景観・環境形成のための国土利用のあり方に関する研究
〜欧州(独・英・仏・伊)の国土計画・土地利用規則と風景保全〜
◆要旨
近年、国民の豊かな生活環境やアメニティの充実とともに、自然との共生、風景の保全といったニーズの高まりが見られるところであり、これらの諸要素を適度に取り込んだ国土利用のあり方が重要となっている。
一方、我が国における土地利用制度は、所有者の裁量に委ねられている部分が多いため、経済効率性が重視された高度成長期以降、市街化調整区域におけるスプ
ロール開発が行なわれた結果、都市的利用と農村的利用との混在がもたらされ、都市基盤の効率的な整備や農地の集団的な利用を阻害するなどの課題がある。
これらの課題に対応しつつ、都市及び周辺地域が連携して、良好な風景を保全していくことが必要であるが、とりわけ我が国では地方公共団体の景観条例等にお
いて先駆的な取り組みが一部見られるものの、先進的なドイツ等に比較して風景保全のための国土利用に関する認識やノウハウに乏しい。
本研究は、風景保全に関する欧州4カ国(独・英・仏・伊)の先進的な取り組みを比較分析し、各国の国土計画、土地利用規則及び風景保全制度の特徴の整理を行ったものである。
これらの国における風景保全制度の特徴として、1.都市・農村の区別なく国土全域を対象とした一元的かつ厳格な土地利用規則の存在、2.国土全域を対象と
した風景保全に関する制度的枠組みの存在、3.土地利用計画・規制を通じた風景保全の実践の3つのポイントにまとめられる、ということを示した。
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