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ITS開発・展開目標

第6章 ITS実現方策

 6.1 推進体制の整備
 6.2 研究開発の推進
 6.3 社会的受入環境の整備
 6.4 実用化に向けたインフラ整備
 6.5 国際協力・協調
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6.1 推進体制の整備

 ITSは利用者、関連技術分野、及び関係者等が多岐にわたるため、その開発・展開にあたっては、国内的にも国際的にも連携を図りながら、体系的かつ効率的に推進していくことが重要である。
 このため、国内的には、ITSに関連する産学官の関係者の連携を図り、総合化を目指すことが重要である。具体的には、官においては、高度情報通信社会推進本部の方針を踏まえつつ、5省庁連絡会議の場を活用し、緊密に連絡を図りつつITSを推進する。また、地域固有の実情に合ったITSを推進するため、個々の地域にITSを考える場を設置する。一方、学においては、関連学会においてITSの検討の場が積極的に設置されること、民においては、関連分野ごとの協力の場と、そうした分野を越えた協力の場が設置されること等が望まれる。
 また、産学官の役割分担については、産学官がそれぞの立場に応じた役割を認識した上で、積極的かつ体系的に取り組みを行っていくことが重要である。具体的には、官は、我が国全体としてITSを積極的に推進するため、推進計画の策定、道路及び車両に係る研究開発、インフラの整備、関連法制度、標準化等に先導的に取り組む必要がある。学は、ITSの研究開発・展開普及に向けた基礎的なあるいは先端的な研究、及び教育・啓発等により推進に必要な人材養成に取り組むことが望まれる。そして、民は、ITSに対応する自動車や情報通信等に係る高度な技術開発力の提供、市場ニ−ズにあったITSの商品化等に取り組むことが望まれる。
 さらに、国際的にも、産学官の国内的な連携をベ−スとしながら、産学官の各々において各国間の連携を図ることが欠かせない。ITSの実現化には、こうした連携を具体化する推進体制の整備が不可欠である。

6.2 研究開発の推進

 ITSは道路交通問題を解決するための新しい交通システムの構築が主たる目的であり、その公共性に鑑み、車とインフラの機能の分担や連携を踏まえながら、官及び民による情報通信インフラ・車両等の積極的な研究開発への取り組みが必要である。
 また、ITSは、道路、交通、車両、情報通信など広範な分野に関連するものであり、各分野の関係者の連携・協力が不可欠である。このため、関係者それぞれが本全体構想を念頭におき、自らの役割を認識しながら研究開発を進めることが重要であり、広く研究への参加を促進するためにも、積極的な研究情報の提供・交換を進めていくことが必要である。
 さらに、ITSは、フロンティア的な分野を担うものであり、ITSの実用化に向けては、システムの安全性や信頼性を確保するとともに、最先端の情報通信技術、制御技術等の開発が必要である。また、「ナビゲーションシステムの高度化」や「安全運転の支援」等に関するヒューマンインターフェイス技術の開発を合わせて行う必要がある。このため、産学の技術力の活用等を図るため、積極的に産学官の共同研究や産学への委託研究を進めることが重要である。
 またITSは、最先端の技術を用いて新しく構築するシステムであることから、実用化を図っていく上では、研究開発の成果を適切に評価するためにフィールド実験や試験運用が重要であり、そのために必要となる実験施設の整備、フィ−ルド実験・試験運用の場の確保や機会の提供、さらには、シミュレータ、評価技術等の開発を適切に行うことが重要である。
 また、具体的なシステム開発にあたっては、システムの相互運用性・相互接続性や拡張性を確保するため、システム間の機能的な共通性や通信プロトコルの共通性等をふまえ、連携を図っていく必要がある。このため、国際的動向を視野におきつつ、システムアーキテクチャ構築等を実施し、機器の互換性やオープンなインターフェイスを確保していくことが重要である。

6.3 社会的受入環境の整備

1)制度等の整備

 ITSは、フロンティア的な分野を担うものであり、ITSの実用化に向けて、関連制度等の整備は、技術的な研究開発と両輪をなすものである。
 このため、ITSと現行制度との関連性について十分な検討を行い、実用化に向け、順次必要な制度等の整備・見直しを行うことが必要である。その際、ITSの研究開発段階においては、例えば産学官の共同研究に係る工業所有権の帰属問題、実用化段階においては、情報機器と利用者の責任のあり方を踏まえた製造物責任等への対応、ITS利用時の個人のプライバシーや企業情報の保護、電子決済の実用化と個人情報に関するセキュリティーの確保などの課題が考えられるため、システム運用のあり方を含め総合的な検討を行っていくことが必要である。

2)広報

 ITSは新たなコンセプトに基づき新技術を導入して構築されるシステムであるため、その目的や内容等は従来のシステムにはない内容を含んでいる。したがって、ITSの開発・展開を円滑に進めるには、ITSの必要性等について国民の十分な理解と納得を得るための努力が不可欠であり、ITSに関する情報を分かり易くかつ積極的に発信するとともに、国民のニーズを的確に把握していく必要がある。
 このため、ITS推進の目的、目標、内容、効果、進捗状況、そして国際的動向等について、シンポジウム等の場や、パンフレット、年次レポ−ト、電子情報等の各種メディアを活用し、積極的に広報を行うことが重要である。さらに、ITSについてより具体的な理解を得るため、試験運用時の利用者参加、各種の実験公開等に積極的に取り組むことが重要である。

3)人材育成

 ITSは土木系、機械系、電気・電子系などの様々な工学分野に加え、法学、心理学、経済学、社会学、医学などの幅広い分野にまたがった学際的研究が必要となる。こうした学際的な分野に取り組むためには、関連分野において研究者や実務担当者の育成が不可欠である。
 このため、大学等の研究者に対しては、研究開発動向や関連文献情報をはじめとする様々な情報提供を行うとともに、関係者のネットワークづくり、研究交流の場づくり等の支援を積極的に行っていくことが重要である。
 また、実務担当者に対しては、ITSの講習会や研修会等を積極的に開催し、ITSの専門家として育成を図っていくことが重要である。

6.4 実用化に向けたインフラ整備

 ITSは、道路交通に関連する情報をネットワ−ク化することによって成立するものであり、情報の収集・提供・通信・処理等を行う様々な情報関連インフラの高度化や関連インフラの整備が不可欠である。ITSの構築に必要となるこれらのインフラは、公共性が高いものであり、本全体構想で示した開発・展開目標を実現するよう積極的かつ計画的に整備を推進していくことが必要である。
 その際、これらのインフラは、長期的に全国展開を行っていくものであり、整備後は大きな仕様変更なしに一定期間使用を継続させるという視点から、インフラ全体の整備動向や標準化を踏まえた拡張性及び利便性に十分配慮する。

6.5 国際協力・協調

 ITSは、世界各国で取り組みが行われているプロジェクトであり、より良いシステムづくりのためには、研究開発段階から日常的な情報交換をはじめ、国際会議や二国間レベルにおいて積極的な研究開発動向等の情報交換を行うとともに、国際的な調和を念頭に実用化を目指す必要がある。
 このため、ITSのそれぞれの関係者の立場に応じて日常的な情報交換を行うとともに、日米欧が窓口となって開催しているITS世界会議やアジア太平洋地域セミナー等における国際協力を積極的に支援する。またOECDをはじめとする国際機関の活動への積極的な対応や先進諸国との関連技術協力協定等に基づくITS分野の共同研究等の推進、研究者の相互交流、さらにはODA等による発展途上国等への技術移転のための調査団及び人材派遣等各方面での国際交流を促進する。
 また、現在、ITS関連の国際標準化に関しては、ISO、ITU等において議論がなされている。ISOに係わる国内の検討では、TC204国内対策委員会及び分科会を設置して関連団体、企業、学会等から意見を集約している。またITUに係わる検討としては、ITU-R(国際電気通信連合無線通信部門)SG8 WP8AにおけるTICSの無線通信分野の標準化活動に対応するため、電気通信技術審議会における移動業務専門委員会陸上移動分科会にて民間からの意見を集約しつつ対応を図っているところである。今後は我が国で研究開発・実用化しているシステムの仕様等について順次提案を行う等積極的な対応を図るとともに、国際的な整合性を踏まえながらシステムの構築を図ることが重要である。またこの際、国内対策委員会の活動等を積極的に支援していくことが重要である。