II.高度情報通信社会の実現に向けた課題と対応
(6)基礎的・先端的な研究開発
   政府は、民間事業者の創意工夫による新サービスの開発やネットワークインフラの整備を一層促進するため、基礎的・基盤的研究開発を推進するとともに、民間事業者が行うハードウェアやソフトウェアの先端的・独創的な研究開発における競争に歪みを生まないよう留意しつつ、効果的にインセンティブを与えていく必要がある。
 情報通信関連技術は、その応用範囲が広く、多くの分野で「道具」として用いられる。従って、単に情報通信関連産業の発展に寄与するものではなく、例えば電子商取引による産業・社会の情報化、シミュレーション技術による地球変動予測など他分野の研究の加速化等により、あらゆる産業や国民生活の高度化・効率化、地球環境問題の解明に貢献するものとして捉えることが重要である。
 このように、情報通信関連技術の研究開発は、世界全体の課題やフロンティアを切り開くとともに、産業・経済を牽引する原動力となることから、政府としてもその推進を継続的に図っていくことが不可欠である。
 特に近年、インターネットの普及・利用が一段と進む中で、高速・大容量・高品質の次世代インターネットの実現へ向けた取り組みが行われるなど、日進月歩の技術進展の中、技術の流れを先取りするような研究開発を推進していく必要性が高まっている。
 このような観点から、以下の点に留意しつつ必要な施策を講ずる。
  • 多岐にわたる研究開発主体から、更に多様な独創的技術・新技術を効果的に引き出すため、研究開発の推進について競争的視点を一層盛り込んでいくことが必要である。
  • 高度情報通信社会を現実のものとするためには、研究開発成果が事業化等を通じて社会に提供されることによって、産業・社会や国民生活の高度化・効率化を図るとともに、ベンチャー企業等の成長を通じた新規産業・新規雇用の創出につなげていく必要がある。
  • 研究開発成果の事業化等の円滑化のため、欧米諸国で行われているように、研究開発成果である知的財産権を開発者に帰属させることで事業化へと誘導することといった手法の有効性が認識されるべきである。
  • 大学・国研等の技術シーズと産業界側のニーズを相互に認識した上での、真に有効な産学官連携の促進を図る。
  • 研究開発における国際協力の促進を図る。
  • 研究開発用超高速ネットワークをテストベッドとして広く民間に開放し、21世紀の超高速ネットワークの中核となる技術の研究開発を推進する。