第7回計画部会 議事要旨

第7回計画部会 議事要旨

1 日時
 令和4年3月23日(水)14:30~16:31
 
2 場所
 合同庁舎2号館国際会議室
 
3 出席委員
 増田部会長、家田委員、畝本委員、小田切委員、風神委員、加藤委員、木場委員、桑原委員、坂田委員、地下委員、首藤委員、末松委員、瀬田委員、滝澤委員、高村委員、田澤委員、冨山委員、中出委員、西山委員、広井委員、福和委員、藤沢委員、村上委員、
 
4 議事
 (1)防災・減災、国土強靱化
 (2)その他
 
主な発言内容(委員発言順)
 事務局より議事について説明を行った後、各委員から意見などの発言があった。各委員から出た意見は以下のとおり。
 
○テレワークは多方面から防災・減災にも資すると考える。第一に、被災者数を減らす効果がある。地方に人口を分散させることで被災者数を減らすことができ、都市部でも家族と就労者の距離を離さないことで、スムーズに子どもを迎えに行くことが可能であったり、帰宅困難者を減らす効果が見込める。また、経済被害を抑える効果もある。避難先でもテレワークを活用し、事業を継続することができる。コロナ禍においても、テレワークによってGDPのマイナスを抑えることができたというデータが有る。
○避難先の確保という面では、地域との連携や二居住といった観点が重要である。現在、テレワークは防災面においてはまだ重要視されているとは言い難い。テレワークは、人口の分散や、経済影響を最小限にしつつ、被災者自体を減らすという意味で非常に重要であることを、資料に記載いただきたい。
○日本政策投資銀行では2006年からBCM格付融資を実施しており、企業の防災取組や事業継続の取組内容で格付けをしており、累計で400件くらい実施している。格付けを得た企業でクラブをつくり交流会を開いているのが、参加してくる企業として50社くらいである。取引している企業が3,000社であることから考えると、比率として出てくる企業が少ないと感じている。
○企業間で防災に対する意識の格差がある。事務局から中小企業のBCPの策定率について言及があったが、大企業では7割策定している。だが、BCPの計画を策定していることと、実際マネジメントを行うことは違っており、十分なマネジメントができているとは言いがたい状況。
○地球温暖化の問題は全世界的に、TCFDということで、企業の財務に開示しなければならず、金融機関としても、担当物件が浸水した際の物理的リスクを対外公表しなければならないが、30年の間に70%の確率で発生する首都圏直下地震の影響については、開示が求められていない状況。
○各企業がなぜ大規模災害に対応できないかというところであるが、災害の規模が大きすぎて、一企業だけでは対応できない問題であると思っているためだと思う。首都圏直下地震や南海トラフ地震の確率について、経営陣は単なる事実としては把握しているものの、経営の中心課題としては認識していない。また、生産拠点のBCPは進んでいるように感じるが、首都圏直下地震によって、経営機能がダメージを受けた時のための分散化は進んでいないと思う。不都合な真実ばかりではあるが、そういったことを前提として、引き続き国からの注意喚起は必要だと感じる。
○昨今のウクライナの状況を見ると、いざというときのことをどのくらい心に置いているか、という点で我が国は心許ない気がする。BCPも作ることが目的になっているのが実態。きれいごとだけではなく、本当に成果をあげるものへ転換することが日本のやるべきことである。
○高層ビルは基礎をしっかりやっていれば地盤の悪条件そのものによって高層ビルが倒れることはあまりないと思うが、地震によって電力が途絶えるとファンクションが停止してしまう。本当の意味での脆弱性は、構造物の物理的強度ではなくファンクションが潰れるところにある。
○災害現象の確率表現を統一的にすることを、今回の国土形成計画でも言うべきではないか。南トラフ地震や首都直下地震は今後30年間に70%で起こるという確率表現になっているが、他の災害はそういう確率表現をしていない。
○新幹線や高速道路の高架橋が阪神淡路大震災で大きな被害を受けたが、それ以降補強、新規の設計、施工の仕方も大幅に改良された。直近の東北での大きな地震で、東北新幹線が損傷はでているが壊滅はしておらず、これは考え方や設計法、補強の方法が進化したから。一方で全然進化していないのが地震保険への加入率。何は進化したのか、何があまり進化しなかったということをはっきりさせることが重要。
○予防保全型メンテナンスについて、今までは事後保全でちゃんとやってきて、費用を少なくするために予防保全型に切り替えようと聞こえるが、実際はやるべきことが十分できているわけではない。そこは誤解のないように伝えなければならない。
○現在、地域的な集中に働く力と分散に働く力の二つがあるが、レジリエンスやBCPに加えて、最近出てきているSDGs、DX・GXといった力は、相対的に分散に寄与するものかと思っている。だが、なぜこの分散の力が現実に大きく出て来ないかというと、企業でも政府でも考える人が別で、それぞれ考えている内容を足し合わせて意思決定ができていないこともあり、仮に分散に働く力が新たに個別に出てきたとしても、大きな流れにならないためだと思う。
○サプライチェーンについて、現在、多くの企業は直接の取引先しか把握していない状況だと言える。先程の力の話と絡めて言うと、サプライチェーンは、レジリエンスやBCPに加え、グリーン調達、経済安全保障や人権問題といった事項とのオーバーラップが出てきており、こういった事項を全て合わせると、企業としてはサプライチェーンを直接の取引先だけではなく、コミュニティとして捉えてきちんと把握するという行動変容が出てくるはずなのだが、縦割りの中で大きな力として出てきていないところが課題である。
○特に減災という観点から見ると、ここ5年の中でスマート化が進み、取り得る方策が多角化してきている。東日本大震災の直後にも、携帯電話やカーナビから集めた情報を使ってリアルタイムに近い分析を行っていたが、現在はより多くのセンシングの手段が出てきており、それらを使って分析、対応できるよう日頃から用意することが考えられる。例えば洪水センシング、空間モニタリング、ヒューマンセンシング、AISを活用した海洋の情報等、センサーを使って得られる情報が急激に増えており、それを分析して、リアルタイムに近い対応が可能となるポテンシャルを手にしているということを認識すべき。
○BCPの内容は多岐に渡り、策定している企業でも一部の関係者にしか周知されていないケースが考えられるが、企業全体で意識の共有をすることが必要である。
○国や自治体と民間企業がどう防災やその後復興に取り組むか、また円滑に対応が進むよう全体を統括することも含め、担い手について検討する必要がある。
○DXや電子決済を推し進めていく中で、震災による停電などが起きても使い続けられるための対策も考えておく必要がある。
○戦後の自然災害による死者・行方不明者の推移は国土計画の歴史においても示唆的だと思う。一極集中の是正は国土計画において達成できなかったが、高度経済成長期は致命的な災害がなかった。阪神・淡路大震災は20世紀最後の国土計画である第五次全国総合開発計画の少し前に発生したが、第五次全国総合開発計画では復興の視点が多く記載されていた。また、21世紀になり国土形成計画になってからも、東京については、東日本大震災でも多数の死者を伴う被災はしていない。この間に、もし首都直下地震が発生していたら、全国総合開発計画や国土形成計画の評価は大きく変わっていたと思う。自然災害だけでなく戦災や疫病などのあらゆるリスクからみても東京一極集中はあらためて大きな問題である。国土強靱化計画もあるので、国土形成計画としては、空間的な視点、また中長期的な視点を中心に記載すべきである。
○インフラメンテナンスについて、コスト削減や効率的な管理という表現があるが、これだけでなく、インフラや施設の適正化や再編も大事になってくると思う。少し前には社会資本の投資でインフラを維持更新できないと言われていたが、この問題の本質は変わらず、むしろ深刻化していると思うので、もう一歩踏み込んだ議論が必要かと思う。
○資料を見る限り、国土交通省も防災において、インフラ等のハード面だけで無く、ソフト面にも注力しているのが伝わってくる。
○国民の意識についてだが、年々激甚化する災害の中、受け身では無く国民1人1人が主体的に情報を取得する姿勢を持つべきということを計画に入れた方が良いのではないか。そのためには、国がデジタルを活用してタイムリーに災害情報を発信する必要がある。例を挙げれば、大雨からのお年寄りの避難に向けて、お年寄りが使いやすい通信端末で、位置情報も把握しながら、避難指示を迅速に伝えるとか、家族の方も端末で避難状況を把握できるようにするといったことである。
○人々は24時間自宅にいるわけではなく、勤務先や出張、観光など、「その時の居場所に応じた自治体の情報を受け取れるようにすること、そういったサービスに登録すること」も必要なのではないか。
○デジタルが不得手な方のためにも、アナログ的な声かけなども大事である。自治体の災害対策については、それぞれの地域に合わせた対策が求められる。それらの対策も、常に新しい知見でマニュアルなども更新し続けていかなくてはならない。
○計画の議論の最初に「中高生にもわかるように」という提起があったが、「この施策はなぜ、どうして必要なのか」という動機付けが議論から落ちないように検討を進めていくべきである。
○減災のテーマで企業の経営者に集まってもらい、減災に向け何ができるか意見を出してもらったところ、それぞれの企業のリソースを使えば、減災の取組に協力できるということがわかった。だが、それぞれ自治体に話を持ちかけても、一企業のためにできない、前例がないからできないということで、ほとんどの場合で断られたということがあったと聞く。IT系のスタートアップ会社の経営者が、災害時緊急支援プラットフォームを立ち上げ、発災時にそれぞれのITのリソースやボランティアの人材配置ができるような仕組み等を提供したいと動いているが、その場合でも自治体一つ一つに連絡をして連携をしようとしている状況である。
○国でも防災プラットフォームをNPOと提携して実施しているが、企業とプラットフォームを作る際には、官が主導ではなく、民間から何ができるか出してもらい、それを実施するにあたって法律的は何かということを洗い出しすることが大事だと思う。
○企業との連携でもう一つ重要なこととしては、データの連携を早めにしておくことである。防災科学研究所のISUTなど素晴らしい仕組みがあるが、そこに企業がどのように連携ができるか考えるべきかと思う。そうすれば、企業がボランティアの人材配置や物資の最適配置、物流倉庫の利用などができると思う。
○防災、復旧、復興というフェーズを考えた時に、復旧の具体的なイメージを国土計画の中でも出せるよう、そのことを念頭において議論すべきではないか。
○復旧について、災害が起こった時に何からすることを復旧とするのか、企業の壁、部門の壁を越えてイメージできるような共通語を作るべきではないか。例えば、災害が迫ってくる時には、「警報」や「注意報」といった共通語はあるわけであるが、発災した後ではあまり共通語がないと思う。
○復旧については、ハードウェアの問題だけでなく、ソフトウェアの問題もある。復旧の段階では、企業も政府も普段のガバナンスとは違うことをやらざるを得ないが、大きい組織ほどそれを普段の指揮・命令系統で非常時の対応しようとしているので、そういうことではないということを意識すべき。いざという時に普段の指揮系統を切り替えられるかどうかということが、自然災害への対応に限らず、経営力と純相関にある。何か起こったときに切り替えられる企業が生き残れるという認識はすべき。
○目先のことに追われて防災に手が回らないのが実情だと考えるが、フューチャーデザインの視点が大事。事務局資料の「機能補完・機能分散型国土構造(仮称)」について、言葉は改善の余地があるかもしれないが、デジタルやエネルギーなどを含めてそういった方向性がコンセプトとして浮かび上がっており賛同するところが多い。コロナ後に行ったAIのシミュレーションでは、望ましい姿として「都市・地方共存型シナリオ」が出てきた。3百数十あるパラメーターの中で、そこへ向かうまでの重要な要因の上位4番目に防災関連が出ており、データ的な分析からも防災のプライオリティが大きいということが示されていた。防災だけを切り離すのではなく包括的なビジョンのなかで防災を位置づけることが重要。
○風水害に関しては、気候変動と結びつけることが重要。気候変動について緩和策と適応策の議論があるが、大きくいえば防災は適応策に入るものが大きいと考える。脱炭素など緩和策の関心も高まっているので、それらとリンクさせて議論していくことが大事。
○SDGs時代ということを考えるとグリーンインフラ、Eco-DRRの視点も重要だと考える。
○防災・減災、国土強靱化というテーマよりも国土計画における国土構造の提案が今議論されているのではないかと思っている。従来の国土計画の中でも防災・減災に関わるテーマ設定はあったが、とりわけ第3次国土形成計画においてはメインテーマとして位置づける必要があるのではないか。「機能補完・機能分散型国土構造(仮称)」について、この表現で良いのかも含めて深掘りの議論が必要と考える。
○社会企業論の田坂先生が考えておられるデュアルモード社会について、二者択一の社会ではなくパンデミックにおいてグラデーションとして考えるという発想だと思う。今回のパンデミックの中で日本のフードシステムが健全、安定的だったと言われている。これを補完したのは直売所であり、スーパーマーケットを中心とする大量流通とローカル流通のデュアルモードが機能していて、パンデミックの中で重心が少し高まったのだろうと言える。国土をデュアルモード化する、二者択一ではなくスイッチできる状態にすることが重要だろうと考える。つまりは都市の農村化、農村の都市化の両方を進めることだと思う。都市内の農地や農村部の都市機能が重要であり、国土のデュアルモード化というテーマが浮かび上がってきたのではないだろうか。ただし、冗長性(リダンダンシー)を備える必要があるため追加コストがかかるという問題もある。デジタル化によって追加コストをいかに吸収できるか、誰がそのコストを負担するのか議論を深めていただきたい。
○防災を考えるときには、政府による規制だけでなく、災害リスクを資本コストに反映させて、資本市場のメカニズムを生かすことも有効だと思う。保険業界では、気候変動のリスクを積極的にプライシングするようになっているし、世界でも議論が進んでいる。
○ロバストネスの話が多いが、リダンダンシーの視点も重要。資料2-1にネットワークの重要性、代替性、太平洋側と日本海側の役割などについて記載があるが、こういったことはますます重要になるので、今後どう書き加えていくのかが気になるところである。高速道路だけでなく高規格道路含めて国土の中でミッシングリンクをなくすということは、リダンダンシーを高めることになると思う。また、今後の中長期的な視点としては、鉄道が廃線になったときに、架線はなくなっても、線路は残しておくことで、貨物輸送だけは復活できるようにするといったことも含めて、リダンダンシーの確保が重要。
○前回の東北広域地方計画では、首都圏被災時に東北から首都圏をバックアップするという認識が弱かった。今後は、自分の圏域だけでなく隣の圏域をどうバックアップできるのか、特に、太平洋側をどうバックアップできるか広域地方計画において記載することについて、全国の計画の中に入れる必要があると思う。
○超長期ビジョンの問題としての人口減少に対して、DXイノベーションが次々と生まれてくることで、グローバルスケールでもローカルスケールでも、産業構造、社会構造が変わる。したがって、ポスト工業化がいよいよ日常に入ってくるわけであり、それを前提とした国土の再設計を行う必要がある。また、伝統的なインフラハードだけではなくソフト的な要素、プレイヤーとしては官民、民の中でも株式会社から学校やNPO、その他SNSを通じて個人も参画しやすくなっており、多層的多様的な参画者をどう機能させるのかが重要だと思う。特に、民間のプレイヤーを有効に機能させようと思うと、国土インフラの部分は外部性の罠にはまりやすいため、それをどう内部化するかという問題とそれが取り込めないところを公共財としてどうやって行くのか知恵の絞りどころだと思う。
○現実にどうしてもある程度の犠牲は出る。東日本大震災の時には、岩手県でバス会社に携わっており地震にも津波にも対峙した。また、福島県でもバス会社に携わっており原発事故にも対峙した経験があり、その状況で考えると、やはり現実は犠牲者が出るが、それをどのように最小化するかプラグマティックな議論をしなければならない。そこではある種とりあえず的な枠組みも排除せずにやらなければ、結果的に犠牲者が増えることになると思う。今回のパンデミックも含め、ややこの国ではきれいごと的な議論になっているように思う。一人も犠牲者を出さないためにどうすればいいかという議論になりやすいため、この先プラグマティックな議論でなければいけない。
○震災の時にも経験したことだが、この国には制度上の平時・有事のスイッチがないと思っている。要するに、制度上平時モードで有事に対応しなければならない。東日本大震災の原発での避難輸送の際、道路交通法上バス会社に対して輸送命令が結局出なかったために、貸切バスの契約で住民の退避を行った。例えば、運転手が被曝して病気になったり、亡くなったりした時には全てこちら側のリスクであり、このようにスイッチが入らない。やはり有事スイッチの作り込みは大事であると思う。
○先日は史上最高積雪を記録した。雪には慣れているが、高齢化が進んでいて、克雪力の低下も実感している。雪下ろしの担い手も不足し、そうした課題についてどうするか考えなければならない。
○分散型国土には大いに期待するところ、地方の仕事づくりや住まいについて政策を充実させたいと思っている。高校生が小学生に防災教育をするとか、そういった場をつくり、各省庁が話題にしていることはテレビやネットの向こう側の話ではないということを伝えている。当事者になっていくように政策をしっかりやっていきたい。
○現在の地震の予測では、発生するどれくらい前に国民に知らせることができるのか、研究に予算が増えたら予測精度を上げることができそうなものなのか。
○新型コロナ感染者の減少に伴い、テレワーク人口も減少する傾向にあるが、テレワークは常日頃からできる災害への対策であり、意識の変革が必要だと思う。コロナ収束後も、防災の観点からテレワークを推進するメッセージを出すべきだと思う。
○初動の応急対策は計画が進んでいるが、復旧・復興フェーズがうまく進んでいないという問題認識をもとに対策の方向性を示しているが、機能補完や機能分散型等の事前対策で被害を減らすといった予防的な位置づけのものが多く記載されている。福和委員の提起する日本復興計画やフューチャーデザインを事前につくるということは、災害が発生したらやることをあらかじめ計画としておくということではなく、事前に減災、強靱化対策をしていて、それが発災時に100%完遂されていなくても、その事前対策が災害のあとも進められるというかたちでよりよい復旧・復興につながるという位置づけかと思う。予防と復旧・復興は、国土の使い方や都市や市街地のあり方という意味ではセットであり、災害の発生のあとにやるものではなく、事前からやっておいて、助走をつけてよりよい空間づくりをしていくという予防も含めた形での問題認識の示し方の方がより良いのではないか。
○民間のBCP策定や耐震化の対策が進んでいないという点についてはずっと言われていることであり、民間の対策を進めるにはどうしたらよいのか、仕掛けの具体的な提案ができるとより望ましい。
○デジタル化やテレワーク、分散などについては、被害軽減やより早い復興に対して、よい方向性があげられているが、場合によっては弱点になるのではないか。例えばデジタル化は電力の面で脆弱になるなどと言われるように、今の方向性が良いとしても、それにより生じる脆弱性にも配慮する必要がある。
○防災・減災の課題については、国土計画でこれまで議論した分散型国土形成やコンパクト+ネットワークの国土のあり方と極めて関係が深く、分散型国土形成で各地域の強靱化を図ることができれば、様々な災害に対してロバストな国土をつくれるということになるかと思う。また、将来の気象災害のリスクを下げていくという意味で、カーボンニュートラルとの関係でも深く、国土計画との相互の関係で施策をうまく展開することで、複数の国土計画の目的の実現に期待する。
○地域がハザード状況を把握し、それを住民が理解できる知見が普及され、それにもとづき都市計画や地域づくりがされるのは重要であるが、地域や住民、企業に対してインセンティブを設けるうえで、保険の手法は先例も含めて検討すべき施策かと思う。アメリカの例だと、ハイリスクな土地に建設や事業を行う場合には、保険加入を義務付けて、そのかわり地域が国の定める防災・減災対策をした場合についてはコミュニティ認定を行い、土地買収や老朽化したインフラの強靱化について国から財政的な支援が与えられる。これに保険料を組み合わせており、こういった防災・減災対策を行っているコミュニティに住む住民に対して保険料の割引制度を導入するといった例がある。このような市場メカニズムを利用した官民連携は強靱な地域をつくっていく観点では検討に値する施策かと思う。
○コロナ禍で分散型の国土形成に対する社会的なムーブメントが出てきた。地方への移住促進や第2のふるさとづくりといった分散型の国土形成に関連する事業があるが、事業の魅力や意義を語るときに、防災減災で語られることはほとんど無い。防災減災はメインの目的にはなりがたいので、この社会的ムーブメントに防災減災の文脈を差し込んでいくことが重要。
 
(チャットによるコメント)
○テレワークは多方面から防災・減災に資すると考える。特にテレワークによる「人口分散」は、経済影響を最小限にしつつ「被災者自体を減らす」という意味で、非常に重要であり、ぜひ記載いただきたいと考える。
○防災性向上も意図した首都機能移転はその後完全に頓挫したが、本テーマの検討にあたっては白黒つける責任があると思う。また、災害が発生した後のバックアップも含めた広域的機能マネジメント体制の確立とともに、円滑な復旧・復興のためには国土管理体制の充実、例えば地籍調査の完遂、各種国土情報の国民的共有化、所有者不明が放置される土地制度の改善なども必要ではないか。
○制度的には用意されている「災害緊急事態」が、実際には東日本大震災でも阪神淡路大震災でも発令されなかった。制度設計とともに運用への認識が確立されていないように思う。
○東日本大震災後、各地、例えば沼津などで検討された集落の高台への事前移転などといった「事前復興」の多くが、結局頓挫した苦い経験もレビューしておく必要がある。
○現在の「防災」は、制度上基礎自治体が主たる担い手となっているが、地域生活圏との関係を考えておくべきなのではないか。
○大災害の予知・予測については、かつて東海地震を対象にして膨大な研究開発費が投じられ、しかしうまい結果が出せず、結局東日本大震災後放棄された「地震予知」が想起される。
○治水対策は国・自治体がお金をかけ計画的に進めていることにより、死者数は減少している。ハード整備には財政的に厳しいところもあるので、流域治水事業はしっかり進めていく必要性を改めて実感した。また、企業とともに進める耐震化について、地方は中小企業が多いのでなかなか計画的に進捗しないのが実情。商工会議所等と情報共有し、連携するための仕組みづくりが必要。
 
(以上)
※速報のため、事後修正の可能性があります。(文責 事務局)
 

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