第3回計画部会 議事要旨

第3回計画部会 議事要旨

1 日時
令和3年12月20日(月)14:00~15:50
 
2 場所
合同庁舎2号館国際会議室
 
3 出席委員
増田部会長、家田委員、畝本委員、小田切委員、風神委員、加藤委員、木場委員、坂田委員、瀬田委員、高村委員、滝澤委員、田澤委員、中村委員、西山委員、広井委員、福和委員、村上委員、諸富委員
 
4 議事
(1)新計画策定に当たっての考え方
(2)ローカルの視点
(3)その他
 
主な発言内容(委員発言順)
事務局より議事について説明を行ったのち、各委員から意見などの発言や事務局から回答を行った。各委員から出た意見や事務局の回答は以下のとおり。
 
○特に東京のベッドタウン的な地域で大きな傾向にあるが、例えば茨城県や埼玉県の中で同じ地域に20年以上住んでいても県内で行ったことのない地域があるという県民の方も多い。埼玉であれば東京に向かって大きくは3本の鉄道が走っているが、それぞれの沿線の利用者は互いに交流はほとんどなく、共通して盛り上がれるのは池袋の話題である。地域生活圏というのを考えるときに、現状の人の動きがどうなっているのか、動態分析や位置情報分析などを活用し、そこに対してMaaSやデマンドバス等が将来的にどうなっていくのかということも加味して定義する必要があると思う。
○地域アイデンティティというものは、実は47都道府県が設定された時点で既に崩れていると各地域でよく聞いている。例えば県が分かれていても海を面して昔から交易などを通して交流があったり、同じ県内でも間に山があると全く交流がないということがある。例えば、福井県の嶺北は完全に北陸文化圏であり、嶺南は京都などの関西文化圏というふうになっている。また、茨城県の鹿島であれば、むしろ茨城県のほかの地域よりも千葉県の方と地域アイデンティティが近い。このような地域アイデンティティの観点も加味して地域生活圏を定義できればと考えている。
○会津若松地方でスマートシティ化を10年行ってきた中で、この地域生活圏という考え方は、住民主導のデジタルによる地域再生の観点から非常にフィットしているものと言える。行政区単位で生活しているわけではないため、会津の場合はエリアの全てのデータをオプトインで集めている。
○会津若松地方で地方創生の観点を非常に強く入れて取り組んでしてきたため、東京からの機能移転というものも中核事業で行った。ここからは今後の課題ということでの提案である。今現在、デジタル関連企業500名、約40社機能移転しており、例えば私の所属している会社は200名移転しているが、残念ながら50名が住民票を移しただけで150名は東京に住民票を置いたまま地方で仕事をしている。医療の問題や教育の問題などについて、レベルを上げてすっきり移転させられればいいが、複数拠点居住のままという方が相当数いると思われる。地域生活圏の検討では、人口のカウントがベースで議論されているが、関係人口のカウントをどうすべきか考える必要がある。例えば、会津若松市で500名機能移転を果たしたが、住民票は500名増えているわけではない。このような複数拠点の時のカウントの考え方を整理すべきである。さらに、例えば複数拠点居住を行っているが住民票が東京にある社員は、東京のみに住民税を納めているため、住民税の分納のようなことを今後考える必要が出てくるのではないか。ワーケーションのような複数拠点居住が進んだ場合の人口のカウントのあり方や税のあり方などが今後の課題になるのではないかと思っている。
○これまでの国土計画は、中長期の観点によるインフラ整備を中心とした国主体の計画だったが、今回提案されているものはあえて計画性を緩やかにして臨機応変さを持たせるとともに、民間のステークホルダーに役割を求めている点が大きな変化だと思う。前者については、日本は近い将来、フィジカルな国土とサイバー空間の二層構造で地域生活圏を支えることとなる。その二つの融合について、5年後、10年後を見通すことは難しいので、計画にアジャイルな部分を含めるのは妥当であり、必然だと思う。後者について、地域生活圏を支える要素は二つに分けることができる。一つは、ガス、水道、医療、学校、公共交通などの社会的共通資本である。これは程度の差はあれ、供給主体は民であっても官の関わりが出てくるもの。もう一つは社会的共通資本に含まれない、スーパー、飲食、薬局などのサービスである。これらは市場原理で動いているため、住民の数や地域の経済力に左右される。地域生活圏は、こうしたものがセットで成り立つものなので、地域に人を引きつける力と、稼げる力が備わっている必要がある。
○1990年代半ば、OECDにおいてナレッジベースドエコノミーが提起され、その後、時をおいて学習地域論という考え方が提起されたが、それにGX、DXという二大変革要素を加えて現代化した新しい学習地域をそれぞれのローカルに形成することが必要ではないかと思う。
○地方で安心して暮らし続けるため、点と点をいかに結ぶのかという視点が必要だと思う。地方から都市部への人口流出が言われているが、リアルにしろ、デジタルにしろ、多様な人が集まることで切磋琢磨することにもメリットがある。特に今回、デジタルによってこれまでよりもコンパクトな生活圏でもいろいろなことができる、ということを示していくので、その小さな生活圏をいかに結ぶのかという視点も大事だろう。
○資料4に連携が大切ということが挙げられているが、次回以降、いかに連携をするのか具体的に考える必要がある。
○前回の部会では「ネットとリアルとの区別」について、できることできないことを明確にして、その部分を見ていくべきではないかという意見を出したが、今回の資料ではその意見が反映されていると思う。
○今回の資料では「フィジカルとネット」という文言が使われているが、テレワークの世界では「リアルとネット」という文言の方をよく使っている。「フィジカル」と「リアル」とでは、「物理的」と「現実的」という意味の違いがあると思うが、今回の資料の文言とよく使っている文言との間で区別があるのか。
○前回の部会で、色々な地域に関して、リアルとバーチャルの建物でどのような街づくりができるかという視点から考えた方が良いのではないか、と提案させて頂いたが、イメージとして10万人都市や、他の町と合わせて10万人となる圏域に1つ、地域に必要なサテライトオフィスや大学、小学校、役場、介護施設を一体化した建物があり、そこでリアルなことをしつつも、あとはクラウド上の世界(メタバース)があるといったことができれば、まさにコンパクトとネットワークというのが実現できるのではないかと考えている。
○北見市の書かない窓口を事例に、今あるものをデジタル化するのではなく、利用者にとって使いやすくなるようデジタルを使っていくということが良いと思う。
○資料2-2 その他2について、広報について非常にきめ細やかに明記されていてありがたい。この計画により実行することによって、世界的課題である脱炭素問題やSDGsにどう寄与するかについて書き込むことができれば若い人も関心持てるのではないか。
○文化的な側面について、毎年自治体は環境や子育て、人権等の文化的なイベントを必ず行う。子育てイベントに呼んでいただいた際にイベントの定員は200~300人だが、その場で預かってもらえる子供の上限が10人程度など、結局は参加を諦めてしまうことが起きる。しかし、デジタルで講演を行うことにより自宅に子供といながらの参加ができるし、会場での発言はハードルが高いが、チャットを使用することで発言ができる。また、オンラインで開催することにより、ひとつの市町村だけではなく、1人の講師の講演を地域生活圏など複数の市町村で共有できるなど今後プラスになるのではないか。
○デジタル弱者を置いていってはいけないため、デジタル弱者への教育の部分も考えなければならない。現状デジタルを使いこなせていない高齢者への別の方法での周知、工夫も必要である。
○資料2-1、2-2に、新たな国土形成計画の策定にあたっての考え方を整理して頂いていると思うが、その中で例えば、資料2-2の6ページで社会の急激な変化としてデジタル化やグリーン化、災害、国民の安全・安心といった点を挙げていただいている。基本的な考え方として、これらの変化に臨機応変に対応するということに異論はないが、国土のあり方に大きな影響を与えるこれらの変化をしっかり見える形で書くことが大事ではないかと思っている。デジタル化についてはかなり踏み込んで書かれているが、グリーンやレジリエンスな国土についても基本的な考え方の中に書いていただきたい。レジリエンスな国土については地域生活圏が実現を目指す重要な価値である。またグリーンについては、最近であれば石狩市などは、再エネ調達をしたい企業や事業会社の要望に応えて再エネ供給する地域を作り、企業誘致の戦略の中に組み込むというようなケースもある。地域生活圏を支える産業や雇用を生み出す契機にもなるという意味で、やはりこの大きな3つの変化は見える形で基本的な考え方の中に書いていただきたい。同じことは資料3のスライド2の辺りの変化の書きぶりや資料4-1のスライド4の国土計画で考える背景と課題の書きぶりも是非そのように書いていただきたい。
○今後の論点として、地域を中心に考えたときに、多様な地域が自ら将来のビジョンと計画を作るという作業も非常に重要だと思っている。国土計画と地域の計画の関係、あるいは国土計画における地域の多様性をどのようにうまく反映していくのかについても国土計画の文脈で是非議論をしたいと思っている。
○地域生活圏を自治体の区画にとらわれない圏域として考えるということは良いと思う。
○国が作る国土計画なので、地域生活圏が政策のレファレンスポイント、参照先となるという認識をしているが、事務方は地域生活圏を、単にこういった圏域があるという事実確認ではなく、政策の働きかけを行うために設定する圏域だという認識をしているのか確認をしたい。
○地域生活圏について、どういうものを指すのかということがわからないと、政策は作れないと思う。今議論するタイミングではないかもしれないが、いずれ具体化するタイミングで、どのようなところを指して議論しているのかわからないといけないのではないかと思っている。
○デジタルの視点について、地域生活圏そのものは、デジタルの要素が無くても存在する概念となっていると思うのだが、地域生活圏という概念を導入した上で、ビフォーデジタル・アフターデジタルでどう変わるのか、という姿を示すことが必要ではないのか。
○政策のレファレンスポイントとして地域生活圏を設定するという前提に立つと、政策で働きかけた場合と、自然推移の場合とでどう変わってくるのか示すべきではないか。
○リアルの話からさせていただくと、地域生活圏に必要なものが満たされているとして仮定して、機能として平時のものと非常時のものとで違ってくると思う。まずは平時の想定で作られると思うが、その中に必ず非常時のものは織り込んでいかないといけない。特に現在災害が多く発生していたり、感染症もそうだが、思い描いたようにはうまくいかないということに直面しているため、非常時のことも考える必要がある。非常時のことについては超急性期のものと、今回のCOVID-19のように比較的長いスパンのもの、それら両方とも対応しなくてはいけない。そのため、ローカルの話題の中で少し先走りすぎなのかもしれないが、リアルのネットワークはかなりのマンパワーと設備を必要とするものであり、これらをどのように準備するのか。ステークホルダーとしては、民間ももちろん重要だが、今の非常時の状況ではかなり民間頼りのところが多いため、やはり公的で全体を見渡せる仕組みを作らないといけないと思う。そういう議論をどこかでしていただければと思っている。
○救急搬送にしても、地域によって格差があり、地域同士の連携も難しいので、医療に限らずリアルのネットワークを作って欲しいと思う。
○デジタルの活用というのは、女性活躍にものすごくつながると思っている。今、私どものところでは、厚労省の資格などを取るセミナーを工夫してリモートでやっているが、特にお子さんを持ってらっしゃる方は、今ここでしか参加できないと言って盛んに参加している。
○地域生活圏の中でやるべきこととして、「色々なことを考える」「主体をつなぐ」「実践して地域の稼ぎにつなげる」ということがあると思う。
○まず「考える」ということについて、小さな組織では考える力が不足しており、考える人を上手く見つけられるようにしていくべきだと思う。例えば、ワーケーション等を利用し、東京のシンクタンクで働いている人がふるさとの地域を持ってもらって、地域のために一緒に考えてもらう仕組みづくりも考えられるではないか。
○「つなぐ力」について、ステークホルダーがたくさんいてもバラバラになるので、その人達をつなぐことが必要となってくる。その幹事役は誰かというと、基礎自治体はその一つではあるものの、基礎自治体ができないこともあるので、地域のために一肌脱ぐという人探しが大事ではないかと思う。
○「リーダーシップを発揮して実践し、稼ぎにつなげていく」という機能については、企業をとりまとめている商工会議所に期待するところが大きいと考えている。
○「色々なことを考える」、「つなぐ」、「実践する」人が、ネットワーク化されていくことで、考えていることが実際に動くことになるのではないかと思う。
○適正な圏域設定について、今の整理では地域の歴史や地性、人々の交流のあり方という話がないので、そういったことも圏域設定において大事であるという議論があっても良いのでのではないか。
○地方分権あるいは広域行政というものをどう考えるか議論する必要がある。10年ほど前に道州制も含めて地方分権を進めるべきであるという議論があった。地方分権は大別すると2つあると思っており、1つは地方の自治体がより広域的に動けるような組織や連合体を作る、あるいはそういう機能を作り、国が持っている権限を委譲することによって、よりよい国土管理なり社会づくりを行うことである。この10年間に東日本大震災を経験し、またコロナも経験した。もし仮に、関西広域連合のように東北地方に東北広域連合があったとするなら、復興はより良くなったのかどうか。あるいは今回のコロナ禍の時に、広域連合のような機能が充実していたら良いことがあったのか。そういったことを考えていく必要がある。いずれにしても、自然災害も含めて危機の中にある我が国ということを検討する際に、危機に対して広域的な行政のやり方をどう評価して反映するのか考えるべきである。
○もう1つの地方分権はより小さい意味での地方分権である。7月に熱海で土石流があったが、開発行為のチェックや認可の権限は県が持っているものだが、静岡県は地方分権を進めているようで、市町村が権限を持っていることが多い。ところが、全国の市町村1700のうちの約半分は5人以下しか技術者がおらず、全体の4分の1は1人もいないという状況である。そういうなかで地方分権が正義であると言葉だけが踊り、市町村に様々な権限を委譲したものの、具体の仕事になった途端チェックする人もいないという状況に対して、我々はもう少し地方分権を単なる言葉の上での検討だけではなく、具体を伴いかつ実施できる余力がある地方自治体になっているのかということも含めて考えなければならない。この大きい視点と細かい視点の両方から、地方分権を国土形成計画でどうあるべきか言及する責務があると思っている。
○今回の国土形成計画の改定は、国土計画にとって良い意味でも悪い意味でも、クリティカルな状況にある。我が国が置かれた状況がクリティカルということでは悪い意味なのだが、良い意味としては、手段としてのデジタル技術というものを使うと、今まで諦めていた様々なことができるかもしれないと言う意味で、プラスの時期であるということである。ただし、もちろんデジタルは手段に過ぎず、今回の資料はまるで目的のように書いてあるのもどうかと思うが、とにかくそのような危機感があまり伝わってこない。もう少し危機感を鋭く出さないと弱い資料という感じがする。
○今回の資料は言葉が踊っている感じがしてしまう。フィジカル空間とデジタル空間を一体のものにして、デジタルとリアルを組み合わせるというような文章があったがよく意味が分からない。フィジカルの反対はメンタル、デジタルの反対はアナログ、リアルの反対はバーチャルであると思うが、3つの対応関係が入り交じっており、わからないものとなっている。もう少し普通の言葉を使って伝えたいものを伝えたほうが、国民が納得できるものになるのではないかと思っている。
〇1点目の広域行政については、特に危機の時には国の役割が非常に大きくなる一方、平常時の場合のまちづくりで自治体の力をどれだけ出していけるのか、このあたりを今回の計画の中できちんと示すことが大事だと思う。
○地域生活圏を考える場合、リアルなレベルでの都市デザイン、空間デザイン、まちづくりが重要であると考える。日本の地方都市に行って感じるのは、20万人以下の地方都市の中心市街地がシャッター通りになっているなどの空洞化である。場合によっては30~50万の都市でも空洞化見られるため、なんとかしないといけない。空き地、空き家の問題はあるがヨーロッパに比べてかなり違った姿である。対策の動きは各地で活発になってきていると考えるが、まちづくりのリアルな視点も重要。10万人という話が出ているが、日本の10万人規模の都市の中心部が賑わっている姿になるならば大変喜ばしいことだと思う。
○地域生活圏を定めることの効果、何が変わるのかがもっとはっきりしても良いのでないか。制度上、地域生活圏がどう位置づけられるかなどがクリアになると良い。
○地域生活圏について、もう一歩踏み込んでも良いと考える。岡山県津山市の事例でも見られるように、圏域はシームレス、ボーダレスになることが予想されるため、一本の線で圏域を引くことが難しい。現在、住民を居住ではなく関わりで把握する考え方が出てきている。最たるものが関係人口であり、ふるさと住民、ふるさと住民票もその考え方の1つ。居住よりもどのように関わりを持つのかで住民を把握すると、完全にボーダレスな圏域ができあがる。その上でデジタルとなると、出てくる圏域は相当緩やかなもの、多様なものになる。従来の国土形成計画で考えていた圏域とは別のものになるのではないか。また、圏域の中身、境界線も変わっていくとすると、圏域という言葉で良いのかという論点が出てくる。圏域の呪縛から離れて、シームレス、ボーダレスな集団、範域をどのように理解すべきかという議論に踏み込んでも良いのかもしれない。
○資料4の16ページ目に「リアルの機能の確保には利用者の密度も重要であること等から、「コンパクト+ネットワーク」の地域づくりを強力に進めていく」とあり、そのとおりだと思うが、一方でデジタルということで、低密度居住にも期待している。デジタルの可能性を考えるのであれば、一方的に強力に進めるのではなく、デジタル型のコンパクト+ネットワークを多様に進めるというニュアンスではないか。
○18ページに様々なステークホルダーについて書かれているが、ここに関係人口、あるいは地域関係人口という言葉でもよいと思うが、それらが含まれれば、シームレス、ボーダレスな雰囲気が出るのではないか。
○前回の資料と比較して、コンセプトや誰が担うのかということが明確になったと思う。
○将来的に、人口減少等の構造変化により公共サービス供給の担い手がなくなることが見込まれるため、自治体の境界を超えた圏域設定が必要という問題意識については非常に重要だと感じる。
○官民連携の重要性は、言い古されているが重要な論点である。かつて「新しい公共」という議論もあったが、公共の担い手は自治体だけでなく、様々あって良い。その点については、地方のガス会社は人口減少によりガス管の維持が厳しくなるなど、自治体の水道事業と同様の危機感を抱いており、すでに地域でも具体的な動きが始まっている。日本版シュタットベルケと言える米子市などは、官民連携の一例である。
○資料2-2にある資源の共同利用も重要だと思う。今後担い手も収入も減少していく中で、地域インフラをいかに維持するかを考えると、官民を超えた資源の共同利用が必要となる。ドイツのシュタットベルケでは、共同利用する仕組みの中に、配電線、インターネットなどが入っており、顧客管理、組織、システムも協働化して効率化されている。日本は同じ地域でも官と民のインフラがバラバラなので、共同プラットフォームを立ち上げて、資源の共同利用ができると効率化され、地域のインフラを支えていくことができるのではないかと思う。
 
○似たような議論を総務省としたときに時間を割いたのが「やらない議論」、過疎化が進む地方自治体の役割を考えたときに何をやらないかということも大事だという話だった。その点が、今回の資料ではあまり考慮されていないように感じた。例えば、人口減少が進むと、過疎地が増加していくが、それに対して国の政策としてどう考えていくのかがあまり触れられていない。ただこのことについて、ネガティブに考えるものでもなく、OSがアナログからデジタルに移行していく中で、遠隔診療やドローン物流などの話もあり、バランスを保ちながら公共サービスの議論が出来るのではないか。その点はもう少し踏み込んでも良いと思う。過疎が急激に進むことの議論は避けて通れない中で、OSが急激に変わることのアドバンテージを見出すべきだと思う。
○デジタル化について、国のICT政策の専門家からは、「デジタル化は供給側の論理が強くなるため、需要側の論理についてより取り組まないといけない」というコメントがあった。それを受け、少し前の街づくりでもあったが、技術は進展しているものの、地域住民がどれだけ活用できるのか、という課題があるのではないかと感じた。
○都市計画、国土計画のデジタル化の需要者は国民、市民であり、特に国土計画の場合では、メリットを享受してもらいたい先として、地方圏の住民だと思っている。その人達がデジタルサービスを受けて幸せになると言うことを打ち出すのが重要ではないかと思う。
○そのことを国土計画に反映するためには、「技術を普及させる」というアウトプット型の記載ではなく、「国民、市民が使う」というようなアウトカム型の記載をすべきではないかと考えている。例えば、資料4-1の13ページの「・・・日常生活に必要な機能をデジタルで享受する範囲を拡大させて・・・」と記載があるが、この記載であると、供給側の論理の書きぶりになっていると思うので、どちらかというと「より多くの人々がデジタルのサービスを享受する」というように、言い方を工夫して、利用者が便利になるということを強調できるような書きぶりにできれば良い計画になると思う。
○資料2-1などで示されている、多様なステークホルダーの連携・協働や役割の明確化は、非常に大事なポイントだと思っており、諸外国でも、より多様な主体を巻き込んで広域計画を策定し推進する取組が進んでいる。しかし、「ステークホルダー」という言葉は、一般の人にとってはややなじみが薄いのと、通常は利害関係者など今回よりもやや狭い意味で利用する用語だと思うので、「主体」などと置き換えて頂いてもよいかと思う。
○ローカルの視点について、村上委員と重複するが、地域と言っても人口動態、経済状況が様々で、安心して暮らしていくための投資については、無駄のない形で投資するのは難しいこと。いずれ8700万人くらいになっていく将来人口推計に基づいて投資していくのも一案ではないか。
○ICT基盤整備のための投資は、スケールメリットを享受するためにも、国が各地域の現状のICT基盤の格差も把握した上で、標準化に向けて投資を進めていくべきではないか。
○テクノロジーに引っ張られすぎないことが大事かと思う。デジタルを始め、テクノロジー自体は中立的なものだが、影響力は非常に大きいものである。例えば新幹線が導入されたときに、新幹線自体を整備することが目的化してしまい、そのあと、それぞれの地域への効果はマイナスであったところ、プラスであったところ両方あった。
○大事なのは、地域づくりで文化面も含めて、どれだけ豊かにするのかと言うことかと思う。個人的には、高齢者が増えてくるので、温かみが感じられる地域作りにつなげられるきっかけを、次の国土形成計画で作ることができればと考えている。
○今まで考えられなかったものではあるが、「サイバー空間」が大きな存在感を持ちつつあることを踏まえたとき、「圏域」という言い方はどうしてもリアルに引っ張られる意味合いを持っていると思う。「圏域」という言葉をそのまま使うのであれば新しく定義すべきだし、その議論をしていくことで違う言葉も考え出すこともあるかと思うが、言葉の話だけでなく、実態についても議論を深める必要があるのではないかと思っている。
 
(委員からの質問への回答)
○地域生活圏を政策の参照点となるようなものとして理解しているか、ということについては、地域生活圏は新たな計画の肝となるので、各省とも地域生活圏のあり方を議論していきながら、国土形成計画を実現していくための概念・ツールとして、政策の中に取り込んでいきたいと思っている。今後更に議論を深めていければと考えている。
○ビフォーデジタル・アフターデジタルについては、次回以降整理できればと思っている。
○今後リアルの空間のデザインについても議論が深まる形で資料を提供していきたい。
○関係人口について資料4-1の12ページに記載していたが、ご指摘等を踏まえて深めていきたい。
 
(事務局からの補足説明)
○第2回以降、事務局で議論しているのは同じところ。地域生活圏について、30万人が10万人になるだけか、日本全国全てが重複なく切り分けられていくのかなどと捉えられがちであるが、本当にそうかを内部で議論していく中で、どうもそうではないだろうという認識を持っている。圏域という言葉が相応しいのかも含めて整理の必要がある。
○次回、分野ごとの課題を提示したいと考えており、課題解決の道筋を考える上で地域生活圏がどのように関わってくるかを整理していくと意味づけや位置づけがクリアになるのではないかと考えている。
 
(事務局からの委員への質問)
○危機感について、もう少し詳しくご教示いただきたい。
 
(委員からの回答)
○危機感を持つものとしては、これまでにも取り上げられている人口減少やそれに伴う地方の疲弊、温暖化に起因する大規模な自然災害の頻発ということがまずあると思う。また、今回のコロナ禍では、例えば地方の公共交通は壊滅的な状況になりつつあり、更に、この20年では、日本の1人あたりの所得が世界で2番目だったものが、極めて低く世界の中で真ん中くらいになってしまった。色々な意味で、日本の生産力なり、働き甲斐なり、女性の社会進出なりがあまりにも惨めな状況にあり、これらに対しても危機感を持つべきだと思う。
○同時に、国土計画というものがこれらの問題に対して何がしかの貢献をしてきたことは感じているが、決定的に諸問題を解決できた程には強力なものではなかったと思う。例えば、東京一極集中や地方振興ということを常にあげつつも、決定打が打てずに同じ問題をずっと抱えてきたところがある。しかし、コロナを経験したことによって、日本のデジタル化が世界の中でも決定的に遅れていることや、世界一といわれていた医療体制がそうではなかったことが露呈し、これらに対する危機感を国民が共有し、改革しようという気運が今盛り上がっている。この気運を利用しながらデジタル技術も使いつつ、今まで解決できなかった東京一極集中や地方振興等の問題を、決定的になんとかしようという決意、使命感、そして実行力を持った計画・戦略の作成を、力を合わせてやっていくべきである。そういう意味で大改革が必要であるということを申し上げた次第である。
 
○財政制約が、国・地方どちらでも大きくなってきており、行政で全てを背負えるわけではないので、従来よりも誰がどういう役割を果たしていくのか明確にすることが重要になってきている。引き続き議論が必要だと思っている。
 
(以上)
※速報のため、事後修正の可能性があります。(文責 事務局)
 

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