議事概要

北海道旅客鉄道株式会社からの鉄道の特別急行料金の上限設定認可申請事案に係る審議(第8回)

1.日 時:平成27年12月15日(火) 10時00分~12時15分

2.場 所:国土交通省 2号館14階 運輸審議会審議室

3.出席者:
<委 員>
 上野文雄(会長)、鷹箸有宇壽(会長代理)、松田英三、河野康子、根本敏則、山田攝子

<国土交通省>
 鉄道局:山下鉄道サービス政策室長ほか
 事案処理職員:運輸審議会審理室 持永室長、川﨑調査官、木村課長補佐

4.議事概要:
○ 鉄道局からJR北海道からの鉄道の特別急行料金上限設定認可に関し、第6回審議時に次回審議時に説明・回答することとされた事項([1] 青函共用走行区間における高速化や貨物共用走行に係る固有コストの負担割合の変更により貸付料は変動するか、[2] 青函トンネルの建設ルールと整備新幹線建設のルールの関係を含めて整備・保有・費用負担の考え方を説明してほしい、また、青函トンネルの機能維持のための費用と一体的と考えられる電力費をランニングコストとして事業者負担とする理由如何、[3] 北海道新幹線の収支等を国が継続的に注視していく必要があるのではないか、[4] 特急料金と固有コストの利用者負担との関係に関する鉄道局の見解等)について、
[1] 貸付料については、原則として北海道新幹線開業後30年間固定の額として、開業までに国土交通大臣が認可することにより決定される。その上で、JR北海道は更なるコスト削減や収入拡大に努めるため、経営の効率化や利用者の利便性向上に関して一定のインセンティブが働くものと考えられる。貸付料は、想定されうる条件の下で受益を算出し、設定されるものであるので、その前提となる条件により、受益がどの程度変動するかを踏まえ、必要に応じて、JR北海道と取り扱いを協議してまいりたい。
[2] 青函トンネルについては、国鉄改革時において、「完成後はJR北海道が鉄道として経営することにより有効活用を図ることが適当である」とされ、JR北海道がこれを使用して旅客運送事業を営むこととされた。その際、青函トンネルの公共性及びJR北海道の経営見通しの厳しさに鑑み、建設に係る債務を旧国鉄が負担した上で、施設の保有は鉄道・運輸機構が行う一方、事業の運営に伴う補修等の通常の維持管理についてはJR北海道が行うものと整理された。整備新幹線については、その公共性及び第二の国鉄は作らないとの考え方に鑑み、整備方式は上下分離方式が採用され、施設の建設・保有は鉄道・運輸機構が行い、JRは受益の範囲内の貸付料を支払うとともに、事業の運営に伴う補修等の通常の維持管理を行うこととされている。このように施設の公共性及び民営化されたJRの経営への影響に鑑み、施設の建設・保有は公的主体たる鉄道・運輸機構が行い、事業の運営に伴う通常の維持管理はJRが行うという考え方は、整備新幹線も青函トンネルも同じである。このため、北海道新幹線は平成16年の政府与党申合せで新規着工が確認され、厳しい財政事情等に鑑み青函トンネルを北海道新幹線の一部として使用することが前提とされたが、その整備・保有・費用負担の考え方は、従来の青函トンネルと整備新幹線の考え方と整合している。なお、青函トンネルについては、排水施設や変電所設備等の劣化に伴い、設備等の改修を行う必要が生じたが、通常の維持管理を超えるものであり、公共的な資産である青函トンネルの資産価値の回復に資するという観点から、公共事業として鉄道・運輸機構が実施している。一方で、取替資産などの消耗品や電力費などのいわゆるランニングコストは、単に費消されるものであって公共財の資産形成に資するものではないことから、通常の維持管理の範疇であり、これに支援措置を講じることは、現下の厳しい財政事情のもと、納税者たる国民全体の理解を得ることは困難であると考える。
[3] JR北海道は厳しい経営状況にあるが、まずは鉄道事業者において安定的な経営基盤の確立を図るべく鋭意取り組むものと考えている。国土交通省においては、まずは経営面について、JR会社法に基づきJR北海道の事業計画を毎年度認可することや財務諸表の報告を受けることを通じ、会社の経営状況等の監督や確認をすることとしている。具体的には事業計画の認可申請においては、事業運営の基本方針、輸送量の見通し及び列車の運行量を明らかにした鉄道輸送計画、鉄道施設の整備計画等が提出され、国土交通省は、財務省との協議を経た上で認可することとしている。また、輸送の安全面については、JR北海道に関し、常設の監査体制による監査を継続的に実施し、安全対策に関する取組状況を確認しているところである。北海道新幹線についても輸送の安全を確保するための取組が適切であるかどうか、施設や車両の保守、管理、運転取扱いが適切であるかどうかについて保安監査を継続的に行っていく。国土交通省としては、このような形で、法令の枠組みの中で、JR北海道の経営と安全について、しっかりと監督・指導してまいりたい。
[4] 北海道新幹線は、今後のJR北海道にとって、札幌都市圏と並んで経営の基軸になるものと考えられる。北海道新幹線が開業すると、関東や東北と北海道との移動時間が大幅に短縮され、これらの地域間での往来が今まで以上に増加し、沿線開発の進展など地域活性化の効果が生まれることはもとより、北海道全体の活性化にもつながることが期待される。一般論として、北海道新幹線の特急料金がより低廉であれば、こうした効果はさらに大きく発揮されるものと考えられるが、北海道新幹線は費用が大きい一方で需要が少ないことから、現在の申請額であったとしても非常に収支が厳しい状況である。青函トンネルの排水施設や変電所設備等の改修については、公共事業として鉄道・運輸機構が実施しているが、取替資産などの消耗品や電力費などのいわゆるランニングコストについて支援措置を講じることは、現下の厳しい財政事情のもと、納税者たる国民全体の理解を得ることは困難であると考える。JR北海道においては上限の範囲内で自由に料金を設定できることから、総収入を減少させない範囲で割引施策の展開や地域と一体となった取組みを行うこと等によって利用者の拡大を図り、より地域の活性化に貢献することを期待している。
等の回答を得た。

○ 10月15日(木)及び29日(木)、11月12日(木)、12月1日(火)及び3日(木)及び8日(火)及び10日(木)の審議を踏まえ、委員相互間で慎重に討議を行った結果、反対意見があったものの、本件については、鉄道事業法第16条第2項に規定する鉄道の特別急行料金の上限認可の基準に適合しており、認可することはやむを得ないとの結論を得た。


(注) 事案処理職員とは、運輸審議会一般規則第7条の2の規定に基づき、運輸審議会の指名を受け、指定された事案を処理する国土交通省職員のことである。

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