参考:国内外の異分野連携等の事例

 

 

 

【山梨県中富町の事例】

@交通サービスの現状と問題点

○地域概要

・人口5,145人、世帯数1756世帯、高齢化率34%。高齢者1〜2人世帯が多い。

・町民の多くは、町の東部を南北に通る国道52号沿いに居住、国道52号の西側の山間部に散在する28集落では、人口減少が著しい。

・町内の交通手段は、町営・町有バス(1995年より)、タクシー(1社、保有車両3〜4台)。

A異分野との連携等による交通サービスの維持に対する考え方

・バス路線維持の目的は、主に「お年寄りの足の確保」である。

B異分野との連携等による交通サービスの維持方策の現状と問題点

○町営バス

・山梨交通が運行していた町内の廃止路線代替バスの廃止に伴い、町は町外も含む関係路線の全区間の廃止を希望し、1995年より「町営バス」として、道路運送法第4条一般乗合免許にて運行を開始。

・運行路線は、町外のバスターミナル・鉄道駅とを結ぶ2路線。

・運行開始後、町内一律100円、鰍ヶ沢まで400円という簡略な料金体系へ変更。

・バスに対する町民の意見は、「町営バス運営協議会」を通じて反映。

○町有バス

・病院への患者輸送バスと、中学校のスクールバスを統合し、「町有バス」として運行。県の条例により初年度車両購入費補助(1/2)を受け、マイクロバスを1995 年に新規購入。

・運行路線は、町内の集落を巡回する3路線。

・患者、学生の輸送を目的としているため無料。一般客も利用可能。

・異分野連携に際して、利用者の要望により積極的に車両改善策を講じてきた。

 (車内ラジオの設置、黒服へのほこり付着を避けるためのビニールシート化)

○異分野連携に係る特徴

・スクールバスと患者輸送バスの統合を実現。一般客に開放・混乗化することにより、乗合バス(ただし無償)としての機能も統合。

・有償バスも町営で運行することにより、無償バス運行による事業者の圧迫を回避。

 

【東磐交通梶^岩手県東山町の事例】

@交通サービスの現状と問題点

・地域概要:岩手県一関市東部に位置する農村地域。

・会社概要:県内有力トラック事業者を中心とする企業グループの一員。

・企業誘致の成功に伴って本業であるトラック運送の需要が創出されることを期待し、昭和40年代に企業送迎バスの運行と従業員の募集活動支援を開始。

・過疎バスの廃止問題が社会的に注目を集めたのを機に1985年に乗合事業(代替バス)の運行開始。

A異分野との連携等による交通サービスの維持に対する考え方

・「地域社会に奉仕できる企業」を経営理念とし、バスがなくなれば地域の活力は失われるとの考えから、不採算の路線バスを運行。

・事業者からの働きかけにより、自治体側の理解度も高まってきている。

B異分野との連携等による交通サービスの維持方策の現状と問題点

○企業送迎バスの統合・混乗

・企業の始業・終業時に迂回運行。従業員に発行する無料パスは、週末に利用でき好評。

・工場の冬時間に合わせると、JRへの接続が不可能となるため、工場の従業員組合側に協力を求め、始業時間の変更を実現させた。

○町営患者輸送バス、町営福祉バス

・数路線を編入(週2回のみ路線バスルートを迂回し、従来の福祉バスルートを運行。病院から発効された証明書で復路は無料)。

・今後は福祉の観点が重要なため、車椅子対応型バスを導入予定。

○スクールバス

・一部委託運行を行うが、基本的には東山町が運行。中学校の統合条件となったため、中止は難しい。将来的にはスクールバス全般の混乗化も検討の余地あり。

○バスでの宅配便の集荷

・沿線住民の利用で、1個につき100円、月あたり3万円程度の取次手数料収入がある。バス通行時に手を挙げればどこでも集荷する。

○その他

・市役所、県立病院、ショッピングセンターへの乗り入れ。

・市街地外ではメロディーバスが音楽を奏でながら運行。沿線住民の時報がわり。

・路線バス車両を多目的(葬儀等)に有効活用するため、塗色を白としている。

・観光シーズンに運送会社から運転手を派遣したり、燃料・資材の共同購入、情報処理システムの共同利用など、グループぐるみでコスト削減の支援を実施。

・大手の広域的な事業展開は、労組問題などから高コストになりがちであり、人材面でも困難。現在の1市数町程度の事業規模が最適と考えられている。過疎バスの効率化には、広域化よりも、狭い地域で様々な分野との複合化が有効。

・隣接する大東町営バスと東磐交通バスの競合する区間に対し、大東町の申し出に基づき、東磐交通の路線を大東町に移管。

・経費削減のため、東山町から東磐交通へ車両の小型化を要望。

【北海道東川町の事例】

@交通サービスの現状と問題点

・大雪山国立公園を背後に控える人口7,000人余りの町で、大雪山の景観、天人峡・旭岳という町の中心的存在等を生かし、「写真の町」として全国の学校を対象に行う「写真甲子園」、インターネットの活用など、個性的な観光施策を展開中。

・旭川電気軌道により、旭川から町内を経由して天人峡・旭岳方面への路線バスが運行されている。

A異分野との連携等による交通サービスの維持に対する考え方

・旭川電気軌道からの路線バス運休の申し入れに対し、ダメージを受けるのが天人峡・旭岳等の主要観光地だけでなく、全町の問題であったことから、検討の結果、観光地交通対策として補助金を拠出し、路線の運行を支援することとした。

B異分野との連携等による交通サービスの維持方策の現状と問題点

○町・観光協会の協力によるバス路線維持

・1986年に旅館組合による助成開始。87年より町からの補助金創設。

・町が観光協会に「観光地交通対策」補助金を出し、これが天人峡・旭岳路線維持に充てられる。負担割合は、観光協会2割、天人峡地区観光業者4割、旭岳地区観光業者4割。

・旭川から天人峡・旭岳まで、繁忙期3往復、閑散期2往復を運行。観光シーズンには増便・増発が随時行われる。

・予算決算の状況をみると、1996年度決算額は町補助金が421万5,000円、97年度予算額では、町補助金429万7,000円。

○運賃無料化による観光客の誘致

・下り便の天人峡・旭岳降車客は無料。上り便で天人峡・旭岳より乗車し、旭川市方面へ行く場合は、天人峡・旭岳の施設において2,000円以上買い物をすると、「無料バス券」が発行され、復路も無料となる。

・町と旅館組合の協力によってバス利用者は漸増。お客様ご紹介カードのような観光客の誘致を積極的に展開し、町の活性化とバス利用者増加を図っている。

○その他

・1992年より中型バスとマイクロバスで町営バスを運行。運賃は一律100円。

【津軽地域28市町村の事例】

@交通サービスの現状と問題点

・弘南バス鰍ニ子会社の轄O南サービスが独占的に路線バスサービスを提供。

A交通サービスの維持に対する考え方

・全国で路線廃止が相次いだ時期に「路線を廃止する前に維持する方法を」という視点から、津軽地域の28市町村によるバス路線維持、子会社化等の取り組みが展開された。

・事業者側は、地域交通を1社独占で担ってきたの社会的責任は大きく、簡単に廃止できないと考えている。

B交通サービスの維持方策の現状と問題点

○「津軽方式」によるバス路線の維持

・弘南バスのカバーエリア内の津軽地域28市町村の自治体が、当該地域の住民の生活に必要なシビルミニマム路線(1日計5便)に対して維持資金を出し合い、路線バスの維持を図るもので、初年度にあたる1995年度は、28自治体で総額2億6千万円を拠出。

・97年までの期間限定であり、98年以降は白紙状態である。自治体の代表者による検討がなされているが、自治体間のバス路線維持に対する意識の差が大きく、取りまとめが難航。行政に広域的な取り組みを行う仕組みがないことも要因。

○住民負担によるバス路線の維持

・上記路線維持についての一連の話し合いの場であった「津軽路線バス調査ワーキングチーム」において、今後の過疎地域のバス運行のモデルケースとして「深谷線」の開設が検討され、1993年8月より運行が開始された。

・深谷線は鰺ヶ沢町中心地区と、山間部の3集落(深谷・細ヶ平・黒森、計62世帯)を結ぶ路線。従来はバスが運行されておらず、以前からバス路線開設に対する陳情を重ねるなど、バス路線に対する熱意が強い地域であった。

・住民が1世帯あたり月1,000円の回数券を購入することで、バスの運行経費の一部を負担する。その後、この回数券による住民負担は、浪岡町細野地区、相馬村藍内地区にも導入されている。

・ただし、住民購入の回数券の売り上げは、運行費用の1%未満である。むしろ、住民の方の路線バス維持への問題意識や、「自分たちでバスを通した」という共同体意識が強まる効果が大きい。

【イギリス(スコットランド)・ポストバス】

@交通サービスの現状と問題点

・イギリスの郵便事業(Post Office)は、@Percelforce Worldwide、ARoyal Mail、BPost Office Countersの3組織が担当している。「Royal Mail」は、地域ごとに9分割されており、「Royal Mail,Scotland & N. Ireland(以下RMsn)」は、スコットランドと北アイルランドで業務を展開している。

・運行に際し、@地域コミュニティに奉仕すること、A郵便の集配を行うこと、B乗客を有償で輸送すること、C食料品や新聞、処方せん等の「ローカルグッズ」の配送サービスを提供すること、の4つを目的としている。

・スコットランドにおいては、現在146ルートのポストバスサービスを提供している。他の8地域のロイヤルメイルにおいてもポストバスは運行されているものの、イギリス全土で合計112ルートとスコットランドに比べて少ない。

・1996年度の年間輸送人数は約86,000人で93年度より約7,000人増加している。

・RMsnポストバス車両は、乗用車から15人乗りまで現在166台ある。車両スペースの50%は乗客用、残り半分は食料品や新聞等を運搬する。

A対象地域における交通サービスの提供の経緯

・スコットランドでは、ポストバスが正式に導入される1965年以前から、バスサービスが提供されていた。

・スコットランドは、小さな集落が多いことから、85年交通法以前から地方バスサービス充実の必要性が高い地域であり、この要求を満たす事業体として、ロイヤルメイルの可能性が評価され、65年ポストバスが法的に認められた。

B規制緩和による補助金入札制の効果・影響

・1985年交通法以前は、すべてのポストバスは「デミニマス方式」で運行され、地方自治体の補助を受けていたが、規制が多く自由な活動ができなかった。

・規制緩和により、15マイル未満の営利を目的とした路線に対して路線ごとの免許制が廃止されたが、ポストバスは不採算路線の多い地方都市と田舎との輸送サービスであったため、規制緩和の影響は大きくなかった。

・ただし、規制緩和後、地方自治体は民間企業と全く同じ様にRMsnへバスサービスを委託することが可能となったため、RMsnは入札に参加し、競合する機会を与えられた。規制緩和後に新規開設した25路線については、すべて補助金入札制で落札している(7路線がスクールバス、18路線がローカルバス)。

・一般の旅客運送事業者は、純粋に人を輸送することしかできないため、高コストとなってしまうが、RMsnは郵便集配事業も併せて行うため、より安価なコストで人を輸送することが可能である。

【イギリス・ダービー・コミュニティトランスポート】

@地域の概要

・ダービー市は、ロンドンの北西約200kmに位置している。人口は約23万人であり、ダービーシャー(ダービー県)の人口の約2分の1が居住している。

A対象地域における交通サービス維持方策の基本的考え方

・1981年、県自治体は、一般の公共交通機関を使えない人に対する交通サービスの提供は、補助金を出して責任を持って行う地域へのサービスの一つであるとの考えに基づき、様々なボランティア団体の代表者が話し合いを行った結果、ダービー・コミュニティトランスポート社(DCT)を設立した。

・開設当初は、県自治体から補助を受けていたが、現在では市自治体からの補助金(年間補助額£20万)を受けてサービスを提供している。

・通常、営利目的であれば、マイレージあたり£1.5程度かかるが、ボランティアの協力によって、£0.69〜£0.7とはるかに低コストとなっている。

B交通サービス維持方策の現状と問題点

○ダイアル・ア・バス

・1982年に開始したDCT社の中心的なサービスであり、一般の公共交通機関を利用することができない高齢者、虚弱者、障害者を対象に、自立した生活の支援を目的として、アクセシブルバスを利用した輸送サービスを提供している。

・利用予約は電話で受け付ける。利用当日、タイムテーブルに従って運行されているバスが、利用者の自宅前に停車し、市内中心部まで乗客を輸送する。2時間後には自宅へ送り届ける。(「ドア・ツー・タウン」のサービス)

・エリア内の状況を熟知した運転手が、予約リストに基づき、エリア内でのピックアップの最適なルートを決定する。バスは15人乗りであるが、スペースを取る車椅子やショッピングトロリーの使用の有無については予約時に確認する。

・20のエリア毎に週1回ずつ2路線を運行している。多くの人々のニーズはショッピングであるため、1路線はシティセンター(ショッピングセンター)への運行、もう1路線は自宅近くのスーパーマーケットへの運行である。

・シティセンターへの運行は、ボランティアのエスコート付きである。スーパーマーケットについても、店の従業員にエスコートをお願いしている。街の中で自由に動けるように、車椅子無償提供サービスも行っている。

・サービスはすべて有料であるが、地方自治体の補助を受けているため安価であり、往復£0.45である。

 

 

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