第5回21世紀の国土・地域・社会と道路政策検討小委員会 議事概要



日時: 平成11年11月10日(水)15:00〜17:00
場所: 東條インペリアルパレス3階「扇の間」
議事: (1) 意見発表
    石田東生委員、白石真澄委員
    (2) フリートーキング
出席者: 森地茂委員長、石田東生委員、幸田シャーミン委員、白石真澄委員、玉川孝道委員、橋元雅司委員、屋井鉄雄委員、山根孟委員
意見発表及びフリートーキングにおける発言の概要は以下のとおり
  [意見発表]
   「つくるより使う」は、道路政策が変わるキャッチコピーとしては非常に良いが、人に優しい道路空間整備やTDMのための道路空間整備などこれからも必要な道路の整備の不十分性と必要性のアピールが充分に伝わらない懸念がある。
 また、道路整備緊急措置法は、今の道路政策を支えている最も基本となる法律であるが、整備を緊急にするために五計をつくることや、ガソリン税の超過課税をすることなどとの関係は保たれるのか懸念がある。
   新たな技術開発は当然必要であり、そのアピールも重要なテーマ。
 ソフト技術としては、新しい制度、分権化、情報公開などの流れの中で、需要予測や計画案作成の技術、また広域の幹線性の強い道路をどのように誰がリーダーシップをとって計画するか、水平的な調整を誰がどのように行うかなども考える必要がある。
 サービスの計測技術として、整備への投資により、我々の暮らしや地域がどのような良い影響を受けているか、例えば走行速度の時間変動、季節変動、定時性といったわかりやすい尺度で計測する必要がある。また、合意形成に必要なコミュニケーションのための技術も不足している。
 ハード技術としては、ITSが次の五計の目玉商品の一つとなるが、今のITSは技術先導型だが、これからは何を解決するか、どういう効果が得られるかといった需要や効果に根差した技術開発を考える必要がある。
 また、多様な交通モード、交通の土地利用と環境、交通と環境、使うこととつくることと維持管理することなどの連携的技術についても議論が必要。
   道路行政の新しさや変革のアピールという点で、道路行政の新しい仕組みの提案としてPM、PI、CSが提案されている。
 PM(施策評価)は、定時性、環境、安全性などがどのように向上、あるいは低下してきたかなどをサービスレベルを表す指標できちんと継続的に計測して公表することであり、パブリックインボルブメント(PI)での活用が考えられる。また、行政内部では、議論のための道具としても活用される。
 これらを使って課題や計画素案、効果・影響についてPI活動を行う。個人や法人は満足度やニーズをぶつけるが、そのときカスタマーサティスファクション(CS)が重要な情報になる。体験やPMを使って、提供されるサービスレベル、あるいは行政への信頼や評価について、アンケート(小さな意味でのCS調査)で聞ける。
 これらが互いに密接に関連して大きな意味でのCSになる。
   仕組みやコンセプトの明快さの追及が非常に重要。
 現在の諸制度は、その時々の制約条件下での最適な判断の積み重ねの結果であり、制度の簡単性や単純性、明快性が損なわれている可能性が高く、不断に、連続的に見直す努力が必要。
 アメリカのISTEAやTEA21などは、高速道路関係、運転者・車両安全、公共交通などのタイトルに分れていて、どれに力を入れているかがすぐわかる。道路は多目的、多機能であり、分けきるのは難しいが、明快性を考えると見習うべきである。
   来年度は五箇年計画の中間年度であり、中間評価を行う価値が大きい。その評価結果を公表してプログラム修正への道筋を明確に示す、こういうことを連続的に努力していることを示すことも非常に価値があり、現実にもいい結果に結びつく。
 また、来年は20世紀最後の年でもあり、少なくとも戦後の道路政策の評価を行うべき。キーパーソンのオーラルヒストリーを行い歴史的資料として残すとか、建設白書の分析、長期間のPMを計測して考察することなどを考えるべき。
  [意見発表]
   日本の高齢社会は、今の社会システム・仕組みを若干高齢者のスピードに合わせたものに変えていけばよい。活力あるプロダクティブエージングをどう社会で活用し、参画させるかに力点を置けば経済成長の問題も恐れるに足りない。
   日本の高齢社会の特徴は次の6点に集約。
 一点目に寿命が非常に伸び老後が非常に長期化し、長い老後をどう自立していきるかという時代になる。
 二点目として、非常にスケールが大きい。高齢者の実数の多い東京都など都市部で高齢化が極めて深刻になり、高密度社会の中での高齢化を経験する。
 三点目として諸外国に比べてはるかに早いスピードで高齢化し、水準も最も高いところに落ち着く。
 四点目として75歳以上の後期高齢者が増加し、虚弱や要介護の高齢者が増えてくる。後天的な障害を負いつつも、地域でより自立できる方向性に社会資本整備を行っていかなければいけない。
 五点目として単身世帯、高齢者のみの世帯というのは、都市部で極めて増加し、家庭内の介護機能とか地域内の介護機能、高齢者を支える機能が極めて弱くなる。
 六点目として、高齢者世帯は年間所得は低いが、資産は非常に豊かな人が多く、これが日本の高齢化社会の特徴。
   元気な高齢者が多く、全国的な傾向として高齢者の移動が非常に活発化している。
 移動手段としては、自動車を利用することが多く、行動半径も非常に広がっており、拠点も複数化している。
 一方、移動困難な高齢者は取り残されて行動範囲が狭くなっており、車においても家族への同乗者が高まっている。鉄道の利用率は極端に低く、公共交通機関として鉄道に力点をおいても移動困難な高齢者の使いやすいものには必ずしもならない。路線バスの利用率は健常者にくらべて高い利用率であり、バスは日常生活に非常に浸透している。
   高齢運転者は増加する。また、男性の方が多く免許をもっており、女性は同乗していた夫が先に亡くなった場合、やはり車を使えなくなるということが言える。
   移動に関する高齢者の特徴として、身体機能は弱化とており、視力も低下し、脚力や敏捷性も低下する。小走りできない人も多いので、今の信号機の速度や踏みきりの速度の見直しが必要になる。
   高齢者が外出困難に感じていることは、道路や建物の段差、バスの停留所に屋根や椅子がなく待つのがつらい、歩道橋、サイン計画についての困難性が上位4位を占めている。
   交通事故死者は、全体としては減っているが、65歳以上の年齢層が最も多い。男女間でも女性は歩行中、男性は乗り物運転中が多く、外出の手段に起因している。
   高齢者が自動車を運転するときの不満としては、若者の運転の乱暴さ、交通混雑、一方通行・交通規制、歩行者の勝手な場所での横断が多くなっている。
   今までの高齢者像と今後の高齢者像は全く異なっており、新しい価値観を持った高齢者が増えている。いろいろな選択肢があって、自分で選択する多様な選択肢のある社会に変わっていき、その中で自己責任を持つような人たちが増えている。
   高齢者の基本的なニーズは、普通の生活の継続、健康に対する欲求が強い、働きたい、交流を担保したい、という4点に集約される。このようなニーズに合わせた地域整備は次のようにあるべき。
 今後は在宅ケアが基本であり、住宅を基本に地域に拠点を作り、福祉拠点をつくり、そこに民間事業者が参入し、個人がサービスを買っていく。そのために集まって住むなど介護効率のいい都市のあり方が求められる。
 さらに、どこへでも行けるということは、地域のバリアフリー化が基本。
 多様な施設へのモビリティの確保として、移動する権利を確立していくためには、道路だけ、公共交通だけということではだめで、どういう都市機能を配置するか、さらに社会的余暇の定着の中で時間ある人たちがどう社会参加していくかなど、多様な施策を重ねあわせて検討していくことが必要。
 今後人口減少社会が来ると、あまり外縁化せず、できるかぎりコンパクトに住める都心居住を推進する必要がある。
 非血縁間居住の欲求などは、結果的に介護率を上げ、環境負荷を低くしていくことにもつながる。
 顔の見えるサービスを提供していくために、1小学校区や1中学校区を基本として、小規模分散型の在宅施設配置が重要になる。
 少子化により空いた小学校を転用するなどで世代間交流をしたり、あまりお金をかけない施設づくりが始まっており、このような施設利用とアクセスの確保が求められる。
 高齢者に対しては、ちょっとした見守り、声かけなど住み続けたまちで生活するための支援づくりが必要。
   基本として地域の将来的な交通需要予測を行い、そのニーズを反映した施策を打つべき。要介護期、虚弱期、健常期を分断しない交通サービスを提供していくべき。
   生活道路の中でも福祉施設とか病院とか、今後利用のニーズが増えている地域に対する重点投資が必要。
   健常期から要介護期まで分断されないサービスのために必要なものは、健康な人には安全・安心に運転できる道路計画、要介護の人たちには運転を断念しても困らない交通環境の整備が必要。
 例えば、高齢者は30キロで走ってもよい「ゆったりレーン」や分りやすい標識、夜間の安全性の向上、ゆとりある縦列駐車ができる駐車スペース、また、当然フローの少ない人たちの低廉な料金体系などが必要。
  [フリートーキング]
   地域社会を議論する立場からは市町村や県の壁が日本の国土をだめにしており、広域交流圏など一つのブロックの中で、骨組みとなる道路、交通機関の連結、空港との連携などがどうあるべきか、という視点から道路行政を組み立てなければいけない。
 地方の人口4万程度の都市が滅びつつある、農村地帯が自動的に多自然だけになっていくという現実の中で、社会資本としての道路をどうつくっていくかということも、交流、連携というブロック的な地図の中で提起されるべき。
 地方の人が地域社会あるいは暮らしの視点から道路を照らし直してどういう道路が必要か、次の世代の日本経済社会の中でどういう形で道路があるべきか要望がつながっていない。
 公共投資の大きな部分を担当する地方整備局が、現在のような工事実施機関ではなく、広域交流のリーダーシップをとるようになれば何かのきっかけになる。
   「全総法」と「国土利用計画法」を改正し、計画づくりと個別の社会資本整備の計画をどういう格好でリンクさせるかという点がポイント。
   仮にヘクタールあたり100人位の集積のオーダーを考えると、わが国の都市は1万平方キロくらいの面積で成立して、38万平方キロのその他の地域をどう生活維持機能を確保し、発展させて集落の再編正等を行っていくかというビジョンをハッキリ持つ必要がある。まして高齢社会のなかではかなり重要。
 そのような視点からは、高規格幹線道路14,000kmはネットワークの根幹としてしっかりしていなくてはいけない。
   地方において老齢化で人がいなくなり、政治的社会的パワーが落ちていくなかで、均衡ある国土の発展などの議論の視点が落ちていくことが不安。それに対して道路がどのような経済社会を描くのか、それを誘導的、計画的に問題提起できれば、この委員会ではずいぶんパワフルな提案ができる。
   今の問題を大都市、地方都市、中山間地域の三つに分けるのは非常に分りやすい。ところが中身は大都市、地方都市についてはみんなが一生懸命だが、中山間地域についても同じように考えていかなければならない。
   パソコンにたとえると道路や交通はオペレーティングシステムに例えられる。この場合明確なソフトウェアがないとだめだと思うが、そのきめ細かいソフトウェアのところまで道路が心配する必要はないのではないか。
   ソフトウェアとして必要最小限準備しておくべきものは何かという視点はあるし、ある種のポリシーはあってしかるべき。
   高規格14,000kmを整備するとき、余力がないので効率のよいところから整備し、その他は待てといわれた。先発のところは差別化の便益があるが、後発はあとになればなるほど便益はなくなってくるから何か手当てしなければいけないという考え方が成立する。  歩道もないようなところの電線類の地中化のように、やっぱりつくるものはつくらなければいけないということも同時にアピールすべき。「つくるより使う」と言いきってしまうとそこが薄まることが懸念される。
   (次の世代の経済社会を)広域のネットワークをつくる計画のプロセスのなかに如何に組込むかということと、地域の経営の仕方、そのプランと道路の計画をどうやって結び付けるかと言う話が重要。
   都市でも地方でも、PIのように地域の人を巻き込むことを支援する手段が必要な時代になっている。
   道路とか交通システムの本来的な機能がきちっと生かされて地域の役に立っているという感覚よりもフローとしての感覚が強い。例えば老齢人口と建設産業従事者は逆比例しているにもかかわらず、公共投資が福祉政策、所得再配分政策として使われている。
 道路が道路、交通が交通として働いて地域の活性化になっているというストック的な効果をちゃんと示す、示す努力をする、ビジョンをしっかり示すことが求められている。その議論が足りない。
 高齢化が進んでいる地域同士でも独居老人率に違いがある場合があり、都市構造、圏域の取り方、そのなかでの交通の役割などがある種の可能性を示している。
   横断道的な道路に高い評価を与える形で問題が出されるべき。そのような広域交流の意味をもう一度道路を使いながら意味付けし、整備無用論に対して議論するべき。
   道路が整備された効果で何人かの通勤が可能になり、家、集落が維持され中山間地域の暮らしを変えているといった効果はB/Cには乗らないし、測る単位がない。
   人口が流出し、経済力を失った地域に自立しろ、発想しろといってもできない。国の施策として国土全体を見て、この道路はこういう意味があるというところまで提示してやるべき。
   高齢化の問題は、寿命が伸びることにより介護負担を考える必要があり、女性がどう自立して生きるか、どう介護を効率的に進めるかという問題に置き換えられる。このため女性を分けて考える必要がある。


[本議事要旨は暫定版のため、今後修正の可能性があります。]





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