副大臣・大臣政務官会見

渡辺副大臣会見要旨

2021年5月26日(水) 15:10 ~ 15:34
国土交通省会見室
渡辺 猛之 副大臣 

質疑応答

(問)副大臣として優先的に取り組む政策や、就任に当たっての抱負などについてお願いします。
(答)この度、副大臣を拝命いたしました渡辺猛之です。
国土交通省は、国民の皆さまの安全・安心の確保、持続的な経済成長の実現、豊かで活力のある地域づくりといった大変重要かつ幅広い分野を所掌しております。今回、私は副大臣として、防災・減災、地域公共交通、国土政策、鉄道、自動車、観光等を担当することになっております。
私は、国土交通省の仕事というのは、国民の命を守り、笑顔を作ることであると考えております。
よって、激甚化・頻発化する自然災害から国民の皆さまの命と暮らしを守ることがまずもって大切なことだと考えます。
このため、昨年12月に閣議決定された「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」を計画的に進めるとともに、「流域治水の推進」など、ハード・ソフト両面から防災・減災対策を進めてまいります。
また、令和2年7月豪雨など、頻発する自然災害からの復旧・復興にしっかりと取り組んでまいります。
次に、人口減少等による厳しい経営状況に加え、新型コロナウイルス感染拡大による輸送需要の減少により、地域公共交通は一層厳しさを増していると認識しております。
エッセンシャルサービスである地域公共交通の維持・確保が図られるよう、運行維持や感染症防止対策の強化等に対して支援を行うなど、しっかりと取り組んでまいります。
また、同じくコロナウイルスにより重大な影響を受けている観光の再生を図ることも重要です。
「Go To トラベル事業」の再開が当面難しいと考えられる中で、都道府県が行う県内旅行割引事業への支援を行うとともに、宿泊事業者による感染拡大防止対策の強化等に対し支援を行う都道府県の事業を財政的に支援するなど、感染拡大防止策の徹底を図ることとしております。
あわせて、観光地のリニューアル、魅力的なコンテンツ造成、受入環境整備などに取り組み、全国の観光地の底力を高めていきたいと考えております。
加えて、ウィズ・コロナ時代の持続的な経済成長に向けて、デジタル社会やグリーン社会の実現を図ることも重要です。
このため、所管分野におけるデジタル・トランスフォーメーションの推進やカーボンニュートラルの実現などに取り組んでまいります。
さらに、コロナ禍による社会経済構造や生活様式の変化も踏まえ、二地域居住の推進など、東京一極集中の是正に向けても取り組んでまいります。
赤羽大臣は、国土交通省の直面する様々な課題に対し、現場第一主義で取り組む姿勢を重視されています。
私も政治を志して以来、現場第一主義を掲げて活動を進めてまいりましたので、赤羽大臣と同じ姿勢で取り組み、国土交通行政をしっかりと前に進められるよう全力を挙げてまいります。
 
(問)災害対策の関係でお聞かせください。
冒頭でも触れられましたが、改めまして、国土交通省における「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」についての見通しと、今後の「流域治水プロジェクト」の実施に向けた展望をお聞かせください。
(答)今年は早めに梅雨入りし、先週も各地で大雨が降ったところです。
毎年のように全国各地で甚大な被害をもたらす豪雨が発生しており、昨年の7月豪雨では、私の地元の岐阜県においても、400棟以上の家屋が、全半壊や床上・床下浸水の被害を受けました。
気候変動の影響により風水害はますます激甚化・頻発化するとともに、南海トラフ地震などの巨大地震も切迫しており、これらへの対応は喫緊の課題となっております。
また、我が国のインフラは、高度経済成長期以降に整備した施設が多くあり、老朽化が加速度的に進行しているところです。
このため、政府としては、昨年12月に総事業費概ね15兆円を目途とする5か年加速化対策を閣議決定し、中長期的な視点に立った対策を、更に加速化・深化して実施しているところです。
国土交通省としては、総事業費概ね9.4兆円を目途として、「流域治水」による豪雨災害対策や、道路ネットワークの機能強化対策などを推進するとともに、「予防保全型インフラメンテナンスへの転換」に向けて、早期の対応が必要な老朽施設に対する集中的な対策などを実施していくこととしています。
特に流域治水については、近年の激甚化・頻発化する豪雨災害に対応するため、今後あらゆる関係者の協働による流域治水を、まずは戦後最大規模の洪水に対応できるよう加速し、さらに、今後の気候変動による降雨量の増加を考慮して治水対策の一層の強化を進めてまいります。
具体的に申し上げますと、まず今年3月に全国の一級河川で策定した流域治水プロジェクトに基づき、防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策も活用しながら河川整備を加速化するとともに、4月28日に成立したばかりの流域治水関連法も活用しながら、浸水リスクに強いまちづくりなど、プロジェクトの充実を図ってまいります。
また、今後の気候変動にも対応できるようにするため、順次治水計画を将来の降雨量の増大を見込んだものに見直した上で、見直した計画に基づき治水対策を更に強化してまいります。
水害に強い国土づくりを強力に進め、防災・減災が主流となる安全・安心な社会の実現を図るため、流域治水の旗振り役として、5か年加速化対策をしっかり推進しながら、国土交通省を挙げて、これまで申し上げた取組に全力で取り組んでまいります。
 
(問)先ほど仰いました流域治水と少し被るのですけれども、副大臣の所掌事務として水管理・国土保全と鉄道の2つがあるかと思いますが、両分野のインフラ整備と老朽化するインフラの維持管理に関しまして、対策の方針についてお考えをお聞かせいただければと思います。
(答)災害を未然に防ぐための事前防災対策や、インフラの老朽化を踏まえた計画的な施設の更新は待ったなしの課題です。
令和2年12月に閣議決定された防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策も活用して全力で取り組んでいかなければいけないと思っているところです。
治水に関する個人的所感ですが、例えば、平成30年7月豪雨の際、実は岐阜県でも11観測所で観測史上最大の降雨を記録しました。
地元美濃加茂市(みのかもし)においては2日間で約160mmもの雨が降りましたが、木曽川(きそがわ)の支川である加茂川(かもがわ)に整備した排水機場の効果により、浸水被害を未然に防ぐことができました。
仮に排水機場がなかったならば、約400戸の浸水被害が発生していたと推定されるところであり、整備を進めてこられた先人の皆さま方に心から感謝するとともに、国民の生命と財産を守るためには、事前防災の考え方に基づくインフラ整備が非常に重要であると痛感しているところです。
また、昨年から全国的に実施している利水ダムの事前放流についてですが、木曽川の牧尾(まきお)ダム等においても取組を進めており、令和2年7月豪雨の際にも河川の流量を減らす効果を発揮しております。
激甚化・頻発化する災害への対応のためには、このように既存施設の機能を最大限に活用し、より安全度を高める取組も重要であると認識しております。
これらを踏まえ、ひとたび水害が発生すると、生命・財産に甚大な被害が発生するとともに、復旧・復興に多大な時間と費用を要し、社会経済活動にも大きな影響を与えることから、被害の防止軽減に向け事前防災対策を着実に進めていくことが重要と考えます。
特に、近年多くの河川で水害リスクが顕在化している地方部の中小河川や本川(ほんせん)支川(しせん)の合流点付近等における対策を5か年加速化対策も活用しながら進めてまいります。
また、河川施設においては、例えば大阪湾の高潮対策で重要な役割を果たしてきた三大水門などのように、高度成長期以降に整備された社会資本のうち建設後50年以上経過する施設の割合が急速に上昇しています。
このため、将来にかかる維持管理・更新費用を抑制できるよう、予防保全への転換を進めつつ、先手先手で計画的な更新などの対策の加速化を図ってまいります。
また、インフラ整備のうち、御質問いただきました幹線鉄道については、地方創生に重要な役割を果たすとともに、国土強靱化の観点からも重要な意義を有しているため、整備新幹線の整備等により利便性の高い幹線鉄道のネットワークの構築を着実に進めてまいります。
また、都市鉄道についても、ネットワークの充実や一層の利便性向上を図るため、首都圏等での新線整備やバリアフリー化等について着実に進めてまいります。
鉄道のトンネルや橋りょう等の土木構造物の多くで経年劣化が進んでおり、構造物を健全に保つため、計画的な維持管理を行うことが重要です。
このため、鉄道事業者に対して法令に基づく定期検査の実施や記録の保存を義務づけているほか、中小の鉄道事業者を対象として、経年劣化が進んでいる施設の長寿命化に資する補強・改良に要する費用等について支援しております。
さらに、近年の相次ぐ災害を踏まえて、令和2年12月に防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策が閣議決定されたところですが、鉄道施設についても豪雨対策、浸水対策、地震対策、老朽化対策について、集中的に実施しています。
国土交通省としては、引き続き、国民の命を守るとともに、鉄道の安全・安定輸送を確保するため、必要なインフラ整備や老朽化対策等を着実に進めてまいります。
 
(問)先ほどは二地域居住について触れられていましたが、東京一極集中の是正に向けた今後の方向性と関係人口の増大につながる地域づくりに対するお考えをお聞かせください。
(答)諸機能の東京への一極集中は、首都直下地震等の巨大災害が切迫すると言われている中で、災害時の被害拡大のリスクを高めることが懸念されています。また、昨今の新型コロナウイルスの感染拡大では、東京の過密が抱える課題というものを改めて再認識したところです。
今般のコロナ禍によるリモート化の進展は、地方の地理的条件の不利を軽減するものと考えており、東京一極集中の是正に向け、例えば、接触機会の軽減のためのデジタル化の推進、テレワークの拡大等による新しい働き方や暮らし方の推進、豊かな自然、特色ある産業、固有の歴史・文化などによる個性ある地域づくりや関係人口の拡大、二地域居住の推進など、将来世代を含め、誰もが安全で豊かさを実感できる国土づくりを進めていくべきと考えております。
また、人口減少・少子高齢化が進行する中で、地域住民と関係人口が連携・協働する地域づくりの重要性が高まっており、関係人口の拡大・深化に向け、地域の人と関係人口を結びつける「人」の育成、関係人口と連携・協働した地域づくりに必要な「場」の提供、関係人口と地域の人の距離を縮める「仕組み」の創出などに関する取組が非常に重要になると考えております。
あわせて、関係人口拡大の一環として、二地域居住等を普及促進するため、本年3月9日、地方公共団体等からなる「全国二地域居住等促進協議会」を設立し、関係施策や事例の情報共有・発信等を行っているところです。
国土交通省としましても、関係省庁とも連携しながら、関係人口の拡大につながる地域づくりに取り組んでまいりたいと考えております。
 
(問)レベル3の自動運転機能を搭載したホンダレジェンドが世界で初めて市場投入されたことへの受け止めと、今後、世界をリードするための自動運転の更なる技術開発・普及に向けた取組についてお伺いしたいと思います。
(答)自動運転については、運転ミスに起因する交通事故の大幅な削減や、過疎地域における高齢者の移動手段の確保など、様々な社会課題の解決が大きく期待されております。
このため、国土交通省においては、世界に先駆けて自動運転車に関する基準を策定し、自動車メーカーが自動運転車を販売できる環境を整備する、自動運転サービスの実証実験を通じて、ラストマイル等における地域の足を確保することを目指すなど、様々な用途に応じた自動運転の実現を推進しております。
この結果、今御指摘いただきましたように、本年3月には、ホンダより世界で初めて、レベル3自動運転車が市販されたほか、福井県永平寺町(えいへいじちょう)においては、地域住民などの足として利用可能な無人自動運転移動サービスが開始されるなど、官民一体となって取り組んできた成果が出てきており、大変喜ばしく思います。
今後ますます自動運転が普及していくことを期待し、引き続き自動運転の普及拡大に取り組むとともに、より高度な自動運転の実現に向けて、基準の更なる整備や技術開発・実証に取り組んでまいりたいと考えております。
 
(問)観光産業がコロナで大きな影響を受けているというお話がありましたが、海外渡航の再開ですとか、また、訪日観光客の受け入れの再開に向けた現状での課題と今後の取組や方針についてお伺いしたいと思います。
(答)我が国では新型コロナウイルス変異株の感染拡大等を受けて、水際措置の強化が継続されており、インバウンドの再開は当面、厳しい状況が続くものと考えております。
一方で、国内でもワクチン接種が進み、また、欧米諸国のように、ワクチン接種が進み、感染状況が改善している国も出てきており、移動の緩和や国際観光を再開していく動きも欧米諸国では一部見られることから、こうした動向についても注視する必要があると考えております。
まず、インバウンドについてですが、観光目的での国際的な人の往来再開など、誘客が可能な状況になった際には、時機を逸することなく外国人観光客の方々に訪日していただけるよう、昨年12月に策定された「感染拡大防止と観光需要回復のための政策プラン」に基づいて、インバウンドの段階的回復に向けた必要な準備をしっかりと進めてまいります。
特に、我が国が誇る、全国各地の内外の観光客を魅了してやまないほど素晴らしい日本の自然、気候、文化、食などの魅力は、新型コロナウイルスによっても失われることはありません。
それらを最大限生かすべく、滞在型観光の推進や地域の観光資源の磨き上げを行うとともに、日本政府観光局を通じた我が国の多様な観光資源の魅力や安全・安心に関する情報の発信、防疫措置を徹底した上での少人数ツアーでの外国人観光客の試行的な受け入れ等に取り組んでまいります。
引き続き、2030年の訪日外国人旅行者数6000万人等の目標達成に向けて、関係省庁と連携し、全力で取り組んでまいります。
次にアウトバウンドについてですが、海外渡航の再開・回復に向けては、感染拡大防止と観光需要回復のための政策プランにおける「アウトバウンドの段階的復活に向けた取組」の方針も踏まえ、各国政府における感染症対策やガイドラインの策定状況等の調査を行ったところです。
アウトバウンドの促進は、国際感覚の向上のみならず、国際相互理解の増進により、互いの理解を深め、友好関係を高めるとともに、航空路線の維持・拡大につながるなど、インバウンドの拡大にも貢献し得るものです。
引き続き、関係省庁や観光業界の皆さま方ともしっかりと連携をし、今後、海外渡航制限が緩和された際に、安心・安全に海外旅行を行える環境を整えてまいります。
 
(問)リニア中央新幹線の件でお伺いしたいのですが、静岡とJR東海の方の協議が難航しているとのことですが、このあたりの静岡工区に関する受け止めと今後の対応方針など伺えればと思います。
(答)リニア中央新幹線については、東京―名古屋間を最速で40分程度、東京―大阪間ですと1時間強で結ぶことになりますので、三大都市圏間の人の流れを劇的に変え、国民生活や経済活動にもとても大きなインパクトをもたらす事業だと考えております。
品川―名古屋間の工事については、全長約286kmのうち、8割以上の区間で工事契約が締結されており、工事が本格化しているところです。
このうち、今御指摘をいただきました静岡工区については、リニア中央新幹線の早期実現と、その建設工事に伴う水資源と自然環境への影響の回避・軽減を同時に進めるため、令和2年4月に有識者会議を立ち上げ、これまでに計11回開催し、熱心に議論を重ねてきていただいているところと承知しています。
有識者会議においては、現在、水資源について議論していただいており、河川工学、水循環や地下水など各分野の専門家の皆さま方から多方面にわたる指摘がなされ、科学的・工学的な見地から活発な議論がなされているものと承知しています。
国土交通省としましては、有識者会議における科学的・工学的な議論を引き続きしっかりと進めて行くとともに、JR東海に対しては、今後、利水者など地元の関係者の皆さまに分かりやすく、丁寧に説明していくよう指示してまいります。
 
(問)先ほど、公共交通に関して、非常にコロナの中で運賃収入が下がっていたり、弱っているとのお話があったと思いますが、バスとタクシーの業界から運賃を値上げしたいという声が強く出ているのですが、こちらに対しての可能性とかお考えをお聞かせください。
(答)先ほどもお答えしましたように、このコロナの影響を受けて、公共交通関係の皆さま方、大変厳しい状況であることは承知をしているところです。
バスやタクシーの運賃の値上げについては、業界の皆さま方の御意見を拝聴していくとともに、このコロナの中で、その運賃の値上げによってお客さんにとって不便となるものでは困りますので、そこは赤羽大臣が仰います現場重視で、現場の皆さま方がそれぞれメリットがあるような方策を考えていきたいと思っております。
 

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