変容する自然災害
今、自然災害の形態が大きく変わってきている。特に平成11年には、記録的な集中豪雨とそれに伴う河川の氾濫で市街地の地下空間が水没、福岡と東京で水死者を出すという、従来の災害経験からは考えられないような水害も発生した。また、広島県では1日で325件もの土砂災害が発生し24人が死亡、熊本県不知火町では予想外の高潮が町を襲い12人が亡くなっている。こうした災害は、自然環境の変化と社会構造の変容が主な要因とされているが、これまで被災することのなかった土地であっても、今後はいつ災害に襲われても不思議ではないということを我々に強く印象づけた。

【無防備な都市】 【無計画な土地利用】 【予想外の現象】
福岡、東京で地下室での水死事故が相次ぐなど、近年、都市部の地下空間が水害に見舞われるケースが増加している。現在、全国に79か所100万m2余りの地下街が広がり、地下鉄の総延長は約500kmに上っている。さらに平成6年の建築基準法改正以来、一般住宅でも地下室の着工が急増している。地下という、現時点では浸水に対してほとんど無防備な空間への対策は、我々の緊急課題になった。 かつては居住には不向きとされていた土地でさえ、宅地造成や開発が進み、次々と住宅が建つようになった。土砂災害の恐れのある山すそ、ふだんから雨水が溜まりやすい湿地や低地、氾濫の恐れのある地域などに立つ建物も今や決して珍しくない。統計によると、国土の約10%にあたる河川の氾濫区域の中に、全人口の半数が居住している。急激な、そして無計画な都市化が新たな災害を創り出している。 1時間雨量が100mmを超す猛烈な雨がしばしば観測されるようになった。「平年の2倍以上の頻度」と指摘する識者もいる。その原因として、地球温暖化による気温上昇が集中豪雨の激化をもたらしているという説もあるが定かではない。従来の防災対策は過去の災害の経験・教訓を基に考えられているが、今やそうした教訓からでは対処できない“季節外れ”“かつて経験のない”災害が増えつつある。
UNPROTECTE
AND
UNPREPARED
CITIES
UNPLANND
LAND
USE
UNEXPECTEDLY
SEVERE
NATURAL
PHENOMENA