第4回国土審議会地方産業開発特別委員会小委員会議事録

 

日時:平成12年5月8日(月)14:00〜16:00

場所:中央合同庁舎第5号館 共用第7会議室

 

1.開会

○田巻参事官 ただいまから第4回国土審議会地方開発特別委員会小委員会を開催いたします。

 皆様方におかれましては、連休明け早々にもかかわらずご出席いただきまして、誠にありがとうございます。

 それでは、早速でございますが、この後の議事進行を成田委員長にお願いいたしたいと存じます。よろしくお願いいたします。

 

2.議事

○成田委員長 それでは、本日の議事に入りたいと存じます。

 本日予定しております議題は2つありまして、1つは産業界代表の方からのヒアリングでございます。もう一つは先進県からのヒアリングということでございます。

 去る3月の親委員会の特別委員会の方におきまして、○○委員の方から今後の企業立地の意向を中心として、産業界の方々のお考えを伺ってはどうかというご指摘がありまして、さらに私の方から、地域の産業振興に関して先進的な取組みを行なっている自治体が全国各地あるようでございますけれども、そういう中で指定地域以外の自治体の方からお話を聞いてはどうかということで、事務局の方にお願いしたところでございます。

 今日のヒアリングをいただく方々のご紹介をいただきましてご承諾賜りましたので、この2つを議題にして皆様からお話を承りたいと思っております。

 この2つの議題はいずれも今後の新産・工特制度のあり方を検討する際に、指定された自治体等の声だけではなくて、さまざまな立場の方々からの幅広い観点でいろいろなご意見を伺い、それによって我々の方でもより掘り下げた論議を展開したいという目的で選んだものでございます。

 時間が限られておりますけれども、そういう趣旨でございますので、必ずしも新産・工特制度にとらわれない幅広い観点から忌憚のないご意見をお願いしたいと思っております。

 それでは、産業界代表のヒアリングを開きたいと存じますけれども、本日の産業界代表ヒアリングは、全国の産業界の声を本委員会の議論に反映するために、全国すべての都道府県ごとに組織されております地方別経営者団体と、全国組織を持つ業種別経営者団体から構成されております「日本経営者団体連盟」、いわゆる日経連の方からお話をお伺いしたいと思っております。

 なお、本日、ヒアリングを実施するに当たりましては、この小委員会の委員であります○○委員に大変お世話をいただきましてご尽力いただいたところでございます。この場を借りまして厚く御礼申し上げたいと存じます。

 ヒアリングの進め方としましては、まず初めに20分程度企業の立地動向を中心に日本経営者団体連盟の方からお話をお伺いいたします。その後、約20分程度質疑応答をするという形で進めていきたいと存じます。

  それでは、日経連常務理事の成瀬健生様からお話を伺いたいと存じます。どうぞ、よろしくお願いいたします。

 

(1)産業界代表ヒアリング

○成瀬常務理事 日経連の成瀬でございます。本日は、お招きいただきましてありがとうございます。専門家のいらっしゃるところで恐縮でございますが、日経連の立場から意見を述べさせていただきたいと思います。

 ご承知のように日経連は産業界の人間の問題を中心に扱う組織でございまして、立地というものにつきましては直接タッチするというより間接的なタッチになってしまうわけでございますが、今、ご紹介いただきましたように全国47都道府県にそれぞれ経営者協会が傘下にございます。

 一時はやりました地域活性化特別委員会などという地域活性化問題にも取り組んだ経緯がございますが、今も中小企業と地域の活性化の問題を担当する委員会がありますが、そうした幾つか私どもの経験した中から日経連なりの意見が申し上げることができればと思っております。どうしてもマクロの話が多くなってしまうかなと思いますけれどもよろしくお願いいたしたいと思います。

 レジメを1枚お配りしてございまして、もう一つ資料といたしまして労働問題研究委員会報告というのがございます。これは春の労使交渉を控えて経営者側のポジション・ペーパーとして出すものでございまして、連合の「連合白書」と相対するものでありますが、連合の「連合白書」も最近そうですが、かなり広範な問題を取り上げるようになってきております。

 これの16、17ページにかけまして関連するような問題が書いてありますが、どちらかといいますと、マクロレベルの政治、行政、社会的な高コストの是正をしないと産業立地そのものが日本の国内から海外に出ていくということも含めて指摘してあるところでありまして、必要に応じまして、またこれも引かせていただくかもしれませんが、レジメに沿いまして申し上げてまいりたいと思います。

  1.産業立地の動向の推移でございますが、これはもうご専門の先生方の前で恐縮な話ですが、産業立地の動向の推移ということで、@原材料立地から臨海立地への時代があり、A多極分散化の時代があり、Bそして海外立地と新しい模索への時代、現在ということでしょうか、時代は戦後かなり大きく動いてきたということではないかと思います。

 いままでの基本的な考え方は、新産・工特もそうですが、地方にそれぞれ均質的なといいますか、分散して多極で同じようなものを全国に作るといいますか、同じと言っては恐縮ですが、そういう思想があったように思いますが、どうも少し状況が変わってきたのではないか。本当にそれぞれの地方の特性を活かしたものになるでしょうし、地域格差というものを万遍なくやるということになりますと、日本全体のコストが非常に高くなりまして無理がいくので、やはり地域の特性ということに根ざしますと地域の格差も場合によっては出てくるということにならざるを得ないのかなという基本的な感じがする中で物事を考えさせていただいているわけであります。

 これは、私どもの専門分野になぞらえてみますと、人間の評価についてもいままでは年功制でずっと同じような扱いをしてきたわけですが、それですと全体のコストが高くなってやれないというので、できる人、できない人をしっかり見分けて、それぞれの能力を活用してもらうという形になってきたわけです。

 人間もそうなのと同じように、産業もそうでしょうし、また、地域もそうだろうと思うわけでして、全部一律という考え方は国際情勢の中でだんだんとれなくなってくるのかなと、基本的な考え方を持っている次第です。

 2.進む産業・就業立地の変化ですが、産業構造そのものが軽工業から重厚長大、そしてエレクトロニクス、情報通信。今後、情報通信のインフラからコンテンツという新しい動きがどんどん出てくるるだろうと思いますが、これは技術開発によってどういうふうになっていくのかまだ予測がつかない面であります。

 ただ、産業がそうやって変わっていくのと同時にといいますか、場合によってはそれよりも急速に就業構造が変わっていく傾向があります。今、サービス業のウエイトが増えて製造業がシュリングしていく状況があるわけですが、製造業の方が実はサービス業よりも生産性が上がっているという状況ですから、産業構造の変化よりも就業構造の変化、つまり製造業で人がいらなくなるということの方がより深刻に起こるというケースも見られるわけです。特に重厚長大などがそういう状況になっているわけですが、そした産業構造と当時に就業構造がより急激に変わる、就業の中心がますますサービス中心になっていくという構造変化も産業立地に関係があるのではないか。人材の中央偏在といいますか、地方分散と申しますか、そういう問題も絡んでくるのではないかと思っております。

 もう一つは、先ほどの労問研報告の16・17ページにありますように、日本のビジネスコストを含めた企業立地のためのコストは非常に高くなっております。これは税金、社会保険料等も入れて、地価も含めて、地価は少し下がりましたけれどもまだまだいろいろ問題がありますし、外国企業が日本に立地するということは特別の場合を除いてどちらかというとまだ少ない。欧米主要国に比べますと日本とドイツが対内投資が非常に少ないのですが、日本は特に少ない。そういう状況で日本でビジネスをしにくい環境ができてしまっている。外国の企業がそうであれば日本の企業だって外に行って投資をした方がいいということも出てくるわけでして、この点は大変重要な問題だろうと思います。社会制度の枠組みそのものが規制も含めて高コストを作っているという面があると思います。

  私どもの専門分野で言いますと、一番高いのはやはり人件費だということでして、国民所得の72〜73%が人件費です。生産の3要素のコストを考えれば労働費用が最も高い。それが世界有数のトップクラスの1人当たり為替レートで見た人件費水準ですから非常に高いわけです。それにさらに社会システムそのものが効率的にできていないということが加わりますと、ますます社会全体の生産性が低くなってコストが高くなる。規制緩和をさらにさらに進めなければならないということがあると思いますし、そういう中ではできるだけ得手のところ、得意なところに集中していくという地域の役割分担がますます必要になってくるのではないかと思うのです。

 3 選択と集中の時代:グローバリゼーションの中で

 そうなってまいりますと、選択の集中の時代。何をどう選んで、どこに最もアドバンテージのある能力を注ぎ込むかということになってくるのではないかと思いますし、それも国内だけの視点で考えていると全体的に日本そのものが高コスト構造でたちゆかなくなるということで、グローバリゼーションの中で国際的な、要するに投資をしてペイする立地状況であるかどうか、日本そのものが地球の中の1つのローカリティーとしてペイする場所であるかどうかということが最大の条件になってくるだろう。それをうまく進めるように形にしていかないと日本に来る産業がだんだん減り、日本から出て行く産業が増えるということになるのではないか。

 特に高齢化で人口が将来減少するということも大変恐ろしい時代をもたらす可能性があるわけです。

 最初に@大規模工業立地への需要の減少ということで、今、顕著に起こっているようですが、例えば素材の中核であった鉄鋼、これが1億トンを超えない時代になってしまった。それ以上生産は増えない。生産性を上げるならば雇用人員は減る、設備も効率化のためにできるだけ集約してたくさんの拠点はいらないということで1億トンは十分支えられる。1億トンの需要すらも場合によってはなくなるかもしれないということが言われて久しいわけですが、最近聞きましたのは自動車1,000万台という話です。私は直感的に何か鉄鋼1億トンとよく似ているなという感じがしたわけですが、国内で1,000万台の自動車を作れる時代が今後も続くのだろうか、かなり難しいと思います。

  これは自動車関係のある方の話ですが、アメリカは、今、3億人近い人口になっていて、2億7,000万人を超えておりますでしょうか、将来4億人にするという話があるそうでして、日本は2050年には6,000万人になってしまう。どっちに自動車の工場を作るかと言ったらアメリカに作るでしょう。半分冗談ですが半分真顔でそういうことを言うということもありまして、巨大産業の立地が今後本当にそんなにたくさん必要かということはかなり問題だなと思います。

  この間、別の自動車関係の方にその話をしましたら、「いや、1,000万台と言うけれども国内需要が600万台なので、あとは輸出だから、どうせ消費地で作らなければならないからただでも減るのです。」というお話も伺ったところです。

 ことほどさように、心配の種は尽きないわけで、そこまで厳しく考えなくても当面何とかなるかという気もしないでもないのですが、やはり中長期的に見るとかなり難しいという感じが強くいたします。

 当然の結果としてA一層の海外生産比率の上昇ということだろうと思いまして、先ほど申しましたように、例えば中国と日本の人件費の比率は為替レート換算で50対1ぐらいでしょうか、最近中国はもう少し上がったかどうかわかりませんが、日中囲碁戦とか日中将棋の対決ではありませんが、ソフトウェアなどを考える能力というのはそんなに変わらないだろうと思うので、恐ろしい時代になってきたなという感じがいたします。

 もちろん、1人の頭で考え出せるものは限度があるということもありますので、やはり日本の企業としての組織力のようなものでいかに対抗していけるかということではないかと思うわけです。やはりこのコストの差はいかんともしがたい面であります。よほど生産性が高いないしはよそではできないものを次々生み出していかない限り立地条件は海外の方が有利になるということにならざるを得ないだろうと思うわけです。

 もちろん、現状ですと、アジアが発展いたしますと日本も輸出が増えるわけでして、最近は、アジアが回復して一部の産業ではかなり繁忙状況のようですが、ただ、為替レートが変わったので利が薄いということが言われますが、機械関係の産地などではかなり忙しいところもあるようです。

 そういう意味で、アジアが発展した場合、どういう形で日本がアジアに何を提供し、アジアが何を日本に提供するといいますか、相互関係で相互に発展するようなことがどういうふうに組み合わせればできるのかという問題は常に企業に問われているところでして、現状ではかなり高度な分野の生産までアジアはできるようになりまして、それ以上の試験研究を中心にした付加価値の非常に高いといいますか、本当に難しい部門を日本で担当するという分業を一生懸命模索してやっているところですが、今後の共存の体制は、向こうもますます技術力をつけてまいりますので、時々刻々と変わっていくのではないかと思います。

 そして、おそらく需要が飽和している日本に比べまして、需要がまだまだ増えるといいますか、耐久消費財が3Cから自動車までというわけですが、こういうプロセスを今直接やっているのはアジアでして、消費が増えて経済の拡大は続くだろうと思いますので、どうしても生産は近くでやった方がいい。アメリカもそうですが、そういう状況が出てくるだろうと思うわけで、国内のコストを上げない、国内の社会構造そのものをより効率的なものにしていかないと太刀打ちできなくなるということがあるのではないかと思います。

 B人口減少と高齢化の影響 人口減少は先ほど少し触れたところですが、自動車をアメリカ、日本どちらで作るかということ、今、小渕総理の下で少子化対策の委員会ができておりますが、実効が上がるかどうか大変疑問視されております、大変難しい問題ですが、人口問題は産業には非常に大きな影響があると考えておりまして、人口が減る中で経済成長していくということが本当にできるのかどうかという意見まであるぐらいですので、これは当然、国内の産業立地という問題にもマクロの点で大きく影響が出てくるのではないかと思います。

 Bの2つ目の「・」ですが、豊かさと高齢化で環境重視進むということですが、豊かさはかなりいろいろなものをもたらしましたが、必ずしもいいことばかりもたらしませんで、最近の社会がかなり劣化してきたというのも「豊かさ」のせいだというご指摘もあるわけでして、「豊かさの中で、豊かだけれども一生懸命やる」というのはかなり難しいことなのかなという感じもするわけです。当然のことながら、そうした中では環境重視が進んでくるわけで、環境重視が進んできますと大規模な産業立地などというものは非常に不利になってくるという面があります。ゼロエミッションその他企業は一生懸命努力しておりますが、限度があるという意見もないわけではありません。

 B3つ目の「・」ですが、そういう中で地域はどういうことを考えているか。時々本音のことをチラッチラッとお伺いするわけですが、たてまえからすればやはり公共事業に来てほしいわけでして、組織として、その地域の自治体の役割としてということになると「是非、来てくれ」ということになりますが、個人の意見を聞くと「やはり、この自然は残してほしい」とか、「ここに産業立地をするよりも、観光を目玉にした方が我が県にとっては有利だ」とかいういろいろな本音が出てきたりするわけでして、この辺が、公共投資は直接金が落ちるものですからどうしても地域の意見が歪むということがあるのかな。これをどう判断するのかという点は大変難しいのではないかと考えております。

 CIT革命、バイオ革命をどう読むか 今後より付加価値の高い高度なものがどんどん重要になってくるということで申しますと、IT関係とバイオが2つの柱かなという感じがしないではありません。この辺も私ども必ずしも専門でないもので、世の中で言われているような解釈をしているわけですが、当然、研究開発が中心になってまいります。そして、製造設備ももちろん必要でしょうが、特にIT革命などの場合はインフラ設備が中心になるだろう。無線にするか有線にするかということは別にして、その設備のためにはやはり点と線でもある程度の面積が必要だろう、全国にそれだけの立地をすることが必要だろうと思いますが、その立地の土地代が日本の場合、公共事業等でやりますと補償費その他が非常に高い。今、電力の自由化で一部コストの問題があらわになってきている面がありますが、立地コストが大変高いという面があります。これを一体どうするかという問題があるのではないかと思います。まだ地価を引下げることができるのか、信用機構にダメージを与えずにできるのかどうかという問題がありますし、私権の制限というようなことがどこまで世論の中で通るかということもあると思います。

 Dエネルギー政策の方向は:分散か、集中か(原子力をどうする) もう一つ、私ども、立地の中で心配しているといいますか難しいなと思っておりますのは、エネルギー政策の問題です。エネルギーの自由化が進んでまいります。外国のエネルギー供給者も日本に来るという話もないわけではありませんが、いままで地域経済を電力というエネルギーが支えていたという面が多分にあるわけですが、こういうものがどうなっていくのか。本当に実力で勝負ということになったときに、いままでの立地コストの高さを全部借入金で賄って、有利子負債コストが非常に高い日本の電力会社が一体どういうふうに太刀打ちできるのかという問題も含めてかなり問題が大きいのではないかという感じがいたします。電力がいままで日本経済の全体のバランスの取れた成長を支えてきたという面も考えますと、今後は私ども予測がつきかねる面がありますが、国土の設計にも大きな影響が出てくるような面が出てくる。

 さらに、エネルギー源の問題では原子力をどうするか。「もんじゅ」の問題等いろいろ問題がありましてなかなか難しいわけですが、本当に多様な発電がどこまで可能で、最後に原子力にいくのかどうか。原子力は立地の問題が非常に重要ですので、これをどう考えるかが先行きはっきりしていない中でありますが、この辺はやはり国土の設計には大変大きな影響があるところではないかと考えるところです。

 E観光も巨大産業になる 私ども地域にまいりましてお話を聞きますのは、今後、観光産業がかなり大きな産業になる可能性がある。「日本のハワイを目指す」といったような言葉もあったりするわけですが、観光資源のあるところがいかに観光を産業化するかということは大変重要な問題ではないかと思います。東南アジアが元気になってまいりますと、東南アジアからかなり日本に観光客が来るという面もあります。東南アジアはヨーロッパよりも人口規模がずいぶん大きいわけでして、ヨーロッパは1,000万人単位の人口ですが、アジアは1億人単位の人口ですので、観光客も近場でということになりますと、豊かになれば観光資源さえあればという面もあるわけでして、そうしたものを考えますと、そうしたものも産業として大変大きな意味を持つ。そうしますと産業立地といってもまさに観光資源の産業立地ですので、いかに自然を残すか、いかに文化遺産を残すかというようなことが産業開発になってくるという面もあるのではないかと思うわけです。

 最後に4.国、地方自治体に望むことということで、@産業立地の意識転換を:国家基本目標の明確化の中で地域の独自性 やはり産業立地の意識転換をしなければならないのではないか。どういう国家を造っていくか。かつてはそれがありましてそのとおりやってきたのですが、その目標が多分大きく変わってしまったのではないか。改めて新しい目標を作り直さなければならないのではないか。それは日本全国必ずしも均質ではなくて、日本全国がそれぞれの独自性を出す、場合によってはある程度格差がついてもいたし方ない、その格差をどうするかということは別の政策手段があるかと思うわけです。そうした意味で格差も生じるけれども独自性を重視する。こういう何か目標が策定される必要があるのではないかという強い感じを最近持っているところです。

 A地価の高さと収用の難しさがインフラ整備の障害になっているが 立地ということはどうしても地価の高さと収用の難しさの問題がついてまわります。これがいままでの日本の戦後の土地問題を中心にした中では大変大きな課題になっている。土地バブルの処分がまだつかないような、解決できない問題が残っておりますし、また、土地収用法がほとんど使えないために、使えないというか使わないために成田国際空港のような大変コストの高い設備、一番コストが高いのが時間でして、そういうものができてしまうというようなこと。しかし、これができるのかできないのかということは本当に政府の意思決定次第という面もあるかと思います。

 B地方分権には自治体の規模拡大を早期に積極的に 実は私ども多少関係しております介護保険で、今、あまり小さな市町村では保険者になってもやれないので地域が連合してという動きが少しずつ出てきております。責任を持たされてやむにやまれず「やれ」と言われますと、「じゃあ、幾つかの市町村が一緒になってやろうか」という動きが出てきて大変けっこうなことだと思っておりますが、3,200数十では、とても小さすぎてだめだということがあるかと思います。これは自治体そのものがその気にならないとだめなのですが、政策でそういうことを促す、そういうことをせざるを得ないような、場合によれば厳しい状況を作ってでもさせるという程度の規模拡大の早期の実現、こんな政策も必要ではないかと考えるところです。

 C地域への人材の分散、地域での人材育成を もう一つは、最近、大企業が人を採らなくなりまして、就職問題では日経連はいつも槍玉に挙げられるのです。大学の方から「採ってくれ、採ってくれ」と言われますが、ある意味では大企業が人を採らなくなって中小企業に分散する、東京一極集中でなくて地方に人材が分散する、これは大変いいことだなと。20年、30年のスパンでみればこれはすばらしいことかもしれない。人材そのものが拡散する。今から人材が産業資源として一番重要になってくるような感じがするわけで、そういう意味では逆に地方分散を促進するようなシステムであった方がよろしいのかなと。東京一極集中は人材の面でも決してよろしくないと考えるわけでして、こんな点を政策の中に何らかの形で組み入れていただくことができればと思っている次第です。どうもありがとうございました。

○成田委員長 貴重なお話をありがとうございました。

 それでは、ただいまの成瀬常務理事のお話に対しまして、皆様方からご自由にご質問をお願いしたいと存じます。

○  委員 最初に高コスト構造のお話をされて、日本の場合人件費が高いということをお話しされたのですが、例えば、日経連としては、地域の産業を支えるということも含めて外国人労働力を入れるべきだというようなことを政策として提言されているのかどうか、私、ちょっとつまびらかでないのですが、そのことについて教えていただきたい。

 その場合には、結局、高コスト対策として外国人労働者を入れるということになると、要するに安い労働力として入れるということにならないと、日本人と同じレベルではいけないでしょうから、今の日本政府の政策はかなり高級な労働力ならば入れてもいいけれども、低い賃金の労働力は入れないということですから、政策を大きく変えるということになると思うのですが、そのあたりについてはどのようにお考えですか。

○成瀬常務理事 外国人労働力については、最近、日経連はちょっと意見が変わってきておりまして、従来は基本的に日本がとっている政策、つまり、技術技能のあるものは自由においでください、単純労働力は原則としてだめだ、ただ、認められるのは技能実習制度で実習と実際の仕事とを組み合わせて2年ないし3年間、こういうものはノウハウ、技術のトランスファーにもなりますので制度の枠組みの中で大いにやろうということだったわけですが、最近、移民労働力も含めて外国人のことを考えている。必ずしも労働力と言っておりませんで、放っておくと人口が減ってしまうだろう。減る中で経済成長をするというのは至難の技なので、ある程度人口を、移民、養子、いろいろ多様なものを含めて今から検討しておかないと間に合わなくなるということを言っているわけです。

 もちろん、外国人労働力を入れた場合に基本的には内国民待遇ですから差別することはできませんし、3K労働を日本人がやらなくなったからということで入れるというのはちょっと問題だという意見が基本的です。これはヨーロッパの失敗に学んだところですので、その辺は明確にしておかなければと思っております。

○  委員 2点教えていただきたいのです。大体のところは私も同じなのですが、2つほど違う点がありまして、1つは労働コストが製造業に占める比率が、鉄鋼などを見ても実質はほとんど労働コストはものすごく低くなっていて、日本の今生きている産業における労働コストは、実は製造業の比較コストをやったときに、労働によるコスト差というのがあまり出てこないのではないか。つまり、例えば素材産業であれば圧倒的に人件費のウエイトが低くなっているとか、むしろ人件費が高いものは出て行ってしまっている。そうすると、日本の今後の産業を考えるときに人件費が本当に問題なのか。

 2点目は、土地の高さと言いますが、これからのインフラ、これからの産業が本当に土地を求めているのか。書かれているようなIT革命のようなインフラと土地との連携が本当にあるのかどうか、その2点です。

○成瀬常務理事 最初の人件費の問題ですが、確かに製造業で法人企業統計を見ますと人件費は大体売上げの10%から高くても15%ぐらいで、知れているわけですが、例えば、先ほど申し上げましたように対事業所サービスなんていうのはほとんど人件費なのですが、これは実は全部コストの中に入っているわけです。それを付加価値ベースで累積してまいりますと、付加価値に対する人件費の比率が7割を超えてしまうということですから、あとは全部中間投入を要素費用に分解していく過程でそうなってしまうので、やはり人件費は高い。これは私ども本当に苦い経験といいますか、春闘そのものがそうでして、一番生産性の高いところで賃金が決まります。大体それに準拠して他の組合も決まっていくわけです。最後には生産者米価が決まって日本中が全部高くなっているということで、生産性に関係なく一番高いところの生産性に合わせて賃金が毎年上がるということで、これを10年、20年くり返してきたわけですから高くなってしまうのはある意味では当たり前です。

  アメリカのように高いところは高いけれども低いところは本当に生産性に準じて低いということが日本ではないのです。

○  委員 マクロで見たときに、確かに物流とかいろいろなことを考えるとそうなるのですが、例えば製造業単体のコスト比較をするとか、つまり海外に行って生産して持って来ても、日本で物流に関してはそれだけの費用がかかるわけです。そうすると、それによって製造業のコストにおける労働の問題というのはちょっと違うのではないか。つまり、トータルの総付加価値をどう分解するかということにおいては正しいのですが、個別の企業の競争力論からいくと、そこは今おっしゃったようなことが言えるのかどうか。

○成瀬常務理事 個別の企業という意味では確かにおっしゃるとおりだと思います。製造業というのは原材料費が50%ですから、原材料を国内で調達するのと海外で調達するのとどちらが高いかという問題になるわけで、原材料の中も重層的に人件費が全部入っているわけで、もともとは輸入コストだけですから、あとは全部人件費の積み上げですから、やはり日本の国内で部品を買うと高い。ただ日本国内でしかできないものがありますから、それは日本で買うということで、春闘で賃金が上がることは例えば新日鉄だけが上がるのではなくて、新日鉄の出入り業者も全部同じように上がるわけですので、コストが全部同じ率で上がりますので、やはり新日鉄の人件費コストだけではないということになってくるのです。

  私どもも、これは労使でずいぶん論争しまして、結局、日本経済のコストの7割は人件費だから、あとのコストは金利は知れてますし、原材料費は輸入コストですから、オイルショックみたいなことがないとあまり上がらないので、上がるのは人件費だけ。それが積み重なっていろいろな形になって原材料費、サービス料金になって企業が高いコストを払っているということではないかと思っているわけですが、ご納得……、この辺、また後ほど議論させていただければと思います。

 それから、土地の問題ですが、今後の技術開発の中で無線にすれば土地はいらなくなってアンテナだけ立てればいいのかもしれませんが、今、いろいろなことを考えている中で電線を地中化するとか何かやろうとしますと少なくとも全部土地が絡んできます。そうすると非常にうまくいかなくなってしまう。鉄道網も高速道路もそうなのですが、こういうものをもう少しきちんとやろうとすると、本来インフラとしての土地がいるのではないか。工場立地そのものはもう余ってきておりますが、そういう面ではなくて特にインフラなどに土地が必要になる。これは大体公共投資関係になりますし、土地収用ということで国ないしは地方自治体が収用するということになりますと、従来非常にコストが高い。そんなことがあるのでちょっとここに書かせていただいたということです。

○成田委員長 私の方からちょっとご質問したいのですが、今、マクロ的な話を伺ったのですが、地域の方では新規のベンチャービジネスみたいなものが非常に盛んなわけです。実態は私たちもあまりあれなのですが、ベンチャービジネスのようなものの将来性というのはいかがですか。

○成瀬常務理事 私はかなり高いのではないかと思いたいと思っているところでして、私もいろいろなところで関連したお話を申し上げるときに、日本はエレクトロニクスと自動車は世界を制覇しているけれども、その他にアニメとゲームソフトが世界を制覇しているではないか。あれは規制が何もなくて勝手にやっていたらそうなっちゃったというので、実は噂によりますと東京都西部、多摩地区、所沢、世田谷の方、ないしは神奈川県の一部、あの辺にシリコンバレーが分布しているというのです。確かめようと思ったのですが、通商産業省に聞いても労働省に聞いても全然わからない、誰も把握していないのです。何か最近、郵政省がその関係の研究会を持ったという話もちょっと聞きましたが、最近、ビットバレーといって渋谷がどうのこうのと言われていますが、立地すらもまだはっきりしていないと思います。その把握からまず始めて、なぜその地域が日本のシリコンバレーになり得るのか、なり得ないのか、そんなことも研究しなければならないなと思っております。

 各地域にまいりますと、北海道は今本当に大変なのですが、シアトルに行きますと北海道が一番近いのです。そういう地域の特性をうまく利用したことを考えなければいけないという意見もお伺いするわけですけれども、そんなことの中で何かヒントになるようなものが見つかればということを地域の皆さんは考えておられるようです。私もそこまで知恵がないものですから……。

○成田委員長 それでは、大体予定の時間がまいりましたので、日本経営者団体連盟による産業代表からのヒアリングをこれで終了したいと思います。

 本日は、成瀬常務理事におかれましては、大変お忙しいところをご出席賜りまして、本当に貴重なお話をありがとうございました。

 それでは、引き続きまして先進県ヒアリングに移りたいと思います。

 

(2)先進県代表ヒアリング

 それでは、地域産業に関する先進県ヒアリングを始めたいと存じます。

 本日の先進県ヒアリングは、ソフトピアジャパンをはじめとする独自の取組みを自主的に着実に展開されております岐阜県のお話を伺いたいと思います。

 岐阜県はご承知のように新産・工特いずれにも指定されていないところでございます。 ヒアリングの進め方といたしましては、先ほどのヒアリングと同様に、まずはじめに約20分程度、若干の延びはかまいませんが、大体その程度で岐阜県の先進的、自主的な産業振興に関する取組みについてお話を承りたいと存じます。その後、約20分程度、皆様からの質疑応答をお願いしたい、こういう形で進めてまいりたいと存じます。

  それでは、早速ですが、岐阜県の農林商工部新産業労働局長の高田充人様からお話を承りたいと思います。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

○高田労働局長  岐阜県農林商工部新産業労働局長の高田と申します。本日は大変貴重なお時間をいただきまして、先進的という、非常に面映ゆい思いがいたしますが、地方で地域産業育成のために頑張っていることをPRさせていただくチャンスをいただいたと考えてこちらにまいりました。むしろ、この機会に、地方で頑張っている岐阜県に目を向けていただき、今後、アドバイスなどをいただくチャンスにしていきたいと考えております。よろしくお願いいたします。

 ごくごく簡単な1枚紙、資料2ということで本日お話をする上でのレジメになるような紙と、参考資料を何種類か用意させていただきました。

 資料の確認をさせていただきたいと思います。岐阜県がどういうところかというのを示した資料が岐阜県県政要覧2000という紙です。

 先ほど、成田委員長からご紹介のありましたソフトピアのプロジェクトをまとめたものがソフトピアジャパンの資料です。

 同じソフトピアのプロジェクトを大垣市でやっておりますが、同じ大垣市で特にIT分野の教育の中核として、来年から専修学校から大学院大学に昇格いたしますIAMAS(イアマス)国際情報科学芸術アカデミーという学校を技研が持っております。その資料です。

 IT関係で、もう一つ岐阜の東の方になりますが各務原市、こちらの方ではバーチャルリアリティーを通じて圏内の製造業との関係を考えているプロジェクトがあります。その資料です。

 最後に、将来への展開ということで、現在、県庁内で議論しておりますスイートバレー(SWEET VALLEY)という考え方に関する資料。

 以上の5種類の資料をお配りさせていただいております。

 先ほど、委員長もおっしゃっておられたとおり、岐阜の場合新産・工特両制度とも関係がありませんので、ちょっと入り口の話になりますが、岐阜県がどういうところかということをお話しさせていただきたいと思います。

 岐阜県の場合は、地理的にも人口重心といった考え方をとった場合でも、まさに日本の真ん真ん中にある海もない内陸県で、ほぼ日本の中央にあるけれども海がない場所になっている。昔から東西交流の接点になってきているということで、古くは壬申の乱が岐阜周辺であったり、つい最近で言うとNHKの大河ドラマで葵三代をやっておりますが、関が原の合戦も岐阜であった。いわゆる岐阜を制するものが日本全体を制するという地理的な位置にあったと自負しているわけですが、実際には、そういう地理的条件のわりには現状においてはやや地味な感じになっているのも自覚しているところであります。

 経済的にみましても全国で概ね真ん中あたりにいるのが現状でありまして、幾つか数字でみますと県内の総生産が全国21位、全国の1.4%ぐらいで上から数えて21番目。製造品の出荷額は全国の1.7%を占めておりますが、これまた全国21番目。年間の商品販売額も全国の21番目ということで、平均値であるが故にやや地味な県かもしれないという感じがするわけです。

 ただ、産業構造という目で見ますと比較的製造業に特化している土地柄です。第1次、第2次、第3次産業分野ごとの従業者数でいいますと、第2次産業の従事者が全体の41%を占めております。これは全国平均よりも10%も製造業に係わっておられる従業者のウエイトが多いということです。県内総生産のウエイトで見ても全国で第2次産業は34%ぐらいであるのに対して、岐阜県の場合は大体40%ぐらいになっているということで製造業に非常に特化している。

  しかも、この製造業は非常に小規模だという特徴があります。事業所数は多いけれども個々の事業所ごとの従業者数は非常に少ない。従業者1人当たりの出荷額なども非常に低くなってきているということで典型的な下請型の産業構造であるということが言えると思います。

 地場の産業としては美濃の和紙、関の刃物、岐阜、大垣一体の繊維産業ということで、典型的な日本の中小企業産業集積がほぼフルセットでそろっている形態ではありますが、一つ一つの事業所はそういうことで非常に弱小であるということが言えると思います。実際に80年代から90年代にかけて産業構造が大きく変わってくる中で、こうした下請企業が産業構造の中で非常に苦労してこられたという現実があるわけです。

  こうした中で、岐阜の将来の産業の姿を、現状のままでいてはいけない、新しい産業を岐阜の中で興していかないと若者が岐阜で働ける場所がなくなってしまうのではないかという強い問題意識が出発点となって、これからご説明申し上げますソフトピアのプロジェクトであり、VRのプロジェクトが大体10年ぐらい前から着手されてきたということが言えるかと思います。

 ちょっとご参考までですが、真ん真ん中ということではありますが、岐阜の場合はどうしても通過点という感じが強く、かつ特に飛騨の方、県の北部の非常に山がちで交通が不便であるということで、交通インフラの充実には一生懸命努めてきた。現在、東海北陸道、南北に縦貫する高速道路の建設を急いでおりますし、名古屋を迂回して回っていく東海環状道の整備も行なっておりまして、交通インフラの整備を一生懸命やっているところです。こういう中で、国土庁には国会等の移転の活動などでは大変お世話になっているところで、我が県といたしましては首都機能を移転するに足る基本的な骨格はいただいていると他方でそういう自負は持っているわけです。

 少し回り道をしましたが、今、申し上げましたように岐阜の産業が非常に脆弱である、このままでは若い者が働けなくなる、それに対してどういう活動をしてきたかということで、早速、ソフトピアのプロジェクトのお話をしたいと思います。

 ソフトピアプロジェクト構想は1987年、もう10年以上前の話になりますが、その頃から基本構想の検討は着手されておりました。実は、現在のプロジェクトは、私どもの知事の梶原 拓の非常に強いイニシアチブがありまして、副知事、あるいは企画部長としても岐阜に在勤したことがありますが、その頃から若い者の働く場を作らなければならない、それは高度情報化に対応できる新しい産業でなければならないという問題意識から、情報産業の集積場所を政策的に確立していくことが是非とも必要である。その拠点として大垣の地にソフトピアプロジェクトを展開しようということで、構想自体は1987年に出発しております。その後、マスタープランを1990年に策定しまして、着工が1993年。それから、このプロジェクトの受け皿となります財団法人ソフトピアを設立いたしましたのが1994年ということで、実際に立ち上がったのが1994年からと考えていただければと思います。

  ソフトピアで具体的に情報産業をどうやって育成していこうかということでポイントとなります考え方が4つのコア機能というものです。1つは研究開発を行なうこと。2点目が人材の育成を行なうこと。3点目はニュービジネスの創出を行なうこと。4点目は情報発信をすること。この4つの機能を担う乗物としてソフトピアのプロジェクトを進めていく。この考え方は、1つは新しい産業を興すといいましても、岐阜は申し上げましたように非常に下請型の産業形態が多いので、自立的に活動していける産業を興していくためにはやはり研究開発型の企業にしていかなければいけないという意味で、出発点はやはり研究開発であろう、これが第1の研究開発の機能ということであります。

 第2点は、それを担える人材がいないと、いくら研究開発といっても外部からの人がたまさか岐阜で活動しているだけということで岐阜に根づいた活動にならない。やはり人材をしっかり育成するとこが大事だということで、2点目が人材の育成ということです。

 研究開発、それを支える人の2つをもって実際にビジネスとして活動してもらわなければいけない。そのニュービジネス化を、新事業の創出を支援するということに、インキュベートルームなどを設けたニュービジネスの創出活動をやっている。

 それから、そういう活動を一生懸命、単に岐阜の中で閉じた世界で行なうのではなく、いろいろな活動を通して海外も含めた外部に対して情報発信をする。それによって返ってくる情報というフィードバックも作り出していくであろう。情報発信をすることが全体の流れをさらに活性化させるということで情報発信も欠くべからざる機能と考えているわけです。

 具体的に研究開発でどういう活動をやっているか。例えば研究開発事業ですと資料の5ページから9ページまで。人材の育成については、端的に言って研修事業ということになりますが10ページに書かれております。新産業の育成ということでインキュベートルーム、これは原則3年間賃料無料という条件で、審査会を通ったものと認められた企業に対して3年間無料で場所を貸す。そこをご卒業いただいた後は、比較的安価な費用で引き続き技術開発室という部屋貸し業も行なっております。

 情報の発信ということでは、13ページ以降ですが、海外との直結戦略ということで、あるいは県内、全国の地域情報化懇談会ということで、いろいろなイべンド活動もやっております。

  出発点はそうしたことでソフトピアジャパン、岐阜市の西の方にあります大垣市を拠点として、点の整備ですがソフトピアプロジェクトということで事業を展開してきた。これが1つ目の事業の柱になるわけです。

 人材の育成に関しましてはソフトピアでやっております研修事業というのは率直に言って情報リテラシーの向上とか、実は出発点においてはベイシックなものが中心でした。ところが、ニュービジネスとして成り立っていくだけの高い技術水準を獲得する、そういう人材を育成していくという観点ではやや物足りない感がする。ここを補っていく活動がIAMAS(国際情報科学芸術アカデミー)という県立学校です。これはもともと県立の商業高校の、まさに繊維産業などが衰退する中で廃校になる校舎を活用しまして設置した、出発点においては専修学校としてスタートいたしました。坂根先生を学長として、非常にアートの領域に近い方、それからIT技術とか技術領域に強い方の2つの方向性を持って先生方に集まっていただきまして、総勢1学年でラボ科とスタジオ科それぞれ合計50名で、2学年200人という非常に小規模な学校です。

 ただし、専修学校ではありますが非常に高いものを狙っておりまして、実際に入学生の方には芸大の卒業生、大学院の卒業生に集まっていただき、高度なものをやる。IAMASの卒業生が先ほど申し上げましたソフトピアのインキュベートルームに入居いただいたりするような流れが出てきております。このIAMASの開校は1996年です。

  せっかくそういういいものを持っているということもありまして、このうちのラボ科の方を大学院大学化するということで文部省と話を進めさせていただきまして、来年度から認可が下りる、大学院大学として開校できることが本決まりになっております。人材の育成の部分で特に高いものを補強するのが、活動としてIAMASという活動を進めてきたということです。

 そういう意味で、出発点はソフトピアでIT産業を育成するのだということでやってきたわけですが、もうお気づきかと思いますが、岐阜にもともと情報産業の拠点があったわけではなくて、まさにゼロから出発した活動ということでやってきたわけですが、他方で岐阜に多数ある中小企業、製造業、こうした関係をやはり意識していかなければいけない。地元の製造業にどうやってIT技術のメリットをフィードバックさせていけるかという問題意識で立ち上げたのがVRのプロジェクトです。

 VRテクノジャパンのプロジェクトにおいては、特にIT技術をバーチャルリアリティー技術やCADキャムといった技術を通して県内製造産業とのリンクをどうやってとっていくかと、特にその点に重点を置いて進めている事業です。

 こちらの方でも、ソフトピアの立ち上げ後、出発点になりましたのは1992年です。頭脳立地法の集積促進地域に指定していただいたところが出発点になっておりまして、1995年に事業を着工いたしまして、分譲開始が1997年で、中核となるテクノプラザというビルが竣工したのが1998年で、ここでやっておりますのも事業用地の造成、インキュベートルームの準備、技術開発室への入居促進ということでやっております。併せてCADキャム研修ということで製造業者がITをどうやって使っていけるかというところに重点を置いた研修活動をやっているということで進めてきております。

 VRの方の機能に関しましても、基本的には先ほど申し上げました4つの機能、研究開発、人材の育成、ベンチャーの支援、情報発信は同じ考え方でやっております。ただし、対象がIT産業そのものということよりも、地元の産業へのフィードバックを強く意識しているという違いがあるわけです。現状においてはこうした3つのプロジェクトが中心になって、岐阜の新産業育成活動を一生懸命進めてきているわけです。

 その評価ですが、ソフトピアの方では、これまでに77社に進出していただきました。NEC、NTT、富士通、日立、最近ではNTTドコモ、こうした会社のソフトウェア部隊であったり、あるいは研究開発グループが、規模の差はありますがソフトピアプロジェクトに進出していただいているということです。

 VRの方は、まだ建設途上の企業も多いですが、現在までに27社の進出が決まっておりまして、こちらの方はコンタクトレンズで有名なメニコンとか、天野製薬というような、新しい企業にも出ていただいております。

 雇用の効果と言う目で見ますと、ソフトピアエリアで現在までに1,200〜1,300人程度の従業者の集積ができてきている。VRの方では企業が創業を開始するのが大体平成15年ぐらいまでになりますので、その時点で800人ぐらいの新たな雇用の集積ができるのではないかと考えております。

 ベンチャーの育成ですが、インキュべートルームに入居企業のアンケート調査の結果では、従業員数で40%増やすことができたとか、あるいは売上げか140%ぐらいに増えているというお話もいただけるようになってきています。実際に、ディジタル・ウィザーという会社ですが、東宝の「学校の怪談」とか「モスラ」といった映画のコンピュータ・グラフィックスを岐阜で作成しているという会社もでできているということで、もちろん、そのすべてがすべてうまくいっているわけではありませんが、幾つかそういう成功例も出てくるような状況が出てきている。この流れを是非加速させていきたいというのが現在の願いです。

 海外のネットワークに関しても、いろいろな国際会議の誘致、あるいは自ら開催することも含めて努力しております。例えば、この7月には「世界ソフトウェア・アンド・テクノロジー会議」という国際会議を開きます。これに併せてIT関連の見本市となります「マルチメディア・VR・メッセ・岐阜」というのも開催いたします。今年の10月には欧州委員会、「ヨーロピアン・コミッティー」と共催で「ユーロ・岐阜」というビジネスマッチングのためのコンベンションを開催いたします。その他にもVSMM(バーチャル・システム・アンド・マルチメディア)国際学会を隔年で岐阜で開催しておりまして、だいぶ岐阜発の情報発信、IT分野での情報発信が行えるようになってきているのではないかと自負しているわけです。

 海外のネットワークに関しましてこの他直接にソフトピア、VRを中心に海外との大学の連携に努めておりまして、ブタペスト工科大学、オスロ・リサーチパーク、南カリフォルニア大学、ユタ大学、イタリアのトスカーナ州、インド、アメリカのウェストバージニア州の技術事務所がVRの方に設置されたり、韓国は現在ソフトウェア産業を一生懸命やっている中で、韓国のゲーム支援センターという財団法人が政府ベースでありますが、こちらの事務所を同じく各務原のテクノジャパン内に日本事務所として入居していただいているというような活動もやっております。

 やや率直に言って、ハードを整備する部分、イベントをやって情報発信をやっていくソフトウェアの部分と両建てで一生懸命やっていることによって、それなりに集積の拠点としてはできてきたのではないかと自負しているところです。

 ただ、それでは、それで満足できるものかという今後の話になりますと、やや謙虚に考えていかなければいけないと思う部分が多々あるわけでして、例えばVRのウェルテクノジャパンに関しましては、先ほど申し上げたように地元の製造業とITをどうやって連携していくかという観点で進めていたのですが、この辺はまだまだ十分でないというのが正直なところです。例えば建設業の分野で、建設省でも2007年に向けて建設キャルスを一般化していく。ITが使えないと建設業で入札もできなくなってくるという時代が、まさに具体的にタイムテーブルに乗ってくる中にあって、地元産業へのインパクトというのは引き続きさらに強めていかないと、せっかくやったプロジェクトもしょせん大垣、各務原だけの閉じた世界になってしまう。地元産業への目をもっと強くもっていきたいというのが1つのポイントです。

 もう一つは、ソフトピア、VRともいずれも拠点事業としてやってきているわけですが、これもだんだん成長してくるに伴いまして、むしろまちづくり、新しい地域を作っていくのだという面的広がりももっと持たせていかなければいけないのではないかという問題意識も2つ目の課題としてあるわけです。

 そうした将来の展開をしていく考え方として、最後の資料ですが「スイートバレー」というカラーコピーをご覧いただきたいと思います。

 1枚目は、冒頭ご説明した日本の真ん真ん中に岐阜はいる。その真ん真ん中から海外との連携

をやっているというのをPRしようというものです。

 その岐阜県が既にもっているポテンシャルにはどんなものがあるかということで、立地していただいている主要な企業、大学、どういう方に出ていただいているか、どういう方が活動しているのかというのを示しているのが2枚目です。

 こうした既存の産業界、立地企業も含めてまさにITがネットワーク技術として展開していくわけですが、こうした横の連携をつけつつさらにこうした既存の立地企業に連なってくる下請企業などにも波及効果をもたせていきたい。そうすることによって、特に濃尾平野が中心になろうかと思いますが、岐阜、美濃のエリアを「スイートバレー」というキャッチフレーズで育てていきたい。「スイート」という意味はいろいろな思いがありまして、美しい自然を持っている(スイートグリーン)、あるいはきれいな空気(スイートエア)、水については長良川、揖斐川、木曽川という清流があります(スイートウォーター)、鮎は英語で「スイートフィッシュ」というので、等々いろいろな思いを込めて岐阜美濃のエリアを「スイートバレー」ということで、ITを軸に全体として育てていく次の段階に進めていこうというのが私どもが今思っている考え方になるわけです。

そういうことで、全国レベルで見ますとまだまだ小さな試みかもしれませんが、地方でもそれなりに工夫して一生懸命やっているということをご理解いただきまして、とりあえず私の方からのご説明は終わらせていただきたいと思います。

 大変はしょりまして舌足らずで恐縮でございますが、ご清聴を感謝いたします。

○成田委員長 貴重なお話をありがとうございました。

 それでは、ただいまの岐阜県からのご説明に対しまして、皆様からのご質問等ございましたら、どなたからでも結構でございますから、ご発言をお願いいたします。

○  委員 1つ目は、こういったいろいろな施策を展開してきたわけですが、国の制度の活用ということについて、振り返ってどのようにお考えになっておられるのか。

 2つ目は、ちょっと変な質問ですが、岐阜県県政要覧を拝見すると、いろいろな指標が並んでいて、例えば100の指標というので岐阜県の全国における位置を示されているのですが、今、ご説明いただいたIT産業の育成とか、一連の施策が必ずしもこういうところに的確な指標で評価されているという感じもしないのです。月並みな指標が並んでいるという感じで、政策目標としてこういった一連のIT施策を評価するというのは難しいということなのか。本当に難しいとすると何を目標にやっているのかわからないということになると思うので、そのあたりをマクロ的にみたときにどういう目標を考えておられるのか。

○高田労働局長  第1点の国の制度の活用のお話ですが、特にソフトピアのプロジェクト自体は申し上げましたように現在の知事の梶原 拓のイニシアチブが強いのですが、梶原 拓自身はもともと建設省の役人あがりなのですが、建設省在勤中からこれから情報化の社会が必ず来る、そうしたときに例えば道路あるいは河川、あるいはビルといったものが情報武装をしていかなければいけない。国の役人だった当時からそういう強い思いを持っておりました。こうした背景には石井先生のご指導などもあって、そういう思いがあったようですが、出発点においてはそういう思いの中から梶原 拓自身のイニシアチブで進めてきた。そういう意味でソフトピアのプロジェクトは実はまさに県独自の財源でやってきたという現状があるわけです。

 そうは言いましても、国の制度でも積極的に活用できるものは活用していこうという姿勢は、そこの点においては私どもはオープンなつもりでして、例えばその後立ち上がりましたVRの制度では、頭脳立地法の指定をいただきまして集積機関としての支援をいただいているところです。これは通商産業省からの地域公団の出資も受けてやっております。 それから、先ほど申し上げたように研究開発が大事な機能になってきます。これは活動する上でのランニングコストがどうしても必要になってまいります。こうしたものに関しては例えば科学技術庁の地域結集型共同研究の制度を使うとか、あるいは郵政省の通信放送機構の研究資金を導入するとかいうことでやっております。

 私どもとしては、我々の政策にフィットする国の助成制度があれば積極的に活用していきたい。全部が全部情報をとらえきれない、いろいろな省庁にまたがってやっているところがあるのですが、そこは一生懸命勉強しながら使いやすいものについては使っていくという考え方で柔軟に対応していきたいと思っております。それが国の制度活用に関する岐阜県の態度とご理解いただいてよろしいかと思います。

 ITの位置づけが県政要覧に出ていないというお話ですが、ご指摘のとおりでして、トレンドで申し上げるとかなりの成果を出してきているのですが、絶対数で言うと正直申し上げてまだまだ足りないというのが現状です。例えば、手元に、特定サービス産業実態調査という国の統計がありますが、この統計で平成元年、89年と平成10年を比較した数字がありますが、事業所数で情報産業の全国平均の伸び率が大体1.48倍。これに対して岐阜県における情報産業の伸び率は3.75倍と非常に大きな伸びをこの10年間で示している。この一端はやはりソフトピアでITをやるのだという強いメッセージを岐阜において発信したことが1つにあったのではないかと思いますが、他方で、絶対数で見ますと98年の全国の事業所数が8,248という数字ですが、これに対応する岐阜の数字はわずか75ということでまだまだ……、トレンドで言うとそれなりの成果を出しているけれども、絶対量ではまだまだ非常に小さいと言わざるを得ない。

  同じことは従業者数でも言えまして、同じ89年から98年の全国の情報産業関連の従業者数の伸びは1.42倍ですが、岐阜では2.34倍という数字です。年間売上額は差がもう少し小さくなってまいりまして、全国で同じ期間で2.25倍になったのが岐阜では2.92倍。1個1個の事業所の人数は少ないけれども、小規模な事業所が盛んに立ち上がりつつある。そういう意味ではベンチャー育成、新しい事業育成という点では、一定の成果がトレンドとしては出ていますが、全県の中での産業集積というまでに関してはまだまだ努力を続けなければならない。それが先ほど申しました拠点としての点の発展から面的な広がりをもたせていきたいという我々の思いでありますし、もう一つは、こうした情報産業そのものを育てるというのは非常に大事な課題ですが、くり返し申し上げておりますようにネットワーク化が進む中で地元の既存の産業界の方々がIT技術を活用して自らの事業を伸ばしていく、そちらでの部分でも目配りが重要だと思っているわけです。

 この辺で我々の今後の課題ではないかと思っていますし、統計の中に入っていないという点に関しては、今申し上げたような数字がとりあえずの私からのご説明ということになろうと思います。

○  委員 何度か岐阜県のいろいろな動きを見せていただいてわかっているのですが、時々感じるのが大垣市のイニシアチブと県のイニシアチブといいますか、梶原知事が猛烈に情報論を言われていたので進んでこられたのですが、最後のところでは、各自治体といいますか基礎的自治体のところの役割もすごく重くなっているような感じですが、県と基礎的自治体の役割分担はどういう感じなのでしょうか。

○高田労働局長  基本的にソフトピアの大垣市、VRの方の各務原市、ともに非常に積極的にご協力いただいているというのが基本的な考え方だと思います。こうした拠点型のプロジェクトをやっていく際には、土地の確保の問題がまず出発点としてあるわけですから、そこのところで大変ご協力いただいている。

 それから、実際に大垣市は、県が作って直接運営していますのはセンタービルと称してしているこのビルと、こちらの方にアネックス、回りにあるのは立地企業のビルですが、アネックスの方は半分は大垣市が自前で、まさに地元市民の情報化のための拠点として用意されている。そういう意味では県と地元市が車輪の両軸になって動いている。同じような問題は各務原市の方でもやはり地元が大変積極的に活動している。そうした地元と県の協力関係がなければこうした事業は円滑に進んでいかないのではないかとは考えております。

 率直に申し上げると、両市以外の市からすると、ややもすると県にあんなに投資してもらっていいなという議論がないでもないのは事実です。ただ、私どもやっておりますのは、先ほど申し上げたようにべつに大垣市、あるいは各務原市のためではなくて、そこが拠点となって、そこのファシリティー、インフラを使うことによって県内産業全体の活性化をすべき拠点というふうに考えておりますので、例えばITの研修事業などに関しても、できるだけ県内の皆さんが活用しやすい環境づくりを整備するように心がけているつもりではおります。

○成田委員長 それに関連してお伺いしたいのですが、今の話、梶原知事、この前、お目にかかってよく存じ上げていますが、梶原知事の非常に強い意欲に基づいて立ち上がってきたわけです。これは、その限りでは民間の力と言うよりも行政主導のプロジェクトなのではないかという印象を持つのです。これはある程度動き始めた場合に、もう行政が手を引いて、自由に第三セクター等を通じてやってもらうことになるのか、あるいは引き続きインフラの整備等を含めて県が肩入れをなさるのか。

 もう一つは、情報化時代ですから、この種のプロジェクトは既に新産・工特に指定されている地域でも、いわゆるたそがれているような地域でも構想を切り替えてやや似たような構想で進めようというところがわりあい多いわけです。それから、指定地域外でも、これと似たような構想を持って進めているところもあるわけですが、そういう他地域との競合といいますか、同じようなものが全国あちこちにできてくるのではないかという見方をする人もないではないのですが、その辺、いかがでしょうか。

○高田労働局長  第1点の行政主導を民間主導に移すべきではないかというご議論に関しては、まさに、特にソフトピアに関しては構想段階から数えますともう10年以上たっておりますから、徐々に、委員長ご指摘のとおり、民間の色彩、これは地域開発という点も含めて民的な色彩を強めていかなければいけないターニングポイントにそろそろかかってきているのではないかという問題意識は持っております。

 例えば、先ほど申し上げましたが、ソフトピアのプロジェクトではインフラを整備する部分と、共同研究、あるいは海外との連携ということで、ソフトウェアの部分で毎年走っていく部分と車輪の両立てになっているわけですが、その両方に関してもそれぞれ、例えば地域開発という意味では民間のディベロッパーに将来的には来ていただいてやっていただけるような状況にしていかないといけないという問題意識もあるわけです。

 それから、年々の事業活動に関しても、最近では、いわゆる情報化関連業務のアウトソーシングという議論があるわけです。実は岐阜県の場合は既に昨年度、アメリカのEDSという会社ですが、情報関連業務のアウトソースの可能性に関する事前調査をやっていただいておりまして、来年度の一般競争入札にかけると思いますが、県庁の情報関連業務全体をアウトソースをかけていくようなプランもしておりまして、ITの分野というのは本来的に産業活動である以上、そうやって民間活力をどうやって活用できるかという議論が具体化していくターニングポイントにだんだん近づきつつある。ソフトピアを面的に広げていきたいというのもそういう流れの中で考えていかなければいけないと思いとしてはあるわけです。

 ただ、他方で現実に、岐阜県というのはたかだか人口200万人、岐阜市で40万人、大垣市は18万人という小さい地方都市であるという現実もありまして、そうした方向づけをしていく上で行政がかなり明確なメッセージを持って政策展開をしていくという行政の役割というのは、現実には相当部分あると言わざるを得ないというのが、1 点目に対する我々の認識であり、将来の希望です。

  他地域との競合に関してどう考えるのかというご議論ですが、この辺はむしろ既にすぐれたノウハウを持っているのであれば、地方自治体も市の境、あるいは県の境を越えてどんどん相互乗り入れしていくべきではないか。むしろ積極的にやっているところでして、例えば最近話題になっております環境に関するISOの1万4,000の研修などですと、隣りの三重県には非常に立派な研修センターがありますが、こちらの方との連携をやっている。逆にITの分野では岐阜を一生懸命やっておりますので、是非是非県境を越えてソフトピアの研修ファシリティーをご利用いただきたいということで、相互乗り入れを積極的にやっていこう。出発点になっておりますのは、名古屋市も入れた4県1市、愛知、三重、滋賀、岐阜と名古屋市の連携とか、あるいは姉妹県を通じて相互の人事交流も含めてやっているところです。その辺は、おっしゃるようにみんなが同じことを目指したのでは意味がない。むしろ持っているすぐれたものを相互乗合をやっていこうということで、これまた知事も非常に一生懸命であちらこちらに行って話をしたりしているということではないでしょうか。

○成田委員長 先ほどは時間がなかったせいだと思うのですが、護送船団から単独航海というお話がありました。これは、引き連れているのが民間企業としますと、依然とした現在の状態では国との関係は別として、いわゆる護送船団的な形になっていますね。どこかで単独航海に切り離さなければいけないですね。

○高田労働局長  そこの考え方なのですが、1つは県内でも既存の業界団体は多いのですが、やる気のある方に関しては個別的にもどんどん一緒に頑張っていく。組合に入っているから、あるいは協会にいるから、協会を窓口にやるということではなく、むしろやる気のある人をピックアップして選択的にやっていくということを考えている。大ざっぱに言うとそういう考え方です。

○  委員 成田委員長からもお話がありましたように、岐阜は大変おもしろいというか、比較的うまく進みつつあるのではないかと思うのですが、他のところでもどこそこのシリコンバレーを目指してというような話でみんなやっているという状態は同じなのです。岐阜の場合に87年に構想を立ち上げて、ソフトピアジャパン、94年に立ち上げて、企業立地がそこから始まったわけですね。

  お聞きしたいのは、企業立地について何社か、整備状況ということで分譲地の立地企業一覧が18社とありますが、だいぶ埋まったという状態と考えてよろしいですか。

  もう一つは、なぜ岐阜のここに立地して企業が来てくれるかということについて、どういうことをお考えになって誘致したのかということをと伺いしたい。

○高田労働局長  ソフトピアにしましてもVRにしましても、用地に対する企業誘致という点では、90年代というタインミングを考えますとかなり成功したという評価をしていいのではないかと思っています。その背景としてはかなりトップセールスをやった。これは間違いない話です。知事自ら一生懸命足を運んで、単に土地を売って終わりではなくて、研究開発に国の資金を導入するとかということで接点を作ろうという努力はやってきたということは言えると思うのです。

  我々事務方として率直に申し上げますと、これは自転車操業的に常に新しい球を打ち出していかなければいけない。企業が魅力を感じる活動をルーティン化させないと、単に土地だけ売ってあとは知らないということでは、かなりしんどい仕事をやり続けているとい

うのも事実ですので、多分、その辺が評価していただけたのではないかと考えております。

  ですから、幾つか土地は残ってはいるのですが、今後は、先ほども申し上げたように個々の企業に言うだけではなく、むしろ密度の高い都市づくりをしていかなければいけない。そうだとすると事業のやり方も、在来の土地を売ることとインキュベートルームを両立てでやっていくというだけでは十分ではないかもしれないという議論はそろそろ出ているわけです。

 それから、最近、ITの分野で何が起こっているかというと、国際的に見てもニューヨークのシリコンバレー、サンフランシスコはマルチメディアガルチでしたか、ああいうようにかなり大都市にITの分野というのは集中するような流れができてきているのではないか。日本でも定例の会合自体はなくなりましたがビットバレーということで渋谷だということで、都市型の産業ということで、もともと出発点におけるシリコンバレーは決してそんなことはなかったのですが、むしろ最近では都市に再集中する流れがあるかもしれない。これは我々にとって大変な脅威でして、、都市づくり、まちづくりという目でものを考えないと、拠点だけではもういけないのではないか。大きな流れの転換というのがまた起こりつつある。それにどうやって我々は対応し、むしろ先回りしていくかというような大きなチャレンジを迎えているのではないかと思います。

  そうは言っても、海外からこの7月には香港のミッションが日本のIT産業が活動しているのを調べて回って、日本でシリコンバレー的な集積があるのは岐阜で、特にソフトピアの領域はおもしろいからと、海外からも評価をいただいている話が、この資料の中の「トピックスUのスイートバレーと香港サイバーポート連携へ」ですが、一生懸命やることによって海外からも評価される。評価されることが情報の発信になって次の活動につながる、よりよいサイクルにつなげていく不断の努力を続けていきたいということだと思います。

○  委員 今のお答えで半分はお聞きしてしまったようなのですが、1つ教えていただきたいのは、地域の産業づくりというとどうしても雇用の問題を考えると、すぐ情報に結びつける。いままではソフトウェアという単純な話だった。これが今はITという形になってきた。そうすると、一番問題は、今のお話の中にあったように、地域と情報産業とのリンケージというのは本当にあるのか。つまり、情報産業というのは勝組の世界だから、最後はみんなどこかに集中して1個のところに行ってしまうのではないか、IT産業になると。その辺の情報産業と地域雇用というのが、ソフト産業のときには成り立ったのが、今後、IT産業になったときに成り立ち得るのかという点。

 もっと言うと、逆に言うと地域においての情報化というのは、先ほどお話があったように地域企業がいろいろな意味で情報産業ではなくて、情報を具備した産業として高度化するような方に重点が移るのかどうかという形で、地域と情報をどうとらえていったらいいか。我々も今一番悩んでいるところなのです。

○高田労働局長  ご指摘のとおり、出発点においてももともとITというのは別にIT自体が目的ではなくて、それによって何をするかという紙と鉛筆みたいな部分が本来的にはある話なのだと思うのです。と言っても、それを地域産業の振興の中で考えると、紙と鉛筆、だからといっていきなり個々の産業分野に入り込んでも何の根もない話になる。そういう意味ではIT産業自体がある程度集積していかないと出発点にはなり得ないということで、ソフトピアの当初のプロジェクトもIT産業そのものの育成が重点だったということだと思うのです。

 他方、将来において何か起こるかというと、建設産業でもIT端末を使えないと入札にも参加できなくなる。ICカードを使えないと、使えないとというか、逆に簡単に使えるようになるわけですが、行政情報などをICカードで非常に簡略に引き出せるようになってくる。下請企業の形態が多いのでITのネットワークの中にちゃんと残っておかないと、発注主からの仕事にもありつけない。もっと怖いことは、遠からぬ将来に現実のものとして出てくるのではないかということで、今年度からですが特に建設業に関しては建設キャルス、専門研修を始めます。VRの方では年を越えるかもしれませんが、ネットワークで接続した世界でのCADキャム研修を進めるということで、地元の既存のインダストリーがIT化の中でこぼれ落ちないようにしていく。これがまず基本だと考えております。 ですから、資料スイートバレーの後ろから2枚目を見ていただきますと「ICカードシステムモデル事業」ですとか、「GISジオグラフィカル・インフォメーション・システム」とか、「ITSインフォメーション・トランスポーテーション・システム」であるとか、要するに分野の広がりというのをそろそろ強力に意識つつある。モデル事業ということは実際にやってみせる。ある程度フォーマットが確定してきたものに関しては研修プログラムの中にどんどん乗せていくということでやっていかないと大変なことが起こるという危機感は持っております。

 他方で、岐阜のように山がちの土地においては、ネットワークを結ぶことによって利益を最も受けやすい土地であるわけです。物理的に移動するのは先ほど申し上げたように高速道路の整備とか一生懸命やってますが、実際、体を動かさないで端末から情報を引き出せるのであれば非常に便利になるわけです。山がちな岐阜においてはITの利益を本来最も受けられるような地理的環境を持っているのではないか。その辺のことを県内の各自治体にもメッセージを発しながら、したがって、途中のご質問にもありましたが、このプロジェクトは決して大垣と各務原だけのものではなくて、岐阜県民全体がメリットを受けるために必要不可欠なプロジェクトなのだというメッセージを発しているつもりです。お答えになっていないかもしれませんが、我々の思いを申し上げさせていただきました。

○成田委員長 予定の時間を超過するぐらい非常に熱心なご質疑をありがとうございました。岐阜県による先進県ヒアリングをこれで終了いたします。

 高田労働局長におかれましては、本日は、非常にご多用のところを私どものためにご出席いただきましてありがとうございました。この委員会を代表しまして厚く御礼申し上げます。

○高田労働局長  本日は、貴重なお時間をいただきましてありがとうございました。

 生意気なことを申し上げましたけれども、正直申しましていろいろ悩んでいる部分も多々あります。是非、岐阜にお見えいただきまして現場を見ていただいて、お知恵を拝借しながらやっていきたいと思っておりますので、一度、岐阜県の方にお見えいただけるようお願い申し上げまして、私からの説明を終わらせていただきます。

 

(3)その他

○成田委員長 会議終了予定時刻まで10分ほどありますので、この後しばらく、今日のお二方の話を踏まえまして自由にご討議を賜りたいと思います。

○  委員 今日、お2人とも国に対する要望というか、今後のあり方については特に発言が、メモにはあったような感じですが発言がなくて、あまり重視されていないのかと思うのですが、依頼の仕方としてそういうことは特に……、現状を報告してくれという感じだったのでしょうか。

○田巻参事官 依頼の仕方としては、現状のご報告と同時に今後の地方産業政策についてご要望等があればお話をいただきたいということで、一応両方お願いしております。ただ、どうもPRが中心になってしまったようでございまして……。

○  委員 国に期待はないということですかね(笑)。

○成田委員長 新産・工特に対する感想なども言ってくださればよかったのですが、よそのことだから遠慮されたのでしょうね。

 もし、ご発言がないようでしたら、そろそろ議論を終えたいと思います。

 

3.閉会

 次回の予定も含めて事務局から総括していただきたいと思います。

○田巻参事官 1点ご報告でございますが、お配りしております資料3として、前回の3月の特別委員会のときに道府県に対する第2次アンケートを個別の事業の調査についつてやることについて方針としてご了解いただいたわけでございますが、それに関しまして具体的な形としては、資料3のような形でアンケート調査を今実施しているところでございます。

 締切は一応先月いっぱいということでお願いしているのですが、若干出遅れているところもあるようでございまして、これからまた回収、集計に努めていきたいと思っております。以上、現状報告でございます。

 次回の第5回小委員会の日程は、資料3のアンケートを回収、集計し終わった段階で、また、資料をまとめたものを見ながらご議論いただくというようなことを予定しておりますので、第2次アンケートの回収状況を見つつ、また改めて後日日程調整をさせていただきたいと思っておので、よろしくお願いいたします。

○成田委員長 これでヒアリングは終わりですね。

○田巻参事官 私どもの予定しておりますヒアリングは以上でございます。

○成田委員長 皆様の方から、こういうところからヒアリングした方がいいということがあれば、まだお1人ぐらいお呼びする時間はあるかと思いますが。

 それでは、本日予定しておりました議題は以上ですべて終了いたしました。

 今、事務局から説明がございましたように、次回の小委員会の日程につきましては、皆様と日程を調整させていただきまして、改めてご通知をさしあげたいと思っております。 本日は、皆様、大変ご多忙のところを熱心にご討議いただきまして、どうもありがとうございました。これをもちまして閉会とさせていただきます。