社会資本整備等における資金調達に関する研究 (Phase2)
〜海外のPFIにおける資金調達とわが国の課題〜
◆要旨
本研究では、イギリス、オーストラリア等の先進国において金融市場を通じた資金調達を行っている社会資本整備事業(主にPFI事業)の事例調査を通じて、その仕組みやこれを支える諸制度、ディスクロージャーのあり方等を整理するとともに、我が国の現状と比較することにより、我が国におけるプロジェクトファイナンスによる社会資本整備における資金調達の課題を抽出・整理している。
現状の我が国のPFI事業の資金調達は、スポンサーからの出資金と銀行からの融資(間接金融)のみに依存している。しかし今後は、その時々の市場の状況や、制度、投資家のリスクに対する姿勢等に応じて、ニーズに合致した最適な資金調達スキームを柔軟に構成できるようにする必要がある。そのためには、株式、債権等の直接金融も含め、金融市場等からの資金調達を図る仕組みを整備し、多様な資金調達源を確保する必要がある。
この多様な資金源としては、株式、融資、債券、公的資金等がある。本研究では、プロジェクトファイナンスによる社会資本整備において、株式や債権の発行による金融市場からの直接金融を行っており、かつ参考となる資料が豊富なイギリス、オーストラリアの事例について整理した。
イギリスは、初期のPFI事業における株式の比率を高める試みがうまくいかなかった結果、株式投資はリスクが高いという認識が形成・浸透したこともあり、銀行融資と債券発行が主たる資金調達源となっている。出資比率も小さく、上場株式発行もほとんどない。
オーストラリアは、銀行の協調融資から始まったが、超長期だが確実な収入がはいってくるというインフラ投資の特性が金融市場に浸透し、債券発行や上場株式発行による資金調達が急速に発展し、現在は、たとえば、融資と債券で条件のよい調達を選択できるなど、上場株式、融資、債券による資金調達の間でバランスが取れている。
こうした先進諸国の事例や、我が国の現況の金融制度、事業の種類等を踏まえると、我が国における社会資本整備の資金調達の多様化を図るためには、プロジェクトに関するディスクロージャー、格付け、法的枠組み、税制優遇措置等の社会システムの整備や、成功事例の蓄積による市場への安心感・投資意欲の醸成、資金調達の多様化に資する主体の育成が重要である。また同時に、独立採算型・サービス購入型などの各タイプの特性に応じて、資金調達の仕組みの整備を優先順位をつけつつ行っていくことが重要である
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