CLOSE UP THE DISASTER IN1999
1999年の主な災害----2
 「弱い熱帯低気圧」による大雨
平成11年の夏は、例年ならフィリピンの東海上で発生するはずの熱帯低気圧が、日本の近海で生まれるケースが続いた。8月13日3時に紀伊半島沖で発達した「弱い熱帯低気圧」は、日本列島を南岸沿いにゆっくりと東へ進み、13日から15日にかけて東北、関東・甲信越を中心に激しい雨を降らせた。降り始めからの総雨量は埼玉県、群馬県、栃木県、東京都の山沿いで400mmを超え、埼玉県秩父郡大滝村では8月の月間平均雨量の2倍にあたる440mmが1日で降るほどの豪雨となった。
多摩川の増水で浸水した川崎市幸区戸手の工場や住宅
弱くなかった「弱い熱帯低気圧」
埼玉県川越市では不老川が%れ、特別養護老人ホームから入所者60人がボートで避難する事態も発生した
 
レスキュー隊員(右から2人目)に抱きかかえられ救出される少女。増水した玄倉川では懸命の救助活動が展開された

 

 

 

 

 

 

ちょうどお盆休みの時期と重なった8月14日、神奈川県、埼玉県、東京都の各キャンプ場では家族連れが多く、増水した川の岸や中洲に取り残されるキャンプ客が続出した。中でも神奈川県山北町の玄倉川では、大人12人、子供6人の計18人が中洲に孤立。救出活動のさなかに全員が川に流され、13人が死亡するという大惨事となった。 ほかにも群馬県で崖崩れや土石流が発生し、埼玉県を中心とする関東地域では多くの浸水被害を受けている。被害総数は、死者・行方不明者18人、負傷者7人のほか、家屋の全・半壊17棟、一部損壊19棟、床上・床下浸水4008棟などに上っている。 気象予報上、風力8以上の熱帯低気圧を「台風」といい、7以下を「弱い熱帯低気圧」と呼ぶ。“弱い”といっても、実際には風が弱いだけで、雨量は台風をしのぐほど降ることもあるのに、“雨も弱い”と誤解し警戒しない人が多い。気象庁では今回の災害をきっかけに、誤解を招きやすい「弱い熱帯低気圧」という表現を、平成12年5月をめどにやめる方向で検討を始めた。