記者発表
河川審議会答申
「総合的な土砂災害対策のための法制度の在り方について」
(4)土砂災害特別警戒区域における住宅、社会福祉施設等の立地抑制策
@ 土砂災害特別警戒区域の指定
土砂災害警戒区域のうち、土砂災害により住民等の生命身体に著しい被害が生じるおそれがある区域に
限定して土砂災害特別警戒区域に指定し、立地抑制策を講じるぺきである。このような観点から、土砂災害特別警
戒区域の指定の範囲としては、災害類型による土砂災害発生の実態を踏まえ、災害発生時には土砂の直撃
により木造家屋に全壊等の著しい被害が生じる ような区域とすることが適当である。土砂災害特別警
戒区域の指定の主体としては都道府県知事が適当と考えられるが、過去の災害事例や即地的な情報に
関し地域の突情に通じている市町村を関与させることが望ましい。
また、区域指定に関しては、上記(3)の土砂災害警戒区域の指定も含め、指定業務が的確か
つ円滑に行われるようにするため、指定業務に対する国の支援措置を検討すぺきである。
土砂災害特別警戒区域指定の技術的基準については、(社)砂防学会による検討結果を踏まえ、
土砂災害警戒区域同様できるだけ土砂災害発生の実態を踏まえた客観的なものとすべきである。
しかしながら、土砂災害の形態、規模が地域の地形・地質に依存する面が大きい場合もあることから都
道府県知事が行う個別具体の指定に当たっては客観的な基準を原則としつつ、必要に応じ、学識経験者の意見
も聴く等の手法を講じることも必要である。また、指定に当たっては、過去の災害歴も十分考慮できるようにす
ることも検討すぺきである。
また、土砂災害特別警戒区域の指定の進め方については、アクセス条件が非常
に悪い等により今後とも開発の見込まれないような地域については当面区域指定をし
ない、あるいは、新規立地の可能性の高い地域から順次区域指定する等の明確な方針に
基づき進めていくことが適当である。
土砂災害特別警戒区域と都市計画との関係については、安全性が確保されないまま土砂災害特別警
戒区域を市街化区域とすることは避けるぺきである。
なお、土砂災害特別警戒区域については、対策工事実施による安全性確保の状況、周辺の土地利用状況の変化、
災害発生による状況の変化等をとらえ、必要に応じ区域を見直すべきである。
A 土砂災害特別警戒区域における立地抑制策
立地抑制策は、土地利用の計画が具体化する宅地造成行為や建築行為をとらえて行うことが適当であるが、
土地利用に対する制限がかかることについての注意喚起を行うために、土地取引段階における宅地建物取引業法に
よる重要事項説明の対象とすることも検討すぺきである。
建築に関する安全基準の設定については、通常想定される土砂災害に対して―般的・汎用性のある基準を
適用することが望ましいことから、建築基準法に関する法令において定めることとし、土砂災害特別警戒区
域内で通常想定される災害を前提として建築物内部の人命を保護するに足る安全基準を設ける必要がある。
規制の対象とする建築物としては、人が夜間も含め滞在することとなる住宅、宿泊施設や避難行動に関し制約が大
きい災害弱者が利用・滞在する災害弱者施設等とすることが適当である。
土砂災害が都市計画区域外でも発生していることから、土砂災害特別警戒区域については、建築確認の対象
外とされている都市計画区域外の小規模戸建て住宅などの建築行為についてもすぺて建築確認の対象とするよ
う措置すぺきであると考える。
また、宅地造成については、あえて地形を変え、建築可能な土地をうみ出すものであることから、土砂災害特別
警戒区域においては立地抑制的な観点から―定の用途のための宅地造成については制限をかけるぺきであると考える。
この場合、分譲用の宅地造成や、避難行動に関し制釣が大きい災害弱者が利用・滞在する災害弱者施設のための宅地
造成については、宅地としての安全性が確保されない限り認めないとすることが適当である。
宅地造成段階での規制措置としては、現行法上都市計画法に基づく開発許可制度があるので、規制内容や
手続面に関し開発許可制度との調整を十分図る必要がある。
なお、以上のような安全水準への適合や警戒避難措置による対応を図っても、通常想定されるレベルを超える土
砂移動現象が発生した場合には被災する可能性があり、危険な地域に居住することにはリスクが伴うものであるこ
とについて国民の理解を得る必要がある。