国土交通省 国土交通研究政策所 Policy Research Institute for Land, Infrastructure, Transport and Tourism

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 国土交通政策研究所は、国土交通省におけるシンクタンクとして、内部部局による企画・立案機能を支援するとともに、 政策研究の場の提供や研究成果の発信を通じ、国土交通分野における政策形成に幅広く寄与することを使命としています。
  

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 ● 報告書概要


 東アジア地域の将来展開と日本との分業関係

◆要旨

1. 東アジア地域の急速な経済成長にともない、日本のみがアジアの先進国という構造が変化している。香港、台湾などのアジアNIEsはすでにEC諸国並みの所得水準に到達しており、ASEAN諸国のなかにもタイやマレーシアのように、急速な工業化に成功した国も出てきた。さらに、インドネシアや中国といった人口大国が外貨導入をテコとして工業化に乗り出している。こうした高成長が続けば、東アジア地域は近いうちに北米、欧州と並び世界経済の中心の一つにまで発展すると思われる。

2. 日本と東アジアとはダイナミックに分業を進めており、すでにASEANが日本市場への家電製品の生産基地として、また中国が繊維産業の中心として登場してきている。今後は、労働集約型、組み立て型産業の日本からの移転に加えて、従来日本の高性能・高品質な製造業を支えてきた鋳鍛造、金属加工といった基礎加工部門が、日本国内の労働力不足等を背景として移転を加速させていくと見込まれる。これは東アジア地域の技術力の充実につながり、長期的には日本と肩を並べるだけの先端技術の発信が可能となる分野が出てくるだろう。
東アジア地域と日本の関係は、日本をトップとする雁行型経済から、高度に差別化が進んだ製品のやりとりを内容とする円環型経済へと姿を変えていくと思われる。こうした変化は日本へも幅広い影響を与える。従来型産業の多くが東アジア地域へ移転を進め、国内では情報関連、福祉・医療などへの転換が求められるが、構造転換の過程では従来型産業への依存度が大きい地域を中心として、石油危機時と同様の厳しい調整が予想される。また、重点が欧米から東アジア地域にシフトすることによる国土軸へのインパクトもあり、関西から九州といった伝統軸の復活も考えられる。

補論中華経済圏の形成
東アジア地域の将来像は、本論で提示した欧州型の円環的関係ではなく、中国を中心とした同心円的秩序が形成される可能性もある。その場合日本は、米中の関係緊密化をサポートするほか、中国との情報交換を密にして協力体制を強化することが求められる。

◆発行

PRCNOTE第5号/平成5年7月

◆在庫

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◆詳細

詳細(PDF:1.2MB)