朝日新聞社 論説主幹 佐柄木 俊郎 殿
貴社は、10月15日付けの貴紙夕刊「窓」において、「建設省のウソ」との見出しで、「真実を隠し、国民をだます」と断じておられます。
長良川河口堰に関しては、堰運用後の状況について、科学的かつ客観的な諸観測が行われるよう学識経験者から成る長良川河口堰モニタリング委員会を平成7年7月より開催しております。
長良川河口堰に関する諸観測はモニタリング委員会の指導・助言の下に、一般に公開して実施し、観測データは全て公表すると共に、モニタリング結果の科学的判断についてもモニタリング委員会のご指導をいただいております。この委員会は公開の場で行われ、資料も全て公開するなど、情報公開に努めてきたところであります。
また、これらを通じて得られた知見についての情報の共有化や評価についても、例えば本年7月に開催された日本自然保護協会主催のシンポジウム「長良川河口堰の影響を科学的に検証する」を通じて、幅広い方々とオープンな議論を行ったことを含めて、市民団体の方々との話し合いの機会もしばしば持ってきているところであります。
このように、建設省としては、私どもの保有する資料を全て公開し、いろいろな方々が持っておられる情報も教えていただきながら、様々な場を通じて意見交換を行ってきているところですが、今回の「窓」においては、残念ながらこのような建設省の取組みを顧みることなく、「真実を隠し、国民をだます」と断じておられます。建設省としては、今後の建設行政をより開かれたものとするため、今回の記事に係る事実関係を把握したいと考えておりますので、
- 「堰ができる前は何千万匹もが遡上していたはずだ」と主張されておられますが、これはどのような出典及び根拠に基づくものなのでしょうか、
- 「堰運用の前は放流ものの漁獲量の二.五倍もの総漁獲があり、その差が天然アユだった」と主張されておられますが、これはどのような出典及び根拠に基づくものなのでしょうか、
- 「いま漁に出る漁師は一人もいない」と主張されておられますが、これはどのような根拠に基づくものなのでしょうか、
- 「真実を隠し」とお書きになっておられますが、建設省がどのような事実を隠していると考えておられるのでしょうか、
- 「国民をだます」とお書きになっておられますが、どのような点について建設省が国民をだましていると考えておられるのでしょうか、
といった点についてご教示いただければ誠に幸いに存じます。
真実を伝え、社会の木鐸としての重要性を持つべき報道機関が今回のような報道を行ったことは、国民に信頼される開かれた行政を指向している建設省としては、きわめて残念なことであり、重大な関心をもって受けとめております。
なお、本報道については、外部からの問い合わせ等も多く、私共としても国民への説明責任があると考えており、本件に関する今後の貴社との書簡の往復は、公開の扱いとさせて頂きたいと考えておりますので、宜しくお願い申し上げます。
平成11年10月22日
〒100-8944 東京都千代田区霞が関2-1-3
建設省河川局開発課長 横塚 尚志
建設大臣官房文書課広報室長 西脇 隆俊
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