I.高度情報通信社会に向けた基本的な考え方
(3)高度情報通信社会の構築に向けた官民の役割
  @ 民間部門の役割

 高度情報通信社会の構築に当たり、民間部門においては、情報通信関連技術の進歩の速さや多岐にわたる応用の可能性に対応するために、公正有効競争の下に創造性と主導性を発揮することが望まれる。
 具体的には、新たな情報通信関連技術の活用に伴い刻々と変化する市場のニーズを的確に捕捉し、これを満たす製品やサービスを機動的に提供するとともに、柔軟な発想の下に潜在的なニーズの顕在化を促す製品やサービスの開発に努め、市場にこれを迅速に提供することが求められる。
 また、情報通信関連技術の発展が非常に速いため、電子商取引に関するルールの形成やガイドラインの作成、情報通信関連技術のデファクト・スタンダードの形成に見られるように、市場で自律的に形成される規律が、従前政府が果たしてきた制度整備を迅速かつ有効に代替するケースもある。このため、民間部門が、こうしたルール形成において果たす役割は今後一層大きくなると考えられ、従来以上の主導性をもって事業活動を行っていくことが期待される。

A 政府の役割

 高度情報通信社会の構築に当たり、政府は、民間部門の自由な取組みが有効との基本認識の下、諸制度の柔軟な見直し、不必要な規制の緩和、公正有効競争条件の整備、基礎的・先端的な研究開発の推進、基盤整備に対する公的支援等、民間活力が適切に引き出されるような環境整備を実施していく。
 その際、政府としては、民間の努力や競争に任せているのみでは実現しがたい部分に集中して所要の措置を、情報通信分野が技術革新のめまぐるしい分野であることを踏まえつつ総合的・計画的に行うものとする。
 また、情報化において、ネットワークを利用した犯罪等不正行為への対策を実施するとともに地域間格差や高齢、身体の障害等に起因する個人間の格差を是正し、国民誰もが安心して高度情報通信社会の恩恵を受けられるように配慮することも重要である。
 政府は以上のような環境整備を行っていく一方で、情報通信関連産業の最大の需要家としての側面を有することを認識しなければならない。米国においては、長く政府部門が情報通信需要の先進的ユーザーとしての立場を務めている。我が国政府においても積極的に情報化の推進、情報通信関連調達の改善等に努めることにより、需要サイドの牽引を行うとともに、各省庁、地方公共団体等が連携して情報化による行政事務の効率化や行政サービスの向上を実現することにより、国民に対して情報化の意義を実体験として普及啓発していくことも重要である。
 なお、こうした施策の推進に当たっては、本基本方針に基づく情報化施策の具体的な内容を明確に国民に示すとともに、実施した措置の事後的評価を含めたフォローアップを行うことで透明性を高めることとする。