間での好循環を作っていかなくてはならない。
○国土管理においては地域管理構想が重要である。経済圏ではなく生活圏としてのコミュニティベースで地域のビジョンを考えるべきだが、都市も農村もコミュニティが弱体化しつつあるため、そこを踏まえた新しい手法が求められる。
○ゴールの方向性に大きな変化はないと思う。その上で、現在では資金がどこまで動いているかということがKPIとしてわかりやすいと感じる。投資額の対GDPの比率は、日本はOECD加盟国内で下位のグループに入っている。そもそも日本はリスクマネーが経済規模に比して少なすぎる。例えば、投資額の対GDP比でデジタル化、スマートシティを国土政策に生かすという視点でいくら投資されているかを比較すべき。経済効果や投資をKPI、アウトプットとして意識した話合いをすべき。
○中高生にもわかるようにするには「なぜ、いま、何のために国土計画を作るのか、今までと何が違うか」を明確にすることが重要。今までの計画と何が違うのか。本質的に違うものにすべき。
○近年のデジタル化によって国土デザインの考え方が、従来のそれとは変化しつつある。今後はフィジカルとサイバーの空間を平行に考えなくてはならない。
○アジャイルの視点が重要。今はまさに時代の転換点。国土への根本的捉え方が変動しており、計画策定後、数年で見直しが必要になるかもしれないという前提で議論していくべき。
○コロナ、人口減少高齢化、高度経済成長期インフラ老朽化、防災、カーボンニュートラルによる気候変動対策、同時にグリーン成長戦略で示される産業の競争力の問題として脱炭素化、脱炭素化に適応した国土の形成など様々な課題があるが、例えばインフラ整備の1つをみても長期的な視点での国土管理が必要となる。委員の共通認識かと思うが、国土計画はかつてないほど重要性が増している。
○これまでは、災害や感染症のリスク等を踏まえ、分散型国土形成や人口10万人規模のコンパクトな町のネットワークなどの重要性を議論してきたかと思うが、いま幸運なのは、国土の再構築を支援するような新しい技術ができていることかと思う。計画部会の役割には変化を踏まえた長期的な計画づくりがあると思うが、実際に計画が現場、特に地域で実践されるかが重要であり、計画とともにそれを可能にする仕掛け、計画を支えるインフラ整備などについて議論が必要。
○長期的な視点で大きく変えていくことを考えると、資料6の1[1]の「宅地、農地、森林などの目的に応じた機能の発揮」とあるが、土地の利用の在り方そのものについては、複数の副次的な目的で効率的利用するといった、これまでの土地の目的・利用の見直しが必要に思う。資料6の4[8]に「現在存続している生活圏が維持されていること」とあるが、既存する生活圏を今と同じように維持することを目的としてよいのか、これは再検討が必要かと思う。また、資料6の5[12]の「あらゆる産業が成長し継続していくこと」も同様の問題意識がある。さらに、8[18]の「地球温暖化の防止に貢献すること」については、当然異論はないが、2050年までの国の脱炭素化を担う国土形成という点では消極的な目標にも捉えられるのではないか。変化の時代に大きく国土を変えていくというもう少し強いメッセージを入れていきたい。
○カーボンニュートラルが必ずポジティブとは限らず、例えば瀬戸内海の石油化学コンビナート地帯のような地域は、カーボンニュートラルの流れで衰退するおそれがあり、ポジティブに水素やアンモニアを活用して新しい生産拠点としてつくりなおす必要性が出てくる。
○グリーン・ファイナンスやトランジション・ファイナンスにおいても、どういう地域が水素やアンモニアを活用できるといった方向性がないと安心したファイナンスができない。気候変動対策を踏まえた新しい国際産業力を生む産業立地のマスタープランをつくる必要がある。新しい国土計画に基づいた気候変動対応型の新しい新産業都市整備法があってもよいのではないかとも感じる。一方で防災時のことを考えると、水素やアンモニア一辺倒でいいかというとそこは検討が必要かと思う。
○今回、中高生にもわかりやすいようにすべきと委員から発言があり、この計画のスタートとしては期待がもてる。そのためには、課題と対応だけでなく、課題により何が起きるのか、その間の流れと物語を明確にわかりやすく提示する必要がある。
○日本という自国を知るためには、他国との比較でわかるものもある。日本が他国とくらべて何が良いのか悪いのか、客観的にみられるように意識してもらえるとありがたい。「日本列島のスマートアイランド化」との発言があったが、他国との比較によって「日本は島国だからこそエネルギーの面では大陸のように他国との間で融通が利かず、自立型分散型が必要である」ということがわかりやすくなる。
○SDGsは非常に重要。若者は世界の中で日本がこういったコミットメントをどれだけ真剣に取り組むかを見ている。最近は多くの企業でSDGsのマークを使用して取組をアピールしているが、国の計画においてもSDGsの紐づけを意識してはどうか。
○資料6の3「震災、水害、風害その他の災害 の防除及び軽減」について、感染症についても含めてほしい。知見やノウハウをコロナは国民生活や経済に多大な影響を与えているが、来年も長引くと思っている。
○防災対応についてはハードとソフトの両面で進めるというが、実際には警戒レベルがわからなかったり、高齢者が情報をつかむツールを使いこなせなかったり、ソフトの面で様々な課題が残っていると思う。相手に伝わり使いこなせる方向性で検討いただきたい。
○資料4の「人口減少に応じた国土の適正管理」の中の「国土の管理構想」について、人口減少下での国土管理は、国民に国土管理に関わってもらわないと成立しないので、小・中学校区などのような実情がわかる地域ごとに20~50年の将来像を計画・検討する管理構想をつくってもらいたいと考えている。市町村の国土利用計画があるが、それと並行・重複して管理構想も策定してほしい。
○生活圏を維持するための拠点は人口規模ではなく、周辺の圏域に対してサービスを提供できるかどうかということが重要。人口が10万人以下の都市でも持続可能な都市を成立させていかなければならない。その拠点都市が廃れてしまうとその広範な圏域が支えきれなくなっていく。デジタルのツールも重要であるが、やはり国土を担うのは人なので、人と土地とお金をどうつかっていくのかについて議論していただきたい。
○流域治水による住民の自主防災組織の支援やハザードマップの周知啓発、国や県から河川流量予測の情報提供を受けるなどソフト対策も意識をもって取り組んでいるが、ハード対策の力強さを実感しているのも事実。災害の事前防止・被害の軽減のための投資は中長期的にも重視、継続され、また精度が高まることを願っている。
○農地の荒廃をいかに遅らせることができるかが重要と考える。中山間地域等直接支払制度、多面的機能支払交付金は農地の荒廃を実際に10~20年と遅らせていると考えているので、これらの制度の活用を継続しながら農産物の付加価値化やスマート化、大区画化を進め、高齢化で離農が進んでも、少ない担い手で農地を維持する方策をとっていくことが重要であると考える。今後、より条件の厳しい中山間地の農業のスマート化、未整備地区の基盤整備が課題となっている。
○森林・林業については、国土の長期的な視点のもと取り組んでいくことが重要。また、脱炭素化にも欠かせない。雪国に適した樹木はブナなどの広葉樹であるが、現在植えられている杉が主伐期になっても伐採できず、広葉樹の植林もできない。林業のサイクルが成り立っていない。国土の広大な森林を伐採し、どこに何を植えるのかというビジョンを国が示し、継続的に予算を投じ、同時に担い手を育成することも重要。
○日本は人口減少と高齢化でナンバーワン。しかし、逆に考えると、日本の独自のモデルをいかにつくるかというポジティブな可能性があるということ。人口・経済の拡大から抜本的な転換が必要。そのためにはライフスタイル・価値といった視点からの議論も必要かと思う。
○「集中と分散」というテーマを掘り下げることが重要。地方都市のシャッター通りをどういう方向に転換し「シャッター通りゼロ」とするか。理念としては多極集中ということ。デジタル、エネルギー、医療・福祉しかり、産業構造の変化の中での新しい分散型の国土の姿が議論のテーマとなる。
○デジタルの先を見据えることが重要。17世紀からの科学のコンセプトが、「物質」、「エネルギー」、「情報」と移り変わり、次は「生命」だと考えている。デジタルとその先を視野に入れた国土ビジョンを考えていくべきである。
○次の世代にどうやって計画を受け入れてもらうかという視点を大事にするべきだと考える。次の世代が実行性を持って活動・行動してもらえるような形にしてほしい。小学生の頃から始まると思うが、ふるさとや地方の事を真にわかってもらうことが重要。
○全国計画の議論においても広域地方計画の視点にいれて議論頂きたい。
○外国人市民もいることから、中高生だけではなく外国人市民にも分かりやすい広報、発信も必要と考えている。
○原点に立ち返ると言うことで、資料5にある「普遍的価値」は、法律で定められている計画項目を改めて認識した上で考えられているものであるので、非常に重要。今後の部会での議論のベースとなる。
○実行する上での手法について、昔は政府による制御ができたが、現在は誘導、ガイド、提案くらいしか効力を発揮できない。様々な主体が納得しない計画に対しては実現しないということになるかと思うので、様々な主体が納得出来る計画であることが重要。そのためにも委員の皆様には、それぞれのお立場からの本音を聞かせて頂きよりリアリティのある計画としたい。
○エネルギーと産業の大変革、国土への影響を見定め、分析することが必要。
○エネルギーでは分散型エネルギーシステムへの移行がメインストリームとなってきている。北海道や東北エリアを中心に日本全国の海域で洋上風力が立ち上がる事となり、太陽光発電も全国で増えていくことが考えられ、新しい電力ネットワークが形成される。集中型から分散型に移行することになり国土計画への影響は大きい。
○産業構造では、有形資産中心から無形資産中心への産業転換がみられ、コロナ禍により飛躍的に進展した。デジタル化が分散化を可能にしていく。
○計画を作る上で、国民や社会に役立つ計画でなければいけず、国民の考えと遊離した計画ではいけない。最近は異論を認めない、包容力が薄れる傾向もある。そのような傾向に流されることはなく、言うべきことは言っておく必要がある。
(以上)
※速報のため、事後修正の可能性があります。(文責 事務局)