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● 報告書概要
公共工事の入札・契約における行財政効率化と適正施工確保の両立のための「制度設計(メカニズム・デザイン)」に関する研究 ◆要旨 1995年の公共投資額35.2兆円が2007年に17.2兆円と、12年間で半減するなど、建設業界は長い不況の中にあり、ダンピング常態化の状況にあるともいわれている。
現実の公共工事の入札・契約において入札価格が低下傾向にあることが、理論的にも工事の品質低下に繋がる懸念があるという考えのもと、入札・契約制度や工事の品質に関するデータを調査・分析した。 公共工事の入札契約においては、受注者の能力、努力水準、コスト構造等を発注者が正確に把握できないという情報の非対称性に起因する非効率性が発生しており、それが品質確保とコスト削減のトレードオフを生む。情報の非対称性下における契約の問題は、経済学で「メカニズム・デザイン理論」として分析されており、本研究ではこの理論に基づきモデル分析を行った。解析により、瑕疵発覚の場合、不発生時の報酬から20%程度のペナルティをとることが最適とされた。また、受注者の能力を調査すること、検査により努力水準を把握すること等に注力することで、状況を改善できることが示された(第1編)。 第2編では次の整理・分析を行った。@最近10年間において、一般競争入札の導入等発注制度のみならず、刑事罰・課徴金等の強化を含む一連の入札制度改革が行われた。その主眼は公正さの確保と競争性の強化であった。A国等の発注機関で一般競争入札の採用が拡大したことと並行的な現象として、落札率低下が顕著に見られる。B建設業者の過剰傾向と公共投資減少とが原因となって、落札率の一般的低下現象を超えて、落札率が極度に低い案件が発生していると見られる。C国土交通省が入札にかけ、低入札工事のまま発注された案件の中に、工事評定の点数が限度を越えて悪いものが相当数あることが明らかになっている。D瑕疵の潜在性等の問題があるため、公共工事の品質の把握には工事評定以外の方法を用いることが難しい現状にある。工事評定で極端に悪い点が発生しないことに資するとともに、下請け業者保護、不公正な取引の防止等の観点も踏まえ、各発注者を通じ、ダンピング防止に関わる行動が実施されている。Eその一環として、総合評価方式が、国・都道府県・指定市・一般市町村にわたって広く採用されるようになってきている。これもメカニズム・デザインの一例といえる。Fこれにより、各発注者において、最低入札者以外の者が落札するケースも増加している。これが工事の品質悪化の防止に寄与している面があると考えられる。G品質低下防止努力の一環として、各発注者は施工管理段階での取組みも強化している。 |
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◆キーワード |
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◆発行 |
国土交通政策研究第83号/平成21年3月 |
◆在庫 |
在庫有(重量:300g 厚さ:6mm) 報告書を郵送希望の方はこちら |
◆詳細 |
詳細(PDF:3.76MB) |
◆事後評価 |
内部評価シート(PDF:86KB) 有識者評価シート(PDF:86KB) |