国土交通省 国土交通研究政策所 Policy Research Institute for Land, Infrastructure, Transport and Tourism

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 国土交通政策研究所は、国土交通省におけるシンクタンクとして、内部部局による企画・立案機能を支援するとともに、 政策研究の場の提供や研究成果の発信を通じ、国土交通分野における政策形成に幅広く寄与することを使命としています。
  

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 ● 報告書概要


 日本人の意識の変化と将来の方向−個人志向の強まりの中で−

◆要旨

  1. 人々の意識の動向は、政策判断の要素として重要になってきている。こうした政策判断の際には、その政策に関係した特定の意識だけが議論されがちだが、意識 とはその性質上、全体的な意識の中で位置付けるべきものであるため、極力意識全体を視野に入れたうえで、ある分野の意識を判断しなければならないし、客観 的・定量的に捉える必要もある。このため、本研究では、基本的な生活局面での意識を対象としたうえで、継続的に行われている世論調査を用いて客観的にその 変化の背後にある要因を検討し、将来の意識の方向性を見いだすことを試みた。
  2. 人々の生活全般における最も根幹的な意識としては、あらゆる局面において個人を軸とした考え方、すなわち個人志向が強まっていることが見いだされる。この 強まりは、いわゆる近代化による必然的なものであり、今後についてもさらに強まっていくであろう。また、この個人志向には「積極型」と「消極型」という二 つの内容を現在見ることができるのだが、このいずれが今後優勢となるかは、現時点では予測不可能である。さらに、伝統と近代を対比させた考えというものが 崩壊しつつあること、及び近代化の中で情緒的な志向が高まりを見せていることが、意識全般をみるうえでは重要である。
  3. 勤務先への帰属意識は、継続して弱まっている。これは、個人主義化や経済的安定により引き起こされているもので、今後もさらに弱まって行くものと考えられ る。また、勤労意欲は、日本は他国に比べ必ずしも高いものではないことから、今後大きく変わる可能性もある。
  4. 地域への帰属意識は、都市化による共同体の崩壊によって、早くから弱まり、現状はかなり低い水準となっている。若年層での地域意識の微増、個人志向の強ま りや情緒志向の増加という、地域意識の上昇の兆しはあるものの、現在の水準などを考慮すると、20年くらいは地域意識や地域活動への参加水準は現状程度に とどまるであろう。
  5. 政治に関する関心の低下、消極的態度の増加、有効性感覚の低下というように、政治意識は全般に大きく低下してきている。これは社会的な安定によりもたらされたもので、今後も社会的混乱がないかぎり、政治意識が強まる可能性は小さい。
  6. 男女の性別による役割分担意識は、最近大きく平等化の方向に変化している。この変化の理由は、社会の変化もあるが、個人志向が内包している平等性が大きい ものであり、今後もさらに平等化へ向かうであろう。ただし、この役割分担は、日本の場合、社会的規範として強く存在しており、上記のような理念的意識とは 乖離している。このため、実際には平等には役割分担されていない。この社会的規範は、今後もしばらくは変化することはないであろうから、実態として男女が 平等に働くという状況となるには、世代が交替するのに必要である、数十年程度の時間が必要であろう。
  7. 家族を大切にするという考えは以前から広まってきており、最近は中堅世代でも仕事を超えた対象となってきた。この傾向は今後も続くが、内容としては、個人主義を軸とした家族というものに変わるであろう。
  8. 高齢者となった親と子供の間の扶養に関する意識は、理念的なもの、あるいは実際の同居や介護というもののどちらについても、年齢によらず、基本的に自立化 の傾向が見い出せており、伝統的な家意識は薄れている。この傾向もやはり個人主義を背景にしたものであり、十数年後には、家意識は消滅し、あくまで個人主 義に基づいた扶養意識となるだろう。ただ、欧米との意識の違いは大きく、欧米化するというものではない。
  9. 自然や環境に対する意識は確実に強まっているが、これが実際の生活レベルの低下を伴うような場合にどうなるかは不明である。持ち家志向は強いものの、状況 によってはこだわらなくなってきており、都市部での居住形態については意見が分かれている。余暇については積極性が多少見られており、自然志向とつながっ たレジャーが注目される。
  10. こうしてみると、今後の各局面での意識の変動には、個人志向の進展度が大きな影響を与えることがわかる。そして、この個人志向の進展に関しては、生活のた めに必要な労働のための職場と個人の関係が今後どうなるのかが大きな意味を持ち、具体的には時短がどれほど進むのかという点が、個人志向、しかもどちらか というと積極的な個人志向の拡大に結びつくと考えられている。また、こうした個人志向や時短が進むことにより、地域意識がより早く強まることが考えられる が、この地域意識の強まりによる公共意識の拡大や市民意識の醸成も今後注目される点である。

◆発行

PRCNOTE第6/平成5年8月

◆在庫

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◆詳細

表題、目次及び研究の概要 (pdfファイル 465KB)
第1章序論 (pdfファイル 142KB)
1.1問題意識と目的
1.2研究の手法
第2章生活での基本意識−個人志向の動向− (pdfファイル 599KB)
2.1生活を貫く「個人」の視点
2.2個人志向の推移:国や社会
2.3個人志向の推移:生活局面
2.4個人志向:増加の背景
2.5個人志向:内容
2.6将来の方向
2.7補論:「伝統対近代」の消滅
2.8補論:「情緒志向」の広まり
第3章仕事 (pdfファイル 419KB)
3.1意識の返還
3.2変化の要因と今後の方向
第4章地域 (pdfファイル 388KB)
4.1意識の返還
4.2変化の要因と今後の方向
4.3補論:公共意識
第5章政治 (pdfファイル 257KB)
5.1意識の返還
5.2変化の要因と今後の方向
第6章男女 (pdfファイル 381KB)
6.1意識の返還
6.2変化の要因と今後の方向
第7章家族 (pdfファイル 299KB)
7.1意識の返還
7.2変化の要因と今後の方向
第8章扶養 (pdfファイル 332KB)
8.1意識の返還
8.2変化の要因と今後の方向
第9章ライフスタイル−自然・環境、居住、余暇− (pdfファイル 233KB)
9.1自然・環境
9.2住宅
9.3余暇
第10章結語 (pdfファイル 241KB)
(巻末資料)