大臣会見

馬淵大臣会見要旨

2011年1月7日(金) 10:50 ~ 11:35
国土交通省会見室
馬淵澄夫 大臣

閣議・閣僚懇

閣議後の定例会見を始めさせていただきます。
私からは冒頭3点の御報告がございます。
まず1点目、海上警察権のあり方に関する検討の基本方針についてです。
海上警察権は、前からも申し上げてきましたが、戦後60年間きちんとした議論が今日までなされないままにきたという認識でおります。
また領海警備につきまして、昨今、情勢の変化等、あるいは国民の衆目の的となるという状況が続いております。
こうした状況の中で私としては、海上警察権を抜本的に見直さなければならないと、このように考えて、昨年末、3回にわたりまして、有識者の方々によって海上警察権のあり方に関する有識者会議を開催させていただきました。
有識者の先生方から頂戴いたしました御意見を基に政務三役で議論をし、本日、基本方針としてまとめて御提示をした次第であります。
この基本方針では、今日における我が国の周辺状況に即した海上警察権のあり方を検証するとともに、海上警察権のあり方を踏まえて、海上保安庁の権限、あるいは任務、こういったものに対して具体的な見直しを進めていくという内容となっております。
常々私は申し上げておりますが、海上警察権の課題というのは、尖閣沖の問題を契機として、私自身があの事件、あの問題の本質がどこにあるのかということを改めて自らも、あるいは多くの方々の御意見を伺いながら考え抜いた中で、そもそも領海警備に当たる海上保安庁、その与えられている権限としての海上警察権、犯罪行為を取り締まる司法警察権と一方で犯罪抑止の行政警察権、こう称される2種類の警察権に対して果たして十分な担保がなされているのか、あるいは、海上警察という極めて特殊性の高いその警察権限において、我々が今必要な権限を十分に担保し得るのか、こうした問題意識から見直しを国会でも度々表明してきたものであります。
そして、これについては一刻も早い対応が必要であるということをかねがね申し上げてきました。
今日こうして皆さんと一緒に会見をしている今日、この時間においても、はるか洋上においては、我々の仲間である保安官が領海警備に当たり、それこそ荒天や様々な状況の中でも、命を賭して我が国を守る職務に精励をしていただいております。
こうした彼らの取組をしっかりと守るためにも、海上警察権のあり方というものは法改正も踏まえ、十分に我々が全力で取り組まなければならない課題であると思っておりました。
今般、こうした形で基本方針を提示するに当たりまして、この方針の下に法改正は今後十分に議論をさせていただきたいと思っておりますが、これも前にも申し上げておりましたが、あくまで行政警察権という中で、私たちは行政法のアプローチとしての取組を皆様方に御提示をしております。
本来、領海警備が一方で領域警備という形で防衛省あるいは外務省、様々な形に跨る国家安全保障上の関連もあることも十分に承知をしておりますが、こうした大きな議論になるとなれば、これは時間も相当程度掛かりますし、その調整にも一定の配慮も含めながら議論が必要になるということになります。
その間に、海上保安庁が行う職務について、何ら措置がされない状況が続いていくということは私は大きな問題であると、こうした認識に立ちまして、今回海上警察権のあり方に関する基本方針を示した上で、行政法のアプローチとしての検討を進めていただきたいと、このように指示をしたところであります。
これが1点でございます。
2点目、これも大臣就任時に申し上げてきた地方の疲弊に対して、あるいは国土交通省が今日における課題として、これもある意味、所管する立場の中で取り組まなければならない課題であるにも関わらず、そこに手をこまねいてしまったことに対する反省も踏まえて、私が訴えた建設産業の大きなグランドデザイン、抜本的な見直しということ、その在り方そのものについて議論を深めたいということで私が設置をしました建設産業戦略会議、この基本方針の取りまとめについて報告を申し上げたいと思います。
これも今後の建設業、特に地域の建設産業、こういった方々の再生、あるいは市場の中での秩序ある仕組みというものを我々がしっかりと所管する立場として提示をしなければならないということから、3回にわたりまして検討を進めてまいりました。
そして今般その基本方針を取りまとめたものであります。
まず、基本方針においては、建設市場が縮小する中で、地域の担い手である建設企業が単に市場に委ねる形で淘汰される、これを市場による原理だと放置しておいてよいのかと。
地域の建設企業が担う役割は、地域のコミュニティ、あるいは防災、災害対策等、極めて重要な役割があります。この担い手としての位置づけを明確にしながら、一方で地域を維持する契約方式、こうした地域維持配慮型の契約方式などの検討も含めて進めてまいりたいということを、まず1点掲げております。
さらには、雇用を守るという意味においては、単に雇用形態を守るということではなく、そこに働く人々が、それこそ安心安全に働く、人としての生活がしっかりと維持できる、その意味では人を大切にする建設産業というものを私たちはしっかりと明示していかなくてはならないと思っております。
その上で、保険未加入企業の排除、あるいは重層下請構造を是正するための仕組み、これは例えば下請構造に対しては、何層までということの中での様々な仕組みを考えていかなくてはならないと考えておりますが、契約形態の中での制限等々、こういったものも検討してまいりたいと思っております。
さらには、地域の中小・零細企業だけではない大手・中堅の皆さん方にも、発展する創造産業として頑張っていただきたい、そのための我々が取り組むべき課題は何かと言えば、新規事業分野に積極的に打ち出す際のリスクテイク、これを政府として何ができるかということを検討していかなくてはならないと思っております。
昨今、海外事業における債権を十分に回収できない状況、こうした事案が相次ぐ中で、政府としても、例えば契約ベースの段階から十分なセーフティネットを張るような手立ては組めないか、あるいはスーパーゼネコンのように高い技術力を持つ企業だけではなく、我が国の建設産業が持つその基礎的な技術、これも高いレベルにあります。
例えば現場管理、あるいは品質管理等々といった我が国では当たり前と思われる技術レベルが諸外国ではまだまだそのレベルに達していない、言い換えれば、こうした初歩的な技術レベルも十分に海外展開に資する、その可能性があるわけです。
私としては、こうしたポテンシャルを持つ企業の海外展開にも政府として取り組めるという仕組みを考えてまいりたいと、このように思っております。
そして4点目としては、供給過剰構造の是正に向けて、これはなかなか、まさに市場の中での淘汰の話に繋がるので、政府としても非常に難しい課題だと思っておりますが、いわゆる再編、転業支援というのは、今日までも前政権も含めて取り組んできた中ではミスマッチを生んだり、上手くメカニズムとして回らなかったことに関しては私も承知をしておりますが、この転業支援も一つだと思います。
中には、廃業時の支援というものもあるかもしれません。
いずれにしても、再編、転業、廃業も含めた支援というものについては、これも参入要件を見直すということも含めて、十分に私達は考えていかなくてはならないと思っております。
こうした方針に基づいて検討を進めまして、3月中には入札契約制度など、具体的に実施できるものについて施策を取りまとめて、そして6月中には全体取りまとめと、必要な制度改正に繋げていきたいと思っております。
さらには、国土交通省のみならず、経済官庁として、他省庁と連携すべきところはしっかりと連携をしながら、そしてこれも私が所信表明で述べてきましたが、産業の背骨としての、その一角を成す建設産業に対しての今日までの不作為の責任を、しっかりと今日果たしていかなくてはならないという決意をお伝えしたいと思います。
これについては、私はかねがね野党時代も再三当時の政府を追及してまいりました。
例えば、官僚は上が決められない、あるいは政治の判断が遅いといった形で自らの失策、失政については政治の責任とし、そして政治は、前例を踏んでいる前大臣、あるいは元大臣の流れの中で、そしてさらには政権交代が実現をした後も、今日において、財政が厳しいから、こういった様々な理由をつけて本来国土交通省が取り組まなければならない課題とする所管する産業の在り方について、私はある意味気付きながらも目を閉じていた、耳を塞いでいた、こういう所があるのではないかと思っておりました。
今回、まさにこの不作為による無責任の連鎖を断ち切るべく、国土交通省としては大きく一歩を踏み出すということになります。
これは大変な仕事であり大変な作業であるということは認識しておりますが、右肩上がりでの、パイが拡大の中では分配は非常に楽でした。
しかし、縮小する中では、改めて市場のメカニズムを十分に評価をしながらも、市場だけでは果たしきれない秩序をどのような形で作っていくかということに対して、国交省として全力で取り組むということを示したものであります。
これが、今申し上げた建設産業戦略会議の基本方針の取りまとめでございます。
そして最後に3点目であります。北方交流事業の後継船舶の船名公募についてであります。
北方四島との交流事業に使用しております後継船舶につきまして、平成24年度の供用開始を目指して建設を進めているところであります。
この度この船の名前を広く公募することといたしました。本日から募集を開始いたします。
多くの国民の皆様方から、北方四島は我が国固有の領土であると、国民世論の啓発となるシンボリックな船舶となって、名前を多くの方々から応募をしていただきたいと思っております。
詳細はお配りした資料に載せているとおりでございますので、御覧いただきたいと思います。
以上、私の方から3点の冒頭発言とさせていただきます。

質疑応答

(問)海上警察権の話ですが、尖閣の件が契機であるという発言がございましたが、具体的に何ができなくてどういう支障があったので法改正をしなければいけないのか、一部現行法の運用の範囲内でもできる話ではないかという見方がありますが、何が法に書いてないから不備だったのかというところをお願いします。
(答)まず、法改正に関しては、法改正も踏まえてこれから検討を開始するということですので、逐条的に今何がどうだということを申し上げることは控えたいと思いますが、私の認識としては、司法警察権は今回、尖閣問題でも十分にそのことを承知しながら、海上保安官は国内法に則って適切に対処したと思っております。
しかし、以前の事案発生前の行政警察権の行使においては、検査あるいは退去勧告、警告、命令といったところに踏み込むまでの具体的な規定、いわゆる事案発生前、事案発生時、事案発生後という3類型における抑止力の行使というものについては、まだまだ不十分であるという認識なのです。
これは今回の基本方針に個別具体例を記しているわけではありません。
と申し上げますのは、正にここから議論をして、条文と照らし合わせて、今後、法改正はどの部分が必要なのかということを十分に検討していただきたいということでありますから、私としてはこうした問題点を、今まで海上警察権という言葉はあっても、具体的に司法警察権、行政警察権、陸上とどのように違うのか。あるいは陸上警察が、これは警察庁でありますが、今日、警職法と呼ばれる警察官職務執行法に基づく様々な執行に対して補完する形で陸上の警察は法律が今日まで作られてきました。
こうした経緯と比較をしながら、海上警察の特殊性、国際条約に縛られる、あるいは国際ルールに基づかねばならないといった特殊性を鑑みて、今回の見直しに当たったということでありますから、御指摘のような条文、あるいは具体事例ということに関してはこれからの検討の中で明らかにしてまいりたいと思います。

(問)以前、前原前大臣が会見で地方を中心に国内の建設市場は地域の建設業に任せて、大手ゼネコンは海外で稼ぐべきだとの持論を話されたことがありました。
馬淵大臣も同じように考えていらっしゃるという理解でよろしいでしょうか。
(答)中小零細は国内で、大手は海外でというような一律的な仕組みではないと私は思ってます。
先ほど申し上げたように、現場管理、あるいは品質管理といった建設産業においては極めて基本的な技術の問題も諸外国ではまだまだ到達していないといった事例があります。
言い換えれば、諸外国から来られる方々が現場を御覧になって、このような安全管理がどうしたらできるんだとか、あるいはこうした品質管理はどのようにやっていくべきなのかというような、非常に初歩的なと言ったら失礼かもしれませんが、基本的な質問を多数いただくことがあると聞いています。
言い換えれば、地方のゼネコン、専門業者も含めて、こうした技術を海外展開するという方法も十分にあると思っているのです。
ですから、私は大手は海外へ、中小は国内に留まれというような一律的な枠組みを決めるのではなくて、今までは市場メカニズム、市場の論理によってある程度、供給過剰構造含め市場の食い合いの中でいずれ淘汰されるだろうというぐらいにしか見られてなかったものを、我々としては秩序を作って、その上でルール作りや支援策を用意しながら、産業として自然に淘汰するのを待つなんてことは産業を所管する官庁としてあってはならないことだと思っていますから、私は成長する分野というものをいずれの場面でも提示をしていくという意味で、今回この建設産業戦略会議を設置をして基本方針を取りまとめたということでありますので、今申し上げたように、業態や規模によって市場を限定するなどということではないということを御理解いただきたいと思います。

(問)もう1点。
その前原外相ですが、先月アルジェリアの高速道路問題について、先方の外相と話し合ったという報道がありました。
馬淵大臣はこの問題についてどのようにお考えでしょうか。
(答)大変有り難い、御尽力、御努力をいただいたと思っております。
私の方からも前原大臣には感謝の言葉を述べさせていただきましたし、お会いしたときに御礼を申し上げました。
これは民間の契約ですので、国土交通省が所管しているといえども、民間企業が外国政府と契約を結んだものに対して我々がものを言う立場には残念ながらないのです。
唯一、外交ルートにおいて外交上政府に対して、外国政府の債務の支払、民間企業にとっては債権をしっかりと履行していただきたいということを求めるということについての配慮のお願いといったことは外交ルートでは可能です。
その意味で、前原大臣におかれましては、日本国を代表して外交ルートを通じてお話しいただけたと思っています。
ただ、このようなことが起きないように、事前に、例えば外国政府との契約においても十分に知見やノウハウを政府としても用意をしていくということも必要なのかもしれないと思っております。
さらには、トップセールスだけではなくて、前原大臣に正にやっていただいたような形も含めて、我々が何か事があったときにはトップクレーマーとしてもものを言っていくんだという姿勢が、海外への展開というものを安心して行えるような企業のバックアップ、産業のバックアップができると思っております。
そういう意味では、今回の前原大臣のアルジェリア政府に対する発言というのは大変に有り難いと思っております。

(問)この問題について、国土交通省は外務省と連携を取るなどしているという理解でよろしいのでしょうか。
(答)当然ながら、外務省と情報はしっかりと共有させていただいて、場面場面で我々ができないことについては外交ルートでお願いをするということをさせていただいています。

(問)海上警察権の見直しの関係ですが、国際法との絡みの関係ですが、大きな問題として中国の漁業監視船、外国の公船ということで、国際法上、警察権免除、外交官特権と同じように免除されている。
こういった問題が、ある意味脅威だと思うのですけれども、起こってきている。
今回、これは法改正含めての議論になると思うのですが、これに対して警察権を適用できるのかどうかという部分、そこの脅威に対してどう対応するのかというところを教えていただけますでしょうか。
(答)整理をさせていただければ、今御指摘の部分は無害通航権の問題なんです。これは国際法上、条約で定められた権利として当然公船等、行使できる権限です。
これについては、当然海上警察権というのは及ばないです。
ですから国際法上に関わるものについて言えば、今後は当然外務省と調整をしなければならなくなります。
ただ、これは既に条約として成立をしているものでありますから、我々としては、そこに関わるものを何か海上保安庁法の中でやろうとしている話ではありません。
先ほど申し上げたように、外務省、防衛省、あるいは漁業に関して言えば農林水産省も入ります。
警察庁も当然入ってきます。警察権という概念から言えば、今法令の励行という形で個別法は警職法を引用しながら使えるようになっていますから。
こうした形で正に所管する省庁というものが多岐に渡ります。
このような議論は、私は当然ながら根本的に必要だと思っていますし、野党の皆様方がおっしゃっている領域警備法もこうした概念から出てくるものです。
ただ、これをやろうとすれば相当の時間が掛かる。
少なくとも1年、あるいは2年といった年月を最低限かけて十分な議論を行わなければならなくなる。
私が危惧しているのは、その間も海上保安官は領海警備に当たっているわけです。
尖閣の事案のように領海を越えてくる様々な民間漁船含めた、あるいは不審船と呼ばれるような船その他あるかもしれない。
そういったところにどのように対処できるかです。
犯罪事例として事案として取り締まることは1つではありますが、行政警察権の行使というものをもっと幅広く運用、適用できるようにすることによって、司法警察に行く以前の状況で十分に領海を守るということができるのではないかと、こうした問題意識から海上保安庁法、あるいは領海航行法という、我々国土交通省海上保安庁が所管する法律の範囲の中で、いわゆる行政法の範囲の中で対応できないかという検討を始めたということです。
ですから御指摘のような部分は、我々の所管を超えるものでもありますから、こういったものは今後政府全体として十分議論していくことであって、今回の検討のあり方に関する基本方針に基づいて進めていくという話ではないと思っております。

(問)具体的にどうこうすべきだというお考えはないのでしょうか。
この管轄権が免除されているという実態に対して。
(答)繰り返しになりますが、それを我々国土交通省だけで決めることはできません。
政府全体の話なのです。
それは私が国土交通大臣として発言できる範囲を超えます。
したがって、それは、繰り返しになりますが、政府全体としての議論が必要だということになります。
今、方針として出したのは国交省としてできることを、国民の皆様方に御提示しているということです。

(問)関連して、今の海上保安庁法と航行法については、法改正は今後の検討ということですが、間に合えばこの通常国会に提出されるお考えがあるのかというのが1点と、今回、これは有識者会議のまとめという形ではなくて、大臣の名前での基本方針というふうになっていますが、こうされた理由について、2点お伺いします。
(答)もちろんこれは今後の検討如何なのですが、それによって法案の改正というものはより具体的に検討が進められ、そして十分に精緻なものとして出来上がれば、待つ理由というのはなくなります。
したがいまして、私としては法案として完成する段階で判断をしていかなればならないと思っています。
それから、有識者会議としての報告書ではないということでありますが、警察権だけではありません、国際法あるいは海洋法、行政法を含めた幅広い有識者の皆様の御意見を頂いて、最終的に、国土交通大臣として取りまとめたものでありまして、もともと有識者の皆様方の報告書を出すという前提で作ったものではありませんので、なぜかと問われれば、そういう目的で作ったものだと、私が大臣として年始に発表していく、示していくために、皆様方に御議論いただいたと、このように私は思っています。

(問)海上警察権について関連して、他省庁の関係する法律の改正についてなのですが、昨日、菅総理に報告された際には、菅総理からは取りあえず国土交通省としてできることをまず先んじてやってくれという指示だったのか、それとも関連する法律についても、総理の方が例えばリーダーシップを取ってバックアップをしていくというような考えなのか、どちらなのでしょうか。
(答)昨日初めて菅総理にお伝えをしたわけではありません。
これはそもそも尖閣事案を契機にというふうに申し上げたように、私としては政府として取り組んでいかなければならない課題だという位置付けの中で何ができるかということは、官房長官、総理とも御相談しながら進めてきたということであります。
もちろん、具体的な方策については、私の判断でやりました。
その上で総理に報告をして、海上警察権のあり方についてこういう形で進めますということについては、しっかりやってくれと、こういう御指示でした。
何か注文があったわけではありません。

(問)先日の会見でもありました、高速道路の無料化政策と交通需要管理の考え方の関係についてお尋ねしたいのですが、原則無料化と言いますと、語感からして大部分を無料化するというような印象を受けますが、交通需要管理の考え方からして、そういう大部分を無料化するのだという理解でよろしいのか、需要管理の考え方からすると、必ずしも結論としてそうならない可能性もあるのか、その辺はいかがでしょうか。
(答)まず、交通需要管理の観点から言えば、交通量があれば、それは当然料金抵抗を課してコントロールするというのは基本的な理念です。
一方、交通量に関しては、前から申し上げているように、交通需要推計の抜本的な見直しを行っているのです。
今まではとにかく、増える、増えるの前提でありました。
将来にわたってどのような交通需要推計になるのかということを統合モデルで今後明らかにしていくのです。これによって、全く絵姿は変わると思っています。
今までは、とにかく右肩上がりで全部増えることになっているのです。
もう皆さん御案内のように、それによって要らない空港が造られただの、あるいは道路が造られただの、様々な御批判があったわけです。
我々もそのことは野党時代指摘をしてきました。
もっともっと根本となるこの需要推計の見直しが最大のポイントなのです。
これを私は副大臣時代から取り組んできて、いよいよこの春には、いわゆる第1段階を終えて、第2段階はこの夏までに終了するわけです。
これをもって、ある意味、今後の見通しというものは明らかになっていくと思っています。

(問)つまり、その結果として、繰り返しになりますが、マニフェストに掲げられた原則無料化ということからすれば、大部分を無料化するのだという理解でよろしいのか、需要管理の考え方からすると、必ずしも結論としてそうならない可能性もあるのか。
途中のロジックはともかくとして。
(答)原則なのです。正にTDMの観点から原則無料化をしていくということです。
最もロジックが重要なのです。
途中のロジックはどうでもいいではなくて、どのようなプロセスでどのように提起をしていくかが私は最大のポイントだと思っています。
それが見えないからこそ、多くの国民の皆様方の不安があるということですから、このプロセスを提示していくことが我々の責務なのです。

(問)大部分を無料化するかどうかということについては、いかがですか。
(答)繰り返しになります。需要推計が曖昧な中でどのような議論をしても意味がないのです。
しっかりそこを明らかにしていくこと、そしてこれは政権交代を成し遂げなければできなかったことです。誰も手が付けられなかった。
正にこれは政権交代によって、実現しようとしているわけです。
私は、繰り返しになりますけれども、将来にわたって言えば、人口減少社会、そしてさらには公共交通機関への様々なモーダルシフト、これらを勘案すれば、渋滞というものについては相当程度緩和されると思っています。
その意味では、私のイメージですよ、これは。私のイメージでは、かなりの部分が無料化されていくと思っています。
その意味で、原則無料化というものは、決して方向としては間違っていませんし、今後も、この無料化施策というのはTDMが根本ですから、それに基づいて進められるものだと思っています。

(問)トラックとバス業界に対する交付金についてお伺いいたします。
年末の税調で、制度を担保するための法制化という方針が打ち出されました。
議員立法という話も現在聞いているのですが、国交省の政務三役との調整も事前に必要になってくると思います。
現在の状況をお聞かせいただけますか。
(答)まず、現時点においては、何らかの新たな動きというものは国交省においては取っておりません。
これは、私はかねがね申し上げてまいりましたが、この交付金に関しては、暫定税率の見合いとして措置されたものです。
そして、このような形が本来の仕組みとしてはおかしいではないかという御議論も十分にあるということを踏まえながら、見直しを図ってきたと。しかし、今日暫定税率が存置されていると。
少なくとも、暫定税率に等分のものが残っているという状況の中で、交付金は23年度存置される形になっていますが、では、新たな法整備となったときに、これは私はよく政調のメンバーの皆様に申し上げましたが、所管する公益法人に立法措置をして新たな交付金などという形で補助を行うなどということは、あってはならないと思っています。
最も公益法人改革含めて、こうしたものを排除して一部の業界、一部の団体に、特定に、いわゆるお金を渡す、あるいは権限をばらまくということは、厳に慎むべきであるということを政権交代時に申し上げてきた。
したがって、私はこうしたものの措置を、国交省が国交省の法律で行うことはあってはならないと思っていますし、それこそ国民に対する背信行為だと思っています。
本来は暫定税率の見合いであるならば、交付金に値する部分は、暫定税率の部分で減税措置をするということが1つの考えだと思います。
これは税の問題ですから、私が発言するとまた財務省を刺激することになるかもしれませんが、いずれにしても、今申し上げたように、所管する団体だから国交省がどうにかするという話では全くない。
あくまで、かつての自民党政権時代に作られた仕組みが今ある、それをどうするかということの議論だと思います。

(問)沖縄訪問についてお尋ねします。菅総理が内閣改造の構えも見せている中で、問責を受けられた大臣の処遇というのも焦点になっているのですけれども、その中で改めて沖縄を訪問されるということの意図をお聞かせください。
それと、沖縄との関係は普天間の問題でこういう状況になっている中で、かなり継続的な信頼関係が必要だと思うのですが、今後の意気込みというか、そういったものをお聞かせください。
(答)改めて訪問する意図でありますが、私としてはできる限り年内でという思いでありました。
ただ予算が成立をして、そしてその後というタイミングはなかなか難しいということで、年明けに繰り延べられたということでありますので、沖縄を担当する大臣として、沖縄は10年ぶりに前年比増になったわけです。
そして知事の再選を受けて、仲井眞知事から受けていた要望に対しても、一つ一つ我々としては誠意ある回答をしてきたつもりです。
一括交付金も321億5千万円、大変大きな金額を沖縄単独で、これも内閣府に計上することができた。
いわゆる仲井眞知事がおっしゃっていた沖縄の振興交付金のような形で、今回措置することができたわけです。
こうした沖縄に対する政府の責任をしっかりと果たすということの表れを昨年末に予算措置という形で提示ができましたので、今度はこれを実行していく上で、具体的にどのようなサポートができるかということを、大臣として訪ねて、お役に立ちたいという思いを持って伺うわけでありますから、問責を受けた大臣だという御指摘でありますが、私は職務を全うする中では当然のことだと思っています。
そして、今後の継続性については、これも前回の会見で申し上げましたが、沖縄の場合は新たな産業の柱をやはり立てなければいけないのです。
IT、観光だけではないという部分で、バイオ、あるいは国際物流ということを例示しましたが、それ以外にも様々なポテンシャルがある、その中で、我々がバックアップできるものは何かということを具体的に膝を交えて、直接お話ができる機会を設けたいと思っています。
これが正に沖縄に対する政府の責任をしっかりと果たすという姿勢の表れであり、今後の継続に私は大きくつながっていく、沖縄担当大臣としての行動であり、まだ発現はしていませんが、現時の発言だと思っています。

(問)建設産業戦略の件ですが、先ほど業態や規模で市場を限定するものではないとおっしゃいましたが、戦略の中で地域の建設業の安定的な事業の確保という言葉があることとの関係性ということと、重層下請構造の見直しということをおっしゃいましたが、現時点で考えればすぐにそれをしてしまうとかなりドラスティックな話になってしまうと思いますが、過程というのはどのようにお考えでしょうか。
(答)まず、地域維持配慮型の契約方式というのは、以前に競争緩和型という言葉が出たように記憶しておりますが、私どもとしてはそのような競争緩和とか市場のメカニズムを歪めてしまうような発想は全く持っていません。
あくまで地域維持の配慮と。今後、私は常々申し上げてきましたが、公共事業に関してはいわゆる維持管理型の事業が増えていくと。
これは明らかです。維持更新のタイミングのものが到来してくるわけですから、維持管理型事業が増えていく中ではより一層地域に密着した事業者のその出番といいますか、参入する機会が増えてくると。
その中で、地域維持配慮型の契約方式というものをどのような形で作っていくことができるかということの議論を始めたいということです。
ですから、これは決して市場を限定するものではないと。ただ、私が先ほど申し上げたように、市場メカニズムを決して否定するものではないが、全てそこに委ねれば良いとしてきた過去20年、高度経済成長を終えて、バブルを終えた後のこの20年、私たちは本当に責任を果たしてきたかということです。
拡大するときは楽です。
どんどん公共事業をばらまけば良いわけですから。
しかし、縮小するときにこそ、縮小する中で市場に任せて潰れていくところは潰れてくださいなんていうことを役所として、経済産業を所管する官庁としてはあってはならないと思っています。
しっかりとした秩序とルールを持って提示をしていく必要があると。
繰り返しになりますが、不作為はだめなのだと、無責任の連鎖をここで断ち切るのだと、こういうことを役所内に号令を出していると。
大変な作業です。ある意味、大きな課題をこの役所に投げかけていると思っていますが、やらねばならないと思っています。
そして、この課題の認識は与党のみならず、野党の皆さんも共通して持っていただけると思っています。
ですから、是非こうした議論は、いろいろな意見があると思いますから、しっかりと皆様に御提示をしながら進めてまいりたいと思います。

(問)建設産業戦略に関連してですが、基本方針の実現に向けて政策手段をフル動員する必要があるということで3点、取組として挙げられていますけれども、それ以前にこういったパッケージ的な取組というか、特別立法であるとか、そういった考えというのは念頭にあるのかどうか、例えば、建設業法の改正等特別の改正で対応していくお考えなのか、それとも何らかの基本理念なりを示したようなものということが念頭にあるのかお聞かせください。
(答)行政の継続性の観点から言えば、基本方針に書いてありますけれども、「建設産業政策2007」でかなりの部分が網羅されています。
私は、有識者の皆さんとの議論の中でより俯瞰した基本的、大綱的な形でまとめる必要があるのではないかという御意見、御指摘を頂きましたが、私はむしろ今、正に起きている課題に迅速に対応するということが、実は全体を改めて見直すことにつながるのではないかということを申し上げたいのです。
そして、今回の取りまとめをしていただきました。
したがって、この2007に替わるいわゆる建設産業政策大綱2011みたいなものを作るということではなくて、まず実行ありきにやりたいと。
効果あることを施策として実施していくと。法改正が必要なものはどんどんやっていくと。
そのことを進めるためには、方針が必要ですから、今回一定程度フォーカスした分野でこの基本方針を取りまとめさせていただいたということです。
今後、これは建設業ではないかと御意見も出てくるかもしれません。
設計、あるいは企画といった分野、幅広くコンサルティングといった分野も含めて建設産業まで言うならば、そこまでを考えて今後どうあるべきかを示さねばならないのではないかという御意見が出てくると思います。
私は、そのときにはそのことの問題点を改めて客観的事実に基づいて明らかにして、その課題の解決を示していくことに取り組みたいと思っています。
したがいまして、全般を俯瞰する大きな大綱のようなものをまとめるということよりも、今申し上げたような形で、目の前の課題を迅速に対応できる仕組みを作っていくということを集中してやりたいと、このように申し上げている次第です。

(問)関連して、この中で過剰供給構造の是正といったかなり抜本的なところに踏み込もうとしていますが、今後の市場を見た場合に更にこれを急がなくてはいけないと思います。
大臣のイメージでは、だいたい何年ぐらいの間で適正な形にしていこうと思っていらっしゃいますか。
(答)正に市場がどうなるかによって定まります。
私は、今過剰だから何年以内に適正にするという議論よりも前に、最も重要なのは将来の公共事業というものは、どういうボリュームで、どういう内容、あるいは分野にわたって行われるかということを示すいわゆるビジョンが必要だと考えていまして、それが正に社会資本整備重点計画の抜本的見直しにつながるのです。
3月までにいわゆるそれぞれの計画部会で取りまとめを行い、夏までに作っていくわけです。
これは並行していきます。この社会資本整備重点計画の抜本的見直しによって、事業量も今後明記していくと申し上げていますので、向こう5年間のこの国の社会資本整備のあるべき姿が提示されます。
それに基づく中で、正に建設産業というものが、地方にどの程度再分配機能として果たされていくのか、公共事業が再分配機能として果たされていくのかということが見えてくると思います。
私は、ある意味打ち出してきた施策、社会資本整備重点計画の見直し、交通基本法制定並びにその交通基本計画の両輪での動き、この建設産業戦略会議による新たな産業の体制の構築、そしてこれも設計や企画と申し上げましたが、建築にも大きく関わる建築基本法に基づく抜本的な法体系の見直しが総動員する中での1つの位置付けということでありますから、それが最終的に全てが動き出して効果が出るということにおいては、計画は5か年計画になりますけれども、そのような悠長なことは言っていられないと思っていますので、その範囲の中でできるだけ迅速に供給過剰構造も含めて見直しが図られていかなければならないという決意でいます。

(問)今日、国土交通省が発足して10年になると思いますが、御所感があればお願いします。
(答)丸10年を迎えるというときに国土交通大臣として、国土交通省が1つの形になっていく象徴的な法体系の整備、あるいは制度を再構築するという役割を担わせていただいていることに、私は大変光栄に思っています。
社会資本整備重点計画、交通基本法並びに交通基本計画、車の両輪としての動かし、そして国土だけではない領海に対しての海上警察権の見直しということで、海上保安庁法を含めた抜本的なあり方を問い、さらには建築関連の法体系の整備、そしてこれも課題であるダムの問題、道路の問題等1つ1つを解決に導くような手立てを打ち出して、この丸10年1つの節目、11年目を迎えたということで、国土交通省にとって2011年というのは、ある意味完全に融合した省として国民の皆様方に新しい姿をお示しする重要な1年になると思っています。
私は1年しか関わっておりませんでしたが、過去の10年は諸先輩方々の多くの御努力、御苦労があったと思います。昨日も、国土交通の日ということで、OBの皆さんにお集まりいただいた中で、私も行ってまいりました。
扇元大臣もお見えになりまして、旧交を温めながら大変な御苦労があったのだと私も痛感しています。
その意味では、政権交代を果たした私たちがそういった苦労をしっかりと十分に踏まえながら新たに築いていくということに心を砕かなければならないとしみじみ感じています。

(問)海上警察権の件ですが、検討の結果、法改正をせずに運用面での改善で終わらせるということもあり得るのでしょうか。
(答)それは今は分かりません。
そういうことが可能なのか、正にこれからやっていくわけですから。
私は、法律を抜本的に見直すべきだと思っています。

(問)法改正ありきではないと。
(答)ありきではないです。
何度も申し上げているように、法を変えると言って詰めていったら、法を変えなくてもできることがあったなんていうこともよくあるわけですから、私はそういうことは決めつけずに、ただ法改正は視野というふうに、申し上げているとおりやっていきたいと思います。

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