大臣会見

斉藤大臣就任会見要旨

2021年10月5日(火) 11:32 ~ 12:00
国土交通省会見室
斉藤鉄夫 大臣

閣議・閣僚懇

 この度、岸田内閣で国土交通大臣を拝命しました斉藤鉄夫(さいとうてつお)です。
これから皆さま方と色々と率直な意見交換をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
本日の閣議案件で特に私から報告することはありません。

質疑応答

(問)まずは抱負と力を入れたい政策をお願いします。
また就任に当たって、総理からどのような指示があったのでしょうか。
以上2問お願いします。
(答)まず抱負ですが、国土交通省は、国民の皆さまの命と暮らしを守り、また、経済成長や地方創生に直結する大変重要な分野です。
また、陸・海・空にわたり幅広く所管する省庁であり、気を引き締めて取り組んでまいります。
総理からの御指示を踏まえ、特に注力していきたい課題について、3点申し上げます。
まず第1点は、「国民の安全・安心の確保」です。
近年の自然災害の頻発・激甚化の中で、引き続き、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」を着実に進めていくことが重要であり、流域治水プロジェクトを一層推進してまいります。
さらに、全国の盛土の総点検の状況なども踏まえつつ、盛土による災害の防止に取り組むほか、気象庁の体制強化に取り組むとともに、線状降水帯の予測精度の向上を図ってまいります。
また、通学路等における交通安全対策を進めるほか、一層厳しさを増すわが国周辺海域の情勢に対応して、戦略的海上保安体制の構築を着実に進めてまいります。
2点目が「コロナ禍からの社会経済活動の確実な回復と、経済の好循環の実現」です。
コロナの影響等により危機に瀕する公共交通の確保・維持や観光への継続的支援、観光需要の回復を見据えた取組を進めてまいります。
また、わが国の経済成長の基盤となる社会資本の戦略的・計画的な整備、住宅・まちづくりや交通等の国土交通分野における2050年カーボンニュートラルの実現やデジタル・トランスフォーメーションの推進に取り組んでいきたいと決意しています。
3点目が「活力ある地方創りと、分散型の国づくり」です。
「真の共生社会」の実現に向けて、ハード・ソフト両面からのバリアフリー化の推進、子育て支援の充実、コンパクトで歩いて暮らせるまちづくりや住生活環境の充実等に取り組みます。
コロナの感染が続く中ではありますが、ポストコロナを見据え、国民の皆さまが安心して、3点申し上げた、安全・安心な豊かな生活を送ることができるよう、またコロナの問題、また地方創生、こういう事柄に国土交通省として総力を挙げて取り組んでまいります。
それからもう1点質問をいただきました、総理からどのような指示をいただいたかについてです。
昨日総理から指示書をいただきました。
総理からは、全閣僚共通指示と国土交通大臣への指示、2通りいただいたところです。
私に対していただいた個別の指示について報告いたします。
まず、国民の生命と財産を守るため、集中豪雨、気温上昇などの異常気象、地震などの自然災害に対応し、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」を推進し、災害に強い地域づくりを進めるようにという指示がありました。
特に、指示書には線状(せんじょう)降水帯(こうすいたい)という言葉も盛り込まれ、線状降水帯の予測実現に向けた取組を前倒しで推進すること、盛土による災害防止に向けた対策を検討することという指示を受けました。
それから観光です。
観光については、ポストコロナ時代を見据え、外国人観光客6000万人目標を堅持し、必要な取り組みを進めるとともに、新型コロナウイルス感染症対策をしっかり講じることを前提に、ダメージを受けた観光業を支援するようにとの指示がありました。
さらに、リニア中央新幹線をはじめとした高速鉄道、高速道路などの地方を結ぶインフラ整備が、経済圏の統合を促し、豊かな田園都市国家を支えることに留意しながら、道路・鉄道のミッシングリンクの解消、港湾などの交通網の整備に取り組むこととされております。
以上3点が太い柱だと思います。
その他、鉄道分野をはじめとするインフラシステム輸出や航空輸送の安定と安全の確保、航空産業の発展、わが国の主権と領土・領海を断固として守るため、海上保安体制の強化及び警戒警備、通学路等における交通安全の確保や飲酒運転の根絶、中間層の拡大及び少子化対策の観点からの子育て世帯への住宅費の支援の強化等について、総理から指示をいただきました。
国土交通行政は、社会資本整備や交通政策、観光政策、海上保安など所管が広く、どの課題も国民の命と暮らしを守ることに直結しています。
総理指示を踏まえ、しっかり職責を全うしていきたいと思います。
 
(問)私から2点お聞きします。
まずは災害についてです。
大臣は地元が広島ということで度々豪雨災害も受けられていまして、思いも強いと思いますけれども、改めて近年の災害の激甚化・頻発化に対して、どのように対応していくのか。
また、先ほども盛土の話もありましたが、こうした災害への対応についてお聞かせください。
もう一点観光業についてです。新型コロナの影響で非常に打撃を受けています。
今後は感染対策と観光の再開に向けた取り組みの両立が課題となっていますが、どのように取り組んでいくのか。
Go To トラベルの再開など、こうした支援策も含めて、どのように取り組んでいくのか、お考えをお聞かせください。
(答)私は地元が広島でございまして、7年前の土砂災害、3年前の西日本豪雨、そして今年お盆前後の豪雨を体験しており、防災・減災がいかに大切かということを身を持って感じております。
激甚化・頻発化する豪雨災害、切迫化する大規模地震、いつ起こるか分からない火山災害から国民の命と暮らしを守ることは国の重大な責務、政治の重大な責務と認識しております。
昨年12月に自然災害への備えやインフラ老朽化対策などの取組みを加速化させるために、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」が閣議決定されました。
私も党におり、深く関わってこの加速化対策を作りました。
国土交通省においては、あらゆる関係者が協働して行う流域治水対策、道路ネットワークの機能強化対策、鉄道、港湾、空港等の耐災害性強化対策、予防保全型のメンテナンスへの転換に向け、早期の対応が必要な施設へ集中的な老朽化対策など、53の対策を重点的かつ集中的に実施してまいります。
この5か年加速化対策を含め、今後も、必要・十分な予算を確保し、ハード・ソフトの施策を総動員することで、防災・減災、インフラの老朽化対策といった国土強靱化の取組をしっかりと進めてまいります。
2点目の御質問の観光事業についてです。
観光は、我が国の成長戦略の柱、地方創生の切り札です。
感染拡大防止の徹底に継続的に取り組み、観光振興との両立を実現する必要があります。
現在、新型コロナウイルス感染症の影響により、観光関連産業は深刻な影響を受けておりますが、この危機を乗り越えるべく、まずは雇用の維持と事業の継続の支援に取り組んでいくことが重要と考えております。
さらに、9月9日に新型コロナウイルス感染症対策本部において決定された「ワクチン接種が進む中における日常生活回復に向けた考え方」には、感染の状況を十分に踏まえつつ、ワクチン・検査パッケージも活用して、観光振興策の実施を検討するということ等が盛り込まれているところであり、国土交通省としても、内閣官房等と連携して、しっかりと検討を進めてまいりたいと考えております。
具体的には、ワクチン検査パッケージの活用などについて、内閣官房において、大規模イベント・飲食店等で技術実証を進めていくとされており、観光分野においても、旅行業・宿泊業と連携し、ツアー又は宿泊施設における運用の確認等の技術実証を進めてまいります。
Go To トラベル事業は、観光地や地域経済の維持・復興のために、大変重要で必要不可欠な事業と考えております。
感染症対策と経済の回復を両立させる観点から、感染状況も勘案し、再開のタイミングや内容等について、検討してまいります。
他方、ポストコロナに向けて、しっかりと取り組みを進め、また戦略的に準備をしておくことも重要と考えています。
昨年12月には、今後のインバウンドの段階的な再開も視野に、全国津々浦々の観光地の底力を高めるべく、「感染拡大防止と観光需要回復のための政策プラン」を策定し、同プランに基づき、施設改修や廃屋撤去などの宿、観光地のリニューアル等の取組みを強力に進めているところです。
さらに、中長期的なスパンで見ても、国際観光市場の重要性は変わるものではありません。
コロナ禍でも日本各地の観光資源である「自然、気候、文化、食」等の魅力が失われたわけではありません。
また、シンクタンクなどによる外国人を対象とした調査では、日本は公衆衛生レベルを高く評価され、コロナ後に訪れたい国の最上位に位置付けられているなど、ポストコロナに向けて好材料も少なくありません。
今後は、消費単価の向上や長期滞在の促進、観光産業の生産性向上などに取り組む必要があると考えており、いずれにしましても、2030年訪日外国人旅行者数6000万人、訪日外国人消費額15兆円等の目標は堅持しつつ、観光立国の実現に向け、政府一丸となって取り組んでいきたいと決意しています。
 
(問)IR・特定複合観光施設に関してお伺いします。
新型コロナウイルスの拡大で国際的な人の流れが止まるなど、IRを取り巻く環境がこの1、2年で大きく変わりました。
このような状況の中でIRを導入する意義についてどうお考えか、また実現に向けて今後どう取り組んでいかれるお考えかお聞かせください。
(答)IRについては、長年、わが国の観光の弱点とされてきた大型MICEの誘致や長期滞在の促進、消費単価の拡大等の解決に資するなど、観光立国の実現に向けた重要な施策の一つであり、コロナ後も見据え、必要な準備を進めていく必要があると考えております。
今月1日からは、IR区域整備計画の認定申請期間が開始されておりますが、IRの誘致を検討している自治体では、様々なリスク評価も含めた上で、IR事業を検討し、既に事業者を選定するなど、区域整備計画の申請に向けた準備が着々と進められているものと承知しております。
国土交通省としては、こうした状況も踏まえ、立法府たる国会の審議を経て成立したIR整備法に基づいて、必要な手続きを進めてまいりたいと考えております。
 
(問)先ほどもお話にでましたリニアの静岡工区の未着工問題の点で1点。
これまで国土交通省でJR東海に住民の理解を得るようにと指導するとともに、有識者会議を設置して工事の影響に関する検証などを進めておりますけれども、新政権に対しても、先日川勝(かわかつ)知事が工事をしないようJR東海に求めてほしいとコメントするなど、解決に向けた道筋は依然として見通せない状況だと思います。
JR東海も2027年の開業という目標もありますけれども、それは度外視してでもゆっくりと時間をかけて解決していくべきか、あるいは国土交通省として関与を強めていくような余地というのはあるのか。
スタンスをお聞かせいただければと思います。
(答)リニア中央新幹線については最速で東京・名古屋間を40分間程度、東京・大阪間を1時間強で結ぶことにより、災害時のリダンダンシーの確保とともに三大都市圏間の人の流れを劇的に変え、国民生活や経済活動にも大きなインパクトをもたらす重要な事業と認識しております。
品川・名古屋間の工事については、建設主体であるJR東海において全長286kmのうち、約9割の区間で工事契約が締結され、工事が進められているところです。
このうち静岡工区につきましては、昨年4月に国土交通省の有識者会議が設立されて以降、大井川(おおいがわ)の水資源について、科学的・工学的な見地から活発な議論をすすめてきていただいております。
9月26日の第12回目の会議においてこれまでの議論を総括した中間報告(案)が議論され、次回とりまとめる方向が了承されたと承知しております。
国土交通省としては、次回のとりまとめに向けて有識者会議におけるこれまでの議論を精査・総括するとともに、JR東海に対しては、今後この中間報告を踏まえ、利水者など地元の関係者にわかりやすく丁寧に説明していくよう、指示してまいりたいと思っております。
 
(問)冒頭少しカーボンニュートラルの話がありましたが、それについてお伺いします。
菅前政権で2050年までに温暖化ガスの排出実質0を目指すという目標を掲げました。
岸田首相も脱炭素社会を目指すという考え方を示されていますが、国土交通省としてインフラとか住宅関連とか関連する分野は多岐にわたっていますが、改めて具体的にどのように進められるお考えなのかお聞かせください。
(答)私も以前環境大臣を務めました。菅前総理の2050年カーボンニュートラルの方針決定は画期的なものだったと思います。
その達成のために国土交通省の施策はその大きな柱になると、このように思っております。
そういう意味で2050年カーボンニュートラルの実現に向け、政府一丸となって取り組む必要がありますが、特に国土交通省は、その主体者として取り組む決意です。
地域の暮らしや経済を支える幅広い分野を所管する国土交通省としても、民生・運輸部門の脱炭素化に貢献してまいります。
具体的には民生部門において、住宅・建築物の省エネ対策の徹底を図るとともに、運輸部門においては、次世代自動車の普及、船舶・航空分野の脱炭素化、カーボンニュートラルポートの形成、物流の効率化などを推進してまいります。
インフラを活用した洋上風力、太陽光発電等の国土交通省関連のインフラを活用した洋上風力、太陽光発電等の再エネの導入促進など、各般の施策について、関係省庁とも連携しながら、総力を挙げて取り組んでいきたいと思っております。
 
(問)経営が悪化しているJR北海道への対応についてお伺いします。
国は本年度から3年間で1302億円の支援を決めていらっしゃると思います。
また、鉄運機構を通じて経営安定基金の一部を借り入れて利息を支払うという支援もされていると思います。
一方でJR北海道はコロナで鉄道利用者が激減して昨期の営業利益が800億円の赤字に陥ったところもありまして、改めて国としてJR北海道の支援についてどのように取り組んでいくか、大臣のお考えを教えてください。
(答)北海道の鉄道は素晴らしい。
私も北海道に行った時はできるだけ鉄道に乗って、雄大な景色を見ながら旅するのは本当に楽しみにしているのですが、JR北海道は北海道内の基幹的な公共交通サービスを提供していることから、その再生は、地域の経済や生活の維持・発展のために必要不可欠であると認識しています。
今おっしゃったように、沿線の人口減少や高速道路整備の進展による輸送人員の減少等に加え、今回のコロナ禍の長期化により、大変厳しい経営環境に置かれており、未だ経営自立の途上にある、このように認識しています。
こうした背景を踏まえ、先の通常国会で成立した改正国鉄債務等処理法により、約1300億円の支援を順次実施しているところです。
まずはJR北海道において、これらの支援を最大限に有効活用していただくことが重要です。
国としてもJR北海道の経営改善の状況についてきめ細やかな進捗管理を行うことで、JR北海道の目指す10年後の経営自立の実現に向けて取り組んでまいります。
 
(問)大臣の地元の広島でも、広島港(ひろしまこう)でコンテナ用の岸壁の整備を求める声が官民であがっているかと思いますが、その他、こうした港湾整備や国際コンテナ戦略港湾政策など、港湾行政に関してのお考えをお聞かせください。
(答)日本が貿易立国であると同時にこれからカーボンニュートラル、大きな、いわゆる物流シフトを行っていかなければならない中で、海を使った物流、港湾の整備というのは、非常に重要な課題だと認識しています。
しかし、国際競争力という観点から見ても、今、日本の競争力は大変厳しい状況にあると認識していますので、日本の産業競争力の向上、カーボンニュートラルの達成等の観点から、港湾整備についてしっかりと対応していかなければならないと決意しております。
 

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