大臣会見

太田大臣会見要旨

2014年1月21日(火) 11:09 ~ 11:35
国土交通省会見室
太田昭宏 大臣

閣議・閣僚懇

 本日の閣議案件で、特に私の方から御報告することはございません。
 私から二点御報告がございます。
 一点目は、JR北海道についてです。
JR北海道では、度重なる車両トラブルに加え、昨年9月19日の函館線大沼駅構内における貨物列車脱線事故を契機として判明した、整備基準値を超える軌道変位の放置、検査データの改ざんの発覚等、鉄道事業者としてはあってはならない異常な事態が続いています。
 国土交通省では、JR北海道の問題点を洗い出し、抜本的な対策を講じるため、3回に渡る特別保安監査を実施し、JR北海道の再生のための対策の検討を行って参りました。
今般、その結果を「JR北海道の安全確保のために講ずべき措置-JR北海道の再生へ-」として取りまとめましたので、本日公表致します。
 取りまとめの概要は次のとおりです。
 まず、JR北海道問題の基本認識として、
 ・JR北海道は、鉄道事業者としての基本的な資質を一から問われている状況であること。
 ・改ざんは、輸送の安全確保の仕組みを覆すものであり、その動機の如何に関わらず絶対容認出来ないものであること。
 ・安全確保問題については、社を挙げて深く反省する必要があり、企業体質・組織文化を含めて構造的な問題について改革が必要であること。
 次に、基本認識を踏まえた上で、JR北海道が講ずべき措置として
 ・改ざんの根絶
 ・安全管理体制の再構築
 ・安全確保を最優先とする事業運営の実現
 ・技術部門の業務実施体制の改善
 ・第三者による安全対策監視委員会(仮称)の設置
等を取りまとめております。
この取りまとめを踏まえ、国土交通省は、JR北海道に対し次の措置を講じて参ります。
 1つ目に、JR北海道に対して「鉄道事業法」に基づく事業改善の命令及び「JR会社法」に基づく監督上必要な命令を行うことと致します。
これは、JR北海道では「輸送の安全」と「事業の適切かつ健全な運営」が阻害されている事実が認められ、その自助努力による改善が難しい状況にあることに鑑み行うものであります。
 2つ目に、「鉄道事業法」に基づき、JR北海道に対し、安全統括管理者の解任を命ずることと致します。
これは、JR北海道の現安全統括管理者が現場の状況を把握しておらず、各部門の業務を十分に統括管理していなかったこと等を確認したことから行うものであります。
 3つ目に、ATSスイッチを破壊した運転士について、動力車操縦者運転免許を取り消すことと致します。
これらの処分については、必要な弁明又は聴聞の手続きを経た後、発動されることになります。
加えて、国土交通省としても、命令事項の実行性を確保するため、JR北海道より定期的に報告を求めるとともに、本日から常設の監査体制を整え、5年程度の間、定期的及び随時に監査を実施することとします。
具体的な措置の内容については、この後事務方より説明をさせて頂きます。
 尚、刑事告発につきましては、特別保安監査の結果を踏まえ、北海道警察と相談をしております。
JR北海道は地域の基幹的な交通機関として、一日も早く利用者の信頼を取り戻すことが必要であります。
このため、JR北海道に対しまして、日々の輸送の安全を確保しつつ、着実に、かつ、スピード感を持って会社一丸となって取り組んでいくことを、改めて強く求めて参ります。
 二つ目は、労務単価の見直し指示と公共事業の円滑な施工確保対策についてです。
 公共事業の着実な執行のため、これまでも人材や資材の状況をきめ細かく注視し、必要な対策を講じてきたところです。
このうち労務単価につきましては、昨年、前年度比約15パーセントの引き上げを行いました。
そして、技能労働者の賃金の動向などをきめ細かく調査し、機動的に引き上げるよう措置をしてきたところです。
最近、賃金の上昇傾向が見られることから、コンサルタント等の技術者単価も含め、今月中に関係機関と調整をして、見直しを行うよう指示致しました。
調査結果については、まとまり次第お伝え致します。
 加えて、入札不調が増加している地方自治体発注の大型建築工事について、最新単価の適用の徹底により、不調防止策など当面の公共事業の円滑な施工を確保する対策を講ずることと致しました。
詳細は、後ほど事務方から説明致します。
私からは、以上2点御報告申し上げました。

質疑応答

(問)JR北海道の件についてですが、まず命令等の通知はいつなさるのかというところと、この時期になってしまった理由、それとJR北海道にどういう会社になって欲しいかという大臣の御所感をお願いします。
(答)通知は今日発出をし、そして先程の後半部分にありました聴聞等の機会というものの期間を設置して対応していくということになります。
事業改善命令及び監督命令については不利益処分になることから、行政手続法に基づく弁明の機会の付与を行い、弁明書の提出期限は、通例一週間程度の期間を置く必要があるということになっております。
また、安全統括管理者の解任命令につきましては、行政手続法に基づく聴聞を行いまして、この聴聞までに、通例二週間程度の期間を置く必要があるという状況でございます。
今日まとめましたのは、改ざんという問題等を含めて、かなり企業体質も含めた広範なものでありましたので、丁寧な、徹底した特別保安監査を行うということの中から、時期的には今年になったということでありまして、これが実行されるということが大事だと思います。
何よりも、この実行ということが一番大事で、その実行が出来るようにということを強く求めていきたいと思っておりますが、JR北海道は、北海道の基幹的な輸送機関として代替性がない状況にもございます。
その地位に甘えて利用者が求めている安全性や信頼性を確保する努力を怠っていたという認識をしています。
現場では、現場との意思の疎通がなかったということがよく指摘をされていて、そういう面は多分にあるという認識をしておりますが、現場ではこの軌道の変位等について放置や検査データの改ざんなどの問題というものがある訳ですから、それが一体どういう形で行われてきて、以前からというところもありますから、そこを徹底的に調査をしてきたところでありますが、とにかく、安全と信頼を確保するということで、この改善命令・監督命令ということについて、実行ということを強く求めていきたいと思います。
詳細に調べましたが、現場は現在も氷点下20度以下の現場で真面目に働いて、一生懸命やっているという状況等もありますから、よく現場の状況というものと、そしてこれまで何故にそういうことに至っているのかということを吟味させて頂いて、今日改善命令等を発出させて頂いたということです。
従って、この措置を確実に実行して利用者の信頼を回復してもらいたい、そして真面目に働く社員が正当に報われて、誇りを持って働けるような会社、そして現場と会社自体が一体化して結束して、安全と信頼を獲得するというところまで、徹底して実行ということを、強く求めていきたいと思います。
それがあれば、北海道の生活・経済を支える安全で信頼される基幹的な輸送機関としての役割を担って頂く会社に再生してもらいたいと強く思っているところです。

(問)現野島社長、それから小池会長については、退任などは求めないのでしょうか。
続投を認めるということでしょうか。
(答)JR北海道におきまして、現場における軌道変位の放置や検査データの改ざんなどの問題を発生させまして、安全や信頼性の確保をする努力を怠ってきたという事態について、経営陣の責任は重いと考えます。
一方、今日こういう形で鉄道事業法に基づく事業改善命令とJR会社法に基づく監督命令という、極めて重要な行政処分を致しました。
こういう状況下において、経営陣に求められている責任というのは、安全な鉄道輸送サービスを提供し、一刻も早く利用者の信頼を回復するために、今回の措置に着実に着手するとともに、至急対応すべきものについては早急に実行することだと考えます。
現時点においては、このような対応を現経営陣には強く求めていきたいと思います。

(問)北海道警察に刑事告発について相談をされているということでしたが、刑事告発を前提として相談されているのでしょうか。
それとJR北海道の会社に対しても刑事告発をお考えなのでしょうか。
(答)現在、特別保安監査の結果を踏まえて、刑事告発すべき事項を、いくつかのことがありますからそれを整理して北海道警察と相談をしているという状況です。
事案に関わる詳細についてはここでは差し控えさせて頂きたいというふうに思っています。

(問)JR会社法の監督命令は、法律が出来てから発出されるのは初めてになりますが、今回の事案において監督命令を出した理由はどういうところにありますでしょうか。
(答)鉄道事業法の事業改善命令は輸送の安全という観点に立って、輸送の安全を阻害している事実が認められた場合に発出する、そしてJR会社法の監督命令は事業の適切かつ健全な運営を阻害されている状況にあると判断された場合に発出をされるということです。
そういう点では、事業の適切かつ健全な運営を阻害されている状況にあるという認識をしたものですから、今回(監督命令を)発出させて頂き、そしてこの事業改善命令と監督命令を区分せず全ての命令事項について両方を根拠として発出するという形をとったということです。

(問)JR北海道の社長、会長についてですが、命令の対応をまず優先するべきだというお話でしたが、そうすると二人が自ら退任、退陣をするということは望ましくないというお考えでしょうか。
(答)まず、この改善命令そして監督命令ということについて、我々の提起したことを全力を挙げてそれを推進する、実行するということが最も望まれていることだと思います。

(問)退任すべきでないということでよろしいでしょうか。
(答)退任すべきでないというより、まずはそこをしっかりやるという以外考えないで、直ちにその実行ということ、そして信頼回復のために実行ということに全力を、とにかく集中するということを強く求めたいと思います。

(問)時期としてはいつ頃までそれをやればいいのでしょうか。
(答)それは、この命令というものをしっかり実行するということまではとにかく集中してやるという以外お答え出来ません。

(問)刑事告発の件ですが、北海道警察と調整しているというのは、北海道警察に(刑事告発を)受理してもらうための調整を行ってらっしゃる、積極的に刑事告発しようとしての調整という認識でよろしいでしょうか。
(答)受理は当然なんですが、刑事告発ということが、その後も含めて一つの結果が現れるということになるかどうかということについて、調整を、相談をしているという状況にあるということです。

(問)JR北海道では新幹線の開業が近く行われますが、今のJR北海道において北海道新幹線を運営するのが適切だとお考えか、または今回の命令などによって北海道新幹線を運営出来る会社、安全を確保出来る会社に再生出来るとお考えでしょうか。
(答)出来るはずだと私は思っています。

(問)安全統括管理者の解任ということですが、その後の後任について何かお考えはあるのでしょうか。
(答)現時点では解任ということの命令を出したということが全てです。

(問)野島社長等、経営陣に対する処分についてですが、野島社長が社長在任中に運輸安全委員会に対する改ざんが行われたということで、大臣は常々、運輸安全委員会に対する改ざんは言語道断で責任は重大だと仰っております。
そういう意味では社長の責任を問うというのは大臣のこれまでの御発言を考えると当然かと思うのですが、それについては改めていかがでしょうか。
(答)先程も申し上げましたが、安全や信頼性を確保する努力を怠ってきた、そして9.19という貨物列車の脱線事故があり、その後も改ざんが行われてきたというところについて、経営陣の責任は重いとこのように認識を持っていますが、今日こうした事業改善命令、監督命令を出すということのなかで、どういう姿勢で臨むべきかということについては先程申し上げたとおりです。

(問)JR北海道についてですが、今回一連の監査などを踏まえた上で、企業体質の改善のためには今の会社のあり方を変える必要はないのでしょうか。
企業の資金力の不足などが今回の事態の背景にはあるのではないかと思うのですが、会社のあり方そのものは見直さなくていいのでしょうか。
(答)そうしたことも含めて事業改善命令、監督命令を出しているという認識です。

(問)資金力を強化するために何らかの国による支援であるとか、具体的な策をお考えでしょうか。
(答)それらについては既に鉄道・運輸機構からの600億円の設備投資支援の活用の前倒しを始めとして、昨年11月の改善指示の中にもそういうことは含まれておりまして、十分それらについて総合的な分析、整理の上に事業改善命令、監督命令を発出したということです。

(問)組合の問題が指摘されてましたが、その辺は監査の中で何か結論は出ましたでしょうか。
(答)先程申し上げましたように、現場で働いている人と一体となって改善に取り組めというのが今回の趣旨でございます。

(問)公共工事の方ですが、要は自治体に対して予定価格と実勢価格が乖離する場合は予定価格の引き上げを求めるという、そういう理解でよろしいでしょうか。
(答)結果的には、適正な価格設定というものに関連が及ぶという判断をしています。

(問)そのように理解してよろしいでしょうか。
(答)はい。

(問)予定価格と実勢価格の乖離ですが、どういう理由で起きていると分析してらっしゃいますでしょうか。
(答)それは様々な要因がありますから、人手不足の構造的な要因もありますし、技能者と技術者というそれぞれの違いというものもありますし、今日、私が指摘をして地方自治体の大型建築工事ということを敢えて言っておりますが、そこはかなり労務単価だけではない、色々な仕様の問題とか、あるいは地盤の状況とか色々な状況が複雑に絡み合っているという総合的なものが発注価格自体に反映していない部分があるという総合的な見方です。
それらを見て、この動向については十分対応していかなくてはいけないと考えておりまして、技術者、技能者のみを今頭の中に置いて取り組んでいる訳ではありませんので、今日申し上げたのはそこの点の技能者と技術者という所謂、人手不足と言われる点についてのまたその中でも一つの部分について労務単価の再引き上げという措置をとらせて頂いたということです。

(問)予定価格を引き上げる必要があっても予算や財源が不足している自治体はどうすべきだとお考えでしょうか。
(答)緊急で必要なものから取り組むということに、必然的に当然それはなっていくことだと思います。

(問)JR北海道ですが、これまでは9部署で改ざんが行われ、4部署で(改ざんが)常態化していたということでしたが、監査によって改ざんの実態が今まで以上に明らかになった点というのはあるのでしょうか。
(答)(昨年)11月14日からの第3回特別保安監査では、9月19日の貨物列車脱線事故に関する改ざん及びそれ以外のところで9箇所ということについて(調査を)行ってきました。
そこで調査をした結果、貨物列車脱線事故に関する改ざんとしましては軌道変位の検査データの改ざんのほかに、新たに作業実績記録の改ざん、及び運輸安全委員会への提出資料の改ざんということの確認を致しました。
また脱線事故関係以外の改ざん、今御質問にありました9箇所と言われたものに加えまして、もう一箇所、新たに八雲保線管理室で改ざんを確認をしたということです。
この結果、改ざんを確認した保線管理室等は合計で10箇所ということになりました。
改ざんの詳細については後ほど事務方から説明したいと思いますので、確認をお願いしたいと思います。

(問)改ざんが半ば常態化していた訳ですが、残念ながらこれまでのJR北海道に対する数年にわたる監査では改ざんの事実を国土交通省は掴むことは出来ませんでしたが、その点に関して国土交通省の責任や監督責任というのは何かあるとお考えでしょうか。
(答)より広範な安全を確保するという点で、国土交通省はそうした安全を確保するということを主眼に行政を見て行かなくてはいけないという点については、当然我々にとっても責任はあるというふうに思いますが、そこはまずは一義的に監査ということについては当事者のJR北海道が調査をし、そして脱線の後の特に運輸安全委員会を始めとするような改ざんというようなこと自体については、これはまず第一義的にはJR北海道自身がそうしたことをきちっとして、そのデータを報告するというのがこれまでの仕組みというものであったというふうに私は思っています。

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