大臣会見

斉藤大臣会見要旨

2021年10月26日(火) 11:02 ~ 11:16
国土交通会見室
斉藤鉄夫 大臣

閣議・閣僚懇

 本日の閣議案件で、特に私から報告するものはありません。
その上で、私から1点報告があります。
国際海運のカーボンニュートラルについてです。
国際海運からの温室効果ガス排出削減目標について説明します。
国際海運からの温室効果ガスの排出については、航空機と同じように、国別削減割当の対象外とされ、世界全体で考えようということで、国際海事機関IMOで一元的に対策が講じられることになっています。
IMOの現在の削減目標は、2018年に合意された「2050年排出量を2008年比半分以下とする」こととなっています。
「2050年カーボンニュートラル」を掲げる我が国としては、国際海運からの排出についても温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、いわゆる「国際海運2050年カーボンニュートラル」を目指し、11月開催のIMOの会議に対し米英等と共同でこの目標を提案します。
2018年に決めた目標を撤回し、国際海運2050年カーボンニュートラルを目指します。
なお、日本船主(せんしゅ)協会も、国際海運からの温室効果ガス排出削減について同様の目標に挑戦することを、本日公表する予定であると承知しており、国土交通省としてもこれを歓迎したいと思います。
また、この目標の達成に必須となる、化石燃料由来の燃料を使わない、水素燃料船やアンモニア燃料船等、そのほか新しい技術も出てくるかもしれませんが、これらについて世界に先駆けた実用化を目指して、NEDOのグリーンイノベーション基金等を活用しまして、開発・実証に着手し、世界の脱炭素化への貢献と我が国海運事業の国際競争力強化を図っていきたいと決意しています。
国土交通省としては、引き続き産業界とも連携、協力し必要な技術開発を進め、国際海運2050年カーボンニュートラルを強力にリードしていきたいと思っています。
詳細は後ほど事務方から説明させます。

質疑応答

(問)10月27日に、岐阜県中津川(なかつがわ)市のリニアのトンネル工事現場で崩落事故がありました。
工事作業をされていた方お二人が死傷する事故でしたが、作業用トンネルの掘削工事中の事故でしたが、国土交通省のこれまでの把握状況と今後の対策についてお聞かせください。
また、リニア全体の工期への影響について、大臣のお考えをお聞かせください。
(答)先月27日午後7時20分頃、岐阜県中津川市のリニア中央新幹線・瀬戸(せと)トンネルの工事現場で、本線トンネルへの資機材運搬のための作業用トンネルの工事中に崩落事故が発生しました。
これにより、現場で作業を行っていた作業員1名がお亡くなりになり、もう1名の方が足等を骨折する重傷を負っています。
お亡くなりになられた作業員の御冥福をお祈りするとともに、御遺族の皆さまにお悔やみを申し上げます。
また、負傷された方には、1日も早い回復を心から祈っており、お見舞いを申し上げます。
今回の事故は、トンネル掘削の際の、火薬による発破作業後の状態を作業員が確認しようと、トンネル先端部の切羽(きりは)に近づいたところ、崩落が発生したとのことです。
詳細な事故原因については、現在、警察及び労働基準監督署が調査を行っているものと承知しています。
今回、ナトム工法という発破を使う工法ですけれども、一般に発破作業直後に切羽に近づくことは危険とされており、厚生労働省が事故防止のためのガイドラインを作成しています。
「山岳トンネル工事の切羽における肌落ち災害防止対策に係るガイドライン」というもので、平成28年に策定され、平成30年に1度改定されています。
JR東海は今回の作業において、施工会社が当該ガイドラインを遵守して作業を実施しているか等を確認するため、他の山岳トンネルの工事も含め、工事を一時中止し、確認ができた工区から、地元自治体に報告した上で、工事を再開しているものと承知しています。
また、事故が発生した当該工区においては、原因究明と再発防止策が講じられるまで工事をストップし、講じられた後に再開になるということです。
リニア中央新幹線については、平成26年10月の工事実施計画認可に際しては、国土交通大臣から「安全かつ確実な施工」を行うよう指示を出しています。
国土交通省としては、JR東海が施工会社に対して安全な施工を適切に指示することも含め、リニア中央新幹線の工事が安全かつ確実に実施されるよう、引き続き、JR東海を指導・監督していきたいと思います。
 
(問)10月31日夜に、京王(けいおう)(せん)の特急列車内で刃物を持った男に乗客が襲われ重軽傷を負う事件が発生しました。
乗客が襲われる事件は、8月に小田(おだ)急線(きゅうせん)で起きたばかりです。
国土交通省がこれまで把握している状況と、再発防止策をどう進められていくかお聞かせください。
(答)現時点でわかっている事実関係と再発防止に向けた今後の対応ですが、10月31日日曜日午後7時56分頃、京王線布田(ふだ)駅から国領(こくりょう)駅間を走行していた上り特急列車において、男が乗客1名を刃物で刺した上、可燃性の液体に火をつけて多数の乗客を危険にさらすという凶悪かつ悪質な事件が発生しました。
被害に遭われた方々にお見舞い申し上げるとともに、一刻も早い回復をお祈り申し上げます。
警察において被疑者を逮捕し、現在、全容解明に向けた捜査が進められているところと承知しております。
国土交通省では、8月6日の小田急線車内傷害事件を受けて、9月24日に、警備の強化や被害回避・軽減に向けた対策を取りまとめましたが、京王電鉄においても、これを踏まえ、警備員の車両内巡回や乗務員等に対する訓練などを実施していたと聞いております。
また、今回の事件発生を受け、昨日1日、鉄道局から全国の鉄道会社に対し、警察と連携の上、警戒監視を徹底するよう改めて指示しました。
これを踏まえて、昨日から京王電鉄では、警備員を増員して、駅構内や車両内の警戒監視の強化等を実施しています。
加えて、本日、急遽JR各社及び大手民鉄16社等の安全の責任者である安全統括管理者による会議を開催し、同種事件の更なる再発防止策の検討を指示する予定です。
 
(問)自賠責保険の積立金繰戻しの延期についてであります。
4年前に、当時石井(いしい)さんですか、国土交通大臣と、それから麻生(あそう)さん、財務大臣間で、自賠責の積立金6000億円超え、一般会計に貸し出されているのですけれども、これが10年単位でずっと繰延べ繰延べされてきていると。
今回は斉藤さんがおそらく覚書を交わされるのだと思うのですが、これまでどちらかというと、財務省がやはり財布に金入っていないのだから返したくないという形で、前回の覚書も金がちょっとあって、どうしてもお金がなくなったら返してやるよみたいな文言なんですね。
平たく言えばですが。
今回は御案内のとおり、やはり被害者救済というのは非常にお金もかかりますし、実際要望も多いという中で、現状で次年度予算要求は40億円台ということで、まだ二桁億ということです。
こういうことを踏まえて、公明党御出身でもあるし、やはり弱者救済というところを含めて、国土交通大臣側でお金を返してもらうことの道筋をつけていただきたいと思うのですが、お考えがあればお願いいたします。
(答)最初に気持ちを申し上げると、交通事故の被害者の救済というのは非常に極めて重要であり、そのための財源を別の目的で国に貸し出しているということですので、あくまでもお金の目的である被害者救済に支障が出ないような形で、しっかり返還を進めていきたいと。
これまで4、5年に1回ずつ覚書を交わしており、その時期が迫っていますから、しっかり対応したいと思っています。
国土交通省では、自動車安全特別会計の積立金等を財源として、自動車事故被害者の救済事業等を実施しています。
非常に重要な事業だと思っています。
自動車事故が後を絶たない中、 これらの事業を安定的、継続的に行うためにも、一般会計からの繰戻しは極めて重要と認識しています。
また、令和4年度の予算編成に当たっては、令和4年度が平成29年12月に財務大臣との間で交わした覚書の最終年度となっていますので、このことを踏まえて財務省と新たな議論を行う必要があります。
こうした節目の年であることを踏まえつつ、着実に被害者の救済事業等を実施できるよう一般会計からの繰戻しについて、引き続き、財務省とよく協議していきたいと考えています。
使い道も、被害者はいろいろな障害をお受けになるわけですけれども、それらの療護施設を充実するということとともに、歳をとっていかれる方々の介護等、しっかり安心していただけるような体制、ハードからソフトへの事も今後重要になってきますので、この会計が持っている意味は非常に大きな意味があると思いますので、しっかり財務省と、財務大臣と議論していきたいと思います。
 
(問)先ほど質問があった京王線での事件について、追加でお伺いします。
今回事件があった際に、非常通報ボタンが押されたということで、なかなか乗務員に状況が伝わらなかったということがありました。
今後の抜本的な対策としては、車内にある監視カメラをネットワーク化して、車内の状況がわかるようにする等の対策を求める声も上がっているのですけれども、鉄道事業者からは、やはりコストがかかるということで、国の支援を求めるような声も一部では聞かれます。
この辺のもっと踏み込んだ今後の再発防止策についてどのようにお考えでしょうか。
(答)私も今回の事件の映像を見て、鉄道利用というのは社会生活の上でも必要欠くべからざるものですから、そこは安心して利用していただけるというのは大切です。
その意味で今回何が足らなかったのか、そういうことも含めてしっかり検討して、今後、安心して鉄道利用していただけるような施策、鉄道だけに限りませんけれども、公共交通機関を安心して利用していただけるような施策、何が必要か、もちろんコストとの関係もあります。
また、デジタル化の最新技術もありますので、そういうことも含めて今後、今回の原因究明、また対処策、それらの結果が出た時に今後どういう風な対応をするべきかも考えてみたいと思います。
(問)今のに関連してもう1問ですけれども、原因究明はまだですけれども、小田急線も含めて相次いでいる中で、鉄道会社の対策は急がれると思うのですけれども、コスト面での支援を国がするようなお考えは今の時点であるのでしょうか。
(答)今後の鉄道の安全対策というのはもちろん先ほど申し上げたように、国民生活に深く関わっておりますので、今回の原因究明等の結果を見ながらそこは検討していきたいと思っています。
 
(問)最後に、沖縄県などに軽石が漂着している案件があったと思うのですけれども、地元の自治体から国への支援の要請も届いていると思います。
今の時点で国土交通省が行う対応などありましたらお願いします。
(答)小笠原(おがさわら)の海底火山福徳岡ノ場(ふくとくおかのば)の噴火によるものとみられる軽石が太平洋を漂流し、昨日時点で、沖縄県では13箇所の港湾、また、鹿児島県では20箇所の港湾で軽石の漂着を確認しています。
この影響により、沖縄県では沖縄本島と()高島(だかじま)を結ぶ航路で、また、鹿児島県では奄美大島(あまみおおしま)加計呂麻島(かけろまじま)を結ぶ航路で旅客船の一部運休が続いています。
国土交通省では、海上保安庁から、付近を航行する船舶等に対し漂流物に係る情報提供を行うとともに、海事局から、海運事業者に対し注意喚起を行っているところです。
また、港湾等に漂着している軽石について、港湾管理者等の自治体が進める除去に対して財政支援ができるよう準備を進めるとともに、効率的かつ迅速な軽石除去ができるよう、専門家の意見も聞きながら、検討を進めています。
国土交通省としては、引き続き、軽石の漂着・滞留状況について情報を収集しつつ、関係機関等と連携し、必要な対応を進めてまいります。
こういう事案は近年なかったということで、軽石が表面に浮いていますから、船舶のエンジンを冷却するその冷却水の吸い込み口が比較的表面に近い、小さな船に大きな影響が出ていると聞いています。
こういうことに対して、技術的にどういうことができるのかということを、今、専門家にも急遽いろいろと検討してもらっています。
それから、港湾またフェリー等が、生活に大きな影響を及ぼさないようなことを自治体として行っていく、その財政的支援も国土交通省で考えているところです。
 
(問)京王線の事件についてですが、緊急停車後にホームドアを乗務員の判断で開けなかったということですが、これについて改めて、国土交通省で把握しているこの判断経緯とそれから適切な対応であったかどうか、その評価の部分をお願いします。
(答)結論から申し上げますと、現状どういうことがあったのか、今、正確に調査しているところですが、京王電鉄によると、国領駅において、所定の停止位置の手前に停止した後、所定の位置まで運転しようとしたということです。
国領駅に停まる予定の各駅停車ですと、そのまますっとホームドアの位置に停まることができるのですが、本来通過する予定ですから、いったん手前で停まって、ゆっくり動き出して所定の位置に停めるというやり方だそうです。
優等列車が本来停まる駅ではないところに停まるときにはですね。
1メートルくらい手前に停まって、1メートルくらいゆっくり動かして所定のホームドアに合わせて停まる予定だったそうですが、その1メートル手前で停まったときに、非常用ドアコックが操作されていたことから、車両の機能上、列車を移動させることができなくなったと聞いています。
車両ドアとホームドアとの位置がずれていたことから、当初は転落などのリスクを考慮して、ドアの開放の操作は行わなかったと京王電鉄から報告を受けています。
今回事件が発生した車両では、非常用ドアコックが操作された状態では運転士が列車を移動させることができないメカニズムになっていたようです。
結果として乗客が列車の窓から降車せざるを得ない、逃げ出さざるを得ないという事態になりました。
このため、昨日、京王電鉄に対して、今回の対応について検証を行うとともに、その結果を報告するように指示したところです。
この報告内容については、国土交通省としてもしっかりと検証していきたいと思っています。
 

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