第10回計画部会 議事要旨

第10回計画部会 議事要旨

1 日時
 令和4年5月16日(月)14:30~16:36
 
2 場所
 合同庁舎3号館11階特別会議室
 
3 出席委員
 増田部会長、家田委員、畝本委員、海老原委員、小田切委員、風神委員、加藤委員、木場委員、久木元委員、桑原委員、坂田委員、首藤委員、末松委員、瀬田委員、滝澤委員、高村委員、田澤委員、冨山委員、中出委員、西山委員、広井委員、福和委員、藤沢委員、村上委員、諸富委員
 
4 議事
 (1)デジタル田園都市国家構想の紹介
 (2)中間とりまとめに向けた整理
 (3)その他
 
主な発言内容(委員発言順)
 事務局より議事について説明を行った後、各委員から意見などの発言や事務局から回答を行った。各委員から出た意見や事務局の回答は以下のとおり。
 
○女性活躍の視点を盛り込んだ点については賛成だが、女性活躍を単体の議論とするのではなく、デジタル田園都市国家構想のすべての側面において、女性の一定の比率を担保するという側面を国交省のプロジェクトの中に内包していくようなアプローチをすべき。例えば、交付金を使うとき女性の比率が担保されているかを大きな条件または加点の材料とする、というアプローチを実施するような議論をしていただきたい。
○これまでの部会でテレワークの重要性について言及してきたつもりであるが、今回の資料で一言も触れられていないのが残念である。改めてテレワークの重要性について申し上げると、地域生活圏に関しては、デジタルとオンライン・ネットワークは違うものであり、現在、施設や設備をネットワーク上に置くメタバースが注目されており、まちづくりに非常に関わりがあるものである。女性活躍に関しては、女性が地域から出なくてもやりたい仕事に就く、あるいは東京で就職しても地域に戻って子育てをするといった際の答えのひとつがテレワークではないかと思っている。二地域居住に関しては、先日石垣島と二地域居住したいという若い夫婦と話す機会があったが、旦那さんがテレワークで仕事ができるということで、奥さんも含め二地域居住しても仕事を続けることができると言っていた。確かに夫婦のどちらかがテレワークをすることで二地域居住の可能性も高まると感じた。国際競争力に関しては、テレワークによって確実にビジネス展開がしやすくなっている。小さい企業であっても海外に支店を展開できることにもテレワークが寄与している。交通ネットワークに関しては、テレワークによって出張や出社が減ると当然交通の形も変化するため、ぜひこうした視点も持っていただきたい。
○巨大災害に関しては、以前の部会でも申し上げたがテレワークによって災害時の被害を最小限にできるという視点が重要ではないか。カーボンニュートラルに関しては、その方向性を検討する上で、交通ネットワークの変化も考えるべき一つの要素ではないかと思う。国土利用の新たな方向性に関しては、人が安全な地域で暮らすためには、仕事に縛られてはいけない。これらについては、今のことだけでなく、未来のことを想定したものも組み込んでいただきたい。
○デジタルを活用した地域生活圏について、デジタルですべてが上手くいくかのような幻想は間違いである。地域生活圏は大いに進めなければいけないが、その時に必要なのはコンテンツとそのマネジメント、デジタルに代表されるようなツールとプロシージャである。コンテンツとそのマネジメントは、地域の創意や自主性とか、地方分権的に進めるのが当然。ツールとプロシージャは国が全国的に統一的にやることにより、それを土俵にして、各地域が創意工夫できる。ツールとプロシージャの全国的統一性と、コンテンツとマネジメントの地域独自性の2つを、明瞭に区分すべき。
○資料2の5ページの交通ネットワークについて、現時点まで国防を交通と繋げる習慣がなかったが、北欧の交通政策を見ると、ネットワーク整備は自然災害上の危機だけでなく、国防を常に意識しなければならない。北海道のオホーツク海側は全く幹線道路が通っていないため、有事の時に住民を避難させられるか心配である。一言でいいので、国防というキーワードを5ページの下に入れるべきではないか。政治家の先生も、軍事施設を確保するだけでなく、逃げられる対策が大事と言い始めている。
○カーボンニュートラルを進めるには、電力の供給体制が決定的に重要。電気自動車を進めつつあるが、その電力はどこで誰が、どうやって作るのかが難しい。エネルギー需給、食料需給、カーボンニュートラルの全部の話が合うように進めるのが国土計画であるという意識があまりにも少ない。特にエネルギー供給については、一歩も二歩も踏み込んで書かないといけないのではないか。
○首都直下や南海トラフなどの新しい災害を色々想定すると同時に、今まで起こった大災害にどう対応してきたか。これについて納得できると国民に思ってもらわなければ、次の災害にも備えることができない。中間とりまとめには、福島復興は全国の国土計画の問題でもあり、国が全面的に協力し、首都圏も協力するし、東北圏も協力するという感覚を入れていただきたい。
○デジタルは手段であって、それによって実現される都市像や地域像のイメージが明確ではないように思う。地方都市の空洞化を直視したうえで、どう立て直していくか、本格的に議論して行く必要があると思う。地域の雇用を含む経済循環といった産業構造論と、まちづくりや都市デザインといった空間論の視点を統合したアプローチで深掘りしていくことが大事ではないか。
○例えば、第7回計画部会の議論で提示された「機能補完・機能分散型国土構造(仮称)」のように、全体を貫く理念やビジョンが必要かと思う。SDGsの時代、人口減少が進む時代であるので、人口や経済の拡大成長よりも持続可能性に軸足を置いた国土のビジョンへの転換が重要ではないか。
○強靱化の観点でいうと、分散化をすることと強化をすることの2つの視点が必要であるが、今回は分散という点については比較的述べられているが、強化についての視点が弱い印象を受けた。インフラとライフラインの中でなんとしても強化しないといけないものは何なのか決めなくてはならない。すべてのインフラとライフラインを維持できないため、必ず維持しないといけないものはどこまでなのかということをきちんと書いていくことが必要である。また、財政難の中ですべてに対応できず、民間の力を借りてでも強化をしなくてはいけないのであれば、そういった方向性を示すことがインフラやライフラインの維持において大事だと感じる。
○国でできることだけをやるというのでは不十分で、民間側の強靱化をしなくてはならない。そのためには、民間が強靱化できるような耐震化に関する補助の在り方を検討することや、住宅の集団移転だけでなく企業の集団移転の問題についても国交省として踏み込んでいく必要があると思う。
○地方をより良くしたいという視点で申し上げたいが、地方に住んでいると、国の縦割りが地方において目立っているように感じている。地方で省庁横断的に動ける役所の仕組みがあるとよいと思う。また、女性が地方で活躍するためには働きやすい場所が必要である。働きやすい場所というのは、シンクタンクや大学等の組織になると思うので、そのような職場が地方に根付くことを一緒に考えていただくとよいと思う。
○地震発生時の自動運転車の制御の問題について、あまり検討されていないように思う。例えば、緊急地震速報を活用して自動車を安全制御する方法などを考えておかなくてはならない。また、地震が起きると地殻変動が起きるため、位置情報が変わってしまう。そういった際にも使える自動運転の技術を日本で開発しておけば、今後ビジネスにもつながると思う。
○女性活躍への対応方法として3点挙がっているが、地域生活圏のところではデジタルの発想もセットで進めていくと書かれているものの、女性活躍のところにそれが書かれていないので、記載した方がいいのでは。また、二地域居住のところで、関係人口の候補として生きがい探し、ふるさと探しの人が候補になっているが、普段そういったことを意識していない人も取り込めるような工夫が必要ではないか。そういったことで関係人口をもっと増やしていけると思う。
○資料2について、[6]だけ巨大災害に強くしなやかな国土構造の実現とカーボンニュートラルについて、少しランクが下のくくりになっていて、2つ合わせて[6]として、「民の力を最大限に発揮し、官が支える国土構造による経済成長の実現」という表題がつけられている。「民の力を最大限に」、「経済成長の実現」という枠組の中に、巨大災害対応とカーボンニュートラルが入っているのかが疑問。[1]の地域生活圏の実現というところにも全員野球という形で、多くの主体が関わるということがうたわれているし、他の項目でも民間の力を最大限に使うということは範疇外ではない。
○今まで、地域生活圏という日本語から考えると、何らかの圏域を示しているものだというイメージだが、今回示されている定義だと、「暮らしに不可欠な諸機能が将来にわたり維持向上されている姿」が地域生活圏と呼ぶとなっていて、その維持向上されている姿だけ考えると別に圏域割されていなくてもよくて、そうであれば全国全体が地域生活圏と言えなくもない。そもそも地域生活圏は圏域区分ではない、ということを言っているのだろうかという点が疑問。
○全体像で、デジタルが一番でその上で生活者目線、横串とか全員野球というコンセプトが表示されていて、すごく良いと思ったが、資料2の8ページの国土利用の新たな方向性ではDXを前提とした国土利用となっており、説明文にはデジタルを前提とした発想への転換とあるが、他の委員がおっしゃったようにデジタルは万能ではない観点もある。
○Web3.0やメタバース、仮想通貨等が出てきて、成長している時代においては、パラレルワールドとしてのデジタルを意識する必要があり、リアルあってのデジタルだというところを、全体として分かるようにできると良い。
○生活者というワードについて、今まではその自治体に住民票の登録をしている人だったが、今後、生活者の定義におそらく関係人口や二拠点居住者が入ってくるので、概念が広がってくる。そういった点も前提として含めてまとめられると良い。
○デジタル、二地域居住、稼ぐ力、交通確保、市町村・地域管理構想、DXを前提とした国土利用いずれについても、単なる地域ごとの人口動態を把握することだけでは政策立案に不十分である。例えば、ある地域の住民の年齢構成、性別、職種などだけで各論点において具体的な政策介入のデザインにつなげるのは困難。動的な観点からの随時の計測とビジュアライゼーションが必要だと思う。行政が保有するデータで不可能なのであれば、携帯電話の位置情報、電力ガス水道の利用履歴、給与、社会保障のデータ、金融機関の口座情報などのあらゆるデータを組み合わせ、その変化も含めて総合的に把握する必要があるのでは。
○資料3のデジタル田園都市国家構想基本方針(骨子案)で、結婚・出産・子育ての希望をかなえるとあるが、中間とりまとめではもう少しこの部会での議論の内容も盛り込んでいただきたい。母子オンライン相談や母子健康手帳アプリを例示として挙げているが、それだけでは少し物足りないように感じる。
○デジタル化によって、女性が切れ目なくキャリアを続けることができたり、都心から地元に戻り子育てをしながら仕事が続けられたりというメリットが挙げられるが、その際にどうして女性の話だけになってしまうのか疑問がある。盛んに男性の子育てや家事の協力ということを掲げながら、一方で男性も利用できる仕組みづくりがなければ、あまり今と変わらないのではないか。このような議論の際には、今の管理職世代だけではなかなか話が具体化されないと思う。若い世代では、男性の育児参加や育児休暇の話題について非常に熱心であるが、管理職世代の立場になると経営上や職場の人事等の面でなかなか踏み出せないところもあるため、女性活躍の議論に、若者、特に男性の意見も取り入れられると良いと思う。
○今回の国土計画の議論を貫くデジタル化において、電力は非常に重要な問題である。最終目標はカーボンニュートラルの実現であることは間違いないかと思うが、それまでのエネルギー需給をどうするのかもう少し盛り込んでいただきたい。エネルギー資源の乏しい日本において、デジタル化を進める力があるのかについて言及した方が良いかと思う。
○資料2の1ページの地域生活圏の実現の一番下の箱の中についてだが、[1]生活者の利便を最優先する視線、[2]分野の垣根にとらわれないこと、[3]全ての関係者による協働、[4]デジタルの発想、この4点は非常に重要である。地域生活圏だけではなくて、残りの7つのテーマでも共通して大事に扱っていくべきものだと思っている。振り返ってみるとこの4つの視点はどこでも必要である。特に私が申し上げてきたのは、やはりこの施策が生活者にどう響くかということを分かりやすくしてくださいということだが、この4つの視点をどの8分野についても分かりやすくしてほしい。
○今回の計画で、これまでの計画の中に無かった点として、おそらく女性活躍とカーボンニュートラルの2点がかなり顕著だと思っている。女性活躍については、資料2[2]のタイトル「地方における女性活躍」が少し唐突だと思っていて、第5回計画部会で内閣府男女共同参画局長にプレゼンしていただいたが、活躍していないのは地方だけではなく都市も同様だ、という議論があったので、地方だけやらなければならない、というタイトルがいまひとつどうかなと思った。例えば、「女性活躍で実現する地方の持続可能性」とかそのようにしてもらえると、どのような意味があって、国交省としてこのテーマをとりあげているかということが伝わるのかなと思った。資料2の2ページは分からないことが多く、例えば「2.対応の方向」のタイトルの女性にとって魅力ある地域、というところで、「…男性も就職の選択肢が多いこと」とあるが、資料の中で男性が出てくるのが家事育児以外ほとんど無いように見受けられ、タイトルと内容が合っていない。選択肢が多いと言いつつも、家事育児の参加だけかと疑問に思った。他の、特に女性の委員がおっしゃっているように、もう少し資料を詰めていかないと、なかなか女性活躍を語るのは難しい。
○出産・育児において、今ここで産んでも私は大丈夫かという安心感が必要だと思う。もっと地方において様々なことが整備されて、環境を整える、どうやったら整うか、というところの議論が一番大事だと思っている。その中で一つまた冒頭に戻るが、デジタルで何が出来るのかというところで、例えば、オンラインで仕事を続けることができるとか、資格取得やセミナーの受講も自宅で近くにお子さんがいてもできる、あるいはデジタル田園都市国家構想にもあったが母子オンライン相談とか、とにかく1から8の中で、オンラインで何ができるのかを再度分かりやすく整理していただきたい。
○カーボンニュートラルについては、具体例がもっと欲しいと感じた。例えば、国交省が再生可能エネルギーとして非常に推し進めているのが洋上風力かと思う。促進指定している地域が14~15地域ほどあったと思うが、そのほとんどが日本海側であり、太平洋側に片寄らずカーボンニュートラルで、ビジネスチャンスや雇用を生み出し、これからの地域の活性化にもつながる、というメッセージがあっても良いかと思う。
○今後、デジタル田園都市スーパーハイウェイといった、ハード的にも整備をすることによって、どんな地域や離島にいても、同様のサービスが受けられるようになるということが、非常に大きなことになって行くと思う。この辺のところはもう少し丁寧な説明やもう少し違った具体的な例も入れると、地方にとってはわかりやすいと思った。先ほど他の委員の方から、そのためには標準化やマニュアル的なものも必要じゃないかという意見もあったが、私もデジタルはそこが一番大事だと思っている。みんなで進めていく基本的なものについては、ここまでは国でしっかりと対応するというようなことを、もう少し示していただけたら大変ありがたい。
○これから自動運転であったり、AIを搭載したりというのが進んでいく中で、現在、自分たちが使っている電車やバスで、例えば私鉄とJRでICカードを使っても、一旦改札から出て、またタッチをして入る必要があるというような状況。電子系統だけつながっていないというようなことが地方でたくさん見受けられる。高速道路みたいにどこで降りてという把握ができないといった問題が非常に多くある。これから自動車以外でも、できれば民間、特に鉄道と連携をする中で、こういった基盤整備をすると、地方に住んでいる方はより自由に身動きができるのではないか。
○国土の管理構想を今後すべての市町村で全国展開をしていくと書いてある。その前にいろんな法律の中で計画義務があったかと思うが、私共の自治体でも平成12年度までは国土利用計画の市町村計画を作っていたが、それ以降、必要性を感じなくなってしまい作っていない。総合計画だったり、都市マスタープランであったり、都市計画であったり、実情と少し乖離をするという課題が生じるので作成していない。
○資料2の8ページで、全ての土地をこれまでと同様に管理するのではなく、と簡単に書いてあるが、机上で私たちが資料を見ながらやっているのと、地域の方たちにしっかり入り込みながら、ここの土地よりはこっちに住んでいただきたい、ここは津波が来るレッドゾーンですからというお話をしてもなかなか難しいところがある。この辺りはもう少し丁寧な議論をしっかりとしていただきたい。
○私たちも参加していく中で、土地管理計画というものを全国レベルに落とし込んで行かないと、今の状況の中ではまだまだ難しいのかなというような事を思った。できればコンパクトシティ、災害の少ないまちづくりというものを強力に進めて行きたいと思っているが、土地については、その地域に住んでいる方達の思い入れが非常に強い中で、学校一つ統廃合することについても難しいところがあるので、もう少し深い議論をさせていただければと考えている。
○資料2の1ページで、人口規模10万人前後が一つの目安であると書かれているが、個人の意見では10万人程度の都市は今、既に300近くあり、これを中心に生活圏を作っていくという意味での10万人という意味であればいいと思うが、10万に達してないところについては、そこで生活圏を作ってくれみたいな意味だと、数が多すぎたりとか、効率性という観点では適切ではないかなと思った。出来上がる生活圏としては10万人というのは20万人とか30万人ぐらいの単位をめざしていくというのが、効率的な観点からふさわしいのではないか。
○資料2の4ページで、1ページと掛け合わせながら産業について見ると、我々の仕事の中でJICAと一緒に日本のモデル、日本企業の技術を海外に展開して行く時には、技術だけを持って行くよりも、昔で言うとシステム輸出やインフラ輸出と言っていたところだが、今ではデジタルインフラとしての輸出といった形で議論されている。国際競争力の観点からも、各地域でいわゆるSociety 5.0のようなものを実現していくというのは非常に重要であると感じているので、そういった整理を進めていただくといいのではないか。
○教育、特に高等教育、生涯教育というような街全体が教育し続けて、街全体が進化して行く、みたいな観点での教育については、これからの世界においては一段階重要性を上げて議論していいテーマなのかなと思った。例えばこの資料2の4ページの右の吹き出しのところに、都市が国際競争を今後も続けるという中に、生涯教育みたいことが記載されていてもいいと思う。
○第7回計画部会で提起された「機能補完・機能分散型国土構造(仮称)」のような国土のイメージを言語化することが重要である。そのロジックモデルがないと、今回提起された8つの項目がつながらないため、ぜひ、早期に国土イメージの提起をしていただきたい。このような議論をするときには、国土の全体像からコミュニティレベルまで同じようなイメージを持つことが重要であると思う。以前、私からデュアルモード国土を提起させていただいたが、モードを平時と非常時で切り替える、それがコミュニティレベルまで実現する、そういったような流れを作っていただきたい。
○「国土の長期展望」中間とりまとめで整理した自然災害、感染症、食料、インフラ、老朽化などのリスクをどのように乗り越えるのかという点が、今回の整理から見えない。特に食料確保やエネルギー確保のリスクは今回の国土形成計画では切り離せないと考えるため、それらのリスクとどのように向き合うのかを強く意識していただきたい。
○三全総の定住圏構想以降、国土計画では圏域を重視してきたが、これまでの圏域論では住民がそれをどう動かしていくのかといった発想が必ずしもビルトインされていなかったためにうまく動かなかったものと考えられる。地域生活圏では住民参加の仕組みをセットで議論する必要があると思う。
○経済産業省の委員会で議論したローカルマネジメント法人は、もう少し小規模のものであった。10万人前後という数が出てしまうと、市町村のほかに平均的に市町村あたり1つのローカルマネジメント法人をつくるイメージとなり、地方自治のあり方に直接関わる議論になってしまうと思う。地域運営組織RMOは、学校区単位が概ねのベースとなっている。若干の混乱があると思うので、このあたりの修正をお願いしたい。
○関係人口の特徴はその多様性にあるが、実態を把握することができないという弱みがあった。その点で、小菅村の例のように、いわゆるふるさと住民票というような関係人口のプラットフォームを作ることが大変重要になってくると思う。多様な関わりをしている人間を同じ場に乗せて、場合によっては関係人口同士のコラボレーションなども含めて展開していくと言う考え方であるが、この新しい考え方かつ中長期的にしか議論できない発想をこの場でも議論していただきたい。
○カーボンニュートラルの整理では、産業面のみが特出しされていることに強い違和感がある。ライフスタイルの転換ということが当然入ってくるので、表現の仕方だと思うが、誤解がないようになんらかの対応が必要である。
○女性活躍が全体の中でどのような位置付けになるのか分からない印象を受ける。また、「地方における女性活躍」という資料タイトルが女性の活躍が地方において、より進んでないかのような印象を与えかねない。他の委員から発言のあった「女性活躍で実現する地方の持続可能性」という修正案に賛成であり、タイトルはもう少し考えた方が良いのではないかと思う。
○女性活躍、とりわけ女性というキーワードがテーマになること自体が画期的であるが、具体のハードの部分との関係性が見えないところがある。
○会議では、アンコンシャス・バイアス、閉そく感などの意識に関する部分に非常に重きを置いており、女性が流出する原因の認識にむしろバイアスを感じる。社会構造変化と都市への憧れといった意識の面が強調されすぎて、女性の大学進学などの構造的な背景が隠れてしまっているように思う。アンコンシャス・バイアスの解消は、地方に関わらず、全国的に解消するべきだと思う。アンコンシャス・バイアスが地方からの流出の原因として強く取り出され、対応の方向性として男性の家事育児参加が必要としていることは、もちろん大事なことではあるが、もう少し構造的なことにも目を向けるべきではないか。
○地方の特に若い世代では既に家事育児に参加している男性も多いのではないかと考えている。安心がなければ出生率が上がらないという面については、男性の雇用労働環境が悪ければ、地域経済や出生率の向上、持続可能性が望めないことは自明である。女性だけということではなくて、家族やコミュニティといった実態からデジタルによって実現されることや、すでに実現されていることを踏まえて方向性を考えていく必要があると思う。
○3つの点を「流出の原因」と整理していることについて、都市への憧れが原因であることは事実かもしれないが、それは閉そく感だけではなく、サブカルチャーを含む文化サービスの消費機会、まち並み、交通利便性などの多様なことが関係しているため、原因という表現から背景や関連する事柄などの表現へ変更することを強く希望する。
○資料4の「政策の方向性」における「達成された社会の国土像」について、デジタルとカーボンニュートラルの二つを取り上げたことは非常に重要ではあるが、この二つは自動的には両立しない。デジタルはエネルギー多消費型を意味しているので、両者を両立させる社会が先進的な社会ではないかと思う。
○資料4の「ローカルの視点」について、記載が一つしかないが、稼げる地域経済圏と書いてもいいのではないかと思う。
○資料4の「共通の視点」について、交通ネットワークと情報通信の二つが並べて書いてあるが、情報通信は繋がる手段なので、これから重要になるのはその先にある膨大な計算資源やマーケットだろうと思う。
○情報通信については、半島部でも高速ブロードバンドの普及率は高くインクルーシブになり得るインフラであると思うが、「法定計画事項(目指す価値)」で書いているようなことを考えると、低軌道衛星などを使わないとカバーできないと思う。
○人材育成については、リスキリングも含めた地域的な学習力、教育力といったものを打ち出したらどうかと思う。
○女性活躍については、非常に多くの議論があるが、加えて、全体としては社会的な包摂を謳ってはどうかと自分は考える。
○資料2について、生活と防災と地域の稼げる能力は大きな依存関係があり、セットで整わないと絵に描いた餅になってしまう。そういったものを関係づけて議論するような紙が最初にあると大分変わるのではないか。
○デジタル化によって、社会で行われている産業、文化、医療、教育といった活動のあり方が組み変わると、それを反映してハードのインフラのやり方も変わると思っている。
○デジタル化をするとバス会社のアクティビティが変わり、いずれはバスという事業そのもの、場合によっては道路というものをどう作るかという発想や、あるいは病院をどこに置くかという発想そのものが変わる。デジタルがきっかけになり、社会で行われる活動内容が非常に大きく変わり、逆にインフラが変わると言うことが起こっているのではないか、ということ私の申し上げるDXである。
○今回の国土計画の売りは地域生活圏だと思う。これまでの国ないし自治体のサービス供給体制と比べると分野の縦割りがなくなり、今までの自治体の縦割りを超えたサービスの供給体制ができるという意味において、地域生活圏ということを言われているのだと思う。ただ、地域生活圏でコンセプトだけを言っても仕方がなく、それに沿って政策が行われる、あるいはそれに沿って行われる政策が評価されるということがないと、そういう考え方もあるよね、というだけの話になってしまう。現時点であれば大体どれぐらいの人口で、日本にいくつぐらいあり、どの地域だとどのようなものか、ということが伝わらないと、単純なコンセプトの話になってしまいそれは国の計画としてはまずいと思う。
○地域生活圏は、住民がどう参加するかということが関わっていると思う。どうしてデジタル化をすると活動が組み変わるのかというのは、やっぱりデジタル化を通じて住民、利用者が参加できる新しいチャンネルができるということも一つの大きな要因だと思う。
○資料2の1ページに記載のあるローカルマネジメント法人については、今のデジタル化という背景も含めて官と民の中間にあり、また縦割りを超えた法人格は必要になると思うし、それを作ることによって、参加は促されるのではないかと思う。当初は、地域医療再生と二次医療圏が念頭にあり、市町村より広い圏域が意識されていたものであったが、自治体との関係はどうするかについては、地域生活圏の概念をどうするかと合わせてこれから議論をさせていただければ大変有難い。
○今回の計画部会は国家計画というよりも、国土計画について考えないといけないため、地域へのまなざしが重要だと思っている。その際、空間や地域に落とす意識や地域のリアリティを考えることが重要だとすると、そこまでできていない部分もあったように思う。例えば、資料2の地域生活圏について、国土の長期展望専門委員会でのとりまとめの際にはリアルとデジタルのバランスを考えていたが、今回の資料ではデジタル一辺倒という印象を受けた。もう少し地域のことを考えるのであれば、デジタルでは解消できないことも含めて総合的に地域の未来を考えなくてはならないのではないかと感じている。長期展望専門委員会のとりまとめ資料においては、どういう都市サービスであれば、デジタルで代替可能か、専らリアルが重要なのはどういった部分かをまとめていたかと思う。そういった面も復習しつつ、バランスを取った形にしていただきたい。
○資料2の5ページの交通についてはかなり違和感があり、自動運転一辺倒な印象を受けた。自動運転は非常に重要であるが、課題解決の手段の一つでしかない。自動運転で渋滞はある程度緩和できるが、交通量が多ければ渋滞する。ここで挙げている課題は自動運転だけで解消できるとは限らず、自動運転以外の手段で大きく改善されることにもなるため、総合的な考え方をしてスライドをまとめたほうが良い。特に人流についてはテレワーク等で既に変化しているはずであり、こういったことを入れ込む必要があると感じる。
○防災とカーボンニュートラルは、国土計画にとって重要である。災害であればリダンダンシーを広域的にどう取るか、カーボンニュートラルであれば、国土全体でのサプライチェーンで水素を供給することが国土計画の重要な点の1つだと思う。また、このあと広域地方計画としてブロックレベルでより具体的に提案を出していく際の示唆を与えるためにも広域的なリダンダンシーやサプライチェーンの達成方法を検討していただきたい。ただ、計画部会で議論するのは大変なので、官民で具体的に議論できる組織を立ち上げて、具体的に提案することが必要だと思う。
○全体の項目について、大きな枠組みとして違和感はない。
○かつての全総のころの国土形成計画と時代的背景が大きく変わってしまっている。日本が大量生産、大量販売型の加工貿易立国を産業の軸にして成長していく時代は完全に終わっていて、産業モデル的にも社会的にもサイバー空間がすごく膨張していく。メタバースの議論もサイバー空間の膨張の一つの軸だと思っている。このように拡張して行く中で、産業構造の国土のあり方をどう考えるかという脈絡で捉えるべき。サイバー空間の拡大が、どうリアルにインパクト及ぼすかというのは大事な問題である。
○社会的事実として、今後の30~40年、日本は人口が減少していく国土だということを踏まえなければならず、そこには安全保障の問題もある。このような変わらない事実の中で、どう国民生活が豊かになるように国土形成をするか、抜本的な方向転換をするということが全体として重要である。
○ぼんやりと東京一極集中がけしからんという議論になるが、本来は、東京一極集中でもみんなが幸せならば全然構わない。ただ、実際は東京一極集中でみんなが不幸せになっているから問題なのである。東京は圧倒的に出生率が低く、平均的な人たちにとって可処分所得最低の場所である。可変な部分の中で国土の形成の仕方によっては、日本人まだまだ充分幸せになれ、かつ経済、安全保障も確保できる。そのための基本的な筋立てが大事と考える。
○デジタル田園都市国家構想は、田園という言葉がついているので、地方イコール田園と東京の人は思ってしまうが、それは間違いである。密度の低い多極分散の議論になると危険である。多極集住が大事であり、多極分散の居住をするとデジタル化しても生産性は上がらない。
○今回のウクライナとロシアの状況をみてもわかるように、安全保障の最終担保はエネルギーと食料である。日本の国土形成計画は、過去この問題を真剣に捉えていない。その脈絡は今後の議論の中で欠かせないと思う。
○提示いただいた[1]~[7]の点についてはこれまでの議論の中で、方向性としては概ね了されたところでよいと思う。先日、地方整備局から今後の広域地方計画の策定にあたり相談を受けた。その時に地方整備局からは今後、中間とりまとめを受けて広域地方計画を策定する方法が皆目見当がつかないという話を聞いた。もう少し明確な国としての線の通った示し方をしないと、それぞれの広域地方計画の策定がしにくいと思う。とりまとめをするにあたっては、次のステップである広域地方計画を策定するときのことも考えていただけるとよいと思う。
○資料2の地域生活圏のところに関して、人口規模については計画部会の初期の段階では定住圏構想と同様に25万人規模を目途に考えていると事務局から説明を受けたように思う。しかし、25万人規模の圏域は世の中にはそんなにない。さきほどのお話の中で、人口10万人規模の都市が何百あるという意見があったが、地方では、県全体で10万人都市が1つしかないような状況が大半である。そのような場所であれば、圏域で10万人というのもリアリティがなく、10万人を寄せ集めようと思うと圏域がかなり広い範囲になってしまう。
○住民の目線で考えることが必要で、圏域の実効性がないのは住民の実感がないからであり、住民が実感を持てるような圏域とすることを考えなくてはならない。各話題について1枚のシートにまとめているので、不足している点もあるかと思うが、各回の議論を中間とりまとめでまとめていただければよいかと思う。
○資料2の地域生活圏のページにおいて、全員野球の記載箇所に行政と事業者を対象とした記述があるが、住民も入っていなくてはいけない。資料の中に「生活者・事業者の必要度合いに応じた圏域設定、課題解決の優先付け」と記載されている以上、生活者である住民はなんらかのサービスを享受するだけではなく、自分たちで圏域を守っていく必要があると思う。
○管理構想はここ5年間検討した内容で、昨年度初めて出てきた話である。国土利用計画というトップダウンの計画がこれまであったが、人口減少の中、ボトムアップの形で具体的な管理を実行する方法として地域管理構想の仕組みを新たに作っている。中間とりまとめにおいても管理構想についてしっかり記載しなくては、広域地方計画を策定する段階で上滑りとなることを懸念している。
○我々が取り組んでいる国土形成計画は、デジタル田園都市国家構想の方向性が決まった後に、いかにその構想を社会実装に降ろしていくかという戦略書であり、戦術書になるのだろうと思う。
○デジタルの活用と、膨張するデジタルがどうリアルにインパクトを与えるかという2つがあったとしたら、まずは、デジタル活用をどうするかがデジタル田園都市国家構想のなかでまずやらなければいけないことだと思う。資料としては、8項目の書きぶりがバラバラであり、まずは国土マネジメントにおいて国が標準化するべきものは何であるかという土台を明確にして、その上で8項目を実施する上で標準化するべきものと地域の独自性を重視するものを分けていくという作業が必要である。
○これまでの集中型から分散型エネルギーへ移行していくだろうという中で、この状況をどうするのかということがいずれ大きな問題になると思う。脱炭素化に伴って産業構造転換が起きるとなったとき、20世紀以来構築してきたコンビナートなどをはじめとする、日本の産業立地がどういう影響を受けるのかをしっかり議論・シュミレーションして評価をしておかないといけないのではないか。また、エネルギーの分散化と産業構造の変化が、地理的にマッピングして合うのかどうかを検討し、合わないのであれば、どう配置していくのかというグランドデザインを描く必要があると思う。
○1ページに推進主体、ローカルマネジメント法人の仕組みを検討とあるが、構造を変える話になるかと思う。本当に法人化に向かうとしたら、多様な主体の合意形成が必要になると思われ、多くの地方にとってはやや唐突感のある話のように思えた。それよりも広域連携を事業ベースで増やしていく支援を国からしていただいた方が、多くの地方の目指す方向に進むのではないか。
○資料4で本日議論する全体の構造を見て、カーボンニュートラル、デジタル田園都市国家構想、達成された社会の国土像とあり、これらに異論はない。しかし、これまでの議論、それからこの後の広域の地方計画との連結を考えたときに、いわゆるローカルの視点のところに記載されているが、むしろ地域生活圏あるいは分散型の国土の発想はやはり達成を目指す社会の国土像の中にしっかりそのコンセプトが入ったほうが良いのではないかと思う。これは防災減災の観点一つとってもそうだと思う。
○他の委員からも多くの指摘があった部分だが、出されている視点の柱について異論はないものの、どのようにストーリー付け、相互の関係性を示せるかということが国土計画を具体化するために非常に重要だと思っている。例えば、資料2の2ページに、項目によっては意識されて書かれているところもあるが、例えばカーボンニュートラルとデジタル一つとっても、エネルギー消費との関係もあり、他方でカーボンニュートラル社会の実現にデジタル化、デジタル技術が必要不可欠であるということもまた、シナリオ分析などから明らかである。これらが産業の国際競争力の強化につながることも間違いない。相互関係が明確化する記述整理をお願いしたい。
○特にここ2ヶ月の状況を見たときになおさらであるが、エネルギーと食料の安全保障の観点ということを、今回の国土計画の中に一つの視点として明確に入る必要があるのではないかと思う。法定計画事項の中にそうしたものは元々入っているが、こうした状況を踏まえたときに非常に重要な視点ではないかと思う。
 
(チャットによるコメント)
○常時・非常時を含めて電気自動車・自動運転・ドローンタクシーなどその他の新モビリティには、いつまでにどこまでのことを期待可能なのか。コスト面も含めた幸福な実現と普及のためにはどんな法理念や国民の価値観変革が必要なのか。実際的な議論はまだまだ未熟というのが実情ではないかと思う。
○単なる理念として「関係人口が大事です。各地域で考えてね」というだけでは国土政策としては甚だ不十分であって、「関係人口」や「地域生活圏」を住民登録なり税制なりといった国家の制度体系の中に明確に位置づけることが不可欠ではないか。
○女性活躍のために必要な「男性の家事育児参加」だが、若い世代以外は意識が変わっていない。シンガポールや香港など、土地が狭く、国民の生産性を最大化しないといけない国や地域では、30年前から「メイド文化」である。よって、女性活躍のために必要なのは「男性の家事育児参加」ではなく「家事育児のアウトソース」ではないか。
○地域行政は、そうはいっても住民票上の住民のみを見ていると思う。
○男性はやりたくない、は真理かもしれないが、やってもいいよ、と思っていても、職場や社会が良い顔をしない、というのは、芽を摘んでしまうので、応援する制度や、企業の努力目標もほしい。アウトソーシングもほしい仕組みである。家族、主に祖父母なら、生活圏の変更もあり得るわけで、商業ベースに頼るなら、その分コストがかかる。子育ては対面なので、デジタルの利用の限界も見据えつつ進めなくてはならないと思う。
○ローカルマネジメント法人は今の岸田政権の政策全体の議論の脈絡では、ベネフィットコーポレーションとして、法的に公益目的を株主価値の最大化を同値とする、新しい株式会社形態の創造の脈絡で議論した方がいいと思う。ベネフィットコーポレーションとして設立された企業がコンセッションなどの方式で基礎自治体の枠にとらわれないで公益性を持った事業を民間の営利法人として担う話なのかな、と思う。その意味で新しい法人形態の制度的な創造と、それをコンセッションなどとの仕組みと連動させてうまく使うことで、地域の持続性を高めるという議論なのかなと。実際にどう使われるかは、個々の自治体と、民間の担い手となるベネフィットコーポレーションたるローカルマネジメント法人が自由にコラボレーションしていくべきだと思う。
 
(事務局からの回答)
○資料2の[6]において、巨大災害に関することとカーボンニュートラルに関すること、重なる部分があると思い一つにまとめていたが、全体にも関わる部分があるため、全体像の中で次回きちんと示させていただく。
○地域生活圏において、圏域がなくなったのではなく、生活に必要な諸機能が維持・向上される姿を「地域生活圏」と呼ぶことが正確かと思いそのような記載をしていたが、この点についても次回の全体像を示す際に、誤解がないように整理させていただきたい。
 
(以上)
※速報のため、事後修正の可能性があります。(文責 事務局)

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