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10月15日付朝日新聞「窓」の報道に対する建設省の書簡について
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12月27日付け朝日新聞論説主幹宛公開書簡
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朝日新聞社 論説主幹 佐柄木 俊郎 殿 12月13日付け書簡をお送りいただきありがとうございました。 今回の貴社からの書簡では、当方の質問の多く(特に重要部分)についてお答えをいただけず、また論点をそらす記述や質問も多く、極めて残念に思っております。貴社はこの書簡において、誠実に答えることを当方にお求めになっていますが、貴社も次回の書簡でこそは、誠実な回答をお寄せいただきますよう改めてお願いいたします。 さて、以下には、貴社からの質問に対してお答えするとともに、お答えいただけなかった質問についての再質問や、貴社回答を踏まえた追加質問をさせていただきます。なお、次回の貴社回答において当方の全ての質問に誠実にお答えをお願いしたいという観点から、10月15日付け貴社夕刊コラム「窓」(以下、本書簡では単に「窓」と呼びます)の記述の当否に関する今回の議論の論点とは関係が不明な質問も含めて回答させて頂きますが、次回からは、今回の議論との関係が必ずしも明確でない質問に関しては、その関係を質問とあわせてお示しいただくようお願いいたします。 1.12月13日付け貴社質問(1)に対する回答等 貴社12月13日付け書簡では、「『FOCUS』誌によりますと、この論争は竹村公太郎河川局長が全責任を負っているとのことです」と書かれていますが、当該誌には、そのような記述はありません。おそらく、貴社は、当該誌中の「………反論に時間がかかるのでは意味がない。そこで私が全責任を負うからと、河川局のホームページで反論したわけです。インターネットならオープンですし、情報公開という意味でも意義があると考えました」という記述を指して、質問されているものと考えられますが、そうであれば、貴社とのこの書簡を通じた議論の公開手法等についての竹村河川局長の考えが、誌上で紹介されたものであるとお答えさせていただきます。 今回の議論については、原因となった「窓」の記事が建設省の行政姿勢を強く否定する内容のものであったこともあり、私どもは、竹村局長も含めて、上司や同僚とも相談しながら対応しておりますが、誰が記名をして書簡そのものに責任を負うかは、当方の判断に属する事項です。 なお、誠に残念なことですが、上の『FOCUS』誌の例を始めとして、本来は原意を損ねずに引用又は解釈を行うべきところを、読者に誤った印象を与えるような引用又は解釈が行われている箇所が散見されます。本来、文書の記述の正確性に最も気を遣われるべき立場の方として、できるだけ的確な引用又は解釈を心がけていただくようお願い申し上げます。 2.12月13日付け貴社質問(2)に対する回答等 貴社は、「再質問書を拝読しますと、議論を本題からそらそうとしていらしゃるように感じられます。この論争の中心的な論点は、『長良川河口堰では、堰運用(95年7月)後、アユは順調に遡上し、サツキマスやシジミの漁獲量も著しい減少は見られない』という建設省の説明が事実なのかどうか、という点です。事実なのかどうか、事実なら、どのような根拠に基づいてそう判断しているのか、それを改めてお尋ねします。」と述べています。 これについて、以下に当方の考え方をご説明します。 2.1 質問への回答と「事実」、「真実」という言葉の適正な使用について まず、建設省の説明が事実なのかどうかという点ですが、貴社は、「事実」、「真実」という言葉を、非常に安易に用いられているように見受けられますので、以下には、これらの用語の用法に留意しながらお答えを致します。 貴社が問題にしている建設省の資料(以下、本書簡では「建設省資料」と呼びます)で示されている、長良川河口堰地点のアユの遡上状況の数値は、観測結果という「事実」に基づく「確からしい推定値」です(観測者が10分間アユの遡上量を目視でカウントし、10分休んで、またカウントするという方法で求めた観測値を2倍して遡上量を推定する方法をとっていますので、若干の誤差は伴います)。また、長良川38km地点におけるサツキマスの漁獲量、木曽三川下流部におけるシジミの年度別漁獲量の数値は、事業者が自ら(漁獲を)行っているものではない点において間接的な形の確認ですので、事業者としては「事実であると推定」しているものです。一方、「アユは順調に遡上」、「サツキマスやシジミの漁獲量も著しい減少は見られない」という部分は、建設省の「見解」です。「順調」、「著しい減少が見られない」といった判断は、その当否について絶対的な基準があるものではないことから、軽々に「事実」と断定できる性質のものではありません。そして、建設省は、これらの「見解」を、その妥当性について読者が判断することが可能になるように当該見解の根拠となるデータを付して示したものです。 2.2 貴社の「真実」の安易な用法 これに対して、貴社は、建設省は「真実を隠した」と断定し、その真実とは、「長良川河口堰の運用後、天然アユは順調に遡上・降下していないこと。天然サツキマスや、長良川河口部のヤマトシジミの漁獲量は著しく減少していること」であると11月5日付け貴社書簡で述べています。我々が驚いているのは、貴社が「真実」という言葉をあまりに安易に用いられていることです。貴社が、「真実」と断定したものは実は単なる「1つの意見」に過ぎず、「隠した」というのも「触れなかった」とでも訂正するご意向があるならともかく、そうでなければ、11月15日付け質問4でお尋ねしているように、貴社が真実であると主張されている内容が、誤りのないものであることを立証して頂く必要があります。「建設省のウソ」、「真実を隠し、国民をだます」という断定を、発行部数420万部余を誇る貴紙夕刊紙上で読者に対して示されたわけであり、今回の議論の中心的な論点はここにこそあるのですから、これは貴社の当然の責任ではないでしょうか。 2.3 国民に誤解を与える誤った引用 12月13日付け書簡(2)において貴社は、建設省資料の枠囲み中の「長良川河口堰では、堰運用(H7.7)後、アユは順調に遡上」という文と「サツキマスやシジミの漁獲量も著しい減少をしていない」という文を合成して、「長良川河口堰では、堰運用(95年7月)後、アユは順調に遡上し、サツキマスやシジミの漁獲量も著しい減少は見られない」と、「長良川河口堰ではシジミが著しく減少していない」と建設省が主張しているように読める書き方を行っていますが、建設省ではこのような主張はしていません。堰の建設により長良川におけるシジミの漁獲量に影響が出ることは、これまでも随所で認めているところですし、そのための漁業補償等も行ってきたところです。建設省資料において、「シジミの漁獲量も著しい減少は見られない」としているのは、長良川河口堰建設後も、この地域でシジミ漁を営む赤須賀漁業協同組合が堰運用後も著しい漁獲量の減少に見舞われていないことを端的に示したものであります。建設省資料では、「近年の木曽三川下流部におけるシジミの年度別漁獲量」との表題で、漁獲量の変動データを示しており、それに対応した見出しの枠囲みでも、 「・サツキマスやシジミの漁獲量も著しい減少は見られない」 と記しており、長良川に限定した漁獲量の減少が無いとか、長良川河口堰による影響がなかったといった記述は行っていません。 貴社11月5日付け書簡でも同様の表記が見られたところですが、当方が記述している内容を、誤解を受ける内容に改変して引用することは不適切であり、今後十分注意を願います。 3.12月13日付け貴社書簡質問(3)〜(6)に対する回答等 3.1 質問(3)に対する回答 多方面の学識者によって構成される委員会を効率的に進めることを目的として、事前に資料の検討等を行うワーキングの場を持つことは一般的に行われている方法です。長良川河口堰モニタリング委員会の場合にも、ワーキングで資料の検討や考え方の交換が行われています。 このワーキングは、テーマ毎に関心のある先生方が随意に集まり開催しているものです。建設省は、当方の予算措置等の面で支障の無い限り、ワーキングを主催する先生方に運営方法の決定を委ねております。従って、その公開、非公開の判断理由について、建設省はお答えする立場にありません。 「今後、似たような委員会が開かれる場合は、ワーキンググループのような会合も含めて、すべて公開する意志はおありでしょうか」とお尋ねの件についても、それぞれの「ワーキンググループのような会合」の主催者が決めるべき問題であると考えます。 3.2 質問(4)に対する回答 モニタリング委員会の認識とは異なる報告を行っている研究者や市民グループと、モニタリング委員会委員との徹底的な公開討論を実施する意志はあるかとのお尋ねですが、拝見しまして、この質問は今回の議論の論点をぼかそうとする最も分かりやすい例だと感じております。モニタリング委員の公開討論参加の意向と、「窓」の記事内容の当否に関する今回の議論とは無関係です。例えて言えば、建設省から、「朝日新聞の紙面審議会委員は、今回の『窓』の記述の妥当性について貴社と異なる見解を持つ市民や識者と公開討論を行う考えはあるか」と貴社にお尋ねするようなものです。なお、もとより私どもはこのような不躾な質問を実際にする考えはありませんので、念のため付け加えさせていただきます。 あえて質問にお答えするならば、公開討論会参加は、モニタリング委員会委員の判断に属することであり、建設省に質問されるのは的はずれであるというのが当方の回答です。 3.3 質問(5)に対する回答 「建設省はたしかに、モニタリング委員会に提出した資料はすべて公開しています。しかし、これが調査したもののすべてでしょうか。」とお尋ねです。貴社質問中の「調査」の範囲が不明ですが、これが長良川河口堰のモニタリングのための調査ということでしたら、委員会に提出した資料がその全てです。 なお、長良川で建設省が行っている河川事業関係の調査としては、用地補償調査等、長良川河口堰のモニタリング以外の目的を持つものもあり、それらの結果を全て公開しているわけではありません。 3.4 質問(6)に対する回答 「長良川、揖斐川、木曽川の木曽三川について、過去にどのような調査が行われたか、また現在どのような調査が行われているのか、そのリストと調査結果をすべて公開していただきたいと考えます。」と言われる件については、膨大な資料を対象として、情報公開法の施行へ向けて、計画的に資料の整理やリストの作成作業を現在進めているところであり、準備が整いましたら、情報公開法の基準に基づいて、個人のプライバシーに係る情報の保護等一定の措置を講じた上で、情報公開を行ってまいりたいと考えています。 ただし、今回の貴社との議論に直接関係する調査結果については、中部地方建設局又は水資源開発公団中部支社等までお出で頂ければ、すべてご覧頂くことができます。 なお、12月13日付け貴社書簡を拝見した結果、貴社は当方の質問には答えずに、かわりに関係のない論点を持ち出して問題のすりかえ及び回避を行う傾向があると判断せざるを得ない状況となっております。 貴社は、貴社が「窓」執筆時点までに持たれていた情報を基に「真実を隠し、国民をだます」と断定されたわけですから、更なる新資料無しでは当方質問に対する論理構成はできないなどといった主張をされるとするならば、私どもは首肯できませんので、予め申し上げておきます。 3.5 質問(6)に付随する記述について 貴社は、「長良川、揖斐川、木曽川の三川について、過去にどのような調査が行われたか、また現在どのような調査が行われているのか、そのリストと調査結果をすべて公開していただきたいと考えます。……(中略)……それができない限り、真実を隠していると判断せざるをえません。」(下線、当方)と書かれていますが、あまりにストレートな論点のすりかえではないかと、正直なところ驚いています。 「窓」において「真実をかくし、国民をだます」と書かれたときの「真実」の内容、すなわち「長良川河口堰の運用後、天然アユは順調に遡上・降下していないこと。天然サツキマスや、長良川河口部のヤマトシジミの漁獲量は著しく減少していること」(貴社11月5日付け貴社回答)を建設省が隠していると、貴社は「窓」において既に断定されているわけです。当方としては、貴社がどうしてそのような断定をされたのか依然として不明な状態が続いているわけですので、まずは断定された理由の説明を貴社から行っていただかないと議論になりません。まさか、断定するに足る根拠が実は無いので、関係のない資料まで含めた情報公開の問題を持ち出したといったことではないと信じたいのですが、そのような懸念が当たらないのなら、以下の質問に対して、論点をそらすことなく回答いただきますようお願いいたします。
4.11月15日付け当省書簡の質問3に関連する議論 貴社は、12月13日付け書簡((6)の次の段落)において、当省11月15日付け書簡の質問3についてと断った上で、「この資料は、建設省の見解を簡潔に示したものであると、再質問書で自ら認めていらっしゃいます。それならば、この資料をもとに建設省の見解の当否を判断して、なぜいけないのでしょうか」と書かれています。「窓」の問題点の核心に触れる質問の一つに全くお答えをいただけず、代わりに問題のありかをそらす質問を頂いたことは誠に残念です。これについて、以下にご説明いたします。 4.1 12月13日付け貴社書簡(6)の次の段落の質問への回答 まず、質問に対するお答えですが、建設省は、私どもが作成した資料に示した見解の当否を判断すること自体がいけないなどという主張は今まで全くしておりません。判断を示されること自体は、(判断の当否については議論があるでしょうが)全く自由です。従って、貴社の質問は意味をなしません。「窓」における記述が、「アユは順調に遡上」、「サツキマスやシジミの漁獲量も著しい減少はみられない」という当該資料における建設省の見解について論じる(例えば、「アユが順調に遡上という建設省の見解は誤りではないか」とか)にとどまったのであれば、建設省としても「私どもが全ての情報を公開しながら各種の科学的調査を進めている事実には一切触れなかったこと」についての貴社の見識を問う必要はなく、その論点についての互いの見解のどちらが正当であるかについて議論すれば十分であったと考えます。
問題は、11月15日付け当方書簡の質問3でも記しているように、貴社が「窓」において、建設省は「真実を隠し、国民をだます」と、断定されたことにあります。ここで「真実を隠し、国民をだます」という記述が当たるためには、 (a)建設省の見解とは異なる「真実」が存在していること、 (b)その「真実」について建設省が知っているのに隠していること、 (c)建設省が国民をだましていること という要件が全て満たされる必要があります。11月15日付け当省書簡では、この内の(a)に関連する質問として、質問4により全般的な貴社の釈明を求め、また貴社が「真実」であると断定している内容に反していると考えられる内容を含む名古屋高裁判決への貴社の見解を質問5により求め、さらに、質問6以降で、貴社が「真実」であると主張される内容に関係する各論的事項について質問しております。一方、上の(b)、(c)については、私どもが、情報を公開しながら科学的調査を進めている事実に照らして考えて疑問であることから、関連する質問として11月15日付け質問3をお尋ねしたものです。 そこで前回の書簡でお答えいただけなかった質問を重ねてお尋ねします。
また、追加してお尋ねします。
5.12月13日付け貴社質問(7)に対する回答 5.1 質問(7)に対する回答 建設省河川局開発課で作成した資料です。資料は、個人名の文書として作成したものではありませんので、特定の個人を責任者としているものではありませんが、あえて責任者を特定せよと言われるのであれば、開発課長である私(横塚)の責任の下で作成しているものであるとご理解頂いて結構です。 5.2 質問(8)〜(9)に対する回答 貴社が問題にしている資料は、グラフ部分についてはいずれもモニタリング委員会年次報告資料中に含まれているものです。この年次報告資料は、モニタリング委員会の指導を得て作成しているものです。モニタリング委員会の委員の氏名は公表されていますので、氏名は公表資料をご参照下さい。資料中の上部の枠囲みの部分の記述は、建設省の見解です。モニタリング委員会の了解を事前にとって作成したといった性格の資料ではありません。 さて、今回の議論は、本来は「窓」執筆時点までの情報を基に行うべきものであると考えていますが、12月13日付け貴社書簡(11)において、本年11月22日に開催されたモニタリング委員会後の記者会見等での委員発言についての当方の見解を求められていることもありますので、あえてこの場での貴社論説委員と委員会委員との間の質疑応答についても触れさせていただきます。私共の記録によれば、この場で貴社論説委員は、貴社が問題としている建設省資料について、「これは建設省が報道関係者や政治家に配っております資料で、さまざまな調査、モニタリング委員会なども踏まえた彼らの主張のエッセンスです。その中で、アユは順調に遡上し、サツキマスやシジミの漁獲量も著しい減少は見られない。そしてそこに、それを説明するべくグラフが付いているわけですけれども、このような説明をしていることに対してどう考えるか」という質問を行われました。貴社論説委員から名指しで意見を求められたモニタリング委員からは、「それは、過去5年間にわたりまして調査された内容について、そのままを忠実に表現されたので、そこに誤りはない。モニタリング委員会が指示した調査の報告を出していることであるので、そこで真実を偽ったものがないというように私は確信している」という回答がありました。 また、別の委員は、建設省見解部分については委員として答える立場にないと答えたのに追ってさらに考えを問いただした貴社論説委員に対して、「本筋では間違いない。それは他の委員もそう思っていると思う。表現が足りない部分はあるだろうけれども。全体として全然間違ったことはしていない」という趣旨の回答をされています。 貴社が「真実を隠し、国民をだます」ものと断言している建設省資料についてのモニタリング委員会の先生方の考え方は、このように貴社論説委員が直接確認されたとおりです。 なお、唯一、表現の適切性の問題をモニタリング委員から具体的に指摘された部分としては、貴社との議論の争点になっている部分ではありませんが、水質に関して、「BODに大きな変化は無かったということは言えるが、クロロフィルaについて、『大きな変化はない』としている部分は、『最大値には大きな変化は見られないものの、高い値が観測される頻度が多くなった』とするのが正直な書き方であって、単に大きな変化はないとするのは適当な書き方ではないと思う」というものがあります。今後、同様の資料を作成する際には、クロロフィルaについては、委員の指摘のように修正したいと考えています。 さて、以上、建設省資料についての、モニタリング委員の見解等について述べさせていただきましたが、ここで質問をさせて頂きたいと思います。
5.3 貴社質問(10)に対する回答 貴社が問題としている建設省資料は、長良川河口堰運用後の状況を説明する際の資料として、本年夏以降に折に触れ使用しているもので、報道関係者、国会議員、関係行政機関、一般外来者等多方面の方々にお渡ししております。なお、配布部数も多く、配布先の記録管理は行っていません。また、11月5日付け貴社書簡に基づく貴社の求めもあって、11月中旬以降は当省ホームページに当該資料を掲載していますので、インターネットにアクセスできる方であれば、どなたでもすぐに資料の入手ができる状況となっています。12月22日時点での当該資料の頁へのインターネットでのアクセス数は1,625件です。 6.11月15日付け建設省書簡質問4に対する貴社コメント及び質問について 12月13日付け貴社書簡(10)の下の段落において、残念ながら11月15日付け当省書簡質問4への回答はいただけず、その代わりに、「私たちが『真実』であると断定している内容が『どのような角度からみても誤りのない、文字通りの真実であることを』説明せよとのお求めですが、そう主張されるのであれば、建設省が『正確で公平であるべき報道機関』に配布した資料もまた、『どのような角度からみても誤りのない、文字通りの真実である』必要があると考えます。資料に記載された内容のすべてが、そのような『真実』なのでしょうか」と述べられています。 これに対して、以下にまず貴社の質問部分に対してお答えするとともに、再質問及び追加質問等をさせていただきます。 6.1 質問部分への回答等 まず、建設省資料の内容が「真実」かどうかという点についての回答は、本書簡2.1項に示したものと概ね同じです。すなわち、貴社が問題にしている建設省の資料で示している長良川河口堰地点のアユの遡上状況の数値は、観測結果という「事実」に基づく「確からしい推定値」です。また、長良川38km地点におけるサツキマスの漁獲量、木曽三川下流部におけるシジミの年度別漁獲量の数値は、事業者が自ら(漁獲を)行っているものではない点において間接的な形の確認ですので、事業者としては「事実であると推定」しているものです。一方、「アユは順調に遡上」、「サツキマスやシジミの漁獲量も著しい減少は見られない」という部分は、建設省の「見解」です。「順調」、「著しい減少が見られない」といった判断は、その当否について絶対的な基準があるものではないことから、軽々に「事実」あるいは「真実」と断定できる性質のものではありません。これらの「見解」は、我々としては妥当なものと考えているものですが、誰もがそれに同意するとは限らない性質のものであると考えています。これに対して、2.2項に示しましたように、貴社の用いる「真実」という用語はあまりにも安易ではないかと考えております。 次に、「私たちが『真実』であると断定している内容が『どのような角度からみても誤りのない、文字通りの真実であることを』説明せよとのお求めですが、そう主張されるのであれば、建設省が『正確で公平であるべき報道機関』に配布した資料もまた、『どのような角度からみても誤りのない、文字通りの真実である』必要があると考えます」という主張(下線、当方)ですが、これについての当方の考えを以下に述べます。 6.2 不可解な回答回避の論理 当方は11月15日付け質問4で、「貴社がここで「真実」であると断定されておられる内容が、どのような角度からみても誤りのない、文字通りの真実であることを、本書簡でお尋ねする他の論点も踏まえた上で、ご説明いただくよう求めます。」と質問しているわけですが、このように質問する上で、「建設省が『正確で公平であるべき報道機関』に配布した資料もまた、『どのような角度からみても誤りのない、文字通りの真実である』必要がある」という論理は不可解としかいいようがありません。当方としては、回答を回避されているとしか考えられません。そこでお尋ねします。
6.3 報道機関に配布する資料の性格、目的について 建設省は、数多くの資料を報道機関に配布しております。記者発表の形態を通じて配布するもの、個別のお問い合わせに応じて配布するもの、懇談会等の形式を通じて配布するもの、広報誌やパンフレット等の形態で広く配布するもの等さまざまです。 これらの発表の内容について正確を期すべきであるのは当然のことです。しかし、どのような角度から見ても誤りのない「事実」、「真実」のみではなく、世上で様々な議論がある案件についての建設省の「見解」、「判断」をお伝えすることも、報道機関に資料を提供することの重要な役割であると考えています。 もとより、行政機関は、様々な事項について判断を行い、行政施策に反映させていく責任を負っています。長良川河口堰の運用を適切に進めることもその一つです。我々には、「どのような堰の運用が適切か」という「判断」が求められ、さらにその判断を下す上では、環境面を始めとする様々な影響を把握し、我々なりにそれらの影響についての「見解」と「判断」を持つことも必要です。さらに、そのような「見解」や「判断」を報道機関を始めとする様々な方々に対してわかりやすい形で示し、ご意見を頂くことも重要であると考えています。 貴社が問題としている資料は、このような目的で作成したものです。 そこで、お尋ねします。
7.名古屋高裁判決でアユとサツキマスの遡上量が大幅に減少しているものではないとされていることについて
8.調査検討の「厳密」・「粗雑」の判断について 貴社は、12月13日付け貴社書簡(2)の4段落下の箇所において、「『魚類等の遡上・降下の状況』に関していえば、モニタリング委員会での検討はきわめて粗雑なものです」と断言されています。一方、10月15日付け「窓」の中では、「日本自然保護協会の吉田正人部長は、五年に及ぶ厳密な独自調査をもとに、そう指摘する」と書かれています(下線、両方とも当方)。 調査の精度に関する判断は、通常であれば専門家の間の議論を必要とするところです。専門家で構成するモニタリング委員会における魚類等の遡上・降下に関する検討の精度を、公開を前提とした書簡の中で「きわめて粗雑」と決めつけられたことは、中正な評論を社是とする朝日新聞の論説主幹たる方の言葉とは思えませんが、このような断定を行われたからには、十分専門的な議論に耐えるだけの知見を貴社が有した上でお書きになっているものであると考えます。そこで、以下の質問に対して回答頂くようお願いいたします。
9.各論的事項について
10.報道の基本的姿勢について 12月13日付け貴社書簡では、「建設省の主張はモニタリング委員会の報告や関連資料によって十分に承知しています。それを簡潔に示したのが、前回の書簡に添付した資料です。それらをもとにした、今回の『窓』の取材に落ち度があったとは考えておりません」と述べていますが、
今回の「窓」については、建設省側への十分な取材を欠いていたこともさることながら、建設省がこれまで行ってきた情報公開に関する行政スタンスや、当省の見解を支持するデータ、識者の見解、裁判所の判決等には一切言及せず、「建設省のウソ」という見出しの下、「真実を隠し、国民をだます」という主張を中核とする建設省の行政姿勢を否定する記事を掲載したことが大きな問題だと考えております。この点を取り違えておられる様子は、続けて「この論争の中心的な論点は「堰運用後、アユは順調に遡上し、サツキマスやシジミの漁獲量も著しい減少は見られない」という建設省の説明は事実かどうか」という点にあります。・・・その点を見誤らないで頂きたい」と主張されていることからも伺えますが、建設省としては11月15日付け当方書簡でも言及しているとおり、「窓」の記事が新聞紙上という極めて影響力のある場で、建設省の主張と異なった意見を有する方の見解を取り上げ、それが建設省の主張と異なっているという理由をもって建設省を一方的に「真実を隠し、国民をだます。」と断じたことを論点の中心においているのだということを確認させていただき、貴社の誠意ある回答をお待ちしております。なお、私どもは、貴社とのこの一連の議論は、今後も全てインターネット上の建設省ホームページ(http://www.moc.go.jp)で公開してまいる考えですので、宜しくお願いいたします。 平成11年12月27日
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