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【REPORT10】 岩手県軽米町 | |||||
町予算4年分が水泡に |
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治水と環境の調和する河川改修を目指す雪谷川 | |||||
Assess the disaster damage that occurred in Karumai in Iwate on Oct. 28, 1999 |
かつてない集中豪雨 |
もともと雪谷川には堤防はなく、川岸ぎりぎりまで住宅や商店が立ち並んでいる。昭和橋に最も近いロ台野地区の住民によると、「10分くらいで背丈まで浸水した。家財道具を運び出す間もなかった」というほど増水のスピードは速かったという。町で唯一の図書館でも、水は見る間に床上40
cmに達し、約3万5000冊の蔵書のうち1万冊以上が水浸しになってしまった。
雪谷川の改修は、軽米町の横井内から萩田までの下流部3.69 km区間を河川災害復旧等関連緊急事業として、また、軽米町萩田から九戸村雪屋までの中・上流部14.63 km区間を災害助成事業で実施。併せて護岸21万7000 m2と河道掘削、橋梁25等の工事が、4 ミ 5年という短期間で行われる。下流部は平成14年度、中・上流部は15年度完成予定で、出来上がれば下流部から中流部は30年に一度、上流部は10年に一度の大雨に耐え得る流下能力を持つことになる。 こうした県の取り組みに対し、軽米の住民も「安全な町づくり」への参加に向け積極的に動き出した。その手初めとなったのが、「がんばろう軽米」講演会実行委員会が12月22日、岩手大学の平山健一工学部長を招聘して開催した「10・28豪雨水害の検証とこれからの安全な町づくり」と題する講演会である。講演会は軽米町pta有志や新井田川ネットワークなどが後援し、治水・利水だけでなく、軽米にふさわしい河川のあり方、また、地元住民の意思を正確に伝えるために、工事主体者である県との交渉の進め方などについて話し合われた。 この会の実行委員長を務めた山本賢一さんは、軽米町で最も被害の大きかった向川原地区の住民の1人。今回の改修では、全体で150戸以上の民家が移転することになるが、向川原地区では150戸の住宅のうち山本さんの家を含む80戸が立ち退くことになる。しかし、山本さんたちは「危険と隣り合わせで住むことを考えれば改修はやむを得ない。ただ、川は治水さえできればいいわけでもないので、私たちは復旧プラス将来に希望が持てるような河川改修にして欲しいと考えている。具体的な取り組みはこれからなので、平山先生にも相談しながらいろいろ勉強し、行政と一緒により良い川づくりを進めていきたい」と住民参加の河川改修に意欲的だ。
一方、県側も住民の意見をできるだけ反映させるため、住民代表をはじめ学識経験者、地元有識者から成る「雪谷川河川整備懇談会(仮称)」を平成12年3月中に設置する予定だ。また、これらのハード対策とともに、ソフト面
でも洪水時に迅速な対応ができるように、洪水ハザードマップの作成を支援。きめ細かい避難情報・避難経路、病院などの弱者を含めた避難誘導方法が特に重点的に記載されることになっている。
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