1. 性能規定化
- 性能規定化の主な背景
- 構造や景観などへのニーズの多様化や一層のコスト縮減に対応するため、新たな設計手法や新技術、新工法を速やかに導入し得る柔軟な基準の在り方が求められていること。
- 国際間の技術移転を容易にするため、性能に着目した基準への以降が国際的な流れであること。
- 性能規定化の基本的な考え方
- 現行の仕様規定に対し、仕様規定が求める要求性能を「性能規定」として明示。併せて、現行の仕様規定を「みなし規定」として併記することを原則。
[現行]
[改訂]
- ○○○の設計にあたっては、□□□(の性能)を満足しなければならない。
<性能規定>
- ○○○(の仕様)を△△△とする場合は、1を満足するとみなしてよい。
<みなし規定>
|
- 具体例
[現行]コンクリート橋編 4章 構造細目 4.4.1 鋼材のかぶり
- 鋼材のかぶりは、表-4.4.1の値以上とする。
- 鋼材のかぶりは1項の規定によるほか、鉄筋の直径以上としなければならない。
表-4.4.1 最小かぶり(cm)
部材の種類 | 床版、地覆、高欄、支間10m以下の床版橋 | けた |
工場で製作されるプレキャスト部材 | 左記以外のけたおよび支間が10mを超える床版橋 |
最小かぶり | 3 | 2.5 | 3.5 |
|
[改訂]コンクリート橋編 6章 構造細目 6.6.1 鋼材のかぶり
- コンクリートと鋼材との付着を確保し、鋼材の腐食を防ぎ、火災に対して鋼材を保護するために、必要なかぶりを確保しなければならない。
- かぶりの値を、鉄筋の直径以上かつ表-6.6.1に示す値以上とする場合は、1項を満足するとみなしてよい。
表-6.6.1 最小かぶり(cm)
部材の種類 | 床版、地覆、高欄、支間10m以下の床版橋 | けた |
工場で製作されるプレキャスト部材 | 左記以外のけたおよび支間が10mを超える床版橋 |
最小かぶり | 30 | 25 | 35 |
|
- これにより、2の規定値によらずに塗装鉄筋や電気防食やその他新技術の採用が可能。
2.耐久性の向上
- 塩害に対する耐久性の検討の規定化
- 昭和59年の塩害対策指針(案)通達以降の追跡調査で、塩化物イオンの侵入が予想を超えていることを確認。
- 平成11年に土木学会から塩化物イオン濃度の発錆限界値とその推定式が示されたことから、従来の塩害対策指針(案)(昭和59年課長通達)の規定を強化。
- 規定内容
- コンクリート構造物は、塩害により所要の耐久性が損なわれてはならない。
- 表-5.5.2に示す地域においては、かぶりの最小値等を表-5.2.1に示す値以上の対策を行うことにより、1項を満足するとみなしてよい。
|
表-5.2.1 最小かぶりの標準値(mm)
部材の種類 | 上部構造 | 下部構造 |
けた | はり | 柱 |
1、工場で製作されるフプレキャスト部材 | 2、1以外のプレストレストコンクリート構造 | 3、1以外の鉄筋コンクリート構造 |
塩害の懸念の度合い | 影響が激しい | S |
70※(50〜70) | 90※(70) |
影響を受ける | I | 50(35) |
70(50) | | 90(50) | 90(50) |
II | 35(25) | 50(35) | 70(40) |
70(50) | 70(50) |
III | 25(25) | 35(35) | 50(30) |
50(35) | 50(40) |
※:別途の塩害対策を併用(塗装鉄筋、コンクリート塗装など)
注:かっこ内は現行の塩害対策指針による規定値
- これにより、耐用年数100年に相当する塩害対策を規定。
- 鋼橋における疲労の検討の規定化
- 重交通路線の鋼橋で、大型車の繰返し通行による疲労が原因と推定される損傷事例が報告。
- 疲労耐久性に優れた継手型式など耐久性向上策についての知見が蓄積されたことから、鋼橋の設計にあたって疲労の影響を考慮するよう見直し。
- 規定内容
[現行]鋼橋編 3.1.5 疲労の影響
道路橋においては、鋼床版ならびに道路橋に軌道または鉄道を併用する場合などを除いて一般に疲労の影響を考慮しなくてよい。 |
[改訂案]鋼橋編5.3 疲労設計
鋼橋の設計にあたっては、疲労の影響を考慮しなければならない。 |
- 設計にあたっては、「鋼橋の疲労」(日本道路協会)などを参考に、耐久性に優れた継手形式の選定や継手部の仕上げなどで対応。
- 部材に生じる応力変動の評価が可能なものについては、将来の大型車交通量を想定し、疲労耐久性を評価。
3.その他の主な改訂(耐震設計の見直し等)
- フーチングのせん断耐力算定法の見直し
フーチングのせん断耐力に関し、コンクリートが負担するせん断力が大きくなる方向で算出式の割増係数を見直し。 |
- フーチングのせん断に関する実験データが追加、蓄積され、コンクリートが負担するせん断力の実験値が理論値に対し、より大きくなることを確認し、これによりコンクリートが負担するせん断力の算出式の割増係数を見直し。
- 見直しにより、コンクリートが負担するせん断力が2〜3割増加し、逆にせん断補強鉄筋量を4割程度少なくすることが可能。
- その結果、フーチングで2〜3%の工費が節減できるとともに、現場における配筋作業が軽減。
- レベル2地震動に対する支承の照査方法の見直し
タイプBの支承部の耐力に関し、より合理的な設計が可能となるようレベル2地震動に対する許容応力度の割増係数を引上げ。 |
- 兵庫県南部地震で、支承本体や支障を固定するアンカーボルトの破壊、破断が多くみられたものの、支承部の耐力や変形特性に関する実験データが十分でなかった。
- このため、前回の改訂ではレベル2地震動(プレート境界型の大規模な地震及び兵庫県南部地震のような内陸直下型地震)に対するタイプBの支承(一般的な橋に用いられる支承)の許容応力度の割増係数を安全側に1.5と規定。
- その後の載荷試験等から、支承の機能を失ってからも破壊、破断に至るまでは余裕があることが確認されたため、許容応力度の割増係数を1.7に引上げ。
- この結果、ゴム支承で約8%のコスト縮減、金属支承で約10%のコスト縮減が可能。
- 液状化が生じる地盤での橋台基礎の照査の導入
液状化の恐れがある地盤上の橋台基礎に関し、レベル2地震動に対する耐力の照査方法を新たに規定 |
- 兵庫県南部地震で、液状化する地盤上の橋台が全面へ傾斜する被害。
- その後の研究により、レベル2地震動により橋台背面に作用する土圧を定量的に評価することが可能になったことから、液状化の恐れがある地盤上の橋台基礎のレベル2地震に対する耐力の照査方法を新たに規定。
- 規定の導入により、今後新設する橋台の一部で杭などの基礎の強度を上げることが必要となり、標準的な橋台ではコストが5〜8%増。
- コンクリートを充填した鋼製橋脚の照査方法の見直し
コンクリートを充填した鋼製橋脚に関し、レベル2地震時における発生応力や応答変位を算出する方法を見直し。 |
- レベル2地震動におけるコンクリートを充填した鋼製橋脚の発生応力や応答変位は、従来は安全側に静的解析を用いて算出。
- その後の実験データの蓄積から、復元力を再現し得るより実物に近い解析モデルが開発されたことから、動的解析を用いて発生応力や応答変位を算出する方法に見直し。
- 算出方法の見直しにより、最大で約3割断面鋼材量が減少し、標準的な鋼製橋脚の材料製作費が約1割節減可能。
道路技術基準・標識へ 戻る
|