国土交通省 国土交通研究政策所 Policy Research Institute for Land, Infrastructure, Transport and Tourism

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 国土交通政策研究所は、国土交通省におけるシンクタンクとして、内部部局による企画・立案機能を支援するとともに、 政策研究の場の提供や研究成果の発信を通じ、国土交通分野における政策形成に幅広く寄与することを使命としています。
  

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 ● 報告書概要


 EC統合の進展と将来予測

◆要旨

1. ECは発足後35年を迎え、大きく変化しようとしている。1985年の市場統合白書で1992年末までにヒト、モノ、資金、サービスの4つの域内自由化を達成することとし、その統合プログラムにしたがって着々と各国の調整作業が進んでいる。 統合プログラムの眼目は、EC統合の阻害要因となっていた非関税障壁の除去であり、現在までに国境管理の廃止、技術・安全基準の調和、金融業等の営業の自由化などが達成されつつある。

2. 市場統合をさらに推進して通貨統合政治統合に発展させることを目的としてマーストリヒトにおいて1992年2月に欧州連合条約が調印された。通貨統合プロ グラムでは、1999年までに各国の通貨を統合すると共に、金融政策を欧州中央銀行に集中させようというものであるが、これは各国に厳しい経済政策を強い るものであり、統合がスケジュールどおり順調に進むかどうか疑問である。

3. EC の今後の拡大については、EFTA諸国、中欧諸国などの加盟が予想されるが、加盟国の増加は効率的な意思決定手続きを難しくする。また、マーストリヒト条 約ではEC政府の大幅な権限拡大が予定されているが、これは中央政府がその意思決定について市民に直接責任を負うシステムを必要とし、現在のEC政府の構 成を大幅に変更していくことになろう。

4. 市場統合が順調に進展し、ECが国際社会で単一の経済主体として行動するようになれば、これからの国際経済秩序の形成にECが果たす役割は拡大しよう。そ の場合、日本との関係についてもより積極的な働き掛けが予想され、日本としてはECとの関係がより深まっていくこともあり、対米関係と同等の配慮が必要と なっていくであろう。

変わる価値観と変わらない価値観

◆要旨

1. 戦後社会の変化は、他の先進国に例を見ない速度で進んでおり、その内容は大きく「都市化(人口集中)」「技術革新(特に情報化)」から捉えることができる。
「都市化」により大きく変化し衰退した地域慣習、家族観、自然との接点などは、新たな形となって甦る可能性が高い。しかし、新技術が生み出すライフスタイルの変化は、不可逆的なものが多い。

2. 世界人口の爆発的な増加などにより、地球規模の環境問題は今後深刻さを増す一方であり、徐々に社会に対する環境の制約は大きくなる。一方で、科学技術の進 歩は、時代の要求が高ければ高いほど飛躍的に進むことが多いと言われる。 環境の制約が社会構造に変化をもたらすのか、科学技術が環境の制約をブレークスルーするのか、いずれかにより将来の社会像や国民の価値観は大きく異なる。

3. 最近の豊かさ志向などから、今後、国民の公共財への関心や、まちづくりへの参加意識は高まる方向にあると考えられる。高齢化社会に向けて充実した地域コ ミュニティーを形成するためには、時間をかけて行政と国民の意識の一体化を進めて行くことが重要である。

この論文は総合研究開発機構(NIRA)月刊研究特集誌『NIRA政策研究』Vol.5N0.10「価値観多様化の研究」から転載したものです。


◆発行

PRCNOTE第1号/平成4年9月

◆在庫

<在庫切>

◆詳細

表紙
EC統合の進展と将来予測
1. はじめに1「成長」パラダイムの行方
2. EC統合の歩み2主要指標に見る社会の変化
 (1)欧州経済共同体の発足
 (2)欧州経済の低迷と域内市場白書3農村社会から都市型社会へ
3. 1992市場統合4新技術と新しいライフスタイル
(1)ローマ条約の改正(単一欧州議定書)
(2)市場統合の内容5新人類の社会への適応力
(3)統合による産業の変化
   市場統合の阻害要因及び副作用621世紀のシナリオと長期的政策の意味
4. 通貨統合
(1)マーストリヒト条約以前の通過政策とその効果
(2)マーストリヒト条約と通貨同盟の可能性
5. ECの今後の発展
(1)EC加盟国の拡大
(2)管轄事項の拡大とEC政府の権限拡大
(3)欧州連合(EU)成立の可能性
(4)連邦政府実現への課題とECの将来像
6. ECと日本との関係
(1)市場統合が世界情勢に与える影響
(2)激化が予想される日本との摩擦
(3)日本・ECの制度の調和
7. おわりに
変わる価値観と変わらない価値観