次世代マルチモーダルITS研究会報告
−プローブデータを活用した交通情報の把握に関する研究−
◆要旨
近年、産学官をあげて、高度道路交通システム(ITS)の実現に向けた取り組みが行われている。幹線道路からの交通渋滞や交通規制情報をリアルタイムにカーナビゲーションシステム等へ送信する道路交通情報通信システム(VICS)や、各種道路の自動料金収受システム(ETC)等のITSサービスによって、交通の効率化が実現され、事故や渋滞を削減する他、省エネルギーや環境との共存も期待されているところである。
ITSの取り組みの一つとして、プローブデータ(プローブとは「探針」の意味)の活用が注目されており、プローブデータを基にした交通状況の把握、またそれを応用した交通流の分析等の研究が進められている。
プローブデータとは、一台一台の自動車をセンサーとみなし、車両に搭載したプローブ車載器が、車両の位置、速度、その他の車両制御情報を車外の情報センターへモバイルデータ通信によって送信するデータのことである。車両のプローブデータから、車両が位置する近傍の交通動態を推定できるため、それを集計・解析することによって、各種の道路交通情報への加工が可能となる。これらプローブデータは、大規模な道路側インフラによる情報収集をせずにきめの細かな情報を取得することができることから、これらを活用した技術は、次世代のITSの展開に非常に有益であるといわれている。例えば、動的な経路誘導技術による移動所要時間の精度を向上させることによって、これまでのカーナビゲーションシステム等のITSサービスの精度向上を支援できるようになる。また、運送事業者が個々の車両の管理へ応用することも可能となる。
しかし、プローブデータの活用によって交通情報の把握及び精度向上を行うためには、車両から得られるプローブデータの解析精度の向上が不可欠である。また、プローブ車載器を搭載した限られた車両から信頼できる交通分析を行う技術の開発も必要である。
本研究所では、こうした課題に対処するため、学識経験者と実務担当者から成る「次世代マルチモーダルITS研究会」を立ち上げ、プローブデータを活用することによる交通情報の把握を目的とする調査研究を行ってきた。本報告書は、当該研究会にて検討した項目について、担当する研究会メンバーに執筆して頂いたものである。本報告書発刊にあたり、執筆頂いた研究会メンバー、またその他多くの貴重なご意見を頂いた研究会メンバー諸氏に厚く感謝の意を表する次第である。
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