地球を想い、地域を創る
第3回『環境NPOから見た交通』
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[背景]
§環境問題と交通
・地球温暖化といった地球規模の環境問題、そして排気ガスや騒音等といった地域の環境問題について、自動車からの排気ガスの発生等、大きく関わっている。その中で、こうした交通と環境に係る市民の考え等をみると、問題意識は強く持っている
ものの、保全行動の実行が困難であると考えているものも見られる。
§『環境に配慮した社会』におけるNPO・市民の役割と活動の現状
・近年、社会システムを動かす原動力として、NPOの活動が重要かつ盛んになってきており、特に環境分野等でそれが目立ってきている。
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論点: |
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・(環境)NPO・NGOの活動の実態 |
[ゲストスピーカー]
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●環境NPO・NGOと我が国の動向
・大量生産・消費・廃棄型社会から持続可能な社会への変革にあたり、様々な利害が対立する既存組織(政府、政党、企業)による対応に限界が生じたことから、環境NGOへの期待が高まっている。環境NGOは、既存組織を超越し、利害関係にとらわれずに将来世代の声を代弁したり、地球人類全体の立場から組織間相互の意見調整を行ったり、代替案の提案を行うことができる。
・地球サミットにおけるアジェンダ21でも、情報公開や政策決定への国民参加の推進、持続可能な社会実現に向けたNGOとのパートナーシップ構築を求めている。
・日本の環境NGOには、国際的な団体の日本支部(グリーンピース、WWFなど)や、公害被害者団体(水俣病被害者団体や反原発・各地域の開発反対運動団体など)、エネルギー・自然保護などテーマごとの活動を行う団体、地域密着型団体、法律家・研究者ら専門家のネットワーク団体など、さまざまなタイプがある。
●パートナーシップの必要性と現状の課題
・対等・平等な関係、情報の共有と意思決定への参加、公平な役割分担が重要。このほか、行政・企業・市民(組織)が適度な緊張関係を持ちながら協力・連携することが大切であると考えている。
・そのためには、従来の「絶対反対」的スタンスの住民活動から「政策提言」型団体への転換が重要と考えるが、実際にはなかなか難しい。
●パートナーシップの取り組み〜「市川市環境市民会議」の活動
・市川市では、市環境基本計画の策定に先立ち、市民意見を市長に提案するための市民会議を設置することとし、委員を公募した。70名の応募者の中から15名の委員が選出され(議長:高木氏)、平成11年2月から9月まで全体会合、現地検討会、分科会等の活動に携わった。
・地球温暖化防止に関しては、CO2排出削減目標値の設定や、地球温暖化防止マップ市民版の作成、CO2排出削減推進プロジェクト案の作成などを行った。
・「行政が市民に呼びかけ、集まった市民が提案を行い、行政の計画に反映させていく」という意味で、パートナーシップ事例のひとつに位置づけられる。
●地球環境問題の解決に際し、やはり運輸部門とライフスタイルに目が行く
・環境NGO活動が盛んになった背景には地球環境問題への対応に際しての足下からの運動の必要性が挙げられるが、こうした目から見ると、運輸部門からの排出量が増加していることに目が行く。交通渋滞緩和のための道路建設等を行うという施策だけでは不十分であるというのがNGO間の一般的な見解である。家庭部門のCO2排出量もその約4割が自動車(ガソリン)によるものであり、今後は公共交通機関の利用や低公害車の普及、自転車を活かしたまちづくり等が必要になるだろう。
・市川市環境市民会議でも、市民提案として通勤時間帯の一般車両規制や、100円バスの運行等による「自動車利用削減プロジェクト」を提案している。
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●NPOで活動するということ
Q:我が国におけるNPO活動の問題は?
A:日本では、NPO活動だけで生活していくことは難しい。学生や主婦の立場で活動している人もいるが、その他の人は職業生活と両立しながらNPO活動をしている。こうした状況では、専門知識を身につけて政策提案を行うレベルまで達するのはなかなか難しい。日本のNPOがとかく単なる反対運動に陥りがちなのにはこうした背景もある。
Q:組織人としての立場・肩書きとNPOとしての活動の板挟みは?
A:収入のために属する組織の立場とNPO活動とが板挟みになることもあり得る。実際に、自分の会社が行う建設工事に関し自然保護関連団体に呼ばれることもあった。そのような場合、お互いがめざすべき最終目標は同じであることを確認した上で、1つのプロセスとして工事を行うものであることを説明した。
●NPOのイメージと実状、特に米国の活動と比べ
Q:NPOの実態はどうなのか。
A:それぞれ団体の歩んできた歴史的背景が異なるので一概には言えない。団体ごとにカラーは異なる。もっとも、最近では「何が何でも(行政施策に)反対する」というスタンスは効果的でない、ということが理解されてきているように感じる。
●まちづくりの手法としてのNPO参画
Q:行政サイドには、NPOを介して効果的に行政施策を進めたり、NPOを核にして市民意識の変革を図りたいという思惑もあると思うが、この点については。
A:市民に我慢を強いるような行動を求める場合、行政が呼びかけるよりもNPOが間に入った方が、市民がより素直に受け入れやすいという側面は確かにあるだろう。そうした場合、例えば省エネルギー的生活を行えば電気料金の節約につながるというように、我慢した結果がどんなメリットを生むのか、市民の個人レベルに置き換えて説明することが効果的である。
Q:アメリカではNPOの参画が著しいようであるが。
A:日本とアメリカは状況がまったく異なっている。アメリカでは、支援があるという背景もあるが、NPOの政策提案能力も高い。日本では、財団や民間企業として政策を提言する機関はあっても、市民意見をまとめる機関はない。その意味で「市民シンクタンク」のようなものがこれから必要になってくるのではないか。
Q:議会へのロビー活動等については。
A:例えば議員とのパイプを太くする必要性は感じているが、現段階ではまだそこまで到達していない。現在は、市民の取組の経過を議員に説明するなど、ネットワークの構築に努めているところである。
●NPOと交通
Q:行政は道路等交通インフラの充実は温暖化対策として有効という認識を持っているが、新聞によっては、否定的な論陣を張っているなど認識のギャップがある。
A:まず、行政は温暖化対策について情報提供する際に、何が最終目標であるのかを示した上で、そのステップの一つとして交通施設整備を行うのだという説明を行うべきだったのではないだろうか。最終目標と具体的施策のつながりを説明するプロセスが欠けていたことが誤解につながったのではないかと思われる。施設整備の効果を数値などに示してきちんと説明すれば、正しく理解されるはずである。本来、政策立案に当たっては、施策実施の費用対効果等の試算は必ず行っているはずであり、こうした参考情報をうまく伝えるべきである。
Q:環境NPOならぬ交通NPOはあり得るか
A:単に道路を整備して欲しい、あるいは反対するという意味でのNPOはあり得ないが、例えば環境の観点から整備促進、反対というように、ある切り口からのアプローチはあり得るし、今後も積極的に発言していきたい。
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