国土審議会中部圏開発整備特別委員会
計画部会(第5回)
議事概要
- 1月28日(火)、午後1時30分より、ホテルキャッスルプラザ4階鳳凰の間(名古屋市中村区名駅4−3−25)において、国土審議会中部圏開発整備特別委員会の第5回計画部会(部会長 加藤 晃 岐阜大学名誉教授)が開催された。
- 今回は、4名の計画部会委員から基調報告を受け、討議が行われた。
- まず、名古屋大学情報文化学部教授 林上委員から「テレコミュニケーションと都市・地域パターンの将来」について基調報告が行われた。その概要は次のとおりである。
- テレコミュニケーションと都市や地域の在り方には、情報技術の飛躍的な発展
によって距離の概念が無意味になり、都市が分散するという見解と都市は既により進んだ情報アクセス条件下にあるため、情報技術の発展に伴いより中心性を強固にするという見解の2つがある。
- 情報技術の発展と都市パターンの将来を検討するためには、異なる情報媒体と歩調を合わせる同調効果、テレコミュニケーションを媒体とする電脳空間でのコミュニケーションが現実空間で行われる直接的な接触に代わり得るか否かという代替効果、信頼性の高いGPSの出現による交通条件の改善や並行した活動を可能とする移動体通信の出現で移動時間・費用の制約の緩和によって生じる活動範囲の広域化という発生効果、テレコミュニケーションネットワークの発展が他の物理的ネットワークの能力・効果・魅力を一層高めるという増強効果の4つの効果を理解する必要がある。
- 将来の都市パターンは、テレコミュニケーションの持つ4つ効果が複雑に絡み合うことから、情報技術の発展とその利用によって、一方では都市の集中化を起こし,他方では都市の分散化を生じ、2つ都市パターンがパッチワークように入り交じった状況を形づくるだろうと考えられる。
- 続いて、三重大学工学部講師 浅野聡委員より「市民参加とまちづくり−三重県伊勢市都市マスタープランづくりにおける市民ワークショップの活動−」について基調報告が行われた。その概要は次のとおりである。
- 都市計画の観点から見てみると、これまではハード中心に進められ、ソフトが
欠如していたが、最近、ソフト的なものが制度化された。
- 現在、三重県伊勢市と関町の都市マスタープランづくりに関わっているが、今後は特にワークショップ方式の住民参加型まちづくりが有用と考えられる。
- ワークショップ方式の住民参加型まちづくりの特徴は、公募を原則とした上で、問題意識の高い人々、そのまちづくりに関わりの深い(影響を受ける)人々の問題意識や質の高い意見を集めることを目的とし、参加の平等性、情報の公開性(検討プロセスの透明性)、多様な意見の確保が可能である。現在、多くの「都市計画」がこの方式によって、都市マスタープラン案を策定している。
- 三大都市圏の中で中部圏は、大規模な社会資本整備を重視した「都市計画」の歴史が長かったためか、首都圏・近畿圏に較べて一般に住民参加型まちづくりが遅れているといわれている。今後は、身近な生活環境整備のことも重視し、コミュニティ計画も含めた「住民参加型のまちづくり」を積極的に意識して計画策定・整備を行うべきである。
- 続いて、名古屋大学大学院工学研究科教授 河上省吾委員より「階層的都市ネットワークと国土計画」について基調報告が行われた。その概要は次のとおりである。
- 道路や鉄道には、交通、空間、土地利用誘導、地域構造誘導などの機能があり、これからの時代に重視すべき機能の一つは道路や鉄道の持つ広域的見地からみた地域構造軸の創造機能である。その合理的な地域構造軸の形成には、その骨格となる交通網計画が重要である。
- ドイツの国土計画は、都市を規模、機能や影響圏により4つに分類し、国民は居住地に関わらず等しい公共サービスの享受が可能となることであり、交通網整備と都市の諸機能の適正な配置を目標としている。日本においても、都市を5つに分類し、どの都市でも同様な水準の生活環境を保証する都市のネットワーク化・諸機能の適正配置を提案する。このネットワーク化に際して、県境地域の人々への公共サービスの確保が重要である。
- 中部圏への都市ネットワーク化の試みに際しては、山地が多いなど地理的条件、人口規模など都市分布に特徴があり、都市分類の基準を東海地方と北陸地方、三重県と愛知県など各地域毎に変えたり、人口以外の都市機能も指標とすべきである。また、隣接都市間の機能分担に際しては、各都市の歴史、自然、地理的な諸条件に留意して決定すべきものと考えている。
- 最後に名古屋大学工学部講師 春田尚徳委員より「人口、都市化、経済発展及び社会変動」について基調報告が行われた。その概要は次のとおりである。
- 国民経済計算によれば、国富に対する土地資産の割合は、バブル期の7割から
現在56%とバブル前に戻った。今後は、土地に依存しない経済を築く必要がある。
- 日米の景気の回復状況を比較すると、ともに割合順調に推移しているが、日本は常用雇用者数が増加しておらず、世界のニーズにマッチした雇用調整がなされていない。一方、アメリカ経済は1980年代から10年かけて雇用の構造調整を完了し、今日の高成長を実現している。この点において、日米の決定的な差異がある。
- ネット・スケープ社社長ジム・クラークによると、企業家で重要なのは、過去を振り捨てること、また自分の得意なことを自覚し、不得意なことは他人に任せることができるかという点である。
- 戦後、一般的に地方の青年は、教育・職業の選択の自由を求め、大都市へ集まった。大部分は大都市に残り一部が故郷へ戻るという構造があった。これらの青年の活力がその時々の産業を担い、日本経済を豊かにしてきた。近年、都市部に集まる若い女性は、そのまま大都市に残ってしまうという特徴がみられる。また、女性の社会進出が高まり、日本経済は最終局面に入ろうとしている段階で、かつての非凡な青年は平凡な中年となっており、再度、自分を変えるために自分に挑戦することが必要である。
- 今後は人材派遣業が成長分野であり、これからの世界のニーズに人々の能力をマッチングさせていくことが必要であり、競争が激しくなる状況では教育が重要であり、高度な教育を受ける程就労に対して有利となる。
- 世界は変化への柔軟性を必要としており、優れた能力を持った人々が生き残っていく。したがって、現在の中年世代は、更に能力を高め、自分を変えていかないと、世界のニーズに乗り遅れることとなる。
問合せ先:国土庁大都市圏整備局 課長:高津、課長補佐:田中
(電話)03-5510-8042 (FAX)03-3501-6534