グループ1: 各地のダムの働き
平成27年9月 関東・東北豪雨「鬼怒川上流4ダム」(所在地:栃木県)

データ


概 要
常総市内の浸水戸数を半減

平成27年9月に台風17号・18号の影響により、関東・東北地方に記録的な豪雨が発生。鬼怒川上流の4つのダム(川治・川俣・五十里・湯西川の各ダム)では、雨や下流の河川水位の状況を見ながら、できる限り洪水をためる操作を行い、約1億m3の水をため込みました。

この結果、鬼怒川下流(平方?水海道)の水位を25?56cm低下させ、鬼怒川下流左岸(常総市内)の氾濫水量を概ね3分の2、浸水深3m以上の浸水面積を概ね3分の1、浸水戸数を概ね2分の1に減少させたと推定されています。


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経 過
9月9日未明より

台風18号の接近にともない、上流域での雨量の増加とともに、4ダムへの流入量の増加が始まる。


9月9日10時ごろ

台風18号は知多半島に上陸。


9月9日11時31分 宇都宮地方気象台発表

「10日12時までの24時間に予想される雨量は、いずれも多い所で、北部、南部ともに200ミリの見込みです。」
その後の24時間雨量(9?10日)は500ミリを越えていますが(五十里観測所)、この時点でこれほどの大雨になることは予測困難な状況であった。


 

水をため込んだ川治ダム
 
9月9日13時ごろ

川治ダムの流入量が洪水調節開始流量(400m3/s)に達したため、放流量を400m3/s以下に保つ操作を開始。すなわちダムに水をため込む洪水時操作を始める。





 

水をため込んだ湯西川ダム
 
9月9日14時ごろ

自然調節方式の湯西川ダムにおいて、洪水量(150m3/s)に達した。自然調節方式のダムとして水をため込む洪水時操作が始まる。





9月9日14時ごろ

台風18号は日本海に抜ける。しかし、栃木県では南北に連なる線状降水帯により、同じ場所に激しい雨がその後も降り続ける。




9月9日16時ごろ

川俣ダムの流入量が洪水調節開始流量(350m3/s)に達したため、その後は放流量を350m3/s以下に保ち、ダムに水をため込む洪水時操作を始める。


 

水をため込んだ川俣ダム
 
9月9日18時ごろ

川俣ダムで流入量がピークとなる。最大流入量635m3/sを放流量346m3/sに(289m3/sカット)。






水をため込んだ五十里ダム
9月9日20時ごろ

五十里ダムの流入量が洪水調節開始流量(450m3/s)に達したため、その後は放流量を450m3/s以下に保ち、ダムに水をため込む洪水時操作を始める。





9月9日22時ごろ

台風18号は日本海で温帯低気圧に変わる。しかし栃木県上空の線状降水帯により、引き続き激しい降雨が続く。



9月10日未明

川俣ダムでは流入量が洪水調節流量350m3/sを下回るが、下流の川治ダムの負担を減らすため放流量を絞り、その後、下流の洪水を軽減するため、放流量をさらに絞る操作を行う。



9月10日2時?4時

湯西川観測所で時間雨量70mm(3時)、川治観測所で同63mm(3時)、五十里観測所(4時)で同61mmを記録する。



9月10日未明?早朝にかけて

湯西川ダム、川治ダム、五十里ダムで流入量がピークとなる。
午前1時、湯西川ダムで最大流入量580m3/sを放流量60m3/sに(520m3/sカット)。
午前1時、川治ダムで最大流入量1,160m3/sを放流量390m3/sに(770m3/sカット)。
午前4時、五十里ダムで最大流入量1,410m3/sを放流量440m3/sに(970m3/sカット)。



9月10日4時ごろ

川俣ダムでは、下流で水位が上がっていたことから、今後の降雨も念頭に、放流量を20m3/sまで絞り込む。(特別な操作)



9月10日6時30分ごろ

鬼怒川下流の若宮戸地先(常総市)において堤防の越水、氾濫が始まる。



9月10日10時ごろ

川俣ダムでは放流量をさらに10m3/sまで絞り込む。(特別な操作)



9月10日11時過ぎ

鬼怒川下流の各所で堤防の越水が始まり、うち三坂町地先(常総市)で12時50分、堤防が決壊。



9月10日昼ごろ?11日にかけて

川治ダム(8時)、五十里ダム(11時)では、流入量が洪水調節流量を下回ったため、流入量=放流量に移行、下流の氾濫をできるだけ軽減するため、放流量をさらに絞り込む操作を行う。(特別な操作)



11日にかけて4つのダムは、その容量の範囲でできるだけ多くの水をためこむ操作を行い、結果的に合計1億m3の水をためました。