2.災害復旧上の工夫が見られる事例

⑨景観配慮

災害復旧工事での使用頻度が高いコンクリート系の護岸工法については、景観に配慮する。
護岸の素材が周辺と調和した明度、彩度、テクスチャーを有していること。
護岸のり肩、護岸の水際線等の境界の処理は、目立たず周囲と調和していること。

 ブロック護岸の景観配慮の手法 
・法面を分節する。 ・水際、天端・法肩のラインを不明瞭にする。
法面を分節する。 水際、天端・法肩のラインを不明瞭にする。
・法面の明度・彩度を抑える。 ・テクスチャーを持たせる。 ・忌避される景観パターンを避ける。 ・素材の大きさ
法面の明度・彩度を抑える。 テクスチャーを持たせる。 忌避される景観パターンを避ける。 素材の大きさ。

コンクリート系護岸における景観配慮   コンクリート計護岸の留意事項:明度は6以下を目安
     

護岸の明度が大きいと周辺環境から浮き上がる   
周辺環境や上下既設護岸の明度を把握し、そこから大きく離れない明度の製品を使用する。
一般的には明度6以下が良い。
素材の明度・彩度
明度はデジタルカメラを用いて色見本かが配列されているカラーチャートを撮影し、マンセル値をRGB値に変換する。次に対象ブロックを同じカメラで撮影し、アプリケーション上で補正・比較することで容易に把握することが可能である。
明度の計測方法

コンクリート系護岸の留意事項(テクスチャー):標準偏差は11以上を目安
以下は表面仕上げが異なる代表的なブロックを対象に被験者が持つ視覚的な印象と表面起伏量の測定値の関係について実験した結果である。
 被験者へのアンケートを実施し、設置されている各護岸が「周辺環境に調和している」、「周辺環境に調和していない」のどちらかを選択してもらい、その理由をキーワードから選んでもらった。
 その結果、調和しない理由は「人工的である」「明るい」に次いで、「平らである」が高かった。
「平らである」の回答と、表面の起伏量は相関が高かったことから、起伏量が小さい護岸は景観面での評価が低いと判断できる。




 評価結果

コンクリート系護岸の留意事項(パターン)   
 印象調査の結果、Cのグループにおいて負の感性ワードが選ばれる傾向が高かった。
 このため、ボックス型のブロックを採用する場合は生態系面における明確な必要性がある場合に限定し、護岸の見え高を抑える等の工夫が望まれる。 

  コンクリート系護岸の留意事項(素材の大きさ)
一概に、視角が2度以上になると、素材の見かけの大きさが大きすぎると感じ、0.15度になると素材そのものを認識できなくなる。したがって、たとえば対岸から見た場合に、目地で区切られた素材が視角2度以上の大きさになると大きすぎると感じ、逆に0.15度以下になると個々の素材が認識できなくなり、護岸の法面がのっぺりとした1枚の帯となり、法面の存在感が増す。 
視角の大きさの目安

視角2度の大きさは伸ばした手に
1円玉を持った程度とほぼ同じである。
赤枠はブロックの1ユニット
       

景観に配慮した災害復旧事例

  
青森県 古佐井川 現在(H29.6)
青森県 古佐井川 工事完了後(H23.3)  現 在(H29.6)
 コンクリート系の工法を採用していますが、本復旧では、法枠工法の中張りをうまく使って、法面に植生を回復するとともに、法肩部も植生が繁茂できるような工夫をすることで、より自然で良好な河岸が創出されています。
 上流側の階段護岸は被災前から整備されていたもので、機能回復として同一工法で復旧が採択されています。
 工事完了後(H23.3)  
 ■基本方針の活用ポイント■ 凡例:◎工夫が優れている ○配慮されている △もう少し工夫が望まれる
 河道計画上の工夫点  ①
法線
 ②
流速
 ③
スライド
ダウン
 ④
片岸拡幅
 ⑤
みお筋
 ⑥
河床幅
- - - - - -
 災害復旧上の工夫点  ⑦
河岸・
水際部
 ⑧
環境要素
の保全
 ⑨
景観配慮
 ⑩
重要種
への配慮
 ⑪
環境への
配慮
 
- - -
 ■河川DATA■
 水系/河川名  二級河川 古佐井川水系 古佐井川(こさいがわ)
 事業名  災害復旧事業
 事業主体  青森県
 年災  平成22年度
 河川の流域面積  30.6平方キロメートル
 河道特性  セグメント1
 計画流量  -
 主な工事概要  護岸工(コンクリートブロック張工)
 川づくりのテーマ  親水空間の確保と平瀬を保全しつつ災害に対応できる強固な護岸に復旧

三重県 神武谷川 工事完了後(H26.6)
三重県 神武谷川 工事着手前(H26.2) 現 在(H30.5)
 空積の石積護岸の被災から、従前の石や河床の石を活用して矢羽積みの石積み工法として復旧しました。
 河床の石と同系統の石で護岸を積み上げ、さらに護岸天端付近の植生もあり、上流域の護岸整備として景観的に優れた復旧となっています。
 小口部分が若干人工的なので、張石や粗目仕上げとすれば、より周囲になじむと考えられます。
工事着手前(H26.2)
 ■基本方針の活用ポイント■ 凡例:◎工夫が優れている ○配慮されている △もう少し工夫が望まれる
 河道計画上の工夫点  ①
法線
 ②
流速
 ③
スライド
ダウン
 ④
片岸拡幅
 ⑤
みお筋
 ⑥
河床幅
- - - - - -
 災害復旧上の工夫点  ⑦
河岸・
水際部
 ⑧
環境要素
の保全
 ⑨
景観配慮
 ⑩
重要種
への配慮
 ⑪
環境への
配慮
 
- - -
 ■河川DATA■
 水系/河川名  一級河川 鈴鹿川水系 神武谷川(じんむたにがわ)
 事業名  災害復旧事業
 事業主体  三重県
 年災  平成25年度
 河川の流域面積  2.5平方キロメートル
 計画流量   -
 河道特性  セグメント山間地
 主な工事概要  石積工
 川づくりのテーマ  周辺環境との調和を図る川づくり

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