道路占用許可申請手続の電子化システムのパイロット運用の開始について

はじめに
 従来、道路に電線、ガス管、電柱などを設置する場合、事業者は、道路占用許可申請書の提出、許可書の受領、工事の着手・完了の届出まで最低4回は道路管理者の窓口に直接足を運ぶ必要がありました。
 また、道路管理者は、行政手続法第6条に規定する申請から許可までの標準処理期間内での処理を行うためにも、事務手続の効率化が必要となっています。
 このような状況の下、建設省では、平成11年3月にとりまとめられた、学識経験者、占用事業者、道路管理者などの関係機関の代表から構成される「道路占用許可申請手続の電子化研究会」の中間報告(http://www.mlit.go.jp/road/road/senyou/index.html)(道路行政セミナー4月号で建設省 道路局 瀬之口建設専門官が紹介されています)を受けて、近年の情報通信技術の飛躍的な発展を踏まえ、これまで紙で行ってきた手続きをインターネットを利用してコンピュータの画面で処理できるシステムを開発することとしました。
 近畿地方建設局では、その具体化のため、平成11年4月より運用のための分科会を設置して検討を行い、その結果を踏まえ10月より奈良国道工事事務所管内で試行的に運用を開始しました。
 ここでは、その概要及び検討内容について、紹介いたします。

1.パイロットシステムの概要
 パイロットシステムは、インターネットを介して占用事業者による道路占用許可申請書及びその添付図書の作成・送信から道路管理者の許可審査、電子決裁、許可書の作成・送信、工事の着手届出、完了届出までの一連の業務を支援しようとするものです。(図1、図2)



図1 道路占用許可申請書の入力画面






図2 添付書類の設定画面




 さらに、書類に不備があった場合の道路管理者から占用事業者への補正の指示、補正を行った書類の占用事業者から道路管理者への提出も本システムにより行えます。(図3)



図3 補正要求の画面

 また、占用事業者、道路管理者双方とも、申請の処理状況(審査中、補正中、許可済、着手済、完了など)と補正に要した日数を除く処理経過日数などを進捗管理簿のページで検索できます。(図4)



図4 進捗管理簿のページ


 これにより、占用事業者は、ペーパーレスによる申請手続が可能となるため、道路管理者の窓口への書類の持参が不要となるとともに、24時間いつでも申請が可能となります。
 一方、道路管理者は、占用料の自動計算が可能となり、許可書の作成も簡単にできることなどの効果が期待できます。

2.パイロット運用分科会の設立
 「道路占用許可申請手続の電子化研究会」において検討された、道路占用許可申請に関する手続の電子化を実現するためには、i.現に紙で行っている手続全てをそのままシステム化するのかii.申請に必要とする添付図書のうち省略できるものはないかiii.添付図書は、占用事業者が作成する設計図をそのまま使用できるかiv.システムの構成はどうするのか等につき個別に検討する必要がありました。
 そこで、これらの問題点を具体に解決するため、平成11年4月近畿地方建設局及び実際パイロットを運用する奈良国道工事事務所、関係道路管理者として奈良県、奈良市、交通管理者として奈良県警察本部、占用事業者として西日本電信電話梶A関西電力梶A大阪ガス鰍ゥら構成される「パイロット運用分科会」を設立し、現在まで鋭意討論をおこなってきました。

3.運用分科会での検討結果
(1)申請添付図書の簡素化、標準化
 運用分科会では、申請添付図書1つひとつについて、その必要性及びシステム的には図面についても、別の方法で代替できないかを検討し、また建設省及び他の地方建設局間との調整も行い、事務手続の簡素化、標準化案を作成しました。
 内容としては、表1のとおり、道路占用許可申請で処理する工事の種類及び添付図書を明確にしました。
 また、横断面図、縦断面図、構造図などは掘削が伴わない工事の添付図書としては不要とし、他の行政庁の許可書の写し、復旧工法図、写真、他の管理者との協議結果、掘削面積図などはほぼ全ての申請時に不要としています。
 道路法施行令第8条に該当する軽易な工事についても、届出の様式を定め、添付図書は位置図のみとしています。

(2)図面の作成方法
 通常、紙で申請する場合の添付図書のサイズは、A2あるいはA1が大多数であり、スキャナーにより本システムに同じサイズで取り込むためには、多額の設備負担が生じます。
 従って、パイロットシステムでは、機器価格等を考慮して図面サイズは、A4とし、そのためにはどのような問題点を解決しなければならないかを議論してきました。
 最終的には、申請添付図書の基礎となる設計図をA3とし、A4に縮小してスキャナーで取り込むこと、縮小を前提として占用数量等の文字は大きく、太くし、占用位置も見やすくすることで解決を図ることとしました。(表2)


4.パイロットシステムの構成
 パイロットシステムでは、パーソナルコンピュータ、スキャナー、プリンタなどは極力既存の機器類を使用するものとし、特殊な装置は不要としました。(図5)



図5 パイロットシステムの構成



T占用事業者
・パーソナルコンピュータ
申請書を作成し、添付図書等のデータを申請受付サーバに送付します。
OS :Windows95,98,NT4.0
CPU:Pentium 200MHz以上
メモリ:64Mbyte以上
ディスク:2Gbyte以上
画面解像度:800×600(SVGA)
・スキャナー
申請書に添付する図面をイメージデータとして取り込みます。
A4対応、モノクロ、200DPI、制御ソフトウェア添付
・プリンタ
A4対応、モノクロ、ドライバ添付
・通信機器
インターネット接続可能な環境
・ソフトウェア
申請書データの作成を支援するためのソフトウェアです。
インターネットブラウザ(無償)
Acrobat Reader(無償)
国土地理院の数値地図25000

U道路管理者
・申請受付サーバ
 申請者がインターネットを介して直接アクセスするWWWサーバです。
 申請者が送付する申請書等の書類を特殊な形式に変換し、申請データ保管サーバへ転送します。
 また、申請者は、随時進捗管理簿のページで審査状況を確認し、許可書を受け取ることができます。
OS :Windows NT4.0 Server
CPU:Pentium U400MHz以上
メモリ:128Mbyte以上
ディスク:6Gbyte以上
画面解像度:800×600(SVGA)


・申請データ保管サーバ
 申請受付サーバから受け取ったデータを道路管理者内の複数の担当者がアクセスするサーバです。
 スペックは、申請受付サーバとほぼ同じ。但し、ディスク:10Gbyte
・パーソナルコンピュータ
 申請データ保管サーバにアクセスし、申請書の内容や添付図面を閲覧し、審査します。
 スペックは、占用事業者PCとほぼ同じ。但し、画面解像度1024×768もしくは1280×1024
・プリンタ
A4対応、モノクロ、ドライバ添付
・通信機器
インターネットに接続可能な環境
・ソフトウェア
申請データを閲覧し、許可書を作成するためのソフトウェアです。
インターネットブラウザ(無償)
Acrobat
国土地理院の数値地図25000



5.パイロットシステムのフロー
 パイロットシステムの具体的処理のフローは図6のとおりです。




図6 パイロットシステムの処理フロー


T申請書作成・送信
 事前にスキャナー等により添付図面取り込みを行ったうえ、申請書記載必要項目を入力します。
 その後、申請受付サーバに接続し、上記データを送信します。
U申請書受理
 Tで送信された申請書データは、申請受付サーバを介して自動的に道路管理者内に設置する申請データ保管サーバに送信され、申請書類は自動的に受理されます。
V審査、占用料計算
 申請データをパーソナルコンピュータによりアクセスし、占用物件内訳により占用料を自動的に計算のうえ、電子決裁を行います。
 また、必要に応じて補正の指示を申請者に行えます。
W進捗状況閲覧
 申請者は、随時、道路管理者の処理状況について、処理経過期間も含め閲覧できます。
X許可書受領
 許可書は、申請受付サーバから申請者のパーソナルコンピュータにダウンロードし、印刷することができます。

Y工事着手届
Z工事完了届
 工事の着手、完了時に必要となる届出書は、申請書と同様申請受付サーバを介して送信できます。
[集計・統計、進捗管理
 道路管理者内で占用数量等の集計・統計が可能となります。
 また、許可後における工事の状況や届出の提出の状況などを閲覧できます。

6.パイロットシステムの運用開始
 以上の内容について、本年10月より3ヶ月間、近畿地方建設局の奈良国道工事事務所が管理する道路に係る西日本電信電話梶A関西電力梶A大阪ガス鰍フ3占用事業者の道路占用許可申請をパイロットシステムにより運用することとしています。
 パイロット運用により検証する項目は次のとおりです。
i.システムの運用性
実際本システムにより占用許可申請を行った場合、実業務遂行に支障はないか検証します。
ii.システムの利便性
従来の紙による申請と比較し、利点、欠点を評価します。
iii.システムの安全性
情報の漏洩、システムへの不正侵入が防がれているレベルかどうか検討します。
iv.システムの機能性
実業務遂行に必要な機能が満たされているか、操作が容易か検証します。


おわりに
 本パイロットシステムは、運用を通して得られた問題点の検証結果に基づき、全国展開が可能となるよう、さらに検討を進め汎用性のあるシステムとする予定です。
 また、今回のシステム化に当たり検討を行った申請添付図書の簡素化、標準化等申請負担軽減の考え方は、システム導入の有無に係わらず広く適用すべきものであると考えています。