国土交通省 国土交通研究政策所 Policy Research Institute for Land, Infrastructure, Transport and Tourism

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 国土交通政策研究所は、国土交通省におけるシンクタンクとして、内部部局による企画・立案機能を支援するとともに、 政策研究の場の提供や研究成果の発信を通じ、国土交通分野における政策形成に幅広く寄与することを使命としています。
  

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 ● 報告書概要


 環境等の便益評価に関する研究

◆要旨

1. 研究目的

近年、社会資本整備の便益評価にあたり、環境等の便益を評価する必要性が高まっている。本研究では、そのような便益の評価手法として、ヘドニック法と CVM(仮想市場評価法)をとり上げ、社会資本の便益評価手法としての適用性について検討した。便益評価手法の選択基準としては、理論構造上の問題、統計 処理上の問題等があげられる。本研究では、以上の諸点をヘドニック法とCVMについてそれぞれ具体的に検討し、以下のような成果を得た。

2. ヘドニック法

ヘドニック法は環境条件の違いがどのように地価の違いに反映されているかを観察し、それをもとに環境の価値の計測を行う手法である。地価の差が便益に等し くなることは理論的に証明されているが、ヘドニック法が有効であるためには、・生産者や家計の地域間の移動が自由で移動コストがかからない、・土地市場が 競争的である等の条件が成立している必要がある。これらの条件は現実には必ずしも成立していないと考えられるものの、近似的に成立しているものも多い。一 方、統計上の問題としては、地価関数の関数形を先験的に特定できないことや、その変数の多重共線性の問題がある。
このため、ヘドニック法の実際の利用に当たっては、調査設計における留意点としては、(1)地価データをサンプリングする際に、評価対象プロジェクトと類 似したプロジェクトが実施されてから十分に時間が経過している地点からサンプリングすること、(2)同質のメンバーによって構成されている地域からサンプ リングすること、(3)不動産取引市場が競争的な地域からサンプリングすることが望ましいこと等に留意すべきである。また、統計処理においては、地価関数 の関数形やその変数の選択にあたってできるだけ幅広く試行錯誤を行い誠実に選択し、その選択の理由を明らかにすることにより、調査の信頼性を確保すること が重要である。

3. CVM(仮想市場評価法)

CVMは、人々に評価対象財について説明した上で、その評価対財と引き替えに最大いくらまで支払ってもよいか(WTP)、もしくはその対象財を放棄する場 合に最低いくらの補償を受けたいか(WTA)を回答してもらい、財の価値を評価する手法である。この手法は、他の手法によって評価することができないあら ゆる財の評価が理論的に可能であるという利点を有しているが、一方で、評価精度を疑問視する者も多い。
本研究では、(1)CVMとオークション等による実証的評価結果の比較研究、(2)CVMと他の便益評価手法による評価の比較研究、(3)CVMの質問方 法を変えた場合の結果の比較研究、(4)scope test(範囲試験)等によるCVM結果と経済理論との整合性についての研究、(5)CVMの調査方法についての検討、(6)統計処理における信頼性につ いての研究等、CVMの妥当性と信頼性に関する議論について多数の研究事例を調査した。その結果、現時点におけるCVMの技術レベルとしては、調査の実施 方法によっては、調査結果について信頼性や妥当性が確保されているとは言えない場合もあることが分かった。従って、社会資本の便益評価手法としてCVMを 利用する場合は評価結果の取り扱いについて十分注意が必要である。また、調査の実施にあたっては、調査対象財を明確に定義し、シナリオをリアルにする等さ まざまな点に留意する必要がある上に、調査結果の統計処理においてもヘドニック法と同様の点に留意する必要がある。

◆発行

PRCNOTE第20号/平成10年5月

◆在庫

<在庫切>

◆詳細

詳細(PDF:547KB)