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白木 渡 香川大学 工学部信頼性情報システム工学科 教授

■ご意見の内容

1.これまでの道路政策に関して、特にどのような改善点があるとお考えですか。

@新規道路の計画・建設ありきでスタートしている感じがする。これまで整備してきた既存道路の価値を再評価し、価値の高い道路の重点整備や他道路との連携活用等も政策として検討すべきである。
・維持管理や防災、交通事故対策においてもハード対策が主で、緊急時対策を効果的に行うための教育、訓練、モニタリングシステム整備等のソフトな対策に対する予算取りの仕組みができていない。
・公共性の面で仕方ないが、民間の事業計画に比べて遅れている。根本的に構造改革すべき。
・実態に即したきめ細かな計画をソフト重視で予算を確保して進行することが基本的に必要。

A道路整備の目的・目標に関する具体策・説明がなされていない。国としての国際競争力向上を図るための道路整備、例えば国際空港の利用率向上のためアクセス道路の高速道路化、あるいは地域活性化を図るための道路整備、例えばバス優先路線の整備等、具体的な目標を掲げた政策が必要である。
・一般の人に対して、民間のようにわかりやすい表現や内容で示す必要がある。
・何をすればコスト縮減になるのかなど、具体的に説明が必要。

B道路の整備計画に際しては、長期的な国の人口動向、経済政策、都市政策、交通政策、高齢化対策、また地域ごとの諸政策との短期、中長期的な整合・融合を図った道路政策が求められる。

Cこれまでの道路政策では、国として必要な道路、地域として欲しい道路、生活に便利なニーズ重視の道路の計画・建設を実施してきたが、今後は、整備された道路によって国、地域、住民のQOL(生活の質)の向上が図られたかが問われる。すなわち、QOL重視の道路政策を打ち出していくべきであると考える。サービス業界、製品開発業界においては、既にこのQOLを基準としたQOLマーケッティングの考え方でビジネスモデルが提案されている。
 また、サービス工学という新しい工学分野も創設されている。道路政策におけるQOLに基づくサービス設計の在り方、ビジネスモデルの構築が必要であると考える。
・サービスを提供した結果、受け手側がどう変化したかについて、公共サービス工学の観点から道路政策を考えるべき。ビジネスモデルを作るべき。

2.今後、道路政策においては、無駄を排除するなど効率化を徹底する必要があるとおもいますが、特にどのような点を重視すべきだとお考えですか。

@計画決定されてから完成するまでに30年〜50年と長期間かかる現在の道路政策は問題点が多い。その間、計画当時とは世の中が変化して結局無駄な道路を建設してしまうことになる。計画時点における十分な社会変化の予測、5〜10年ごとの計画の見直しを図ることが求められる。
・時間が掛かりすぎる。

A国土交通省関係の道路と農林水産省関係の道路が近い場所に建設されている例が無駄な道路の典型として挙げられてきているように、各省庁間の縦割り行政をなくして連携を図った道路政策を実施すべきである。
・広域農道整備など、目に見えた無駄をなくす。

B現在の道路設計・施工は、まだほとんどが国土交通省関係の道路協会等の基準に従って仕様設計・施工されている。しかし、ヨーロッパ(ユーロコード)、アメリカ(ASSHO)は、既にISO2394に基づいた性能設計(信頼性設計)体系に移行しており、効率的な設計・施工が行われている。シンガポール、台湾、香港等でも国際入札制度を導入し、性能設計体系での設計・施工が行われている。我が国においてももっと積極的に性能設計体系への移行を推進すべきであると考える。
・現在概念だけの導入になっている日本の性能設定体系を、早急に実質的な性能設計体系、信頼設計体系に早く変えていく必要がある。
・最新の技術が導入されることで、従来からの無駄が省かれる。

Cさらに、ヨーロッパ等では、設計・施工一括発注形式が多くとられ、安全かつ効率的な設計・施工が行われ無駄をなくす努力がなされている。現在の日本での発注体系は、設計、施工分離で行われており、無駄が指摘されている。この発注体系の見直しが必要であると考える。

D道路規格を根本的に見直し、地方の生活道路では予算が少なく効果的に整備可能なシステムの検討が必要である。

3.道路に関して無駄と感じることがありますか。具体的にお教えください。

@国土交通省と農林水産省等管轄が違う主体が近い場所に道路を建設してきた事例。

A建設間もない新しい舗装道路が水道管、ガス管、下水管、共同溝設置のため掘削や埋め戻しが実施されてきたこと。

B建設主体が異なるためか、既に高速道路(旧日本道路公団)が整備されているのに、並行して建設計画がされていたという理由で国道バイパス(国土交通省)の建設が実施されている事例が多い。建設計画の段階で整合性をとって無駄な建設計画を見直す仕組みが必要である。

4.今後、取り組む道路政策の一層の重点化を図ることが必要であると思いますが、優先度が高い又は低い課題への対応は何であるとお考えですか。

@優先順位が高い道路政策は、道路あるいは付属施設のスマート化(インテリジェント化)であると考える。具体的には、情報(IT)技術を活用して、道路の施設・設備や利用状況等に関する様々な情報を、リアルタイムで把握し、施設・設備の常時の維持管理や利活用を効果的に行うための情報の発信・受信・蓄積は勿論、災害(大地震やテロ等)発生時への効果的な対応を考えた道路のスマート化が最重要課題と考えられる。
・道路のインテリジェント化として、ITSや情報発信等のみでなく、構造物自体が自身の内部の状態を発信し、地域の生活、安全・ 安心、文化、社会、経済等の利便性向上、地域QOLの向上を図る情報の発信が可能な構造物のインテリジェント化を進める必要がある。

Aまた、既存道路の性能向上も優先課題である。公共交通(バスや家族連れの乗用車等複数乗車の交通)の優先レーンの設置、透水性舗装化、違法路上駐車の排除等、既存道路の性能向上や効果的な活用対策も優先度の高い課題と考える。
・透水性舗装をもっと拡大していくべき。

Bこれまでの経済重視(営業車やトラック交通)の道路整備から、通勤、通学、買い物等の生活関連交通の重視への道路政策転換も重要課題である。この課題への取り組みがいわゆる地域のQOL(生活の質)向上を目指した道路整備政策である。

Cこれまで、経済優先で整備されてきた道路政策を、これからは地域のQOL、すなわち景観、歴史、文化、風土、食べ物、祭り、レジャースポットが楽しめる道路整備計画を重点課題とすべきである。

5.国民の皆さまに対し、幅広くご意見を頂くこととしておりますが、特に留意すべき点などがあればお教えください。

@画一化された質問、抽象的な質問を避け、各層、各対象によって、具体的な回答が引き出せる質問を用意すべきである。
・官側が自分たちの考え、情報を出していくべき。
・アンケートでのすれ違いが多くある。聞く側は「単に意見を聞くだけ」と考えていても、聞かれた側は、「意見を聞いてもらった→何も変わらない→信頼低下」となっている。
・アンケートの中で回答者が勉強してもらうことも1つの目的として、実施することが必要。

A道路の整備がQOL向上に繋がった例を引き出せるアンケート項目の検討を望む。

B大きな抽象的な計画目標を掲げて、全く白紙ですというスタンスで意見を聞くよりも、国土交通省としての現状の問題認識、改善すべき事項の列挙、解決策の提示、夢が描ける政策を示すことが必要ではないかと考える。その上で、その考え方や方向性を問うということが必要であると考える。国としても真剣に具体的に今後の道路政策の在り方を考えていることが、国民に伝わることが重要であると考える。

6.その他、道路政策全般に関して、ご意見、ご要望等があればお聞かせください。

@瀬戸大橋、しまなみ海道、明石海峡大橋等の高速道路の料金が高すぎる。商業交通と生活交通で料金を別途設定する等、通行料金を下げる対策が必要。
・料金が高すぎる。使われない。使われないと無駄な投資という評価になる。

A高速道路高架橋下の有効利用を検討すべきである。

B災害時における道路の役割を十分検討し、大地震前に被害状況を予測して、被害者の病院への搬送路の確保、救援物資の搬送路の確保、救急車や消防車等の緊急車両の通行路の確保等ソフト対策や防災教育・訓練の実施が必要であると考えている。
・東南海・南海地震が確実に来るため、ソフト施策に予算を掛ける。

その他
・緊急時(大地震や大規模テロ等の大災害発生時)に効果的な対策を実施するために、道路や橋梁等の社会資本がいつ整備され、いつどうのような維持管理が行われたかを、共通のGISでデータベース化し、行政主体が異なる国、自治体、警察、消防等が情報共有すべき。
・香川の自転車マナーの悪さが、自動車マナーの悪さにつながっている。子供は勿論大人の交通マナー改善プロジェクトというソフトな交通対策の実施も必要。
・道路政策には、国民生活の質(QOL)の向上という視点がこれからもっと必要。