国土交通省 国土交通研究政策所 Policy Research Institute for Land, Infrastructure, Transport and Tourism

サイト内検索 English
 国土交通政策研究所は、国土交通省におけるシンクタンクとして、内部部局による企画・立案機能を支援するとともに、 政策研究の場の提供や研究成果の発信を通じ、国土交通分野における政策形成に幅広く寄与することを使命としています。
  

TOP研究成果調査研究成果報告書(年度別) > 報告書概要

 ● 報告書概要


 NPOによるボランティア活動の支援方策に関する研究

−環境・景観保全等を中心としたボランティア活動の資金調達に関する一考察−

◆要旨

自然環境や文化財保護の分野で盛んになりつつあるボランティアの役割

 わが国は豊かな自然や歴史的な文化財を有しており、多くの世界遺産の登録などが行われている。それらの多くは国定公園や国宝が中心であり、保護は古くから行政が主体となって活動を行ってきている。一方で、近年、自然環境や文化財を守るボランティア活動が盛んになってきており、各地ではより良い保護活動を目指して、行政とボランティアの協働による保護活動が行われつつある。
 しかしながら、協働を行うようなボランティア活動をするにあたり、活動を維持するための人材や資金などの資源、特に資金不足の問題から持続可能な活動になりにくいのが現実である。日本の自然環境や文化財を生かし、より魅力的な国・地域づくりを目指すためには、行政とボランティアが一体となり、保護活動を行っていく必要があると考えるが、持続可能なボランティア活動とならない限り、その実現は難しい。
 本調査では、近年、活発になりつつあるボランティア活動、特に、自然環境や文化財等の保護に係るボランティア活動が持続可能となるよう、NPOやボランティア団体における資金調達を調査し、具体的方策を提言することを目的としている。

米国との比較:個人の寄付額で米国と日本では大きな開き

 1998年にいわゆるNPO法が制定されて6年が経過し、現在、全国にはおよそ18,000のNPO法人が設立されている。加えて、法人格を有しないボランティア活動団体はその何十倍もあると考えられ、草の根の地域づくりが各地で進みつつある。
 一方で、ボランティア活動が盛んになるにつれて、これらの活動を維持・運営する基盤となる活動資金の調達が大きな課題となっている。日本では、こうした NPO法人やボランティア活動団体等(以下、NPO)の活動を支える基盤として行政の補助金や企業の助成金が大きな役割を果たしているが、米国やヨーロッパ諸国では、一般の市民が寄付を通じてNPOの活動を支援することが定着しており、寄付金収入や会費収入などのいわゆる個人からの資金がNPOの活動を支える重要な基盤となっている。
 特に米国では、2000年の1年間に発生した寄付は実に25兆円余といわれ、しかも、そのうちの8割以上を個人の寄付が占めている。これに対し、日本では 1999年に行われた寄付は5600億円余と、米国の約50分の1の水準である。しかもその8割以上が企業による寄付であり、個人の寄付はごくわずかにとどまっている。別の統計では、米国の1世帯平均の寄付額は1,620ドル(17万8200円)であるのに対して日本では1世帯あたりの寄付額が3,000円前後と大きく水をあけられている。

ボランティアの活動が持続可能となるような資金調達策とは何か?

 しばしば日本には、いわゆる「寄付文化」が乏しいといわれる中で、NPOは、その活動資金の多くを行政からの委託費や補助金、企業や財団からの助成金等から調達するケースが多い。これらの資金調達手法はNPO の活動基盤の安定に資する重要な収益源となる一方で、委託費や補助金は事業の内容や性格によってはその継続性に関して必ずしも保障されているとは限らないというデメリットも存在する。今後NPOが、より自立的、かつ、中長期的な視野のもとに安定的な運営を実現するためには、委託費や補助金の調達に加え、寄付や会費、事業収入などのいわゆる「自主財源」をより一層確保することが肝要であると思われる。
 そこで、本調査では、自然保護や文化財保護に取り組むNPOが、個人を出発点とする寄付金や会費を調達するための具体的方策について調査研究するものである。本調査研究では、ボランティア活動における資金調達の現状や課題、一般の寄付者のニーズに関する調査を踏まえ、寄付や会費等の形態で個人からの資金調達に成功している国内外の事例を研究し、ボランティア活動の資金的基盤を強化するための基礎的な知見を獲得しつつ具体的な方策について提案することを目標とする。

 本報告書は以下のような構成になっている。
 第1章においては、わが国におけるNPOの資金調達に関する一般的課題について、主に文献調査を通して整理を行い、資金調達に課題がある現状を確認した。
 第2章においては、わが国におけるNPOの資金調達の現状を、代表的なNPOの資金調達について実態調査を行い、調達額や団体固有の方策及び調達額全体に占める寄付金や会費の調達比率が極めて小さいこと等を出来る限り明らかにした。
 第3章においては、寄付や会費をNPOに支払い、支援者となる可能性のある一般の方へのアンケート調査結果を示す。アンケート調査結果より、寄付の動機や寄付を通じてNPOへ期待すること、今後寄付金等を増やすためにはどの様なことが必要か、等を整理した。
 第4章では、寄付金や会費の調達に成功している国内外の団体について、実態調査を通じ、その額及び方法について出来る限り明らかにした。その結果、個人からの支援が多く受けられる団体は、寄付金への意識や手法にいくつかの共通点があることが明らかになった。
 第5章では、第3章及び第4章の調査結果をふまえて、今後、NPOが寄付金や会費をより多く調達するためには、どのようにすればよいか「5つのポイント」と具体的方策である「10のアクションプログラム」に整理し、提案した。また、NPOが個人からの寄付金や会費などをより円滑に、より多く受けるために行政などはどのように対応すればよいかも併せてまとめた。

 なお、本報告書の本文中では、簡略化のため、ボランティア活動団体(任意団体)、特定非営利活動法人、財団法人等、公共的な活動を行う民間の団体を、法人格の有無にこだわらず「NPO」と表記し、特に任意団体、特定非営利活動法人、財団法人をさすときに限り、その都度特定して表記している。

謝辞

 ヒアリング調査実施にあたっては、多くのNPOの皆様にご協力頂いた。本研究のとりまとめにあたっては、千葉商科大学井関利明教授、シーズ=市民活動を支える制度をつくる会轟木洋子様に貴重なご意見を頂いた。また、研究の実施全体にあたっては、(株)日本総合研究所嵯峨生馬副主任研究員から多大な貢献を頂いた。ここに記して感謝の意を表したい。

◆発行

国土交通政策研究第41号/ 平成17年1月

◆在庫

<在庫有>(重量:600g 厚さ:11mm)報告書を郵送希望の方はこちら

◆詳細

詳細(PDF:2.0MB)

◆事後評価

内部評価シート(PDF:112KB)
有識者評価シート(PDF:104KB)