アジア地域との交流による地域づくりに関する研究
◆要旨
1. 研究の目的
日本の各地域とアジア地域との交流の状況を把握し、日本国内の各地域がアジア地域との直接の交流によって活性する可能性について検討したものである。
2. アジア地域と地方との交流の現況
(1)経済交流
日本海沿岸地域を発着地とする対アジア地域の輸出入貨物は、海上輸送による輸入を除き、その大半が三大都市圏経由で輸送されており、地元の港湾、空港施設は必ずしも十分活用されているとは言い難い。この理由としては、以下の点が考えられる。
* 地方には貿易ノウハウを持つフォワーダー企業の集積が不足していること。
* 地方発着の貨物量がそもそも少ないため、三大都市圏経由と比較して、地方での直接取卸はコスト面で不利であること等
(2)その他の交流
日本とアジア地域との文化面での交流は極めて活発であり、海外からの留学生のうち全体の9割を、訪日外国人数で6割を、各地方自治体の姉妹都市の提携先では3割を、アジア地域が占めている。
また、わが国の公害問題の経験とその解決ノウハウの蓄積を活かした、環境技術に関する国際協力も行われている。
3. 各都市とアジア地域との交流の状況
地方公共団体等へのヒアリングを実施し、日本国内の各地域とアジア地域との間の国際交流の現状と課題を把握した。
(1)福岡市
大陸、朝鮮半島との近接性を背景として、交通ネットワークの整備、アジア太平洋博覧会(1989)をはじめとする文化交流等により、九州地域を代表する都市として成長している。
(2)北九州市
北九州港を環黄海圏のハブ港とすることを目標に交通基盤整備を進めている。また、(財)北九州国際技術協力協会(KITA)による開発途上国への産業及び環境技術の協力が国際交流に貢献している。
(3)新潟市
新潟港が、安政の通商条約により最初に開港され、その後海路、空路が積極的に開設されたことにより、日本海側の対外的な窓口として発展している。一方、貿易ノウハウを持つフォワーダーの育成が重要な課題となっている。
(4)岐阜市
中国の杭州市等5都市との間の姉妹都市提携により、経済・文化等の交流が活発に行われており、地元の産業育成につなげようとする意欲も強い。
(5)酒田商工会議所
商工会議所を中心として設立された「東方シルクロード貿易促進協議会」により、対アムール川流域地域との直接貿易が進められている。また、貿易ノウハウの蓄積や外国人滞在のための施設整備等が課題となっている。
4. まとめ
アジア地域との直接の交流により地域の活性化を図るためには、地方自治体をはじめとする地方レベルでのアジアとの交流を意識した積極的な動きが重要である。
特に、経済交流の活性化のためには、地元の港湾・空港を介した直接貿易の増加が大きく寄与するものと考えられる。そのため、貿易ノウハウの蓄積とともに、
周辺地域との連携による輸出入ロットの確保等、貿易ポテンシャルを高めていくことが必要であり、そのためには、港湾・空港と連結し、また地域連携の推進等
に資する交通ネットワークの整備や教育施設の充実(大学誘致)等の基盤整備が重要であると考えられる。
また、近年のアジア地域におけるハブ機能をもつ港湾の出現は、地方部港湾への直接アクセスの可能性を高めるものであり、国内交通網の整備等によりアジア地域との直接交流による地域づくりの契機となるものと考えられる。
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