I.高度情報通信社会に向けた基本的な考え方
(2)高度情報通信社会実現のための行動原則
  @ 高度情報通信社会のあるべき姿

i) 誰もが情報通信高度化の便益を享受できる社会
 高度情報通信社会の最大の特徴は、シームレスな情報通信ネットワークを通じて、その先にある全ての情報をあたかも自分のところにあるかのように共有でき、また自分の情報をいつでもどこにでも迅速かつ的確に伝達できることにある。こうした便益を誰もが享受できる社会の実現を目指す。そのためにも、全国民を対象として、職場、教育・家庭などの場における情報リテラシーの向上を図る。また、通信料金のより一層の低廉化を目指す。

ii) 自由で安全な情報通信が確保される社会
 高度情報通信社会では、情報の価値が一層高まるとともに、その情報を前提に取引、生活等の広範な経済・社会活動が行われることになるため、現在以上に、情報通信についての安全性、信頼性の確保とプライバシーの保護が要求される。高度情報通信社会の脆弱性を克服するため、情報の自由な流通と民間の自由な活動の確保を大前提としつつ、情報通信に関する安全性、信頼性とプライバシーの確保に努める。併せて、国内の治安、防災、安全保障にも十分配慮する。

iii) 知的で多様なライフスタイル、真のゆとりと豊かさが実現される社会
 高度情報通信社会では、物理的、地理的な制約を克服し、求める情報を即時に入手したり、情報や仕事のやりとりをすることが可能となる。この結果、国民一人一人が知的な要求を満たすことが従来に比べて飛躍的に容易になるとともに、在宅勤務等の実現により多様なライフスタイルが可能になる。物質中心の豊かさから、真のゆとりと豊かさが実現される社会の構築を目指す。

iv) 地域に活力がもたらされる社会
 距離的障壁の克服を可能とする情報通信ネットワークは、中央と地方の情報ギャップを解消し、国土の均衡ある発展に資するとともに、地方の情報受発信能力を大きく向上させることができる。地理的、歴史的に多様な地方公共団体、地域住民、企業等の協力による地域情報化にも十分配慮することが必要である。

v) 国際的に円滑な情報の流通が実現される社会
 我が国として国際間の共同プロジェクト等の実施に協力することにより、情報通信の活用によっていかなる効用が生じるかを明確に示すことができる。また、開発途上国に対し、自らの有する情報通信に関する技術、ノウハウ等を積極的に提供していくことにより、世界的にバランスのとれた情報通信インフラの整備を目指す。


A あるべき高度情報通信社会を実現するための行動原則 〜3つの行動原則〜

i) 民間主導
 今日は技術革新のめまぐるしい時代であり、「デジタル革命」によりもたらされる新潮流の流れは速い。米国における情報通信関連分野の新興企業の躍進に見られるように、民間主体の自由な競争こそが、新たなビジネス環境等に速やかに対応し、こうした新潮流に追いつくことを可能にする。高度情報通信社会の構築は、公正有効競争の下、民間主導で進めることを原則とすべきである。

ii) 政府による環境整備
 こうした中で、政府の役割は民間活力を引き出す環境整備が基本となる。その際、政府は、情報通信関連技術の進歩が極めて速いこと、新たな技術の出現によってそれらを活用したビジネスや社会生活のあり方の可能性が多様な広がりを持つことに鑑み、法制度面での環境整備について、不必要な規制や制限を課し、これらの多様な可能性の実現の芽を摘むことがないように特に留意をしなければならない。また、仮に新たな規制等の関与を行う場合であっても、かかる関与は、明瞭、透明かつ必要最小限でなければならず、行政裁量の幅を無用に拡大したり、関係者にとって不確実性をもたらすものであってはならないことについては論を待たない。
 ただし、具体的にどの分野において、どのような政府の関与が妥当かについては、個々の分野毎に十分な議論が必要である。

iii) 国際的な合意形成に向けたイニシアティブの発揮
 政府は、今後情報通信ネットワークを通じて経済社会のグローバル化が一層進展していくことを踏まえ、国際機関や諸外国等との調整を行い、我が国の立場を生かしながら国際的な調和の確保や国際標準についての議論に積極的に取り組み、合意形成に向けてのイニシアティブを発揮していくことが重要である。