環境の時代のダム事業
(1973年~1991年頃)

1973年の第一次オイルショックによって高度経済成長は終わり、これ以降、日本経済は安定成長に向かいました。

アメリカでは先駆けて環境保全意識が高まり、1969年には世界初の環境アセスメント制度が導入されました。日本では1972年にいわゆる閣議アセスにより大型建設事業について環境影響評価が行われるようになり、1997年の環境影響評価法により法的枠組みが整いました。

ダム事業では、早い段階から環境アセスメントに取り組み、環境保全対策も進められてきましたが、社会全体に環境保全意識が高まり、ダム建設反対運動も多く見られるようになりました。

このような状況の中、その後のダム事業や公共事業の進め方に大きな影響を及ぼしたのが、 長良川 ながらがわ 河口堰(三重県)でした。市民運動による反対活動が政治やマスコミも巻き込んで盛り上がり、全国的に知られるようになりました。当時の建設省・水資源開発公団はその対応に追われましたが、1994年に完成しました。その後、2004年の長良川既往最大出水で、堰によって可能となった大規模河道浚渫が水位低下効果を発揮しました。

これを契機として、公共事業の透明性・説明責任の向上等の取り組みが強化され、1995年には建設省所管の14事業を対象にダム等事業審議委員会が設置され、事業の見直しがおこなわれました。また、1997年には河川法が大改正され、目的に「河川環境の保全と整備」が加えられると共に、河川整備計画の策定にあたっては、学識経験者、関係住民の意見を反映させる措置が講じられることとなりました。

この時期の完成ダムとしては、建設省による 川治 かわじ ダム(1983、栃木県)、 弥栄 やさか ダム(1991、広島県・山口県)、水資源開発公団による 阿木川 あぎがわ ダム(1990、岐阜県)などがあります。

電力ダムとしては、東京電力による 高瀬 たかせ ダム(1979、長野県)は我が国第2位の高さ(176m)です。

長良川河口堰 現在全景

長良川河口堰 現在全景

コンクリート打設中の川治ダム

コンクリート打設中の川治ダム

盛立中の阿木川ダム

盛立中の阿木川ダム


弥栄ダム 現在全景

弥栄ダム 現在全景