今回は、5名の委員から基調報告を受け、討議が行われた。
まず、国際日本文化研究センター助教授 落合恵美子委員から「21世紀の日本家族−−近代家族と家のゆくえ−−」について基調報告と質疑が行われた。その概要は次のとおりである。
- 日本の家族は、これまで崩壊の危機にあるといわれて来たが、単に変化しているに過ぎないと考えている。
- 戦後日本の家族体制の特徴は、女性の主婦化(ハウス−ワイファゼーション)が進んだことと1950年代から1970年代にかけての出生率の安定化であるが、これは一時的なものである。
- 家族構成は多様に変化するものであるので,標準家族(夫婦子供2人)を前提とした年金・税制度などの社会制度ではなく、個人単位とする社会制度に変革していくべきである。
次に、西日本旅客鉄道株代表取締役副社長南谷昌二郎委員より「21世紀の関西〜「メガ連環都市圏・関西」〜の構築」について基調報告と質疑が行われた。その概要は次のとおりである。
- 鉄道は、クリーンな大量輸送機関であり、また、集積した都市空間において、効率的な輸送が可能である。近畿の将来整備あたって、この特性を将来整備に活かすべきである。
- 関西は、アジア太平洋と共生する世界都市圏、次世代を拓く産業創造圏、多様で活発な文化交流圏、安心・快適でゆとりあふれる生活圏の4つが重層的に調和された圏域の構築をめざすべきである。
- 海外から関西を訪れる人が少ないことと情報発信力が弱いことが関西の問題点である。
続いて、関西インターメディア株プログラムスタッフの松尾カニタ委員より「グローバル化と新地方の時代における近畿圏の役割…アジアへの情報発信・受信の拠点」について基調報告と質疑が行われた。その概要は次のとおりである。
- 「交流」「共生」そして「創造」の「場」として近畿はアジアの情報発信・受信の拠点をめざすべきである。
- 日本・近畿に特派員をおかないアジアの国々に日本・近畿に関する情報を継続的にそれぞれの母国語で発信すると同時に、それらの国々からも情報を母国語で受信し域外にも提供するといったように、コストやスピードを考慮して近畿から発信する必要のある国・地域をしぼる必要がある。
- 技術経済に関する情報でだけでなく、名刺・肩書を持たない人々の暮らし方・考え方を伝える努力が必要である。
続いて、敦賀セメント株取締役会長三谷政敏委員より「日本海国土軸と福井県の役割」について基調報告と質疑が行われた。その概要は次のとおりである。
- 日本海国土軸の形成は、国土の均衡ある発展、とりわけ太平洋ベルト地帯と日本海沿岸地域の格差是正にあわせ、各地の個性や独自性を発揮した地域の活性化をめざすものである。
- 日本海国土軸形成において福井県は、日本海側のほぼ中央に位置していること、関西・中京の二大都市圏に近いこと、観光資源に恵まれていること等の優位性を持っている。
- 日本海国土軸を北海道から福井までを北軸、福井から西側を西軸とした場合、若狭はその結節点としての役割があるが、現状はその機能が弱い。したがって、インフラ整備について支援の必要がある。
続いて、株バイオマテリアル代表取締役社長安田公昭委員より「新産業立国−ベンチャー企業の立場から−」について基調報告と質疑が行われた。その概要は次のとおりである。
- 今後の社会は知性と教養を基に、他人とは異なる質の高いものを求めていくようになる。これまでは90%で満足していた時代がら95%以上という極端な高品質なものを求める時代へと変わっていく。
- ネットワークを組んだ中において、感性より必要なものを捜し求めるようになり、これに対応して、地域の風土・歴史を生かした地場産業が重要な役割を果たしてくる。
- 現在の日本人は、1日1人あたり10万キロカロリーを消費しており、これは身長50m、体重80tの怪獣に匹敵する。こうした消費生活を継続していくと自然の生態系を崩していくことになる。
- 21世紀の都市は、生態系への影響が少ないコロニーとなることが必要である。