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10月15日付朝日新聞「窓」の報道に対する関連情報

長良川河口堰の環境影響を議論するシンポジウムの開催




長良川河口堰の環境影響を議論するシンポジウムが開催される!


 環境問題で注目を集めた長良川河口堰の環境影響について議論しようというシンポジウムが、7月17日(土)に(財)日本自然保護協会の主催により、東京代々木のオリンピック記念青少年総合センターで開催された。

 このシンポジウムは、「長良川河口堰の影響を科学的に検証する」をテーマに開催されたもので、地元の研究者グループ、NGO、マスコミ、事業者サイドの建設省や水資源開発公団など約150名が参加した。

 シンポジウムは、講演と討論により構成され、講演では、地元の研究者グループが河口堰の運用開始後4年間行ってきた独自の調査に基づきとりまとめた「長良川河口堰が自然環境に与えた影響」と題する報告書(発行:(財)日本自然保護協会)の記載内容をもとに、岐阜大学理学部の山内教授など3名の研究者から主に水質・底質、底生生物、魚類、水生植物等への影響について報告があった。

 討論では、建設省河川局開発課の宮本開発調整官から建設省と水資源開発公団が堰の運用前から行ってきたモニタリング調査をもとに環境への影響に関する建設省の見解が示され、それをもとに、講演で報告のあった水質・底質、底生生物、魚類、水生植物等への影響に的を絞って議論が行われた。その概要は、以下のとおりである。

1)
水質・底質
 クロロフィルaの変動パターンの変化については、双方が事実関係を認めたが、その評価については意見が分かれた。底泥の堆積については、調査法・堆積量の算定法が異なっており、双方の主張に隔たりがあった。

2)
底生生物
 ヤマトシジミの減少が底泥の堆積によるとの指摘に対し、建設省は、浚渫により河床が低下したことにより海水を引き込んだため塩分濃度が増加しヤマトシジミの生息条件を悪化させたことの影響が大きいとの見解を示した。

3)
魚類
 河口堰の運用開始後にサツキマスの遡上時期が遅れているとの指摘に対し、建設省は昨年及び今年は従来の傾向に戻っており、一時的な現象であったとの見解を示した。
 一方、アユの稚魚の降下に要する日数が大きく増加しているとの指摘に対し、建設省は、指摘のあったデータは流況の非常に悪い時期のもので一般的な傾向ではなく、通常の流況の時を見るとさほど大きな違いはないとの見解を示した。なお、アユの稚魚の生まれてからの日数の推定方法が異なっているため、データ自体の解釈が異なった。

4)
水生植物
 ヨシ原の減少について建設省も認めているが、ヨシ原の造成などの環境保全措置により対処していくとの建設省の考えを示した。

 シンポジウムでは、討論の最後に、モニタリング委員会の委員でもある西條名誉教授から「長良川河口堰のモニタリング委員会のデータは全て公開され、解析も自由であり、日本の環境調査では画期的なことである。それぞれのデータを持ち寄り、このような形で議論ができたのは、意義深いことであり、すばらしい。河口堰についてより深い検証をするためのきっかけとなったと考えている。」とのまとめがあった。それに対し、宮本開発調整官から「客観的に冷静に議論できたことは大変良かった。情報を共有することは重要なことなので、我々のデータも公表するが、皆さんのデータも提供いただき議論を深めたい。今後もモニタリングを続けて情報を公開していくので、引き続き客観的な議論をお願いする。」とのコメントがあり、4時間近いシンポジウムが幕を閉じた。

(建設省河川局河川環境課・開発課)

講演
  長良川河口堰事業モニタリング調査グループ      
  長良川下流域生物相調査団              
  サツキマス研究会                  
村上哲生
山内克典
新村安雄
討論
  長良川河口堰事業モニタリング調査グループ      
田中豊穂
パネラー
  名古屋大学名誉教授・長良川河口堰モニタリング委員  
  岡山理科大学教授・長良川河口堰モニタリング委員   
  建設省河川局開発課 開発調整官           
  建設省河川局河川環境課 建設専門官         
  建設省大臣官房技術調査室 環境安全技術調整官    
  建設省土木研究所 下水道部水質研究室長       
  長良川下流域生物相調査団              
  サツキマス研究会                  
  (財)日本自然保護協会 保護部長          
西條八束
奥田節夫
宮本博司
足立敏之
森北佳昭
田中宏明
山内克典
新村安雄
吉田正人