Special Report
災害時の情報伝達に
大きな力を発揮する
コミュニティFM放送局
 避難勧告・気象情報・河川情報などを速やかに伝達

地元住民の安心・安全のために

「かつしかエフエム」ではできるだけ多くの地域住民の声を放送に反映するために、車を使って街中を走り回り、街頭インタビューなども行っている


一般的に避難勧告などの災害情報を知る手段として、テレビやラジオを挙げる人が多い。実際、被災者へのインタビューやアンケート調査でも「市・町・村の広報車で」「消防・警察・役場の人から口頭で」「サイレンで」などとともに、「テレビ・ラジオで」という回答が目につく。しかし、被災地では停電が付き物なので、テレビはあまり役に立たず、結局、電池式の「携帯ラジオだけが頼りだった」ということが多いようだ。最近では、災害時に役立つメディアとして“コミュニティfm”が各地で認知されるようになり、避難場所の案内から被災者の安否確認、食料・飲料水の供給状況など、そのきめ細かな災害・防災情報に信頼を寄せる人がかなり増えてきた。 コミュニティfmは、市・町・村など限られたエリアを対象に、地域に密着した生の情報を発信する放送局として、平成4年1月に制度化された。同年12月、その第1号として函館市に「FMいるか」が誕生し、その後2年の間に7局が相次いで開局。平成6年5月には、共通 課題の解消と相互研修を目的に「全国コミュニティ放送協議会」を発足させた。現在では128もの地方色豊かなコミュニティ放送局が全国で活動している。いずれも日頃は行政情報や市町村のイベント、地元商店街のショッピング情報などをメインにしているが、台風、火災、地震などの災害時にはその機動力を生かして、地元住民に安心・安全のための情報をいち早く提供することになっている。


ごく身近な情報が信頼感に
「かつしかエフエム」では、災害時には必ず区と協力して災害・防災情報を放送している




平成11年は、局地的な集中豪雨による洪水や土砂崩れ、高潮などの被害が全国で続出したが、その際もコミュニティFMが各地で大活躍している。 8月14日の集中豪雨で多摩川が氾濫し避難勧告が出された時には、神奈川県川崎市の「かわさきFM」が、市の防災対策室や区の災害対策本部からの災害情報を刻々と報道している。放送は午後5時51分から、水位 が大幅に下がり始めた9時6分までの約3時間の間に15回、延べ33分間に及んでおり、河川敷の大半が水没するほどの濁流となった多摩川の危険を喚起し続けた。 中には開局直後に、初めての本格的な災害に遭遇したところもあった。青森県八戸市の「Be FM」だ。県南地方を中心に大きな被害が出た10月末の大雨災害時には、28日午前9時から災害特別 番組に切り替え、河川の氾濫や住宅・道路の浸冠水情報のほか、避難場所の案内や避難した人数、また児童や生徒の父兄に向けて学校への迎えの要請といった、ごく身近な情報を流し続けた。この特別 番組は大雨警報が解除される午後10過ぎまで続き、その間、非常召集された11人のスタッフは食事も取れない忙しさだったという。 山口県下関市の「COME ON ! FM」では、停電による送信所のトラブルから一時、放送できなくなるというアクシデントが発生した。9月24日午前8時30分、満潮時に台風18号が急接近、高潮により長府地区が腰の辺りまで冠水した時だったが、「局に対するクレームよりも、心配の声や激励してくれた人が圧倒的」だったという。しかもこの時、冠水被害のあった長府地区では、放送で被災を知ったボランティアが急遽現場に駆けつけ、復旧の手助けをしてくれるという、うれしいエピソードも生まれている。 コミュニティFMが災害情報メディアとして優れている点は、第1に市町村の防災課や消防署、警察署などと防災協定を結んでいるため、行政との連携プレイで正確な情報が迅速に提供できることだ。そして、日頃から地域住民の間に「自分たちの町の放送局」という意識が強く、緊密な関係が築かれているため、災害時には聴取者から寄せられた情報を基に、より地域に密着した災害情報を発信することができる。当然、その情報の信憑性を確認してからの放送となるが、地域住民からのファクスが月に1200通 近く来るという東京都8飾区の「かつしかエフエム」では、「一般の人からの情報は、必ず消防庁や警視庁などからの直接情報と照らし合わせるようにしています。例えば、台風の時などに『どこそこの看板が飛びそうだ』という情報が入ると、すぐに区の防災課など関係部署に連絡し、我々も現場に行って確認したうえで、折り返し区から防災無線で知らせてきた状況や結果 とともに放送しています」という。 「かつしかエフエム」では平成11年7月21日、局地的な集中豪雨によって江戸川や荒川が増水した際に、水位 の上昇や水門の閉鎖などの状況をいち早く放送し、8飾区民だけでなく川上の足立区民、川下の江戸川区民からも感謝されたという。また、授業を途中で打ち切った学校名を放送したところ、仕事に出ていた父兄から「会社を早退して子供が帰るのを待つことができた」とお礼の言葉が届いたという。

防災服で放送に臨む8飾区役所の広報担当者の鈴木千恵子さん(左)と、「かつしかエフエム」のパーソナリティー鏡育代さん(右)。通 常時の「かつしかエフエム」では、音楽とともに身近なイベント情報や地元商店街のショッピング情報、行政情報などを24時間体制で放送している


悩みは災害時の人員確保

全国ネットの放送局では、ローカル局の放送枠は限られており、わざわざ地元向けにきめ細かな情報を出すまでには至らない。“地域のためのラジオ局”コミュニティfmは、日頃から地域住民との接点も多く、系列を持たない独立局のため、比較的自由な編成が組めることから災害時の特別 放送も入れやすい。 最近は防災無線の整備だけでなく、インターネットの利用や、ファクスで住民宅に一斉に情報を送ることができるネットワーク・システムの導入など、緊急時の新しい情報伝達手段が次々と誕生しているが、コミュニティfmは、災害時の緊急連絡手段としての役割を視野に入れて、市町村や商工会議所などが中心となって設立された例が多く、それだけにいざという時の期待も大きい。平成10年8月末の東日本豪雨では、静岡県三島市と函南町を中心に放送をしている「voice CUE」の活躍が地元で話題となった。同局は、自治体が4割出資して開局した経緯もあって、災害情報を優先して放送する協定を自治体と結んでいる。

不測の事態に備えて、8飾区役所の緊急防災連絡室に設置されている災害放送用のバックアップ施設

災害当日は、朝7時の放送開始から翌朝の7時まで、cm抜きで洪水の状況を重点的に放送した。 コミュニティFMが制度化された当時は電波の出力が1 w以下と定められていたため、「市町村の全域をカバーできない」「アンテナがないと聴きづらい」という苦情もあった。だが平成7年1月の阪神・淡路大震災をきっかけに、災害情報メディアとしてのコミュニティFM局の可能性が再認識され、同年3月には10 Wに、さらに平成11年3月には必要に応じて上限を20 Wまで上げることが認められ(現在30局)、「聴取エリアの拡大」「音質の向上」という設立当初からの課題もほぼ解消され、緊急連絡手段としての環境も整ったといえる。 ただ、こうしたfm局は一般に経営規模が小さく、情報収集力や発信体制が十分とはいえない。広告収入の伸び悩み、人材確保も大きな問題だ。特にスタッフは少なく、しかもほとんどが契約社員やボランティアだったりする。「VOICE CUE」のスタッフも時間契約のパートタイマーが多く、東日本豪雨の際も積極的に招集をかけることをためらい、人手不足の中で災害放送を始めざるを得なかったという。災害時の人員確保はどこのFM局でも大きな悩みで、最小限のスタッフでいかに中身の濃い放送をするかが今、一番の課題となっている。

 

 

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■災害時に役立つコミュニティFM128局

監理局
市町村名
ステーションネーム
周波数
北海道[12局]











函館市
旭川市
釧路市
帯広市
帯広市
岩見沢市
稚内市
札幌市中央区
小樽市
札幌市豊平区
札幌市西区
根室市

FMいるか
FMりべーる
FMくしろ
FMウィング
FM JAGA
エフエムはまなす
エフエムわっぴー
ラジオカロスサッポロ
FMおたる
FMアップル
三角山放送局
FMねむろ
80.7MHz
83.7MHz
76.1MHz
76.1MHz
77.8MHz
76.1MHz
76.1MHz
78.1MHz
76.3MHz
76.5MHz
76.2MHz
76.3MHz
東北[16局] 山形市
酒田市
仙台市青葉区
塩釜市
石巻市
岩沼市
仙台市宮城野区
福島市
いわき市
会津若松市
むつ市
八戸市
南津軽郡田舎館村
盛岡市
秋田市
湯沢市
ラジオモンスター
ハーバーRADIO
ラジオ3
BAY WAVE
ラジオ石巻
ほほえみ
FMじょんぱ
FM POCO
SEA WAVE FM いわき
FM愛's
エフエムアジュール
Be FM
エフエムジャイゴウェーブ
ラヂオもりおか
ACB RADIO STATION
FMゆーとぴあ
76.2MHz
76.1MHz
76.2MHz
78.1MHz
76.4MHz
77.9MHz
78.8MHz
76.2MHz
76.2MHz
76.2MHz
76.2MHz
76.5MHz
76.3MHz
76.9MHz
76.5MHz
76.3MHz
関東[27局] 武蔵野市
多摩市
渋谷区
葛飾区
江戸川区
田無市
調布市
中央区
世田谷区
逗子市・葉山町
平塚市
横須賀市
鎌倉市
藤沢市
川崎市中原区
相模原市
大和市
木更津市
浦安市
市川市
入間市
鴻巣市
水戸市
甲府市
高崎市
沼田市
太田市
むさしのエフエム
エフエム多摩G-WIND
SHIBUYA-FM VOICE
かつしかエフエム
エフエムえどがわ
エフエム西東京
ちょうふエフエム
RADIO CITY 84.0
エフエム世田谷
湘南ビーチFM
FM湘南ナパサ
FM Blue SHONAN
鎌倉FM
レディオ湘南
かわさきFM
エフエムさがみ
Magic FM
FMべる
FMうらら
いちかわえふえむ83
CHAPPY(茶笛)
フラワーラジオ
FMぱるるん
エフエム甲府
ラジオ高崎
FM OZE
FM TARO
78.2MHz
77.6MHz
78.4MHz
78.9MHz
84.3MHz
84.2MHz
83.8MHz
84.0MHz
83.4MHz
78.9MHz
78.3MHz
78.5MHz
82.8MHz
83.1MHz
79.1MHz
83.9MHz
77.7MHz
83.4MHz
83.6MHz
83.0MHz
77.7MHz
76.7MHz
76.2MHz
76.3MHz
76.2MHz
76.5MHz 76.7MHz
信越[10局] 新津市
柏崎市
新潟市
新発田市
六日町
長岡市
燕市・三条市
上越市
長野市
佐久市
RADIO CHAT
FMピッカラ
エフエムけんと
ラジオアガット
FMゆきぐに
FMながおか
燕三条エフエム放送
FM-J
FMぜんこうじ
FMさくだいら
76.1MHz
76.3MHz
76.5MHz
76.9MHz
76.2MHz
76.4MHz
76.8MHz
76.1MHz
76.5MHz
76.5MHz
北陸[7局] 野々市町
金沢市
小松市
七尾市
高岡市
富山市
黒部市
FMドリバー
ラジオかなざわ
ラジオこまつ
ラジオななお
ラジオたかおか
City-FM
ラジオミュー
76.3MHz
78.0MHz
76.6MHz
76.4MHz
76.2MHz
77.7MHz
76.1MHz
東海[14局] 高山市
多治見市
浜松市
清水市
三島市
静岡市
伊東市
沼津市
熱海市
豊橋市
岡崎市
名古屋市中村区
名古屋市中区
四日市市
Hits FM
PiPi
FM Haro !
マリンパル
VOICE CUE
FM-Hi !
FMなぎさステーション
COAST-FM
エフエムあたみ
やしの実
O.C. Radio
Sha Na Na ! FM
エフエムダンボ
Port Waveポートウェーブ
76.5MHz
76.3MHz
76.1MHz
76.3MHz
77.7MHz
76.5MHz
76.3MHz
76.7MHz
79.6MHz
84.3MHz
76.3MHz
76.1MHz
76.5MHz
76.8MHz
近畿[18局] 守口市
箕面市
大阪市
枚方市
大阪市
八尾市
宇治市
京都市伏見区
綾部市
神戸市長田区
尼崎市
三木市
伊丹市
神戸市中央区
西宮市
豊岡市
白浜町
北葛城郡
FM HANAKO
TACKEY 816
YES-fm
きくエフエム
Be Happy ! 789
FMちゃお
FMうじ
FM 845
FMいかる
FMわいわい
FMあいあい
エフエムみっきい
ハツピーエフエムいたみ
FM MOOV KOBE
エフエムさくら
FM JUNGLE
ビーチステーション
FMハイホー
82.4MHz
81.6MHz
78.1MHz
77.9MHz
78.9MHz
79.2MHz
88.8MHz
84.5MHz
76.3MHz
77.8MHz
82.0MHz
76.1MHz
79.4MHz
76.1MHz
78.7MHz
76.4MHz
76.4MHz
81.4MHz
中国[6局] 福山市
尾道市
萩市
下関市
倉敷市
岡山市
レディオBINGO
エフエムおのみち
FM NANAKO
COME ON! FM
エフエムくらしき
radio MOMO
77.7MHz
79.4MHz
77.5MHz
76.4MHz
82.8MHz
79.0MHz
四国[5局] 坂出市宇多津町
高松市
丸亀市
高松市
徳島市
FM 761
まんでがん815FM
エフエム・セト
FMマリノ
B-FM761
76.1MHz
81.5MHz
77.4MHz
78.0MHz
76.1MHz
九州[11局] 熊本市
八代市
玉名市
小国町
福岡市
久留米市
築上郡椎田町
鹿児島市
宮崎市
宮崎市
諫早市
City FM
かっぱエフエム
ほっとラジオ
グリーンポケット
FREE WAVE
ドリームスエフエム
スターコーンFM
フレンズエフエム762
サンシャインFM
City FM 77
エフエム諫早
79.1MHz
76.5MHz
76.4MHz
76.5MHz
77.7MHz
76.5MHz
76.7MHz
76.2MHz
76.1MHz
77.0MHz
77.1MHz
沖縄[2局] 沖縄市
糸満市
FM Champla
エフエムたまん
76.1MHz
76.3MHz

※各監理局ごとに開局順に掲載
(2000年1月8日現在)