社会資本整備等における資金調達に関する研究
〜PFIの資金調達〜
◆要旨
PFI法の施行以降、PFI事業の件数は増加し、対象分野も多岐なものとなりつつある。事業件数の増加に伴って、事業スキームの改善も進んでおり、例えば事業期間や事業の検討期間等は、民間事業者、金融機関等の考え方等を考慮したものに改善されている。しかしながら一方で、応募件数が少ない事例もある。今後、競争的な環境を構築し、PFIの効果を得るためにも、民間との対話プロセスの充実が必要である。
PFIの資金調達手法はプロジェクトファイナンスである。このファイナンス手法は、キャッシュフローの確実性と保全がポイントとなる。キャッシュフローの確実性は、事業の必要性と公共主体の信用力が基礎となり、その上で、適正なリスク分担とリスクマネジメントが行われていることである。保全は、事業の継続によって資金を回収できるような措置と介入権を確保することであり、この保全措置は、公共主体が要請する事業の継続性に資するものである。
PFI事業では、公共サービスの質の向上と安定性のため、事業者に適切なインセテンィブを付与すること、適切なリスク分担を構築すること、IRR、E-IRRといった事業性を表す指標を適切な水準とすること等が、事業構造として求められる。また事業者の選定では、各指標の水準に加えて、リスクマネジメントの巧拙を十分に留意することが重要である。
今後の資金調達は、金融機関等の裾野の広がり、資金の再調達(リファイナンス)、証券化、債券等の資金調達の多様化、劣後ローンやエクイティに対するリスクマネーの供給を図ることが課題となる。
リファイナンスについては、イギリスでは、2002年にOGC(OfficeofGovernmentCommerce)が、リファイナンスによって生じる利益のシェアについてガイドラインを設け、新たに実施される事業については、1:1の割合でシェアすることとしている。我が国においては、サービスが提供開始されたPFI事業はまだ少ない状況であるが、近い将来には、リファイナンスの問題のように、事業が進展した段階で明らかになる問題、事業が良好に推移し予想外に利益が生じる場合への対処について検討が必要となる。
我が国でのPFIは黎明期にあって、今後も様々な課題が発生すると考えられる。PFIの3大プレイヤーである、公共主体(国、地方自治体等)、民間事業者(商社、ゼネコン等)、金融機関等(銀行、リース会社、生損保等)それぞれが、公共サービス、事業性、資金調達の視点、考え方等を理解するとともに、情報の開示や対話の充実を図ることが、その課題の解決やPFI事業の推進において肝要となる。
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